Side:シグナム
此れは…何と言う魔力の奔流だ――大丈夫かレヴァンティン?
『問題ない…だが、某よりもレイジングハート殿が!』
なに!?
く…レイジングハートはミッド式のデバイスだから、ベルカ式のアームドデバイスよりも強度が低い。
レヴァンティンは無事だとしてもレイジングハートは!
それに、レイジングハートが破損したら主なのはとて無事では済まん!!
「うあぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「主なのは!!」
――ポス…
ま、間に合った…ご無事ですか?
「な、何とか…でも、レイジングハートは…!!」
『ちっ…ジュエルシードの分際でやってくれやがりましたね?私を一時的な機能不全に追い込むとは…』
「…意外と大丈夫そうなの…」
「その様ですね…」
とは言え此れではデバイスとしての機能を果たす事は不可能でしょうが……と、ジュエルシードは!?先ずはアレを封印しなくては!!
魔法少女リリカルなのは〜夜天のなのは〜 夜天17
『騎士の誓いと友の誓い』
「!!まだ魔力を放出し続けてる!止めなきゃ!!」
む、無理やり動かないで下さい!!主なのは、一体何を!!
「お願い静まって!!!!」
素手で封印!?…幾ら何でも無茶すぎる!
ドレだけ高い魔力を有しているとは言っても、デバイスの補助なしでの封印など……!
だが、其れを言っても主は絶対に退かないだろう…ならば私は騎士として、主の成そうとしている事を手助けするだけだ!
――ガシィ!!
「し、シグナム!?」
「私も手伝います!貴女1人に無茶をさせるわけには行きません!」
其れに2人ならば、負担も半分に減ります…
これ以上の増員はかえって逆効果になりますが、適正人数の限界数なら最大の効果が発揮できるのは道理でしょう?
幸いレヴァンティンは無事ですので、其れの補助を受ければ封印も難しくない筈です。
「シグナム…うん、其れじゃあ一緒に頑張ろう!」
「はい!!」
おとなしくしろジュエルシード…!…ぐ、レヴァンティンの補助があってもまだ此れだけの負担があると言うのか…!!
だが…!!
「静まれぇぇぇぇぇ!!!!」
「ジュエルシード…封印!!!」
我等と主が力を合わせれば、出来ぬ事など存在せん。
少々手間取ったものの、このジュエルシードも封印する事が出来たが――大丈夫ですか、主なのは?
「大丈夫!って言いたいけど、ちょっとキツイかも……流石に素手での封印は無理があったみたい…」
「其れは当然でしょう…私とて両の手が火傷と裂傷でボロボロですから……主の手はもっとダメージが大きいでしょう?」
私ですらこうなのだから、幼い主へのダメージは半端ではない筈だ――帰ったら、即刻シャマルに治療をしてもらわねばならないだろうな。
さて、ジュエルシードを…
――ギュル…!
!!ジュエルシードが!!……お前達か!!
「封印ご苦労様!このジュエルシードは私達が貰って行くね♪」
「卑怯は百も承知だが、自分達はどんな手を使っても此れを手に入れねばならない……如何に罵声を浴びせられようとも、自分達は事を成さねばらない!」
隼人…その気持ちは私にも理解できない訳ではないが…だからと言って黙って見過ごせる事ではない。
主なのはが、その身を傷付けながらも封印したジュエルシードを横から掠め取るなど断じて許さん!
「許してもらおうなんざ思ってねえよ!俺等はコイツを手にれる事が出来ればそれで良いんだよ!」
「そうかよ…ならアタシ達がオメェ等をぶっ叩いて其れを奪い取っても、文句はねぇんだ…な!!!」
「横から掠め取るなんて、せこいにも程があると思うんやけどなぁ!」
――ドゴォォォン!!
ヴィータ!!それにはやて嬢も!!
す、凄まじい一撃だな……いや、連中のした事を思えば当然の行動か。
「せこくて結構!目的果たせばそれでよし!
これ以上ここで戦う理由もないし、ちゃっちゃと離脱させてもらうわね〜〜〜!ばいば〜〜――ドガシャァァァァァァァァァン!!〜〜みぎゃぁぁ!?」
「か、雷!?」
「ですが空は晴れて、雲も在りませんが――一体何処から?」
「アリシア、今のって…」
「うん…間違いなくお母さんの一発だね。」
テスタロッサ姉妹?
今の雷はプレシア女史の魔法だと言うのか!?いや、彼女は此処から離れたマンションに居ると言っていなかったか?
「確かに私達のマンションは此処から2〜3q離れてるけど、母さんには関係ないかも…」
「遠距離どころか、次元超えての魔法行使ができるからねぇ〜〜〜。」
す、凄い人なんだなプレシア女史は…大魔導師と謳われるのも納得してしまう――何れ手合わせを願いたいものだ。
其れに、今の援護魔法で奴の手からジュエルシードが離れた!ザフィーラ、バニングス、頼む!!
「任せない!!」
「其れは返してもらおう!!」
「そうはさせぬ。」
隼人がなにか…球体のアレはどこかで見たような…攻撃用の手投げ弾か!!
「甘いわよ!フレイムアイズ!!」
『跳べオラぁ!!』
――スッパーーン!!カッ!!!!
「「「「「「「「「「「「「!!!」」」」」」」」」」」」」
!!此れは…爆発物ではなく閃光弾!!
目的は物理的な攻撃ではなく目晦ましだったのか…!!此れは完全に裏を掛かれたか…!
――シュゥゥゥン…
「やられたわ…閃光に乗じて逃げられちゃったわね〜〜…」
「勝負に勝って試合に負けた……そんな気分ですね。」
言い得て妙だが、その通りだな。
主なのはと私が負傷し、レイジングハートも中破、ジュエルシードも奪われたとあっては、今回は我等の完敗…騎士の面目も立たんな。
だが、次は負けん!
お前達が何個ジュエルシードを確保しているかは知らんが、残るジュエルシードは全て我等が貰い受ける――我等が主の為にもな。
「…戻りましょう、主なのは。その手も手当をしなければなりません。」
「其れはシグナムもだよ?」
私は……いえ、分かりました、私もシャマルに治してもらいます。
シャマルの治癒魔法ならば、痕も残らずに治る筈ですので。
…少し、御手を失礼して宜しいですか?
「ふえ?うん、良いけど…」
「失礼します。」
小さな手だ…主はこの小さな手で頑張っている。
だが、この小さな手からは何よりも大きな主の心を感じる事が出来る……矢張り貴女は最高の主だ。
――ちゅ…
「ふえぇぇ!?し、シグナム!?///」
「貴女の御手への口付けで新たに誓いましょう。
我等は、例え千の刃で斬り付けられ、千の矢で射られようとも、必ず生きて主なのはを護ると此処に誓います。」
「シグナム…うん!改めて、宜しくお願いします♪」
はい。
……って、如何したお前達?
「如何したも何も…」
「アンタがやると絵になりすぎて、見てる方が照れるわよ…」
「流石はヴォルケンリッターの筆頭騎士様…滅茶苦茶似合ってるのMKNね…」
?良く分からないが……まあ、問題があるわけではなさそうだから良いだろう。
だが…家に戻ったらシャマルの説教だけは覚悟しておかねばならんだろうな…
――――――
Side:信長
ご苦労だった、皆の者よ。
此れでワシが得た宝玉は5つ……もうあと1つほどあれば充分やも知れん。
「して、宝玉を確保したのは良いが、初穂は大丈夫か?…何やら消し炭状態だが…」
「心配はいりませんお頭。
初穂は見た目以上に頑丈ですので、明日の朝には元に戻っています。」
ならば良いが……しかし、強い娘達以外にも更なる戦力が居るとはな。
特に初穂を丸焦げにしたという魔法を使った人物は相当な手練れだろう……野望成就に障害は付き物と言う事か?
まぁ、ワシが宝玉に願うは失った我が妻と妹を再びこの手に取り戻す事。
戦国の世で成し得なかった天下統一はワシの手で成し遂げなければ意味はないからな。
だが、それとは別に…矢張り会ってみたいものだな、高町なのはとその仲間達に。
自らが傷つく事を厭わずに、暴走した宝玉を素手で封印するとは見事な心意気よ。
互いにこの宝玉を求めているのならば、何れ邂逅する事もあろう。
その時に話し合う事になるのか、或は刃を交える事となるかは分からぬが、会うに値する者達である事は間違いない。
いっそワシが自ら出張るか?
そうすればかの者達と会う事も可能だろう。
「待てよ大将、そいつぁ良くねぇ!親玉ってのは最後の最後まで出張らねぇもんだぜ?
大将の出番は、連中が此処を嗅ぎ付けて攻め込んで来たときぐれぇだろ?そん時までは俺達に任せときな!」
「ふふ…分かっておる富嶽…言ってみただけだ。
兎に角、宝玉の確保はご苦労だったな――次に備え充分に休め……初穂は特にな。」
「……………」
うむ…黒焦げ状態で拳を突き上げているところを見ると大丈夫そうだな。
――――――
Side:はやて
と言う訳で、あっという間に夜!
当然と言うかなんというか、なのはちゃんとシグナムはシャマルにこっぴどく叱られてたなぁ〜〜。
前にヴィータが『シャマルは怒るとマジにこえぇ』って言うとったけどホンマに怖かったでアレは。
まぁ、其れだけ2人の事を心配した言う事やろけどね。
レイジングハートも『治療』の為にグランツ研究所に『入院』や。
博士が言うには『明日の朝までには治す』って事やけど……博士やとやってまいそうで怖いわホンマに…
「はやてちゃん。」
「あ、なのはちゃん。」
なんや、なのはちゃんも夜風に当たりに来たんか?
ちょおヒンヤリしてて気持ちがえぇし、今日は星が綺麗に見えるからロケーションは最高やで♪
「うん、確かに綺麗だね〜〜。」
やろ?……で、手は大丈夫なんか?
「全然大丈夫♪シャマルの治癒は天下一品だから、あれくらいの傷でも治せちゃうって。
だけど、幾らシャマルの治癒魔法が凄くても、怪我したら皆に心配掛けちゃうから注意しなきゃダメだね。」
「そらそうやろ!
てか、まさか素手で封印しようとするとは思わなかったで!?いや、あそこで封印せなアカン言う事は分かるけどな?」
無茶したらアカンて!
只でさえ足が不自由なのに、手まで使えなくなったら大事やで!?
今度同じ事が起きたら、私やすずかちゃん達で何とかするから、二度とあんな無茶はせんといて……約束してや?
「はやてちゃん……うん、アリサちゃんとすずかちゃん、アミタさんとキリエさんにもメールで同じ事を言われたの。
約束するよはやてちゃん、二度とあんな無茶はしないって…闇の書の主の名に誓ってね。」
闇の書の主の名に誓ってか…それは絶対の誓いやね。
ん〜〜〜?そやったら私もなんか誓いを立てなアカンよね?なのはちゃんだけに誓わせるんは不公平やしなぁ?
…そや!!ちょっと手を借りるでなのはちゃん♪
「はやてちゃん?」
確かこうやったかな?
――ちゅ…
「なななな…ははは、はやてちゃん!?///」
「そんなに驚く事ないやろ?シグナムだって同じ事してたやん?」
「そ、其れはそうだけど、驚くのは当然だと思うの!!」
あ〜〜…そらそうか。
私もドキドキしたからなぁ?……やけどなのはちゃん、此れは冗談や戯れやないで?
シグナム達だけやない。私かてなのはちゃんの騎士でありたいんや。
きっとアリサちゃんやアミタさん達も同じ事を言うんやないかなぁ?…皆、なのはちゃんの事が大切で大好きなんやから。
「八神はやては、高町なのはの騎士として、共に歩み支える事を此処に誓う――我が剣『アロンダイト』に懸けて。」
「……その誓い、闇の書の主として受ける…汝が誓い、我が身か汝が身が朽ちるまで破る事は許されぬ…」
おぉ、カッコいいなぁ?…カッコいいけど…
「「…………ぷっ…!」」
あははははははははははは!!なんかおっかしぃなぁ?アニメや漫画の影響受けすぎやろか?
「かもね。今の私のセリフだって厨二全開って言われたら其れまでなの。」
「あ〜〜、黒歴史作ってもうた〜〜〜〜!!
今の誓いのセリフ、誰かに録音されとったら自害確定モンのゴッツ恥ずかしいセリフやろ!?…二度と言われへんわこんなもん!!」
やけど、誓いそのものは冗談やないで?
まぁ、なのはちゃんの事やから護られっ放しやなくて『互いに背を預ける』言うやつになるやろけどね。
けどそれとは別にや…あの残念ボディのお姉さんは、次に会った時にはいてこましたるで…手加減ゼロでな!
「え〜と…目の色反転してるけど大丈夫なの、はやてちゃん…」
「くっくっく…気にしたらアカンでなのはちゃん…此れはある意味でお約束やからな…」
ま、精々覚悟しとけや残念ボディ…
――――――
Side:???
「強大な魔力反応…間違いないのね?」
「はい!『第97管理外世界』から極めて強い魔力反応を観測しました。
そしてこの魔力――ギル・グレアム提督が仰っていた『ジュエルシード』とみて間違いはないと思います!」
矢張りグレアム提督の言う事は正しかったと言う事かしら?
第97管理外世界――地球にジュエルシードがばら撒かれたと言うのは。
確かに、ジュエルシードを輸送していた貨物艦が攻撃され、その際に積み荷のジュエルシードは何処かに消えてしまったわ。
どんな管理世界を探しても見つからなかったけれど、落ちた先が管理外世界だと言うのなら見つからないのも納得ね。
でも、だとしたらグレアム提督はどうやってジュエルシードが落ちた場所を突き止めたと言うのかしら?
若しかして別の目的でリーゼ姉妹を地球に送り込んでいて、その過程で偶然知り得た?……まさかね。
ふぅ…管理外世界に行く事になるとは予想外だわ。
「観測はそのまま継続して。エイミィ、アースラを第97管理外世界へ進めてちょうだい。」
「了解でっす!!」
其れからクロノ、貴方は何時でも出られるようにしておいて。
正直未知の場所だから何が起きても不思議じゃないわ――何が起きても対処できるようにね?
「了解しました母さ……リンディ提督。」
別に言い直さなくても良いのに…我が子ながら真面目ね。
さて、鬼が出るか蛇が出るか……一体どんな世界なのかしら、地球って言うのは。
あら?そう言えばプレシアが管理局を辞めた後で移住先として考えてたのって地球じゃなかったかしら?
もし居るなら嬉しいわね――5年ぶりに会う事が出来るんですもの♪
けれど、其れは其れとしてジュエルシードの確保はしなければならないわ。
グレアム提督が言うには、現地の優秀な魔導師がジュエルシードを封印しているらしいけど其れだって限界がある筈。
兎に角、先ずは現地入りが最優先。
細かいその他は現地での状況を見てから考えた方が良さそうね。
To Be Continued… 
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