Side:はやて
「でぇぇぇい!!」
「うん、思い切りのいい攻撃だ――だが、全力での一撃は放った後の隙が大きい!」
しまった!!やけど…!!
――グワン!!
「!?木刀を反転させての更なる一撃!?……見事だよはやてちゃん…だけど、この模擬戦は俺の勝ちだ!!」
――ダァァァン!!!
かはっ……った〜〜〜、ナンボ受け身取った言うても、恭也さんの投げ技はキッツイなぁ〜〜。
此れでも手加減してくれてる言うんやから、本気の一発はどれほどなんやろか?
「ふぅ…魔法を使えるようになって、其れなりに戦闘こなして少しは近づけたかと思たけど、まだまだ遠いなぁ〜〜…参りました、降参です。」
「そうそう簡単には超えさせないさ…だが、攻撃の筋や攻撃方法が日に日に良くなっている――矢張り実戦を経験すると違うんだな。」
其れは確かに。
それで、恭也さんはどないです?シグナムにはそろそろ勝てそうですか?
「いや、剣術ではまだ勝つのは難しいな…引き分けが良い所かな?
無手での格闘なら俺の方が上なんだが…歴戦の剣士にはまだ届かないさ。」
左様ですか……まぁ、そないに簡単に越えられたらシグナムも立つ瀬ないやろけど――其れは其れとして、アレはちょっと凄すぎやないの?
魔法少女リリカルなのは〜夜天のなのは〜 夜天15
『思惑は絡まりて…』
――カンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカン!!!
え〜〜と、桜色の魔力弾が空き缶を撃ちながら上下左右を行ったり来たり。
空き缶は魔力弾に弾かれて地面に落ちない……まぁ、此れも訓練なんやけど、私の記憶が確かなら、私と恭也さんの模擬戦始める前からやってましたよね?
「やっていたな。
俺とはやてちゃんの模擬戦が大体3分と言うところだから、かれこれ5分近くあの状態を続けてるんじゃないのかなのはは?」
やっぱしそうですよね!?
5分近くも魔力弾で空き缶を中空に浮かせっぱなしにするって、ドンだけの集中力と空間認識能力やなのはちゃんは!?
しかも当てる度に魔力弾の移動速度が上がっとる…其れも係わらず正確に空き缶にヒットさせとるって相当やと思うんやけど。
まぁ、その魔力弾を目で追う事が出来る私と恭也さんも大概やと思うけど…すずかちゃんやったらもっとハッキリ見えるんやろね。
「……其処!!」
『最大速度です!!』
――ガガガガガガガガガガガガガガガガガ!!………コトリ
遂に落ちたか〜〜〜…けど最後のラッシュはすっごかったなぁ?
秒間20ヒットと言っても良い位の速度やったよ?正直、射撃系魔法ではなのはちゃんに勝てる気がせぇへんわ。
「あ〜〜…落ちちゃった〜〜…」
『ですが見事な腕前です。90点を付けていいでしょう。』
今ので90点!?結構厳しいな、レイジングハートは?
私の評点やったら100点越えの点数付けてるところやけど……レイジングハートの評点は辛口裁定なんかアロンダイト?
『辛口ってか厳しめではあるかもな…まぁ、それもなのは嬢ちゃんに資質があるからこその辛口採点だ――アイツは常に高みを目指してるからな。
そう言う意味ではなのは嬢ちゃんも高みを目指してるみてぇだし…良いコンビだと思うぜ?』
成程な〜〜。
やけど、高みを目指すのは私かて一緒や!勿論アリサちゃんとすずかちゃんに、アミタさんとキリエさんもシグナム達もそうやけどね。
アンタかて『此処でいいや』とか思てるわけやないやろ?
『勿論だ…俺も高みを目指す――頼りにしてるぜ大将!』
「任せとき!私もさらなる高みに上ってみせるからな!!」
朝ごはんまではもう少し時間があるなぁ?……やったら恭也さん、もう1本お願いします!!
「その意気や良し!幾らでも相手になろう!!」
「ほな、行きますよ!!」
今度は…そうやな、せめて1ダウンくらいは奪いたいもんや。
――――――
Side:シグナム
今朝の模擬戦は、美由希殿とだったが、剣術では全勝で体術では1勝1敗2分けか……無手での格闘をもっと向上させる必要があるな。
今日は日曜日なので主なのはとはやて嬢も翠屋を手伝うそうだ。
主なのははカウンターでのレジ打ちが担当だが――其れは良い、其れは良いのだが…
「桃子殿、此れは一体…」
「シグナム用の特別ウェイトレス衣装よ〜〜♪取り敢えず着てみて?」
はぁ?着ろと言うなら取り敢えず着てみますが…此れは和服と言うものだったかな?
上着を合わせて…下は、袴と言うやつか?袖が邪魔になるから襷掛けをして――此れで如何でしょう?
「思った通りだわ〜〜シグナムに矢絣の袴はピッタリね♪」
「はぁ…そうでしょうか?確かに悪いものではないし、動き難いと言う事も有りませんが…」
そんなに似合っているのだろうか?
「似合ってるよ!凄くカッコいいよシグナム♪」
「ホンマやなぁ〜〜…こう、何て言うか『カッコいい大人の女性』って感じがするわ〜〜。」
主なのはにはやて嬢まで……似合っているのならばいいのですが――ザフィーラのは流石に無理があるのでは?
「……………」
「そうねぇ…XLサイズを注文したのにバーテン服の袖がはち切れちゃったわねぇ…
「ザフィーラは腕がものすごく太いから、既製品じゃ無理だと思うよお母さん?」
主なのはの言う通りです。ザフィーラの剛腕は特注品でなければとても無理ですよ?
まぁ、此れは此れで『ワイルドな漢の魅力』が十二分に発揮された格好ではあると思いますが…
「それだわ!!そうよね〜〜ザフィーラはワイルド系イケメンなんだから、そっちの方面で魅力を引き出すべきだったわ〜〜。」
「あ〜〜〜…お母さんがスイッチ入っちゃったの…」
「此れはザフィーラ用のワイルドコスチュームが増えるのは確実やなぁ…」
増える!?…ザフィーラよ…
「構わん…此れもまた務めだ。」
「…時々、お前の事をものすごく尊敬したくなる時があるな…」
まぁ、お前が良いなら私がとやかく言う事でもないか。
さて、そろそろ開店だ――日曜だからきっと客も多いだろう。
主なのは、無理はしませんように。
「大丈夫だよシグナム、レジ打ちはそんなに難しくないし。
其れよりも、忙しいのはホールスタッフだから、シグナム達の方こそ頑張ってね。特にシグナムは『翠屋のナンバー1ウェイトレス』なんだから♪」
「身に余る光栄……その名に恥じないように勤めましょう。」
さて、忙しくも充実した1日の始まりだな。
――――――
Side:なのは
「2000円お預かりします…500円のお返しですね。ありがとうございました♪」
「いやぁ、偉いねぇ、なのはちゃんもはやてちゃんも、其れからあの赤毛の子ヴィータちゃんだったかい?
学校のない日はお家の手伝いをちゃんとして……全く私の孫にも見習わせたいもんだよ。」
にゃはは…まぁ、好きでやってることですから。
はやてちゃんもヴィータちゃんもそうですよ?私がやりたいからやってるんです――普段は学校があって出来ないから。
「其れが偉いって言うのさ…中々出来る事じゃないよ?
なによりなのはちゃんは、その足で此れだろう?ホントに感心する他ないよ……この店を贔屓にしたくなるってもんさ。」
ありがとうございます。
また今度来てくださいね♪
「OK、OKまた来るよ?じゃあね。」
「はい、またどうぞ〜〜♪」
レジ打ちも色んな人とお話が出来るから楽しいね。
この店に来る人は、殆どが私の足の事を知ってるけど、『可哀想』って言う人が居ないのはありがたいかな?
足が動かないのは不便だけど、私は『可哀想じゃない』から、そう見られるのは正直嫌な部分があるし……それにレイジングハート起動すれば普通に立てるしね?
『起動しましょうか?』
「しなくていいよ…行き成り私が立って歩いたらお客さんが驚いちゃう。」
『…其れもそうですね。』
そう言う事。
あ、新しいお客さん……いらっしゃいませ〜〜♪
「こんにちわ。
孫達になにかお菓子を買おうと思ったのだがね……この店のお勧めは何かな?」
白髪白髭の御爺さん…外国の人かなぁ?
何か優しそうだけど――だけどなんだろう、何処か私を観察してる気がするのは…気のせいかな?
「え〜と、お勧めだとショートケーキとシュークリームですね。新発売の『和風ロールケーキ』もお勧めですよ?」
「和風ロールケーキ?」
「抹茶のスポンジで、抹茶クリームと大納言小豆と栗の甘露煮を巻いたロールケーキです。」
「ふむ…其れではそのお勧めを3つずつ頂けるかな?」
ショートケーキとシュークリームと和風ロールケーキが3つですね?
それだと…合計で2400円になります。
「では2500円で。」
「2500円お預かりします…100円のお返しですね。ありがとうございました♪」
ちょっと気になるお爺さんだったけど悪い人じゃない――其れ位は私でも分かるの。
ん?…如何したのシグナム?
「いえ、少しばかり外が…」
《以前に主なのはを監視していた輩の気配を感じ取りまして》
《え!?…って、今のお爺さんまさか…!!》
《ご安心ください…連中に敵対の意図はないようです――居なくなりましたよ。》
そうなの?…敵対者じゃないならいいんだけど……ん〜〜〜、一体なんだったんだろう?
――――――
Side:アリア
あ、お帰りなさいお父様!
如何でしたか、お父様から見て『高町なのは』は?
「うん…とてもいい子だね。
足が不自由ながらも其れを悲観せず、そしてあの子の瞳には一切の淀みがない――とても澄んでいる。
あの子ならば闇の書を己の欲望の為に完成させることはないと断言しても良い……そしてこれで決まりだ。」
「「!!」」
決まり…って言う事は矢張り。
「2人は必要があればあの子達の手伝いを…それ以外では彼女達に対する敵勢力の詳細を集めてほしい。
私はリンディ君の方に、何時でも此方に向かえる準備をしておくように伝えよう。」
了解しました。
リーゼアリア、リーゼロッテ両名ともに、契約主ギル・グレアムの命に従います。
聞いた通りだロッテ、私達でやる事やるよ!
「おうよアリア、全力でやり遂げる!!」
うん、あの子を凍結封印なんて絶対にさせない。
私達が味わった悲しみを、あの子の家族に味わわせるなんて事は絶対にしちゃいけないんだ。
其れに、あの子が闇の書の呪いを超えられたなら、其れは物凄く意味のある事だからね。
今までの誰とも違う『闇の書の主』が持つ可能性に全てを懸けると言うのも悪くないわ……復讐じゃなくて、助けてみせるわ…高町なのはを。
――――――
Side:なのは
お手伝い中に行き成りジュエルシードが発動して…シグナムの機転でその発生場所に来てる。
私とシグナムとアリサちゃんにアミタさんとキリエさん、フェイトちゃんとアリシアちゃんまで来てるの。
「「「「「また巨大樹木か!!」」」」」
何時ぞやの巨大樹を思い起こさせる光景に、思わず私もアリサちゃんシグナムもアミタさんとキリエさんも脊髄反射の突込みだよ。
「此れは面倒そうだね…」
「でも能力は高くなさそう…速攻で終わるかも。」
うん、その通りだよアリシアちゃん。
この巨大樹の戦闘能力そのものはそれほど高くない――んだけど、耐久力が凄くてね〜〜〜
「アタシとシグナムが居るなら問題ないわよ!」
「私とバニングスの炎熱攻撃ならば、如何に巨大と言えど樹木は敵ではありません。
私とバニングスがメインアタッカーとなり、フローリアン姉妹とテスタロッサ姉がサブアタッカー、主なのはとテスタロッサ妹が封印と言うのが一番と思いますが?」
うん、アレが相手ならその布陣が一番だね。と言うか、それ以外の布陣は無いと思うの。
シグナム、アリサちゃん――先陣宜しく!!
「まっかせなさい!!」
「主の命を受けた以上、しくじりは許されん!…今のうちに祈れ!」
この布陣なら――まぁ、私達の場合どういう組み合わせでも負ける気はしないんだけど、此れならな楽勝だね。
「フェイトちゃん!」
「うん、分かってるよなのは。」
うん、ジュエルシードが露出したら、その瞬間に私とフェイトちゃんの一撃で封印するの。
この前みたいに、結界内とはいえ、海鳴の街が破壊される様は見たくないからね。
――――――
Side:隼人
ジュエルシードの発動…アトランダムで掴みづらいのは否めない。
しかもその地点にはこの間の女剣士と――あの子は『なのは』か?
あの子がリーダーとして動いているとなると厄介だ…あの子の戦局見極め眼は半端ではないからな。
戦力的に見てもこちらの方が圧倒的に不利だが、退くことは許されん。
行くぞ、桜花、那岐!
あのジュエルシードは何としても手に入れるぞ…我らの主君の為にも――必ずや!!
「あぁ、意力を尽くして戦い抜く!」
「それでは、参ります♪」
行くぞ、高町なのは殿…そして女剣士殿よ!!
To Be Continued… 
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