Side:シグナム
「シッ!!」
「させん!!」
此れは…確か苦無と言うんだったか?――忍者特有の投擲武器『手裏剣』の一種だったな。
狙いは左胸、心臓か……中々に正確な狙いだったが、その程度の飛び道具が私に通用すると思うか?
「いや、今のは小手調べだが……成程、見事な腕前。
自分の小手調べの苦無を弾き返したのは、貴殿で2人目だ――だが、此れは受けられるか?乱れ苦無・狂い鳥!!」
「!!!」
超高速での連続苦無投擲だと!?
く…此れを全て回避するのは流石に不可能だな――レヴァンティン!!
『承知!Schlangebeissen.』
「覇ぁぁぁぁぁ!!」
回避しきれないのならば、全弾叩き落とすまで――私の剣に不得手な間合いなど無いと知れ!
「馬鹿な…!!」
「瞬刃烈火、迷いはない。」
我が主、なのはの為にもジュエルシードは絶対に渡さん……立ち塞がると言うならば、斬り捨てるまでだ。
魔法少女リリカルなのは〜夜天のなのは〜 夜天14
『The ONSEN Battle!』
お前も、其れなりに出来る使い手なのだろうが、相手が悪かったな?
闇の書の守護騎士、ヴォルケンリッターが将シグナム……何処の誰が相手だろうとも、絶対に退かん。
「く…貴殿の強さは、その技量と実力のみならず、貴殿の主への忠義が力となっているのか…?
だが、自分も主君の為に、ジュエルシードを諦める事は出来ぬ――自分は主君への恩を返すためにも、其れを手に入れねばならないのだ!!」
「…お前も主の為に…」
成程、必死になる訳だ――だが、此れは譲れん。
まぁ、やると言うのならば相手にはなるが…
「なんだい?昼間なのは達に粋がってみせた割には…まぁ、経験が少ないあの子達なら或は適当にあしらえたかもしれないけど、アタシにゃ大したことないね!」
「き〜〜!!むっかつく〜〜!!私の方が君よりお姉さんなんだから!年上なんだからせめて敬語くらい使いなさいよ!!」
「年上〜〜?そう言うなら、せめてその洗濯板的ロリボディを直してくるんだね!」
「昼間の子達だってペッタンコじゃない!!」
「アホ、あの子たちは本当に子供だろうが!アンタ幾つだよ?」
「17歳!」
「はい終了!!もう諦めなよ、其処まで来てそれなら、もう成長見込めないから…」
「きーーーー!もう許さないんだから!覚悟しなさい!!」
アルフと…え〜と、初穂だったか?あっちはアルフが余裕と言ったところだな。
ザフィーラは…
「むぅぅん…!!」
「へっ、やるじぇねぇかテメェ…俺と正面切って、力比べが出来る奴なんざ、そうそう居るもんじゃなかったぜ!?」
「当然だ…お前のようなバカ力の奴が、その辺にホイホイ居て堪るか…」
力比べの真っ最中か…いや、ザフィーラと腕力勝負で互角とは、アイツ何者だ?
只者ではないだろうが、ザフィーラが後れを取る相手でもないだろう――利は我等の方にある。
「出来れば夜明け前には戻りたい…主が心配なさるのでな――行くぞ。」
「承知…貴殿に飛び道具は通じそうにない故、自分は此れで相手させていただく。」
ほう…双剣か?
攻撃の間合いは狭い代わりに、二刀による連続攻撃が特徴の武器……恭也殿が最も得意とする二刀小太刀とよく似た戦い方と見て間違いない。 尤も、間合いは更に狭いが故に半端な技量では扱えぬだろうが――
「参る!」
「っ…!中々の速さだが…その程度の奇襲は通じん!!」
――ガキィィィン!!
「この程度の攻撃、貴殿ならば見切る事は承知の上――だが、此れで自分の間合いに入れた。
より相手と接近した、この間合いでは、貴殿のその剣は広い間合いが逆に仇となる。
先程自分の苦無を叩き落とした蛇腹剣も、この間合いで使う事は出来ぬ筈!」
確かに、レヴァンティンの刀身はお前の剣の2倍以上あるから、この距離では間合いが外れて碌な攻撃が出来ん。
だが、剣士の攻撃は剣のみではない。
――ガッ!!
「む…鞘で!?」
「そうだ、剣士にとっては鞘も状況次第で有効な武器となる。
刃が無い故に剣と比べればその攻撃力は劣るが、刃が無いからこそ何処を掴んでも棍として使用する事が出来る――最も適切な間合いでな!」
「瞬時にその様な戦術をとるとは……その技量、敵ながら天晴。
だが、矢張り貴殿の真骨頂は剣での攻撃!鞘での棍攻撃では貴殿の力は十二分に発揮できておらぬ!」
分かっているさ。
元々鞘での攻撃など、間合いを調整するための牽制に過ぎん――そもそも武器を使うだけが戦いではない!
「むぅっ…何と鋭い蹴り…攻撃の気配を取り逃していたら、肋骨の1本は持っていかれたかもしれん。」
「生憎と、体術に於いては私よりも上な者と日々鍛錬をしているのでな!」
魔力無し、武器無しでの格闘となると恭也殿には中々勝てんからな…おかげで体術も以前より強くなったが。
さて、蹴りは躱されたが、此れで私の間合いになった!もう2度とは懐には入れさせんぞ!
覇ぁぁぁ…飛龍一閃!!
「炎熱砲!!…だが、誘導性のない直射攻撃ならば自分には通じぬ!」
「そうかな?」
「!!」
飛龍一閃は謂わば見せ技だ…喰らえ、紫電一閃!!
「むん!!」
――ボン!
「なに!?消えただと……?」
変わり身…此れが忍術か!
身代わりを出して消えたと言う事は、反撃が来るのは上か背後かの二択……気配を感じ取れ、そうすれば…
「イヤァァァァァ!!!!」
「背後からだったか…ちぃ、燃えろぉぉぉぉぉぉ!!!」
――ゴォォォォォォ!!
「空蝉からの奇襲に、よもや炎を纏った掌打で反撃して来るとは…」
「それに対して炎を利用した忍術――火遁術と言うのだったか?それで防御したお前も中々だと思うがな。」
全く大したものだ……魔法が使えない代わりに忍術を駆使し、そして実力も相応に高い。
正直心躍る戦いだが、生憎それを楽しむ状況でもないな――実に残念だが。
「其れは自分も同じ。
貴殿の技は強く、そして美しい――心行くまで戦いたいが、そうも言っては「どぉぉぉぉぉりゃぁぁぁあっぁぁぁぁ!!」…」
アルフ?
「おぉぉ!ライトニング…フォーーーーール!!!」
――ドバガァァァァン!!
錐もみ回転しながら、雷を纏っての脳天逆落とし!
何と言う技だ……初穂とやらは戦闘不能は間違いないだろうな………ん?
「馬鹿な、俺の拳が効かねぇだと!?」
「我は守護獣……千の刃、千の矢を受けても、この身は決して砕けぬ!!
そして、護りを固めるだけではない――この拳は主を、仲間を護るために敵を砕く『守護の拳』…故にこの拳に砕けぬものはない!牙獣裂破ぁ!!」
ザフィーラの方も決まったか。
如何に分厚い筋肉を纏おうと、鳩尾への肘打ちとボディブロー、そして顎を打ち抜くアッパーカットの3連撃には耐えられないだろうな…
「くそ……」
「誇りとは自分のためではなく、仲間の為に持つものだ…」
ふ、全くその通りだな。
さて、如何する?お前の仲間2人は戦闘不能で、此方は3人全員が無事だが……まだやるのか?
「いや、此処は退こう。
自分1人で、貴殿ら3人を相手にするのは幾らなんでも難易度が高い…と言うよりも不可能だ。」
「妥当な判断だな。
だが、1つだけ教えてくれ…お前もまた主の為にジュエルシードを集めているのだろう?
お前の主は何故これを求める?これを一体何に使う心算なんだ?」
「貴殿に答える義理はないと思うが?」
確かにな…だが、知りたいのだ。
我等も主の為にこれを集めている――主の命をお守りする為に、此れが内包している魔力を欲しているのだ。
魔力を集めねば、主の命は失われてしまうのでな。
「!!…ずるいな貴殿は……目的を言われた以上はこちらも言わないのはフェアではない。
とは言っても、自分も詳しくは知らないが――果たせなかった目的を果たすとだけ…その詳細は…」
そうか…お前達も何個かは恐らく確保しているのだろう?
発動を感知したモノの既に回収されていた、と言う事が何度かあったからな。
「手持ちが0ではないと言うにとどめておく。
何れにせよ、これ以上此処にいる意味はない――退かせて貰おう…しからば御免!」
――ボウン!
煙玉……本当に忍者なのだな。
「追うか?」
「いや、必要ない。
目的のジュエルシードは回収した訳だから深追いする事もないだろう。」
ジュエルシードが発動した場で、また見える事も有るだろうが、その時は今回と同様に退ければいいだけの事だ。
それに、主なのは達が出ればそうそう負ける事もない。
何れ、互いのジュエルシードをかけて戦うなんて言う事もあるかも知れないが、其れまでは今まで通りやっていけばいい。
「ま、其れが一番面倒ないだろうね〜〜。
んじゃまぁ、戻って一風呂浴びるかねぇ?苦戦はしなかったけど、思いっきり暴れたから汗掻いちゃったよ。」
「確かにな。」
露天は24時間解放だったから、入ってから部屋に戻るか。
汗を掻いた状態で、主の下に戻ると言うのも少々気が引けるしな。
さて、戻るか。
――――――
Side:信長
ふむ、この間の娘達のみならず、更なる使い手が居たと……何とも厄介な相手が居るようだな。
「申し訳もない…自分達の力が及ばなかっただけに、みすみす2つのジュエルシードを取り逃すことに…」
「いや、良い…相手方の戦力の層の厚さを見抜けなかったワシの責任だ、お前に非はない。
だが、隼人よ…今回戦った者…お前が相手をしたと言う女剣士の主は『なのは』と言うのだろうが、その者は誰だか分かるか?」
「…恐らく、前回戦った魔導師の少女――黒衣を纏い、金色の杖を武器としていた少女がそうではないかと。」
成程…お前の印象で良い、その娘――どのような娘だ?
「…年の頃は恐らく10と言ったところ…しかし、その瞳には強き信念と不屈の心が見て取れた。
そして、其れは仲間の少女もまた同じ――とても、強い少女です。」
そうか………ふむ、強き意志と不屈の心を宿した娘か、面白い。
今の状況ならば、ワシと会うのも遠くはないだろう…如何なる娘か、会うのが楽しみだ。
「うむ、良く分かった。
ご苦労だったな、次の宝玉が活動を開始するまでよく休んでおけ――初穂と富嶽にもそう伝えておいてくれ。」
「御意に。」
ふふふ、此れは宝玉集めで思わぬ逸材を見つけたか?
だとしたら、ワシを本能寺から救った謎の光には感謝するべきだな――
――――――
Side:なのは
シグナム、此れ位で良い?痛くない?
「あ、はい。丁度良い力加減ですが……あの、何故に主なのはとテスタロッサ姉妹は起きていたので?」
「ん?シグナム達がそろそろ帰ってくる気がしたから。
折角頑張ってくれたんだもん、労いの言葉1つくらいかけても罰は当たらないと思うの――其れに私が『おかえりなさい』って言いたかったから。」
「そうですか…申し訳ありません…いえ、ありがとうございます。
しかも、主に背中を流してもらえるなど――私はきっと、世界一幸福な騎士ですね。」
にゃはは、大袈裟だなぁシグナムも。
私がしたいからやってるだけなのに――其れに、此処に来るまでは抱っこしてもらったからお互い様だよ。
ヴィータちゃん程とは言わないけど、シグナムも、もっとこうフランクな感じになると良いのに。
「其れは…私の騎士として譲れぬ一線と思ってください。
忠義を尽くすが騎士の勤めであり、また其れを成すのが騎士の喜び――まぁ、其れも私が心から仕えたいと思った場合のみですが。」
「私はそのお眼鏡にかなったのかな?」
「勿論ですよ、主なのは。
貴女は、歴代の闇の書の主の中でも最高の主です――其れを誇ってください。」
最高か〜〜…ちょっとくすぐったいけど、そう言ってもらえるのはやな気分じゃないかな?
うん!ならその思いに応えられるように、私も頑張らなきゃだね♪
「その意気です。
さて、私ばかりでは悪いので、今度は私が主の背中を流しましょう…宜しいですか?」
「うん、お願いします♪」
ちょっとしたハプニングと、ジュエルシードの発動があったけど、大事にはならなかった。
フェイトちゃん達ともお友達になれたし、今回の温泉旅行はとっても有意義なものになったの。
「では、失礼します。」
「はふ〜〜…シグナムの力加減も絶妙〜〜〜♪」
――――――
Side:アリア
「ぶっちゃけた事言っていいアリア?」
「言わなくて良いわよロッテ、多分私も同じこと考えてるから。」
必要なら手助け…って事で、遠巻きに今回の戦闘見てたんだけど…守護騎士が恐ろしいほど強くなってるわ。
それに、『アノ』プレシア・テスタロッサの娘とその使い魔まで居るなんて予想外よ。
これは、私達が介入する隙間ないんじゃないかしら?
「だよねぇ…けどさ、あの忍者?達は良く分からないから、観察は必須でしょ?」
「そうね…もし彼等がとんでもない敵だったら…」
私達が介入する場面も出てくるかもしれない――のかしら?
本気で介入の必要が無いように思えてきたわ此れ……取り敢えずお父様のところに戻ろう。
現状を報告して、それからお父様が地球に来るための手続きもしないといけないからね。
それにしても、今までとはまるで違う闇の書を取り巻く色んな状況はなんでかしら?
主の違いか、或はあの子こそが真なる闇の書の主なのか……まぁ、一朝一夕で終わる案件でない事だけはハッキリしているわね…
To Be Continued… 
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