Side:なのは
「本当に同じ宿だなんてびっくりなの!」
「うん、私とアリシアも驚いたよ――この街に来てるらしいって事はアルフから聞いてたけど、同じ宿とは思わなかったから…」
えへへ…なんか嬉しいな。
思いがけずフェイトちゃんとアリシアちゃんに出会えるなんてね♪
え〜と…それで、あの黒髪の人がフェイトちゃんとアリシアちゃんのお母さん?
「そうだよ〜〜♪この温泉も、お母さんが福引で当てたんだ〜。」
「ホンマに!?確か温泉旅行って特賞やなかったっけ!?」
「…だって母さんだから…」
…なんとなく今の一言で、2人のお母さんがどんな人か分かった気がするの。
って、シグナム如何したの?フェイトちゃんとアリシアちゃんのお母さん見つめて…
「いえ――彼女から紛れもない『強者』のオーラを感じたのでつい……機会があれば手合せ願いたいと思いまして。」
「にゃはは…気持ちは分かるけど、今は自重してね?シグナムが本気だしたら、この旅館が吹っ飛ぶから…」
「分かっていますよ、主なのは。…ところで、もしよろしければ背中を流しますが?」
ほえ?…うん、其れじゃあお願いしようかな。
「お任せを。」
魔法少女リリカルなのは〜夜天のなのは〜 夜天13
『同盟締結、そして――』
ん〜〜〜、良い気持ち。
シグナムは背中洗うのも上手だね〜〜…こう、強すぎず弱すぎずの絶妙な力加減が素晴らしいの。
「えっと…あの人となのははどんな関係なのかな?
お互いにものすごく信頼しあってるって言うのは私にも分かるんだけど…」
「端的に言えば、騎士とお姫様ね――シグナムはなのはの騎士なのよ。
もっと言うなら、シャマルとヴィータ、今は男湯の方に居るザフィーラもなのはの騎士で、中でもシグナムはなのはへの忠義が一番深いのよ。」
「そうなんだ〜〜〜…お抱えの騎士様が居るなんて、凄いんだねなのはって♪」
ん〜〜〜…まぁ、皆私の大切な家族だしね。
あ、闇の書も温泉堪能してる?
『〜〜♪』
風呂桶の小さな湯船に浸かって……って、闇の書は完全防水加工なんだね…
頭(?)にタオルを乗せて温泉に浸かる魔導書――なんだろう、物凄く不思議で妙な光景の筈なのに違和感を感じないのは…
「良いんじゃねぇか?本人(?)は楽しんでるみてぇだし――タマモと同じレベルだと思えば一応納得できんだろ?」
「其れを言ったらそうなんだけどね…」
タマモも風呂桶の小さな湯船で温泉堪能してるしね〜…何と言うか癒し系なの。
「なのは〜〜、はやてちゃん〜〜皆〜〜、ちょっと来て〜〜。」
お母さん?…如何したの?
あ、フェイトちゃんとアリシアちゃんのお母さんも…
「此方、プレシア・テスタロッサさんとリニス・ランスターさん――フェイトちゃんとアリシアちゃんのお母さんと家庭教師ですって。」
「初めまして、プレシア・テスタロッサよ。娘達と仲良くしてね?」
「リニスと言います…アリシアとフェイトに、こんな友達が出来るとは嬉しい事ですね♪」
プレシアさんとリニスさん…初めまして、高町なのはです。
フェイトちゃんとアリシアちゃんには、前にお世話になりました。
「あら、年の割にしっかりしてるわね?…貴女の教育の賜物かしらね桃子さん?」
「如何かしら?子供は親が思っている以上に、自分で成長してくれるものだから、私の教育云々とは言えないわ。
それに、其れを言うならアリシアちゃんとフェイトちゃんだって確りしてると思うわよ?
特にアリシアちゃんなんて、あんなに小さいのによくやってると思うわ♪」
「あぐ……まぁ、予想はしてたけどね…」
アリシアちゃん?
この反応は…すずかちゃん。
「うん…私達の予想は当たってたみたいだよなのはちゃん――あの、アリシアちゃんの方が『お姉さん』ですよね?」
「!!すずか〜〜!!うわ〜ん、初めて言わなくても分かって貰えた〜〜♪」
やっぱりアリシアちゃんの方がお姉さんだったんだ…所々でフェイトちゃんのフォローって言うか、そう言うのしてたからもしやと思ったんだけどね。
「あ、アリシア…気持ちは分かるけど少し落ち着いて…」
「其れだよフェイト!!」
「へ?」
「なんで最近『お姉ちゃん』て呼んでくれないの〜〜?フェイトがそう呼んでくれれば間違われることもないのに〜〜!」
…そう言えばフェイトちゃんはアリシアちゃんの事を名前で呼んでたね。
ん〜〜〜…フェイトちゃん、やっぱりお姉さんの事は『お姉ちゃん』とか『姉さん』て呼ぶ方が良いと思うよ?
私だってお姉ちゃんの事は『お姉ちゃん』て呼んでるし――
「私もお姉ちゃんの事は『お姉ちゃん』て呼んでるよ?」
「私も無意識的に、美由希さんの事『お姉ちゃん』て呼んで、恭也さんの事『お兄ちゃん』て呼んでまう事があるな〜〜。」
と、言う訳なの。
年が近いからかもしれないけど、お姉さんを呼び捨てにするのはどうかと思うの。
「それは……でも、人前で『お姉ちゃん』て呼ぶの、少し恥ずかしくて…」
「う〜〜…昔は『お姉ちゃん』て、よく懐いてくれたのに〜〜〜!!」
あはははは♪何て言うか、2人とも仲が良いんだね。
ん〜〜〜〜…此れだけだったら予想外の再会があった、楽しい温泉旅行って事になるんだけど…
「中々そうも行かないようなの…」
「うん…アルフから聞いたよ〜〜。この前の忍者の仲間がこの街に来てるって。
って事は、此処でジュエルシードが発動したら、其れとの戦闘になるよね絶対〜〜!」
「叫びたい気持ちは分かるわ!折角の温泉旅行くらい、ゆったりまったり楽しませなさいよ〜〜〜!!!」
アリシアちゃん、アリサちゃん……うん、其れはそうなんだけど反応があったら見逃せないから仕方ないよ。
アレ?そう言えば、この間フェイトちゃん協力関係が如何とか…
「それについては温泉から上がってから、ゆっくり話をしましょうか?少し…聞きたい事もあるしね。」
プレシアさん?はい、分かりました。
何だろう聞きたい事って…?
――――――
Side:すずか
と言う訳で、急遽テスタロッサ家の皆さんも交えて――宴会場借り切っての親睦会兼同盟締結式兼今後の方針会議って事になっちゃった。
恭也さんはちょっと警戒してたけど、敵対の意志はないって言うのが分かったみたい。
グランツ博士は…とっても嬉しそう。
プレシアさんは魔導師としても魔法科学者としても最高レベルってリニスさんが言ってたから、いろいろ聞きたいのかなぁ?
何気にアルフさんとザフィーラさんも狼人間(?)同士で仲は悪くなさそうだし。
基本的には、私達もフェイトちゃん達も『危険なロストロギアを封印回収してる』って言う目的が一致してるから協力って事になったんだけど…
「それでプレシアさん、聞きたい事って何ですか?」
そう、プレシアさんが露天風呂で言ってた『聞きたい事』をまだ聞いてない。
何が聞きたいんだろう?
「なのはちゃんだったわね?貴女の持っている其れ――その魔導書は『闇の書』よね?」
「!!知ってるんですか!?」
「知っているわ――あぁ、知っているからと言ってそれを如何こうする心算はないから安心して?
確認をしたかったのよ…貴女を見れば、自分の欲望のために他者を犠牲にして書を完成させはしない事は分かるわ。
けど、闇の書は『第一級封印指定ロストロギア』と呼ばれて居るロストロギアなのよ――時空管理局に目を付けられたら厄介だわ。」
「「「「時空管理局?」」」」
何ですかそれ?
「私達が昔住んでいた世界の司法組織と警察組織の統合体みたいな巨大組織だよ。
母さんも元々はそこの魔導師で科学者だったんだ。」
「結局は肌に合わなくて退局したけれどね――リンディとレティには色々迷惑をかけてしまったわ…」
「何か複雑そうですね…」
で、その時空管理局が闇の書を狙ってるんですか?
「封印指定のロストロギアとくれば彼等が黙って居る筈がないわ――リンディやレティの派閥が来れば話し合いの余地もあるけれどね。
そうでない連中が来たら面倒極まりないわ……尤も、貴女達なら返り討ちにしてしまいそうだけれど…」
「と言うか返り討ちです!親友に手を出す輩を見過ごせますか!!」
「なのはちゃんとシグナムさん達にちょっかい出すなんてのは、速攻返り討ちで撃滅のSKGよ〜〜ん?」
アミタさんとキリエさんの言う通りです。
なのはちゃんに手は出させません!話を聞かずに何かしてくるようなら、全力で返り討ちにします!
「返り討ちだけじゃ生温いで?…シャマルの一撃でリンカーコアぶっこ抜いて、浄化した後で闇の書の糧にしたるわ。」
「く、黒いよはやてちゃん?」
「あら、じゃあ頑張っちゃおうかしら♪」
「シャマルも乗らないで!?」
あはは…まぁ、つまりこんな感じだから大丈夫だと思います。
でも、其れよりは今――此処でジュエルシードが発動したら如何します?全員で動くとなったら流石に人数が多すぎますよね?
「そうだね…味方は多い方が良いとは言っても、あまり大人数では動きが鈍る。
うん、メンバーを選出した方が良いかもしれないね?」
士郎さん…確かにそうですね。
でもそうなると誰が――
「主なのは、この場所でジュエルシードが発動した際には、私達にお任せいただけませんか?」
「シグナム?」
「折角の楽しい一時に水を差されては――主の至福の時を護るのもまた騎士の務めですので。」
「我等は主をお守りする為に存在している…更に言うなら、相手方の親玉が出て来ていないのに、主が出ていくと言うのは些か気分が良くはない。」
シグナムさん、ザフィーラさん…
「おおっと、待ちなよ!それならアタシも行くよ?
フェイト達の楽しい時間を邪魔されるのはアタシだって嫌だからね!」
「「アルフ!」」
アルフさんも……如何するのなのはちゃん?
「……分かった。ここでジュエルシードが発動したらシグナム達とアルフさんにお願いするの。
でも、あくまで目的は『ジュエルシードの封印と回収』だから、可能な限り無用な戦闘は避けてね?」
「無論その心算です。」
流石はなのはちゃん♪
闇の書の主も板に付いて来たね――そういう事で良いですかプレシアさん?
「えぇ、構わないわ。アルフと闇の書の守護騎士達ならしくじりもないでしょうしね。
ふふ、それじゃあ話は此処まで。ここからは親睦を深めるために楽しみましょうか♪」
「「「「「「「「「賛成〜〜♪」」」」」」」」」」
うん、話は此処まで♪
此処からは親睦会――アリシアちゃんとフェイトちゃんと仲良くなりたいな♪
――――――
Side:シグナム
親睦会は特に問題なく終わったが――矢張りそれだけでは終わらんか。
まったく、何も真夜中に発動することもないだろう…尤も此方の都合などお構いなしなのは仕方ないがな。
ヴィータとシャマルはいざと言うときの守りの為に旅館で待機。
リニスも同様に旅館で待機だ。
発動したジュエルシードは2つ――博士が作ってくれた『簡易封印装置』のおかげで問題なく抑えられたが…
「現れたな?」
「其れを自分達に渡してほしい――できれば無用な戦闘は避けたい。」
「そうは行かぬ…此れは我等の主にとって大切な物なのだ。」
コイツが主なのはと月村が戦ったと言う忍者とやらか。
しかも、屈強な男に身軽そうな少女まで…ふ、奇しくも3vs3の構図か。
「ったく、昼間の忠告は効果なしかぁ?…言ったよね、調子乗ってると『ガブッ』と行くってさ?」
「言うだけ無駄だ…力で押し返すより道はない。」
だな――言って引き下がる連中ではないだろう。
本より、我等とて言葉で言いくるめるよりも、力ずくでお帰りいただく方が得意だろう?
主なのはより『無用な戦闘は避けろ』と言われたが、此処は退けなければ旅館まで追って来かねないのでな――退いてもらうぞ、力ずくで。
「致し方あるまい…初穂、富岳――一戦交える。
初穂は赤毛の獣人を、富岳は褐色肌の獣人を頼む――この剣士とは自分がやる!」
「良いわよ?私の力を見せてやるんだから!」
「っしゃ〜見せてやるぜ!本気ってやつをな!!」
「来るぞ、ザフィーラ、アルフ!!」
「心得た……」
「やるってんなら手加減しないよ!!」
このジュエルシードは渡さん…レヴァンティン!
『委細承知。Nachladen.』
――轟!!
さて、始めようか忍びの者よ!!
我等の主と、その友の障害となる輩だというなら――悪いがレヴァンティンの錆となってもらうぞ!
To Be Continued… 
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