Side:なのは
まさか、ゆりかごの最深部である玉座で待っていたのがヴィヴィオだったとはね……ある程度予想はしていたけど、其れが現実となると、ヤッパリキツイ物が有るかな。
ゆりかごを止める為には、ゆりかごを動かしてる聖王を如何にかしなきゃならないんだからね。
最悪の場合は、ヴィヴィオと戦う事になるかも知れない訳だし。
本音を言うなら、ヴィヴィオとは戦いたくないけど、世界の為には、覚悟を決めないとだよね?
どんな手段で救い出すにしても、此処は全力全壊で行くしかなさそうだよシグナム?
「何を今更……我等の戦は、ドンな状況であっても全力全開が基本でしょう?
まして、我等が主である貴女がそう考えるのならば、守護騎士である我等は其れに従うのみですよ――其れが真の忠義と言うモノでしょう?」
「その忠心は、本当にありがたいね。」
「ふ、お褒めに預かり恐悦至極。」
なら、夜天の主の名にに恥じない仕事をしないと、其れは嘘だよね……だからヴィヴィオの事を、どんな方法を使ってでも玉座から引き剥がしてゆりかごを止める!!
勿論シグナムにも全力でやって貰うよ!!お願いできる?
「其れが貴女の望みならば。
ならば、私も全力を持ってして、事に臨みましょう――夜天の主と筆頭守騎士のコンビの前には敵なしです。」
だね。……ありがとうシグナム、いつも私に付き合ってくれて。
さてヴィヴィオ、先ずは貴女を玉座から取り戻すとしようか?――全力全壊で、持てる全ての力をぶつけるよ!!!
魔法少女リリカルなのは~夜天のなのは~ 夜天129
『ゆりかごの聖王~Vivio~』
とは言え、さて如何したモノだろうね?下手に引き剥がしたら、面倒な事が起こりそうなんだけど……
『聖王女を取り戻してゆりかごを止めるか……悪くない作戦だが、其れは無理だ。』
「……この声は、まさか……!!」
「最高評議会!!」
姿を見せなさい!って、言うだけ無駄だよね。大方、コントロールルームみたいな所で、高みの見物を決め込む心算なんだろうから。
でも、ヴィヴィオを玉座から引き剥がす事では、ゆりかごを止める事は出来ないって言うのは如何言う事?あの位の物を、私とシグナムが壊せないとでも思ってるの?
『いや、闇の書の主と筆頭騎士ならば、ゆりかごの玉座を壊す事など児戯に等しいだろう。
だが、ゆりかごは決戦兵器……聖王女は玉座に座したが最後、玉座に入り込んで来た敵と戦う為以外の事で玉座から離れる事は出来ん――無理に玉座から引き
剥がせば、聖王女は死ぬ。』
「「!!!」」
そんな……!!
其れじゃあヴィヴィオを助ける事は出来ないって言う事!?
『そうなるが……此処まで辿り着いた褒美に、チャンスをくれてやろう。』
「チャンスだと?」
『聖王女は、玉座に侵入して来た敵と戦う為ならば、玉座を離れる事が許されると言っただろう?そうして玉座を離れた聖王女を倒した場合でも、ゆりかごは止まる。
なに、非殺傷設定で戦えば殺してしまう事もあるまい?』
――外道が……ヴィヴィオと私達を戦わせる心算なんだね!?……まぁ良いよ、覚悟は決めて来たから。
でも、もうこれで私は、貴方達に対して雀の涙ほどの慈悲すら与える気が無くなったよ……ヴィヴィオを何とかしてゆりかごを止めたら、次は貴方達の番だからね?
『其れは楽しみだが…果たして彼女に勝てるかな?
さぁ、聖王殿下、ゆりかごに賊が侵入して来ましたよ?此れは倒さねばなりませんなぁ……ゆりかごの玉座に座す者として!!』
――カチリ
「う……うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「「ヴィヴィオ!!」」
な、なに!?何かのスイッチが入る音がした瞬間に、ヴィヴィオから物凄い魔力が……しかも、其れがドンドン強くなって――!!
――シュゥゥゥゥゥゥゥゥ……
「「え?」」
で、魔力が落ち着いたら、其処に居たのはハニーブロンドの髪をサイドテールにした大人の女性……まさか、ヴィヴィオなの!?
『くくく……クハハハハハ!!其れこそがゆりかごの聖王だ!さぁ、敵を殲滅なさってください聖王殿下!!』
「敵……排除する!!」
……如何やら、姿が変わっただけじゃなく、何らかのマインドコントロールをされたか、或は正気を失っちゃったみたいだね――此れはもう、戦って正気を取り戻すしか
なさそうだよ、シグナム。
「やるしかないでしょう。非殺傷設定で、何とか意識を刈り取らねば……」
だね……此れは結構、ハードなミッションかも知れないよ……!
――――――
No Side
そうして始まった戦いは筆舌に尽くし難い、超次元でのバトルが展開されていた。
「ヴィヴィオ、私とシグナムが分からない!?ママ達の事が、分からないの!?」
「違う……お前も、アイツもママなんかじゃないーーー!!
ダメなんだ、敵は殺さないと……全部殺さないと、何も変わる事は出来ないんだーーーー!!喰らえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
「く……凄い威力だけど、重さが足りないわ。」
そのバトルを展開しているのは、なのはとシグナムとヴィヴィオ――養子縁組をしたとは言え、母娘が手加減無用の、ガチの戦いを展開していたって言うのは、取り敢
えず保留しておくとして――最強の母娘が、史上最大の母娘喧嘩をやらかしているのだ。
如何やら、魔力はヴィヴィオの方がなのはよりも多いらしく、最強モードのなのはと互角にやり合ってはいるが、総合力で勝るなのはが、今の所は優勢と言う状態だ。
だが、優勢だからと言って、一瞬たりとも気を抜く事が出来ない空気が漂っている……つまりは、この母娘の直接対決は、史上最強の決戦になるかも知れないのだ。
いや、なるかも知れないではなく、なるだろう。
「ディバイン……バスター!!!」
自分を執拗に追いかけて来る誘導弾に対して、なのはは必殺の直射砲で、その誘導弾を消滅させる。――無論それで済む筈が無く……
「紫電一閃!!」
続いて、シグナムがレヴァンティンを一閃し、カウンター気味の一撃でヴィヴィオを吹き飛ばす!!
戦いが始まってから、あまり動いていなかったシグナムだが、なのはに任せきりにしていた訳ではなく、なのはが直射砲を叩き込むこの瞬間を待っていたのであり、な
のはも、其れを分かっていたから、敢えて砲撃戦には持ち込まず、クロス~ミドルレンジでの格闘&射撃戦を続けていたのだ。
ヴィヴィオに『誘導弾を使わせ、其れを直射砲で打ち消す』為に。
射撃自体は其れほど難しい魔法では無く、発射後の隙も小さいが、己の撃ち出した魔力弾が圧倒的な質量の直射砲撃に飲み込まれたとなれば話は別だろう。
ノーチャージで同威力の砲撃が放てるのなら兎も角、そうでないのなら必然的に回避行動をとる事になる――その回避行動をとった所をシグナムが一閃したのだ。
此れだけのコンビネーション攻撃を、事前の打ち合わせをせずに、互いの思惑を理解し、そして僅かなアイコンタクトのみで成功させてしまうのだから、なのはとシグナ
ムの信頼関係は凄まじいモノだろう。
普通なら此れで終わるのだろうが――
「………」
「シグナムの紫電一閃を真面に喰らったのに無傷……恐ろしいね。」
「えぇ……呆れた頑丈さです。」
粉塵の中から現れたヴィヴィオは何と無傷!
調停者モードのシグナムの一撃が、クリーンヒットしたしたにもかかわらず、ダメージらしいダメージを受けていない所か、バリアジャケットに傷一つ付いていないのだ。
ドレだけの防御力なのかと言いたくなるのも仕方ないだろう。
「よもやヴィヴィオを――聖王女オリヴィエを作り出しただけでなく、聖王の鎧までも再現しているとは、呆れると同時に感心してしまいますよ。」
「聖王の鎧?」
「聖王女オリヴィエが、ゆりかごに登場していた際に纏っていたとされる防護服です。
その鎧は、玉座に侵入して来た敵に討たれる事が無いよう、あらゆる攻撃に耐える事の出来る強度を有していたと言われていますから、並の堅さではありません。」
「成程、其れは厄介だね。
――だったら此処からは、私とシグナムの本来のスタイルで行こうか?レイジングハート!!」
『了解ですMaster!矢張りMasterは、近接戦闘よりも最強の砲撃の方が似合います!!
相手が腐れ外道ならばぶっ殺すと言う所ですが、ヴィヴィオが相手ですので、打ん殴って正気を取り戻させるとしましょう!!Excellion Mode!!』
その防御力の正体は、オリヴィエの最強の防護服『聖王の鎧』――正確に言うならば、その機能を持ったバリアジャケットだった。
流石に其れだけの堅さの相手に対して、これ以上クロスレンジでの戦いは得策ではないと判断したなのはは、すぐさまエクセリオンモードに換装し、
「如何やら出番の様だ……力を借りるぞアギト!」
「おうよ!待ちかねたぜ!!ユニゾン……イン!!」
シグナムもアギトとユニゾンし、その力を更に高める。
その力は凄まじく、なのはの周囲には桜色の魔力が、まるで雷の様にスパークし、シグナムの周囲には真紅の魔力が、紅蓮の炎と共に逆巻いているのだから。
だが――
『準備運動は充分ですかな聖王殿下?……そろそろ本気を出すと致しましょうか?プログラムインストール!!』
此処で、最高評議会が横槍を入れて来た。
コントロールルームから、玉座を通じてヴィヴィオに何かのプログラムをインストールして来たのだ。
「うぅぅ……うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
其れと同時に、ヴィヴィオの魔力が膨れ上がる――其れこそ、今までとは比べ物にならない位に、嘗ての闇の書の意思すら凌駕するほどの凄まじい魔力がだ。
「これは……!!」
「最高評議会……貴様、何をした!!」
『くくく……実に簡単な事さ、彼女に君達のデータをインストールしたのさ。闇の書の主と、筆頭騎士のデータをね。
如何にクローニングしたとは言え、彼女だけでは不完全だったが、不足分を君達のデータで補う事で、嘗ての聖王は完全復活したのだ!否、聖王をも超える、最強
の存在が、此処に誕生したのだよ!!』
その異常な魔力の膨れ上がりの正体は、ヴィヴィオになのはとシグナムのデータがインストールされたからだったのだが、其れは何とも恐ろしい事だろう。
今のヴィヴィオは、普通になのはとシグナムと互角に戦えるだけの力を有していたと言うのに、其処になのはとシグナムの強さが上乗せされたら、ドレだけの戦闘力に
なるのか、とても想像出来ない。
「うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!敵は……敵は倒す!!!」
「「!!!」」
そして、更なる力を得たヴィヴィオは完全に暴走し、なのはを強襲!!
「――!ディバインバスター!!」
「だぁ!!!」
――ガァァァン!!
「嘘!?」
其れに対して、なのはも咄嗟にバスターを放つが、あろう事かヴィヴィオは、その砲撃を片手で弾き飛ばし、其のままなのはに肉薄してボディブローを一閃!!
「がっ!!」
「でぇやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
更に其処から、後ろ回し蹴りを叩き込んでなのはを吹き飛ばす。
そして、其れだけでは終わらず、蹴り終わるが否や、今度はシグナムに向かって一足飛びで距離を詰め、そして鋭い突きを繰り出す。
「く……防御力だけでなく、スピードとパワーも呆れたレベルの高さだな。」
だが、其処は流石のシグナム。レヴァンティンの腹でその突きを受け止めて確りとガードしていた。それも、レヴァンティンとヴィヴィオの拳の一点で拮抗が取れるよう
な、絶妙のバランスを持って。
このバランスが実は重要で、シグナムは下手に退けばヴィヴィオが攻め込んでくるし、ヴィヴィオは無理に押せばシグナムからのカウンターを喰らうと言う状態なのだ。
だが、シグナムがこうした防御をしたのは膠着状態を作り出す為ではない。
「だが、脇ががら空きだ!!」
――バキィ!!
ヴィヴィオの動きを止める事にあったのだ。
この微妙なバランスを保ちつつ、シグナムはヴィヴィオに対して重いミドルキックを叩き込んだのだ。此れは、烈火の将の巧さが出たと言う所だろう。――しかし……
「なに!?」
「………消えろ!」
「のわぁぁあぁぁぁぁ!?」
今のヴィヴィオには、そのミドルキックも大したダメージにはならず、逆に蹴り足を取られ、其のままカウンターのドラゴンスクリューが炸裂し、シグナムを投げ飛ばす!
「吹き飛べ……!!」
そして其れだけではなく、投げ飛ばしたシグナムに対して強烈な飛び蹴りを喰らわせ、吹き飛ばす。
なのはとシグナムのデータを得た、ゆりかごの聖王ヴィヴィオは、誇張でもなんでもなく、文字通りの最強魔導生物となったと言っても過言ではないだろう。
――――――
Side:シグナム
ぐ……かは……はぁ、はぁ……まさか、私となのはのデータを追加されただけで此処まで強くなるとは――ご無事ですか、なのは?
「なんとか……シャレにならないダメージを受けちゃったけどね。」
「其れは、私もですよ。」
よもや、あれほどの力が有るとは完全に予想外でしたからね……しかし、このままではジリ貧は確定ですので、如何にかしなければならないのですが、果たして如何
したモノでしょうか?
「其れを聞く?って言うか、シグナムだって分かってるでしょう?
今の私達で及ばないなら、更に力を高めるだけの事!!其れが最善で最高の策なんだから!!」
「矢張り、それ以外には有りませんか……ならば、行くとしましょうか?でえぇぇやぁぁぁぁぁぁあっぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁ!!!!」
「ドラゴンインストール!!」
――轟!!!
私は調停者モードのレベル2を解放し、なのははドラゴンインストールを使って己の能力を底上げする。
ユニゾン+調停者レベル2の私と、ユニゾン+エクセリオン+ドラゴンインストールのなのはならば、強化されたヴィヴィオとも渡り合える筈――本番は、此処からだ!
行くぞヴィヴィオ!必ずお前を救い出して見せる!!!!――否、絶対に救い出す!!
To Be Continued… 
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