Side:信長
ふむ……どうやら、高町なのはの守護騎士の前に、塵芥未満の愚物が出てきよったようだな?
……ドレだけの力を持って居るかは分からんが、守護騎士達の力を超えている事だけは絶対に有り得ん――ムザムザやられに出て来るとは、真にご苦労な事である。
「如何する兄様?ザフィーラさんに加勢する?」
「いや、必要なかろう市よ。
ワシ等が加勢せずとも、アレは己の力のみで、あの愚物を葬るであろう。寧ろ加勢するなどと言う事は余計な横槍に過ぎぬ。」
故に、ワシ等はワシ等のすべき事をすればよい。
『ギャギャギャギャギャ!!』
「鬱陶しいわ、ガラクタ風情が!!」
――バガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァン!!
と、この様に、ガジェットとか言う機械人形や、最高評議会に属する愚か者達を撃滅してやればよいだけの事よ……あの空飛ぶ艦は、高町なのは達が、必ずや落とすで
あろうからな………だから、邪魔だと言っておろうが!!
――ドガァァァァァァァァァァァァァァァァン!!
「うわ……兄様超強い。」
「流石はお頭、見事なモノです。」
であるか。
だが、此れ位は普通よ――戦は此れからが本番ぞ!気を抜かずに行くぞ!!
魔法少女リリカルなのは~夜天のなのは~ 夜天128
『夜天の犬狼~Zafila~』
No Side
睨み合うザフィーラと、機械の身体を得た最高評議会の最高幹部の1人。
最高評議会の1人が、ボクシングの様な構えを取っているのに対し、ザフィーラは、スタンスを大きく取り、左手を上に、右手を下にした独特の構え『天地上下の構え』を
取っている。
一見すると隙だらけに見える天地上下の構えだが、実はあらゆる攻撃に対してカウンターを放つ事が出来る構えであると同時に、その独特の構えから己の技の出処を
分かりにくくすると言う効果もある。
ザフィーラ自身は、知っていてこの構えを取った訳ではないのだが、戦いの中で、自然とこの構えを会得するに至ったのだから、恐るべき事だろう。
実際に、天地上下の構えを取っているザフィーラの威圧感は半端ではなく、その全身から練り込まれた魔力がオーラとして立ち上っているのだから、凄まじい事この上
無いのは間違いない。
其れを見て取れる――否、機械の身体のカメラアイだからこそ余計に正確に観測できるから、最高評議会も手を出す事が出来なかったのだ。
下手に手を出したら、手痛いカウンターを喰らう事が予測できたから、出来てしまったから。
だが――
《何を恐れる事が有る?……奴は、以前私に負けた負け犬だ。
溢れ出る魔力は凄まじいが、外に出す魔力を大きく見せたハッタリの可能性も否定できん……ならばおそるるに足らん!叩きのめしてくれる!!》
一度ザフィーラを倒したと言う事実が、思考能力を鈍らせていた。
その鈍った思考能力は、ザフィーラから溢れ出る魔力を、こけおどしのハッタリと判断したのだ――其れが、命取りになるとは夢にも思わずに。
「行くぞ、犬風情が!!」
その判断が後押ししたのか、先に動いたのは最高評議会(以下サイボーグと表記)。機械化された身体の機能を存分に発揮し、一足飛びで距離を詰め、殴りに掛かる。
――バキィ!!
が、その拳がザフィーラに届く前に、ザフィーラの、まるで大砲の様な前蹴りがジャストタイミングのカウンターで突き刺さり、サイボーグの身体を文字通り吹き飛ばした。
正にお手本のような見事なカウンターの一撃!生身の人間が相手であったならば、この一撃で戦闘不能だっただろう。――が、相手は脳以外の全てが機械化され、更
には、痛みも何も感じないサイボーグだ。
「やるな、犬風情が……」
「犬ではなく狼だ。……その機械の身体に搭載された集音機能は不良品か?」
すぐさま起き上がり、ザフィーラを睨み、ザフィーラも其れに対して、最小限の言葉で静かに挑発する。
戦闘力が高いだけではなく、こう言った心理的駆け引きのような事も出来ると言うのが、守護騎士の強みでもあるのだろう……まぁ、ザフィーラは滅多にしないのだが。
それはさておき、今のカウンターの一撃で、サイボーグが警戒したかと言えば其れは否。
今のカウンターは只のまぐれ。加速をもっと速くすれば、カウンターなど叩き込まれる事は無いと考え、身体のギアを最大レベルにして、再度ザフィーラを強襲!!
――ガスゥ!!
するが、今度は略ノーモーションから繰り出された正拳突きで再び吹き飛ばされる!だが、直ぐ起き上がり三度突撃!!!――するも今度は上からの手刀で地面に叩
き付けられ、更にダウンしたところを蹴り飛ばされて、三度ビルの壁とハローコンニチワ。
僅か三度の攻防で、完全にザフィーラの方がサイボーグを圧倒したのである。
「ぐぬぅ……何故届かない!!この私のスピードは、常人の目で追える物ではない筈だ。」
「そんな事も分からないか?愚かなモノだ。
そのスピードは確かに大したものだが、テスタロッサ姉妹の本気には遠く及ばぬ上に、俺は狼故に、常人より遥かに聴覚と動体視力が鋭い。つまり、其の2つを駆使
すれば、お前の動きを見切ってカウンターを決める等は、児戯に等しい。」
当然、サイボーグは其れが気に入らないが、ザフィーラからすればこの程度は雑作も無い事。
六課本部での敗北は、仕掛けられていた爆弾が作動した事と、ヴィヴィオが人質に取られていたが故の事――正面から戦えば、負ける相手ではなかったのである。
だが、サイボーグとて、無駄に長生きして来た訳ではない。
「確実に決まるカウンターと言う訳か……ならば、格闘戦を行わなければいいだけの事だ。」
格闘戦では不利と判断するや否や、両腕の肘から下をガトリングガンに変形させて来た。其れも、魔力弾を撃つ為の物ではなく、実弾を発射する質量兵器をだ。
要するに、格闘戦でダメならミ中~遠距離で、カウンター出来ない攻撃で倒してしまえと言う事なのだろう……だからと言って両腕にガトリング装備は如何かと思うが。
「盾の守護獣が、質量兵器に対してどこまで耐えられるか見せて貰おうか?……ハチの巣にしてくれる!!」
言うが早いか、ガトリングのドラム砲身が凄まじい勢いで回転し、秒間十数発と言う凄まじい数の弾丸を吐きだす。しかも其れが両腕からだ。
――ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ
ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ
ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ!
吐きだされる弾丸は、宛ら台風の豪雨の如き勢いでザフィーラに叩き付けられていく――並の人間ならば、最初の数秒で絶命し、今頃は挽肉になっていて然りだろう。
全身に鉄の弾を目一杯受けて生きていられるものなどいないのだから。
「ククク……流石に死んだか?」
此れだけやれば充分とでも思ったのか、サイボーグは銃撃を止め、立ち上る粉塵を見やるが、その顔には勝利を確信した笑みが浮かんでいた。
如何にたての守護獣と言えども、殺傷力の極めて高い近代兵器の攻撃を目一杯受ければ只では済まない。仮に生きていたとしても、瀕死ならば倒すのは容易と、そう
考えて居るのだろう。
だが、その考えは強制的に中断される事となった。
――バキィ!!!
粉塵の中から放たれた拳によって。
「!!ば、馬鹿な!!貴様、如何して生きている!!アレだけの銃弾を喰らったら、挽肉になっていてもおかしくない筈だ!!」
「盾の守護獣の二つ名を侮らないでもらおうか?
俺は、千の刃と万の矢をこの身に受けても倒れぬ守護獣……あの程度の鉄礫の攻撃など、蚊に刺された程度にも感じぬ!」
その拳を放ったのはザフィーラ。ガトリングの絨毯連射攻撃を受けても、その身が亡びる事は無く、バッチリとサイボーグに一撃を決めてくれたのだ。
尤も、アレだけの攻撃を受けたのだから無傷とは行かず、騎士服は所々弾け飛び、身体も数カ所から血が出ているが、アレだけの銃撃を受けて、これで済んだのだか
ら、ザフィーラの『盾の守護獣』としての力は、最早言うまでもないだろう。
「ソロソロ覚悟を決めて、己の生に終止符を打て……生き汚いにも程がある。」
「黙れ!我等は永遠の命を得て、この世界を未来永劫統治し支配するのだ!!――我等は、選ばれた存在なのだからな!!」
「……言葉は通じぬか……ならば、身体に分からせるしかない様だな。」
もう終わりにしろと言うザフィーラに対して、サイボーグは、まだ下らない持論を並べ立てる。誇大妄想と、利己主義の集大成とも言える、醜い欲望に彩られた持論をだ。
だが、其れは同時に、ザフィーラの中に有った、最高評議会に対する僅かばかりの情けを消し去るには充分な事だった。
「終わる気が無いのならば、俺がこの手で強制的に幕を下ろしてやろう!」
「!!?」
次の瞬間、サイボーグに強烈なボディブローが突き刺さり、更に其処からアッパーカットが炸裂し、強烈な横蹴りで蹴り飛ばされる。ザフィーラが攻勢に出て来たのだ。
天地上下の構えは、その独特の型からカウンターに特化した構えと誤解されがちだが、前述したように、技の出処を分かりにくくすると言う性質も持って居る為、実は攻
撃面に関しても優秀な構えであるのだ。
「死ぬか!消えるか!土下座してでも生き延びるのか!」
「ヒギ!ガバ!!ゲピィィィィィィィ!!!!」
其れを証明するかの如く、ザフィーラは決して素早くないが、しかし的確な連続攻撃でサイボーグを攻めたて、その機械の身体に着実にダメージを叩き込んでいく。
最早、両腕のガトリングは使い物にならないだろう。
天地上下の構えから繰り出される、軌道の読めない拳と蹴りと手刀は、サイボーグの天敵であったようだ。
「デエリャァ……モンゴリアン!!!」
そのコンボの締めにモンゴリアンチョップを叩き込み…
「消えろ……震空餓狼拳!!!」
――キィィィィィン……ドガバァァァアッァアァァァァァァァァァァァァァァァァアァァァァァァアァァァァァァァァァァァァン!!!
耐性を崩した所に、必殺の直射砲撃をブチかます!!
如何に機械の頑丈な身体を有しているとは言え、この直射砲撃を喰らったら無事では済まない――ならば、これで終いになったのだろうか?
「やるな、犬風情が…」
そうでは無い。
砲撃を喰らったサイボーグは、その身体を変形させて巨大化し、最早人とは呼べない異形の姿となって、粉塵の中からザフィーラの前に姿を現したのだ……恐るべし。
加えて右手には長大な近接戦闘用のブレードを装備し、左手は腕其の物が、超連射可能のアサルトライフルとなっているのである。全身此れ凶器とは、この事だろう。
「死ね!夜天の飼い犬が!!」
「だが断る!!」
余程、悔しかったのだろう。
サイボーグは即左腕のアサルトライフルを起動するが、ガトリングすら耐えたザフィーラには通じる筈もなく、逆にアサルトライフルの銃身を叩き折られて使用不能に!!
其れだけでなく、右腕のブレードも……
「ダァリャァァァァァァァァァァァ!!」
――バキィィィィ!!
牙獣走破で蹴り折られ、サイボーグは、持てる武器の全てを失ったのだった。
最早こうなってはどうしようもないだろうが……だからと言って、ザフィーラはこれで終わりにする心算など毛頭なかった。――相手は、夜天に刃向った愚物なのだから。
「これで終わりにしよう。」
「!!」
サイボーグの武装を破壊したザフィーラは、サイボーグの肩に降り立ち、そしてその延髄部分に強烈な拳打を炸裂させる!
流石に、一撃では割れないが、一発でダメなら連続攻撃だと言わんばかりに、ザフィーラは延髄部分に拳と肘を落としていく。此処の装甲を打ち破る為に!!
勿論、この装甲を割られる訳には行かないので、サイボーグも暴れまくるが、その程度の振動では、ザフィーラを振り落すには至らなかった。
「ダァァアァァァァァァァ!!!!」
――バキィィィィィィ!!!
そして、遂にザフィーラの攻撃が、サイボーグの装甲を叩き割った。
否、只叩き割っただけでなく、その装甲の隙間にザフィーラは腕を突っ込み……
「ぬぅ……ダァリャァァァァァァァァァァアッァァアァァァァァッァァアッァァ!!!」
――ズルゥ!!!
サイボーグの中に有った、最高評議会の脳髄を、神経系統の電極が繋がったままの状態で引き摺り出したのだ!!サイボーグの最大の弱点であるとも言える脳を!
「貴様まさか……止めろ!止めてくれぇ!!!」
「敵の言葉など、聞く耳持たぬ!!」
当然、サイボーグは命乞いをするが、ザフィーラが其れを聞き入れる筈もない。
――グシャァァァアァァァァァァアッァァァァァァァァァァァァ!!!
手にした脳髄を地面に置くと、其れを力一杯殴り付けて、文字通りに殴り潰す!!
一発、二発、三発と、脳髄を殴り潰し、二度と復活できないように、磨り潰す!!徹底的に、ぶち殺す!!――その結果は言うまでもない事だろう。
司令塔である脳が機能しなくなれば、サイボーグは活動する事が出来ない。そして其れは同時にサイボーグの死を意味する。
ザフィーラは、見事盾の守護獣としての使命を果たしたのだった。
――――――
Side:ザフィーラ
蓋を開けてみれば、最高評議会の連中もこの程度だったか……ならば、我等が負ける事など有り得んだろう。ゆりかごなる超兵器も、我等が主とシグナムで如何にか
成る筈だ。
地上は我等にお任せを!!
貴女達は、自分の娘を取り返してきてください――我が主と、守護騎士筆頭の剣騎士よ、ヴィヴィオの事は任せたぞ!!
To Be Continued… 
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