Side:シャマル


「でぇぇりゃぁぁぁあ!!どぉりゃぁぁぁぁあっぁぁあっぁぁぁぁあっぁ!!!」


――バガァァァァッァァァァァッァン!!ドッガァァァァァァァァァァァァァァ!!!!



ザフィーラったら、やる気出し過ぎじゃないかしら?
確かになのはちゃんのコピーが徒党を組んで現れたって言うのは、夜天の騎士として見過ごせるものじゃないけど、其処までマジになる物じゃないないんじゃないかしら?



「我等の主は、高町なのは只1人!!
 其れを模した劣化コピーなど、抹殺以外の選択肢は有り得ぬ――何よりもコイツ等は我等が主を貶めていると言っても過言ではないからな……故に、潰すだけだ!!」



言われてみれば、確かに其の通りね。
なのはちゃんの姿を模した劣化コピーの軍団て言うのは見ていて気分の良い物じゃないから、早急に退場して貰った方が良いと思っていたくらいですもの。

其れ以前に、夜天の主であるなのはちゃんの複製なんて言うのは絶対に認められない劣化コピー以下の愚物よね――精々、私達の手で刈り取ってあげる心算よ。
まぁ、先ずは大量に現れた劣化コピーを蹴散らして、ヴィヴィオちゃんの安全を確保するのが最優先ね。

水と鋼鉄の織りなす絶対防御の布陣を崩せる自信があるなら掛かってきなさいな――私とザフィーラが、其れを正面から粉砕してあげるから!!

夜天の守護騎士の力を、貴方達に見せてあげるわ!!













魔法少女リリカルなのは~夜天のなのは~  夜天123
『Sechs Abteilungen der Zerstorung』












Side:ザフィーラ

流石に主なのはをベースにしてあるだけあって、現れた魔導師の力は侮れない――其れこそ、砲撃能力で言うならば主なのはに勝るとも劣らないレベルと言えるだろう。
故に真面にやり合ってもらちが明かんだろうな……

ならば此処で一気に攻め込むべきだ!!
吶喊は諸刃の刃ではあるが、其れだけに的確に起動した際には無類の強さを誇る――ならば此処は攻撃あるのみ!!全戦力を投入したとて問題は無い筈だ!!



「死ね……」

「悪いがお断りだ……死ぬのならば貴様一人でやっていろ!!」

まぁ、劣化コピーは此処で退場願うがな!!
我等守護騎士の絶対主君である高町なのはの劣化コピーなど、視界に入るだけで不快な事極まりない故に、徹底的に破壊させて貰う!恨むなら、想像主を恨め!!

「でやぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁっぁぁあっぁぁぁ!!」

「!!!」



――ドガァァァァァァァァッァァァァァァッァァァン!!!



「そんな馬鹿な……私はAAAの筈なのに……」

「数値化された値などと言うモノは、所詮一つの物差しに過ぎん。私もランクで言うならばAAAだが、お前達とは此処までの差があるのだからな。
 何よりも、戦闘能力などと言うモノは戦いに応じて幾らでも変化させる事ができるのだ――尤も、最初から固定された能力を植え付けられた、劣化コピーには無理な芸当
 なのは間違いないだろうが……」

「馬鹿にするな!私達は、全員が高町なのはだ!お前なんかに負ける筈がない!!」

「そうだ、如何に闇の書の守護騎士と言えど、守護獣と癒し手だけならば恐れる相手じゃない――一斉砲撃で葬ってやるの!!」



――キュゴォォォォォォォォォォォォォ………



む……遂に来るか、複数人での直射砲撃が。
主の砲撃と比べれば大きく劣るだろうが、其れでもAAAの魔導師10数人で放つ直射砲の破壊力は馬鹿に出来んか……シャマルよ、結界で六課本部が吹き飛ばされぬ
ようにしておいてくれ、私はアレを迎撃する!



「了解!!
 なのはちゃんのコピーは、見た目はなのはちゃんだけどなのはちゃんじゃないから、なのはちゃんを超える事は絶対に出来ないって言う事を教えてあげて頂戴!!」

「……こんがらがりそうなモノ言いだが、承知した。」

では行くぞ………ムゥゥゥゥゥゥゥゥゥン!!!



「此れで消し去ってやる!!行くよ……せーの!!」

「「「「「「「「「「「「「「ディバインバスター!!!」」」」」」」」」」」」」」



――ドガァァァァァァァッァアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァン!!!



成程、見た目は確かに主の必殺砲撃と遜色ないが、魂の篭らぬ攻撃など、盾の守護獣には通じぬ!!
寧ろその程度の砲撃など、押し返してくれる!!

「ムオォォオォォォォォ……震空ぅぅぅ……餓狼拳!!



――キュゴォォォォォォォォォォォ……ドッガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァアァァァァン!!!



「ザフィーラ、何時の間に直射砲撃を覚えたの!?っていうか、此れなんて言うか○はめ波?」



近接格闘だけでは戦術の幅が狭くなるので、主に御教授願ってな。
私は本来格闘型故に、習得するのに苦労はしたが、苦労しただけの価値は有る!主には及ばなくとも、この劣化コピーの砲撃に押し負ける程、柔な砲撃ではない!!

我が魂よ、偽物の砲撃を貫けぇ!!



――ゴォォォォォォォォォォォォォォォォ!!



「そんな……私達が圧し負けるなんて!!」

「そんな、そんな事って……そんな馬鹿な事が有る筈が――!!」

「此れが守護騎士の力――!!」



――ゴガバゴォォオォォオォォォッォォォォォォォォォォォォォォォン!!!



「「「「「「「「「「「「「「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」」」」」」」」」」」」」

「護る為の此の拳だ、魂なき劣化コピー如きには負けはせぬ!」

主と同じ姿の者を倒すと言うのは良い気分ではないが、其れ以上に劣化コピーが存在しているという事自体が業腹モノだからな……狩ってやむなしと言うモノだろう。
しかし、六課本部を攻めるにしては、些か戦力が低くはないか?

此処の護りが私とシャマルだけだと言うのを知っていたにしても、劣化コピーが10数体程度では相手にもならぬ……相手が其れすら分からぬ阿呆である可能性も否定は
出来ないが、六課を本気で潰しにかかって来たのだったら、お粗末な戦力としか言えん。

其れこそ陽動の為の咬ませ犬とも取れるが……




「きゃーーーーーーーーーーーーーー!!!」

「「!!!」」


今の声はヴィヴィオ!?
まさか、敵の狙いは六課の壊滅ではなくヴィヴィオだったのか!?……だとしたら、完全に仕掛けに乗せられた形だが、ヴィヴィオは渡さぬ!!
我等の主と、シグナムが保護を決めた幼子をミスミス、渡してなるモノか!!――我が身に変えても、その身は護る!!護って見せる!!行くぞシャマル!!



「えぇ、行きましょう!ヴィヴィオちゃんは渡さないわ!!」



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・

・・・・・・

・・・



そして到着した部屋では、異形の存在が、今正にヴィヴィオを連れ去ろうとしている所だった……間一髪間に合ったと言う所か。あと数秒遅れてたら、間に合わなかった。
しかし、お前は何者だ?……いや、何者でも構わぬが、ヴィヴィオを放して貰おうか?



「そう言われて、放すと思うか?」

「元より期待はしていない――なれば力尽くで奪還するのみ!!」

待っていろヴィヴィオよ、直ぐに助け出してやろう!
主なのはに此方を任された以上、お前が攫われたなどと言う事になったら、顔向けできんからな――私は負けぬ!!



「ザフィーラ!シャマル先生!!」

「待っててねヴィヴィオちゃん、直ぐに助けてあげるから!!」

「この外道は、我が拳が粉砕してくれる!!」

此の一撃沈むが良い!ぬおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ……牙獣裂破ぁぁぁぁ!!!!



――ドス!ガス!!バガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァン!!!



「……これは、中々に良い一撃だ。」

「!?」

馬鹿な……私の牙獣裂破を真面に受けて無傷だと!?
アレは確実に相手を戦闘不能に追い込める技だと言うのに、其れを喰らってピンピンしているとは、コイツは不死身だとでも言うのか!?――だとしたら厄介極まりない。

だが、絶対無敵の存在など有り得ぬ!!
格闘がダメなのならば、直接リンカーコアを叩けばいいだけの事――其れはシャマルの得意分野だからな。



「え?……う、嘘!そんな事ってあるの!?」

「如何したシャマルよ?」

「無い……無いのよアイツにはリンカーコアが!!
 あれほどの力を持って居るのにリンカーコアが無いって、そんなのは有り得ない……何のよアレは!!」



リンカーコアが無いだと!?まさか、魔導に関わる者でそんな事が有るのか!?
目の前のコイツからは、間違いなく魔力を感じるにも拘らず、リンカーコアが存在しないなどと……悪い夢としか思えない事だが、シャマルが嘘を吐くとも思えぬ故に、真実
なのだろう……何者なのだ、お前は?



「言う必要はないと言いたい所だが、冥土の土産に教えてやろう。
 私は最高評議会のトップを務めていた1人だよ――延命処置を施していた脳髄が、機械で出来た肉体を得たと言えば分かり易いかな?」



何だと!?……脳髄を機械で出来た身体に移植したと言うのか……おぞましい事この上ない事だが、其れならばリンカーコアが存在しないのも納得できるか。
生身でないのならば、其処にリンカーコアが存在してる筈がないからな。――尤も、其れで退くかと言われれば其れは否だがな。

其れに、脳髄を機械の身体に移植したと言うのならば、身体を破壊すれば、脳髄とて生きる事は出来ぬはずだからな……その身体を破壊するだけの事だ!!



「確かに身体が破壊されてしまえば、私は生きる事が出来ないが、君達に私は破壊できんよ――死にはしないだろうが、君達は此処でリタイアなのだからね。」

「「?」」


如何言う事だ?



「こう言う事だ――ポチ!……六課本部の地下に、超強力な魔力爆弾を仕掛け、今それを起動した。
 殺傷能力は並程度だが、その爆発を至近距離で喰らって果たして無事でいられるか、実に楽しみだ…精々、足掻くと良い――そして、その後に絶望に落ちるが良い。」



貴様……ヴィヴィオーーーー!!!



「ザフィーラ!!」


「残念だが、此れでゲームオーバーだ!!」



――ドガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァン!!!



むおわぁぁ!?
此れは……この衝撃は防ぎきれぬ……こんな……こんな事になってしまうとは……申し訳ありません、我が主よ――








――――――








Side:なのは


何となく嫌な予感がしたから六課本部に戻って来たんだけど……これは、嫌な予感が的中したとしか言いようがないの―――!
六課の本部は略全壊して、ザフィーラとシャマルが重傷で、更にはヴィヴィオも攫われてしまった……予想していた中でも最悪の選択肢が選ばれてしまった感じなの……



「も、申し訳ありません主……六課を護る事が出来ずに、ヴィヴィオまで攫われてしまいました……守護獣失格ですね。」

「そんな事ないよザフィーラ!!ザフィーラもシャマルも、最後まで六課本部とヴィヴィオを護って戦ってくれた――だから、守護獣失格だなんて言わないで!」

この結果はザフィーラのせいでもシャマルのせいでもないの!――全ての責任は、最高評議会の思惑を読み違えた私にある……最高評議会の狙いがヴィヴィオである
事を看破できていたなら、この結果は無かったかもだからね。

私の甘さが、ザフィーラとシャマルに重傷を負わせ、ヴィヴィオを奪われる結果になった――後悔してもしきれないよ。



「自分を責めないで下さいなのは。」

「へ?シグナム…?」

「貴女が己を責める気持ちが分からないではありませんが、まだ何も終わっていないのですから、自身を責めるのは早急でしょう?
 ザフィーラとシャマルは治療を施せば戦線復帰も可能でしょうし、ヴィヴィオも攫われとは言え死した訳ではないのですから、奪われたのなら取り返せば良いだけの事。
 何よりも、私と貴女が健在なのですから、相手が何であっても最終的に負ける事は無いでしょう?……違いますか?」



それは……確かにその通りだねシグナム。
其れ以前に、私は不撓不屈の夜天の主――どんな事が有っても絶対に折れない!!


ありがとうシグナム……危うく諦めちゃう所だったよ。
私は、絶対に自分からは膝を折らない!!不撓不屈の夜天の主は、絶対無敵にして最強の存在なんだから、どんな逆境でも絶対に諦めない!寧ろ、此処からが本番!

随分と派手にやらかしてくれたみたいだけど、この借りは万倍にして返すよ、最高評議会!!

夜天の主たる私に、牙を剥いたその報いは受けて貰う……そして後悔すると良いの、自分が一体誰に喧嘩を売ってしまったのかって言う事をね――!!








――――――








Side:市


――ブツン



此れは……下駄の鼻緒が切れるとは、何とも不吉な予感がするわね?
なのはさん達がやられるとは思わないけど、なのはさん達が健在であっても、何か良くない事が起きると言う暗示なのかな?…だとしたら、用心しておいた方が良さそう。

だけど、ドレだけ用心しても、きっと動乱が起こるのは避けれないとおもうわ。


兄様……如何やらこの時代でも、戦国の世以上に凄まじい覇権争いが起きているのかもしれないよ。

でも、その覇権を手にするのはなのはさん以外には有り得ないと思う――兄様同様に、なのはさんもまた、生まれながらの天下人なんだから。
だったら私は、なのはさんの友人として尽力するだけの事……再び激しい戦いの中にその身を置く事になろうとも、動乱の世、渡って見せる。皆の為にも!!













 To Be Continued…