Side:スカリッティ


此れは此れは……まさか、なのは君の9999体目のクローンを名乗る魔導師が現れるとは――なのは君がベースである事を考えると、劣化コピーであっても侮れない力
を持って居る可能性が高いから、彼女の戦闘力は数値通りだと思わない方が良いだろうね。

だが、其れだけの存在が、自ら現れたと言うのは私にとっても嬉しい誤算だった――このどさくさに紛れて物資の調達も容易になるだろうからねぇ?
兎に今の私達は、夜天の主のサポートが最大の仕事な訳だから、確りやってくれたまえ!!



「言われるまでもないわよパパ!!
 あまつさえ、なのはお嬢様とは似ても似つかない、9999体目のクローン人間……そんなモノが存在してるだけで、撃滅上等ですわーーーー!!」

「……我が妹乍ら、精神病院に入れた方が良いんじゃないかって、最近割と考えてしまいますね。」



うむ……クアットロの謎テンションに付いて行く事は出来ないからな。


しかし、N9999とやらも、馬鹿な喧嘩を吹っかけたモノだね――如何足掻いたところで、劣化コピー如きが彼女に勝つ事は出来ないと言うのに……実に滑稽だよ。


尤も、この程度の雑魚は君の敵ではないだろう?
己の汚点を消す意味も兼ねて、思い切りやってくれたまえ!!


あぁ、其れとウーノ、トーレから送ってこられた、音声データを、あらゆる次元に向けて発信してくれ、此の音声データは、何にも勝る絶対的な証拠になるだろうからね♪


愚かなモノだな最高評議会――君達は、自ら破滅を導く核のボタンを、力一杯押し込んでしまったのだ。精々、終焉が訪れる時を楽しみに待って居たまえ。













魔法少女リリカルなのは~夜天のなのは~  夜天121
『Wahnsinn-Macht:N9999』












Side:なのは


私の9999体目のクローンだと言う『N9999』……何が何でも私と戦いたいみたいだから、相手にはなってあげるの。

そう言う訳ですので、グルムはユニゾンアウト。信長さんも他の戦場に行って貰って構いませんか?――この程度なら、私1人で充分過ぎますから。負けませんからね。



「お主がそう言い切るとは……ならば、楽しみにしておこう。」

「負けないで下さい、マイスターなのは!!」



大丈夫だよグルム、貴女のマイスターは、何時だって無敵にして最強なんだから、信じて待って居てね?
其れから信長さん、グルムや皆の事をお願いします。



「ウム……了解した!!」

「分かったです!!」



お願いね。――さてと、それじゃあ始めようかN9999!!



「テメェ……ユニゾンアウトをした挙げ句に、あの黒獅子とも離れるとは、舐めてるのか!?」

「まさか、そんな事は無いよ?勝負は何時だって全力全壊だからね――分かり易く言うなら、条件を対等にしたって言うのか一番適当なんじゃないかな?
 此れで私も貴女も素の状態な訳だから条件は対等でしょ?――だけど、その上で敢えて言うの……貴女如きじゃ、私の敵にもならないの!私と貴女じゃ桁が違うよ。」

「私を馬鹿にするんじゃねぇ!!
 其処まで死にたいなら、お望み通りぶっ殺してやるよ高町ィ!!割れろぉ!!!



――ズバァ!!!



バスター!!

『死ねや、デコッパチが。』



――ドガァァァァン!!!



む、私のバスターに撃ち負けないとは、口だけじゃあないみたいだね?しかも、砲撃じゃなくて、今使って来たのは、フェイトが得意とする『魔力斬撃弾』みたいな物だし。
砲撃で互角なら兎も角、魔力弾の一種に分類される魔力斬撃弾で、砲撃と互角って言うのは相当なモノだね。

劣化してるとは言え、曲がりなりにも私の遺伝子のコピーであるって言う所かな。



「必殺の砲撃はその程度かよ?やっぱり私の方が強いんじゃねぇのか?
 確かに、テメェは強いだろうが、こっちはクローニングされる段階で、大きく能力を強化されてるんだぜ?オリジナルがコピーより上だなんてのは、所詮幻想なんだよ!」

「……弱い犬ほどよく吠えるって言うけど、貴女を見ていると正にその通りだと思うよ。
 其れ以前に、敵前でベラベラと喋るのは三流の証――一流の使い手は、多くは語らずに、言うべき事は己の攻撃に乗せるモノだよ。そんな事も知らないのかな?」

「てんめぇぇぇ……煩い、消えろぉぉぉぉぉぉぉ!!!



――ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!!



おぉっと、今度は誘導弾だね。
数の最大数では私よりも上みたいだけど、何て言うか制御が甘いなぁ?敵の密集地で使えば、其れなりの効果があるかも知れないけど、一対一の戦いに於いては、こ
の程度の弾幕攻撃なんて脅威じゃないよ?

其れこそシグナムだったら、全弾を陣風で叩き落すだろうからね。――なんて言うか迎撃する気にもならないの。
軌道も稚拙だから、避けるのに難は無いしね。



「何だぁ?避けるので精一杯か?偉そうな事言ってくれた割に、弱いじゃねぇか!!
 此れで分かっただろ、私の方がテメェより何倍も強いんだって事が!!だからよぉ……テメェも逝っちまえ!!!



砲撃……私の代名詞とも言える攻撃だね。
威力に関しては申し分ないけど――その威力は、9年前の私の砲撃レベルだよ?今の私には、全然通用しないの!!!



――バガァァァァァァァァァン!!!



「!?……んな……そんな馬鹿な!!そんな馬鹿なぁ!!
 私の砲撃を、素手で、其れも左手一本で弾き飛ばしただとぉ!?そんな馬鹿な……何かの間違いだぁ!!!」

「間違いじゃなくて、此れが現実だよN9999。
 貴女は確かに弱くはないけど、貴女の攻撃は私が片手で弾き飛ばせる程度の軽いモノなんだよ、破壊力は確かに凄いけどね。」

だけど、幾ら破壊力だけ高くても、其処に心が籠って居ない攻撃って言うのは凄く軽くて安っぽいモノなんだよ。だから、片手で余裕で対処できる訳なの。
そして、今の攻撃で確信したよN9999。

貴女は確かに私のコピーだけど、その戦闘データは魔法と出会った事の私――射撃と砲撃に頼り、クロスレンジ戦闘がザルだった頃の私だって言う事がね。
自分の事は自分が一番知ってるから、貴女の攻略法はもう見えた!!!レイジングハート!!



『了解ですMaster.ベルセルクモードを起動します。』



ベルセルクモード……バリアジャケットのデザインをより動きやすい形状(StSでのバリアジャケットみたいな感じ)に変更し、メイン武器をシュベルトクロイツにして、レイジン
グハートを、盾の形状に変化させた、クロスレンジ戦闘用のスタイル!!

さぁ、行くよ!!



――ズガァァァァァァァァァァ!!!



「!?
 く、クロスレンジだとぉ!?馬鹿な、お前は砲撃型でクロスレンジの戦闘は大の苦手だったはずだ!!其れなのに何で、クロスレンジでの戦闘が出来る!!!」

「一体何年前の話をしてるのかな?
 確かに昔の私はクロスレンジを苦手にしていたけど、苦手を苦手のままにしておくのは良くないから、お兄ちゃんとお姉ちゃんから剣術を教えて貰ってたんだよ。
 そのお蔭で、一流の使い手には勝てないけど、並以上のクロスレンジ戦闘が出来るようになった――そして、シュベルトクロイツが私の剣となるからね!!」

故に、此処からはずっと私のターンなの!!









――――――








No Side


なのはがクロスレンジ用のスタイルになってからは、文字通りのワンサイドゲームの様相を呈してきていた。



「クソがぁ!!!消えろぉ!!!」

「遅いよ!!」



如何にN9999が激しい攻撃を放とうとも、なのはは其れを見切り、そしてシュベルトクロイツでの強烈な一撃をカウンター気味に叩き込み、そのままクロスレンジの戦闘に
半ば強引に移行して、砲撃射撃魔導師の弱点を徹底的に突いた戦いをしていた。



「舐めんなぁ!!全部消えちまぇ!!!」

「其れも無駄!!」




時折、N9999がクロスレンジでも使える魔法攻撃を発動するも、その攻撃は盾状態のレイジングハートが完全に防ぎ、なのはへのダメージは完全にシャットダウンだ。
そして、其れのみならず――



「所詮はこの程度なの?……退屈しのぎにもならないの。――だから此れで、遊びは終わりだ!!」

「!!」



一種の終焉宣言を下したのち、なのははフラッシュムーブでN9999に肉薄し、其処から目にも留まらぬシュベルトクロイツでの連続攻撃を敢行!!
袈裟斬り→払い斬り→逆袈裟二連斬→大回転二連斬→連続突き→斬り上げ→斬り払いのコンボをブチかますと、吹き飛んだN9999に対してダッシュエルボーをブチかま
し、そのまま胸倉を掴んで――



燃えろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!



――バガァァアッァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァン!!



掴んだ手元で魔力を炸裂させ、強烈な爆発をN9999に喰らわせる。



「此れで終わらせる!!!」

『劣化コピー如きがMasterに盾突こうなどと、1000年早いですよ。』

「全力全壊!!ディバイィィィィィィィィィィィィン……バスタァァァァァァァァァァァアァァァ!!!

『取り敢えず、消え失せなさい。目障りですので。』



そして、其れのみならず、一撃必殺の、一部では『最強の殺戮兵器』とまで噂されている砲撃を、手加減なしでブチかます!!其れこそ魔力120%でブチかます!!
勿論、並の魔導師だったら跡形もなく消滅していただろうが、相手は曲がりなりにもなのはの遺伝子を持つ者であるが故に――



「あんだよ……此れ………此れが現実だって言うのかよ!!ふざけんじゃねぇ!!」



N9999は、ボロボロになりながらも生きていた。――その瞳には怒りの炎が宿っているのは、ある意味で当然だろう。
力の差は明らかだったが、其れでもN9999に、なのはの事を認める等と言う選択肢はない。何故ならクローニングの段階で『高町なのは抹殺』の情報が植え付けられて
居るのだから。



「思った以上にタフだね?」

「そう簡単にやられてたまるかよ……テメェを殺す事が私の全てだからな!!」



だが、此処でN9999自身ですら想定して居なかった事が起こった。



――ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!



「な、何だ此れは?力が、制御出来ない……言う事を聞かない!ち、力が……力が勝手に!!うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁあぁぁぁっぁ!!」

「!!!」




突如、N9999の魔力が膨れ上がったと思ったら、その魔力が暴走し、N9999を中心として、周囲に途轍もない範囲攻撃を――其れこそデアボリックエミッションをも上回
る破壊力の一撃をブチかましていく!!

尤も、なのははすぐさま防御壁を展開してその攻撃を受け流したのだが…


「暴走の果ての自滅……じゃないね此れは。N9999だって、まだ生きてるからね。」


なのははN9999が自滅したとは思って居なかった。
恐らくは、同じ遺伝子故に、互いに通じる所があったのかもしれないが、何れにしてもN9999の生存は間違いない事であるだろう。



「逃げたのか、其れとも他者が転移させたのか――何方にしても、命を拾ったねN9999。
 今回はこんな形で終わったけど次に会ったその時には、決着を付けてあげる……その時までに、精々腕を磨いておく事だよ。今の貴方じゃ、私には勝てないからね。」



しかし乍ら、夜天の主にして絶対支配者であるなのはには、その程度の事は脅威では無かった。
そして、最早この場に用はないとばかりに、現場を一瞥すると、仲間達が戦っている戦場へと、その翼を向かわせるのだった。








――――――








Side:シグナム



「圧ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

「………!!」




――ガキィィィン!!



ふっ、予想以上だな此の騎士は――よもや、調停者レベル2の私と互角に渡り合うとは、期せずして掘り出し物を引き当てたらしいな?
これ程の使い手は、戦乱期の古代ベルカに於いても10人居るか居ないかというレベルだからな……此れだけの相手を前に、血が滾るのも戦士としての宿命という事か。

「……正直予想外だったぞ、まさか此処まで私とやり合える騎士が現代に存在していたとはな。
 それこそ、こんな状況でなければ、私とお前は互いに競い合える良き友になれたのかも知れん――其れだけに、今のお前が、誰かの手駒になり下がっていると言う事
 実が悲しくてならないのだがな。」

お前は騎士だ!まごう事なき、誇り高きベルカの騎士だろう!!
其れなのに、何故最高評議会の様な下衆にその力を貸す!!我等ベルカの騎士は、己の剣と命を捧げるに値する者に仕えるモノだろう!!騎士の誇りを忘れたか!

答えろ!!!



「…………」



――チャキ……



「黙して語らずか……其れもまた、ベルカの騎士の美徳ではあるがな。」

それにしても、妙だな?
如何言う訳か、コイツからは、コイツの魔力だけでなく、もう1つ別の魔力を感じるぞ……普通ならあり得ない事だが――まさか、コイツはユニゾンしていると言うのか!?

現存するユニゾンデバイスはズィルバ姉さんとグルムだけ故に、ユニゾンなど有り得んぞ?加えて、融合騎は通常のデバイスと違って簡単に作れるモノではないからな。


……まさかとは思うが、古代ベルカ時代の純正の融合騎と融合している等と言う事は無いだろうな?古代ベルカ時代ならば、融合騎はある程度存在していた故に、幾つ
かが、現代まで残っていたとしても不思議はないだろうし。
もしも、そうだとしたら、純正のユニゾンデバイスを持って居る事になるなコイツは……少しばかり厄介な相手かも知れん。


だからと言って負ける気はないが、最大限の警戒はしておくべき有ろう――此れだけの力を相手をしたら、如何に私とは言っても只では済まないであろうからな。



だが、ユニゾンしているにしても、普通は融合騎の魔力を攻撃から感じ取る事はないのだが、何故コイツの攻撃からは其れを感じ取る事が出来るのだろうか?
融合率が低い場合はそう言う事も有るのかもしれんが、そうであった場合は、此れだけの力を出す事は不可能な筈だ――と言うか、普通は絶対に有り得ない事だろう。

果たしてどんなカラクリを使っているのか、戦いの中で見極めるしかないようだな。












 To Be Continued…