Side:シグナム
嵐の前の静けさと言う訳でもないだろうが、此のところは特に大きな騒ぎも無く、平穏無事であると言って良いだろう――真に平穏無事と言う事は出来ないのだがな。
最高評議会を壊滅させない以上は、真なる平穏は訪れないとは言え、一時の安らぎを享受したとて罰は当たるまい。休息もまた、戦士にとっては大事なモノなのだから。
其れを踏まえると、六課の面々と、こうして食事をすると言うのも良い物だな。
「だね♪ご飯は大勢で食べた方が美味しいからね。」
「その意見には賛成だが……ギンガとスバルとウェンディの飯の量は、幾ら何でも有り得なくねぇか?あのスパゲッティは、如何考えても一皿10人前は有るだろオイ!」
「彼女達の満腹中枢はぶっ壊れているのかもしれませんね。」
……まぁ、ナカジマ姉妹の食欲には、やや胸焼けがしそうではあるが、食事を美味しく摂る事が出来てるうちは何が有っても大丈夫だろう。食は健康の基本だからな。
つまり、そう言う訳で、好き嫌いは良くない事だぞヴィヴィオ?
「う~~~……だって、ピーマン苦くて美味しくないなんだもん。」
「だからと言って、出されたモノを残すのは良くない事だ。
好き嫌いがあるのは仕方ないとして、好んで食べずとも、出された物は食べられるようにしておかないと、大人になった時に苦労するぞ?」
「そうだよヴィヴィオ。其れに、ヴィヴィオはピーマンが嫌いかもしれないけど、ヴィヴィオの身体はピーマンに含まれてる栄養を欲しがってるんだよ~?
全部食べなくても良いから、せめて一切れくらいは頑張って食べてみよう?残った分は、ママ達が食べてあげるから。」
「……分かった、頑張る!」
そして、見事なモノですねなのは。ヴィヴィオにピーマンを食させる手腕には脱帽ですよ。
其れもまた、何でもない日常の一コマなのでしょうが、其れだけにその日常が何よりも尊いモノだと感じてしまう――故に、護らねばなりませんね、この平穏の日々を!
魔法少女リリカルなのは~夜天のなのは~ 夜天119
『Das Meinungspublikum-Horen』
Side:なのは
そんなこんなで、平穏な日々を過ごす事数日、今日はいよいよ『意見公聴会』の日だね。
正規部隊でないとは言え、クロノ君の私設部隊扱いだから、六課の面々も会場の警備&クロノ君の護衛に当たらなければならないのは、まぁ当然の事なんだけど、私に
関しては、其れだけでは済まないと思うの。
『夜天の書の主』がミッドに来ているって言う事は、もう完全にバレてる筈だから、最高評議会の面々から、私に対しての質疑があると思って居た方が良いね。
尤も、ふざけた質疑のオンパレードになる予感がするから、そんなモノは正面から叩き潰すのみなの。下らない馬鹿は、ディバインバスターで吹き飛ばすのが吉だから。
だから、意見公聴会で何が起きても大丈夫だとは思うんだけど――
「やだ~~~!なのはママとシグナムママと一緒に居るの~~~~!!!」
目下の問題はヴィヴィオなんだよね……私とシグナムが出掛けるって聞いた瞬間に、一緒に行くって言いだして、其れは無理だって言ったらワンワン泣いてゴネ始めて、
しかも確りと私の足にしがみ付いてるからね?……此れは如何したモノかな?
「ヴィヴィオ、離れたくないと言う気持ちが分からないでもないが、私となのはが行く場所は絶対安全とは言えない場所故に、お前を護り切るとは断言できないんだ。
そんな場所に、お前を連れて行く事は出来ないから、聞き分けて此処で待っていては貰えないだろうか?」
「私とシグナムは行っちゃうけど、シャマルとザフィーラは此処に残るから、其れで納得して貰えないかな?
ヴィヴィオも、シャマルとザフィーラの事は嫌いじゃないでしょ?」
「うん、シャマル先生もザフィーラも大好きだよ?」
なら大丈夫だよね?
私達は少し留守にするけど、ちゃんと戻ってくるから、それまで待ってる事は出来るよねヴィヴィオ?
「……うん、ちょっと寂しいけど頑張る。」
「ふ、良い子だな。」
うわ、ヴィヴィオの頭をなでる仕草が様になってるねシグナム!なんて言うか、凄く安心感を感じる事が出来るよそのなで方は!!……流石はカッコイイ女の人だね♪
「褒め言葉ですよね其れは?……其れよりも、此れより向かう意見公聴会は、只で終わるとは思えませんので、気を抜かぬようにして居て下さい。言うまでもないと思いますがね。」
「其れは分かってるよシグナム。」
寧ろ、何かが起きる予感しかしないからね。
其れじゃあ行こうか、シグナム、ヴィータ、ズィルバ、ナハトヴァール、グルム、なたね、はやて?ティアナとスバル達、三月ちゃんも準備は良いかな?
「はい、参りましょうなのは。」
「オウよ、行ってやるぜ!!」
「この公聴会は、色々な意味で大事な事になるでしょうからね。」
「我等騎士一同、与えられた任を熟しましょう。」
「頑張って行くです!」
「お任せ下さい姉さん。夜天の王の為に磨き上げた、此の焼滅の力、必要ならば全力で奮いましょう。」
「ま、大船に乗った心算で居てや♪」
「任せて下さい、大丈夫です!!」
「アタシもギン姉達もOKです!」
「警護と護衛、きっちり熟してやりますよ!」
「六課でバッチリ鍛えられたので、何て言うか相手がなのはさん達でない限りは、まず負ける気がしませんよ。」
「うん、負ける気がしない。」
「何が起きても、バッチリ大丈夫っすよ!」
「三月スカリエッティ改め、トーレ・ザ・インパルス出撃すんゼオラぁ!!!!!!」
うん、皆やる気十分だね?――三月ちゃんは、ちょっとだけ厨二病をこじらせてるみたいで心配だけど、シグナム相手に『負けない』戦いが出来るんだから大丈夫だね。
其れじゃあ行ってくるねヴィヴィオ。シャマル、ザフィーラ、ヴィヴィオの事を宜しくお願いするよ。
「行ってらっしゃい、なのはママ、シグナムママ♪」
「ヴィヴィオちゃんの事は任せて下さい。」
「盾の守護獣の名に懸け、何が有ろうとも護って見せましょう。」
頼んだよ。――さて、意見公聴会では、鬼が出るか蛇が出るか、はたまたそれらすら生温いほどの悪意と欲望が溢れ出してしまうのか……何れにしても、最高評議会が
私に、ひいては地球に何かしらのアクションを起こすのは間違いないだろうから、最悪の場合は一戦交える覚悟をしておかないとだね。
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と言う訳で、意見公聴会の会場に到着した訳なんだけど……
「なのは、久しぶりだね!」
「久しぶり~~!元気してた?」
「フェイト、其れにアリシアちゃん!?」
まさかまさかで、其処にはフェイトとアリシアちゃんの姿が!!其れだけでも驚きなんだけど、それ以上に驚きなのは……
「アレってライオンっすよね、スバル姉ちゃん?」
「ライオンだと思うよ?全身の毛が真っ黒だけど。」
何で居るんですか信長さん!?って言うか9年ぶりですけど、元気にしてましたか?
「ウム、我は健在よ高町なのは。お主の騎士達と仲間達も息災と見える故、安心したぞ。
何で居るかと言われれば、プレシアから頼まれたからと言う事になるが、第六天魔王たるワシを打ち負かした夜天の王の覇道を、この目で見るのも一興である故な。」
「あはは……まぁ、確かに母さんから頼まれたって言うのはあるんだ。
『ミッドチルダで何か起こるのは間違いないから、貴女達はなのはちゃんに加勢しなさい。地球の方は私達で何とかするから。』って言われてね。」
「其処まで言われたら、来るしかないし、やるしかないじゃん?って言うか、此処で行かなかったら友達失格だしね!」
フェイト、アリシアちゃん、其れに信長さん――ありがとう、凄く頼りになる援軍だよ!
「あら、援軍は彼等だけじゃないわよ?」
「!?って、リンディさん!?」
「母さん!?如何して此処に………いや、母さんではないのか?」
「確かに、リンディさんとよく似てるけど、何て言うか違うよね?少なくとも、リンディさん本人じゃないかな?……え~~~と、どちら様でしょうか?」
「あらあら、大分自信があったんだけど、実の息子さんと、真なる夜天の主様には流石に分かっちゃうか~~?
私は二乃スカリエッティよ。ドクターの命を受けて、リンディ・ハラオウン提督に変装して、此処に来たと言う訳よ――貴方の力にならせて貰うわ、高町なのはさん。」
ニ乃スカリエッティ……三月ちゃんのお姉さんですね。変装が得意って言う事は聞いてたけど、まさか此処までそっくりに変装するとは思わなかったの。
私とクロノ君以外だったら、多分分からないと思うよ?シグナムですら、分からなかったみたいだからね――尤も、更なる増援は、更に心強い物になるのは間違いない。
「来てたのかよ二乃姉?……あり?そうなると七緒も来てんのか?」
「………………」
「あ~~……うん、頑張ってくれ、頼りにしてるからよ。」
更には、三月ちゃんの妹ちゃんまで来てくれた――此れだけの戦力が揃ったんだから、いざ戦闘となった時には絶対に負けられないね!
「そうだな……マッタク、本音を言うなら、僕だって君達を管理局にスカウトしたい位だよ。
だけど、君達は其れを望んでいないからな……此方の都合ばかりを押し付ける事は出来ないよ――君達は、組織に属さない戦力であるべきだろうからね。」
「その通りだよクロノ君。
お兄ちゃんが言ってたんだけど、絶対的な力を持つ者は組織に属してはならない、何故ならば属した組織に絶対的な勝利を齎してまうからって言う事だったからね。
まぁ、今回の『同盟』は、其れから外れた、例外中の例外のケースって言う事なんだけどね。」
地球が、最高評議会の思い通りにされるなんて言う事は、遺伝子レベルで、寧ろ分子レベルで拒否一択なの!!
夜天の力はどの組織にも属さないモノだけど、共通の敵を持つ者とは迷わず同盟を組む柔軟さも有るからね――この意見公聴会で、引導を渡してやるの、最高評議会!
精々、首を洗って待っていろなの!!――脳味噌だけの存在に、首を洗ってろってのは、無茶振りの極みかも知れないけどね。
――――――
Side:クロノ
大体予想はしていたが、意見公聴会とは名ばかりの、第97管理外世界――地球を、如何にして管理局が管理する管理世界にするかと言う事を考えるモノになっている
な?……尤も、出てくる意見は稚拙なモノばかりではあるけれどな。
「わずか10年足らずで、アレだけの魔導技術を有している世界は、即刻管理局の管理世界とすべきだ!!
あれだけの技術が犯罪組織などに流出したら、ドレだけの凶悪犯罪が起きるかは想像も出来んのだから、その技術を管理する面でも、アレは管理世界にすべきだ!」
「左様。加えて、其処には、闇の書……今は夜天の魔導書と言うらしいが、其れの主が居るのだろう?
ならば、尚の事管理世界とすべきだろう――夜天の魔導師の主を管理局に迎える事が出来れば、守護騎士達も一緒に付いて来る……人材不足も解消可能ですな。」
其れもまた『捕らぬ狸の皮算用』だぞ?
少なくとも、今代の夜天の主である高町なのはが、今の管理局に力を貸す事は絶対に無い。有り得ない事なんだ――彼女の力に頼るな!!
「馬鹿を言うな。クロノ・ハラオウン提督……強き力と言う者は、管理すべき者が居なければ、必ずや暴走して世界を破滅に導く物だと相場が決まっているのだよ?
ならば、その力を法の下に管轄し、力を制限してやるのが我々の役目ではないのかなクロノ・ハラオウン提督殿?」
「確かに一理あるが、其れは管理すべき力を私利私欲に使用しないと、天地神明に誓う事が出来る者が言うべき事であり、欲に塗れた者が言う事じゃないだろう?
シラを切る心算なんだろうが、生憎と僕の方では最高評議会が、此れまで行って来た犯罪行為の証拠を掴んでいる……其れを此処で公表しても良いんだぞ?」
「貴様……!!
だが、あの力が我等には必要な事は分かるだろう!!あの技術を流用し、そして応用すれば、管理局の人手不足も解消出来る!
高町なのはと、守護騎士達は、我等管理局の為にその力を使うべきなのだ!!」
管理局じゃなくて『最高評議会の為に』だろう?言葉を間違えるな、知性のレベルが知れてしまうぞ。
だがしかし、大体予想していた事だが、最高評議会の連中と言うのは、如何にも救う事が出来ない、救うに値しない下衆の集団であると言う事が明らかになってしまった
みたいだな?――マッタク、管理局にとっては黒歴史どころじゃない暗黒面だよ。
さて、此れだけの欲望を曝け出してくれた訳だが、其れを聞いて君達は如何する?夜天の主である高町なのはと、その筆頭守護騎士である烈火の将のシグナムは?
「予想はしていたけど、此処まで腐っていたとは思わなかったよ……寧ろ、此処まで性根が腐り切ってしまう事が出来たって言う事に、ある意味では感心するね。」
「見習おうとは思いませんがね。――いずれにせよ、なのはと我等を手駒としようなどと、身の程知らずも甚だしい。
なのはは己の心に従って行動するし、我等守護騎士は、主の進む道を護る事が使命故に、なのはが了承しない限りは我等が誰かの手駒になる事は無いのでな。」
「私も、シグナム達を誰かに譲渡する心算は無いからね。」
ふふ、だろうな。
「もう少し我慢する心算だったけど、此れだけふざけた事を聞かされて、冷静で居られるほど私は心が広くないんだよ?
其れ以前に、私共々シグナム達を手駒にするって言う事は聞き捨てならないし、地球を管理世界にしようって言う時点でね……さて、少し頭を冷やそうか?」
兎に角、お前達は夜天の主の逆鱗に触れてしまった……先ずは、それを後悔するんだな。全ての責任は僕が負うから、全力全壊でやってくれなのは!!
「勿論だよ……全力全壊って言う事だから、現れた相手は、別に倒してしまっても構わないんだよね?」
「あぁ、マッタク持って構わないさ。」
寧ろ、徹底的に叩きのめして、圧倒的な力の差と言うモノを見せつけてくれて構わないよ?――管理局改革の狼煙は、盛大に上げた方がインパクトがあるからね!!
さぁ、革命の幕開けだ!!
To Be Continued… 
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