Side:なのは


飲み物を自販機で買って戻って来て、其れでヴィヴィオが買ってきた飲み物を飲んだら安心したみたいで、また眠っちゃったの……此の寝顔は本当に天使その物だよ。
シグナムもそう思うでしょ?



「えぇ、私もそう思いますよなのは。
 故に、此れを護らねばならぬとも思いますけれど。」

「だよね。」

でね?ヴィヴィオの事なんだけど……私達は、9年前にヴィヴィオと会ってるんだよ、平行世界の異次元同位体であるヴィヴィオと!!今思い出したんだけどね。
あまりにも自然過ぎて気にも留めてなかったんだけど、9年前のあの子と、保護されたヴィヴィオは、多分同じような存在なんだと思うんだけど……シグナムは如何思う?



「……なのはの推理で大凡間違いはないと思いますが……まさか、彼女とこんな形で再会する事になるとは、全然全く考えても居ませんでした。
 ですが、あの子が古代ベルカの王族と何らかの関係があるのは間違いありませんからね……取り敢えずは、事を荒立てずに過ごすのが、最上の策と愚考しますよ。」

「OK、良く分かってるねシグナム♪」

とは言っても、あの時のヴィヴィオは、もう一人の私を『ママ』って呼んでたから、つまりは私がヴィヴィオのママになったって言う事で……身元引受人の事も、本気で考
えておいた方が良いかもだよ。

9年前の事が有ろうと無かろうと、私はヴィヴィオの事を引き取りたいって思ったからね。――誰にも、其れには口出しさせないの!!



「口出しなどはしませんよ……其れが貴女の選ぶ道であるのならばね。」

「シグナム……うん、ありがとう。」













魔法少女リリカルなのは~夜天のなのは~  夜天118
『Die Welt geht es spazieren』












で、数日後――


ヴィヴィオを六課本部で引き取って、其処で私が身元引受人になるって言う事を伝えたんだけど…何て言うか、ちょっと――否、マッタク持って理解できてないッポイの!



「身元引受人て何?」



しかも、純真無垢な目で見られたら、答えない訳には行かないんだけど……身元引受人て、どう説明すればいいんだろう?
読んで字の如くとは言え、ヴィヴィオにはまだまだ難しい言葉だから、説明してあげないといけないんだけど……果たして、此れを如何して説明したもんだろうね?



「其れはね、なのはさんがヴィヴィオのママになるって言う事だよ♪」

「ママ?」

「そう、なのはママだよ。」



って、スバル!?まさかの説明だね其れ!?いや、分かり易いと言えば分かり易いんだけど……私がヴィヴィオのママって言うのは幾ら何でも飛躍し過ぎじゃないの?
大体にして、私がママだったら、ヴィヴィオのパパは誰になるの?



「パパは……其れはシグナムさん以外に居ないでしょう?」

「待てスバル、何をどうしたらそうなるのか説明しろ。400字以内で。」

「え?そりゃあ、シグナムさんがなのはさんの旦那だからに決まってるじゃないですか。」

「さも当たり前のように言うな!!」

「だが、確かに主と将の場合は、主が嫁ポジションで将が旦那ポジションなのは否めないのではないかな?戦闘時に於いても、将が前衛、主が後衛だし、何よりも将は
 世の男共に見習わせたい位の紳士ぶりを主に対して発揮しているからな……」

「間違いなくパパだな。こりゃ決定だわ。」

「ズィルバ姉さんもヴィータも納得するな!!」



あ~~~~……成程、確かにシグナムはアリだね。
確かにシグナムは下手な男の人の何倍もカッコいいし、剣を振るう凛とした姿は騎士其の物で、はやてから聞いた話だと一部から『おっぱいの付いたイケメン』とか言う
謎の二つ名(?)まであるらしいんだけど、それでもやっぱりシグナムは女性だから、パパじゃなくてママでしょ?

まぁ、私が主としての管理者権限使ってシグナムのデータを書き換えれば『パパ』にする事は出来なくもないんだけど、其れは絶対にしたくないしね。



「シグナムママ?……ママが2人?」

「え?あ……そう言う訳ではないと思うのだが……如何したモノでしょうか、なのは?」

「えっと……シグナムも懐かれてるみたいだし、此れはもういっその事、私と連名で身元引受人申請をしちゃおうか?
 クロノ君経由だったら受理されると思うし、多分そっちの方がヴィヴィオにとっても良いと思うんだ――夜天の書の主と、守護騎士の筆頭騎士が身元引受人なら、おい
 それと手を出す事も出来ないだろうからね。」

「成程……そう言う事ならば、連名で申請すると致しましょう。」



と言う訳で、私だけじゃなくてシグナムも貴女のママだよヴィヴィオ?其れでも良い?



「うん!」

「まぁ、そう言う事らしいのでな……宜しく頼むぞヴィヴィオよ。」

「はい、シグナムママ♪」



なはは……如何やら私とシグナムはママで決定みたいだね。
此れは、身元引受人の申請が通ったら、ヴィヴィオを連れて一度地球に戻った方が良いかもしれないの。
お母さんてば『50になる前にお婆ちゃんて呼ばれたい』って言う、世の女性に喧嘩売ってる様な事言ってたから、ヴィヴィオの事は出来るだけ早い内に紹介しておいた
方が良いかもしれないもん。

だけど、ヴィヴィオがこうして懐いてくれるって言うのは素直に嬉しい事だよ。

シグナムが言うには、貴女は古代ベルカの王族の特徴を備えてるらしいから、其れだけで貴女を狙う輩は居るかも知れないけど、そんな輩は次元世界最強(はやて談)
の私とシグナムが必ず叩きのめして、貴女を護ってあげるからね。


取り敢えず――拝啓お母さん様、そう遠くない将来に、お母さんに私の娘……お母さんにとっての孫を紹介する事が出来そうです。








――――――








Side:クロノ


ふぅ……まぁ、予想はしていたが、まさか本当に保護された少女の身元引受人の申請がなのはとシグナムの連名で送られてくるとはな……尤も受け付けない理由もない
から、此れは普通に受理するが、件の子供には最強の守護者が付いたと言う所だな。

それで騎士カリム、僕に見せたいものと言うのは何なんだ?
自分で言うのもなんだが、多忙の身故にあまり時間は取れないので、簡潔に済ませたいのだけれど……



「その多忙の中で時間を取って頂いた事には感謝しますわ、クロノ・ハラオウン提督。
 今回態々お呼び立てしたのは、私の能力が少しばかり気になる予言を出したものですから……提督の耳には入れておいた方が良いと思って連絡した次第です。」

「予言だって?」

騎士カリムの能力は予言だったが、其れが気になるものを予言しただと?……どんな予言が出たのか見せて貰えるか?



「えぇ、勿論です。此方が、その予言を書き記したものになります。」

「此れが………って、これは!!!」

成程、態々僕を呼び出す訳だ……まさか、こんな予言が出るとは思わなかったよ、騎士カリム。



――欲望の権化が破滅への鍵を開き、世界には混沌が訪れる。
   死者は踊り、聖なる王の複製が破滅の使者を起動し、欲望の権化は新たな器を手に入れるだろう。
   されど世界は死なず、黒衣の魔導師と剣士によって欲望の権化は消え去る――そして、法の番人の闇は己の欺瞞と共に崩れ落ちるだろう。




此れは、完全に警告だな。
欲望の権化は最高評議会の脳味噌たちで、黒衣の魔導師と剣士は、恐らくなのはとシグナムだろう――そして法の番人の闇は、管理局員である事に胡坐をかいて私利
私欲を肥やしている連中の事で間違いない筈だ。

だが、死者と聖なる王の複製、そして破滅の使者が分からないな?
でも此れだけの事が分かれば上々だ……感謝するぞ騎士カリム。



「私は私に出来る事をしただけの事ですし、予言はあくまでも予言であって絶対の物ではありません……貴方の行動次第で未来は容易く変わってしまうのですから。」

「……分かってるさそんな事は。
 だが、それでも僕は前に進むだけだ――其れが彼女の友人としての、最も正しい事だと思うから……いや、僕自身がそうしたいと思ってる事だからな。」

「……そうですか……ならば、これ以上は何も言いません。
 貴方と、そして此度の夜天の主の歩む道に、如何か聖王の加護が有らん事を……」



聖王の加護か……有り難く受けておこう。

だが、今回の事で色々と分かった事も有るからな……それらを全て使って、強制退場させてやるぞ最高評議会の脳味噌共!!お前達みたいな老害は、最早世界の誰
も必要とはしていない故――そろそろ大人しく眠りについて貰おうかな。


100年以上も生きて来たんだ、そろそろ世代交代をすべき時だろうからね!!!








――――――








Side:シグナム


私となのはの、身元引受人の連名申請は滞りなく受理され、こうして私となのはとヴィヴィオは書類上では『家族』となり、私となのはは書類上の『夫婦』になったと言う訳
だな……あまり実感はないがな。

だが、それ以上に気になるのは、クロノ提督が持って来た『意見公聴会』の情報だな。


あくまでも私の予想に過ぎないが、此れは意見公聴会と言う名の『闇の書の糾弾会』になると見て間違いなかろうな……クロノ提督が参加しない限りは。
加えて、なのはが出張ろうものならば、その矛先がなのはに向かうのは、火を見るよりも明らかだからな……だが、最大級に問題なのは――



「此処までふざけた内容だと、怒る以前に呆れちゃうね……溜息しか出ないよ。」



其れを聞いたなのはの怒りゲージが、早くも120%振り切れ状態になってしまったからな。
マッタク持って、馬鹿な事をしたモノだな最高評議会よ?――結局の所、貴様等のやった事の全てが己の首を絞めるに至っているのだからな……精々、覚悟を決めてお
くがいい……!!

我等と我等の主は、平穏に暮らす人達に仇なす者には容赦はしないからな――精々、足掻いてみせるが良い!!








――――――








Side:N9999


コイツは……私が、アイツの前に姿を現すにしても先ずは何処に居るかを知っておこうと思ったんだが……中々に良い選択肢だ、アイツは此処に、ミッドチルダに居るらし
いからな。マッタク持って好都合だぜ!!

とは言え、居場所が分かってもミッド全土から探すのは骨が折れるから意見公聴会までは待つしかねぇ……しかたねぇな、適当な奴等をぶっ殺して暇を潰しておくか。

夜天の主も筆頭騎士も、全部纏めて私がぶっ壊してやる。

だけど其れは今じゃないから、少しばかり暇潰しをしながらその時を楽しみに待っててやる……テメェをぶっ殺すには、最高の舞台が必要だろうからなぁ高町なのは!!

今度の意見公聴会……それが、テメェの命日だ!!精々、残りの人生を楽しむんだな!!



いや、お前だけじゃない……私以外の全ての存在をぶっ壊してやる!!
其れを成した暁に、私は私に成れるのだからな……こうなったら、誰でも良いぜ……俺の欲望のままにぶっ壊してやろうじゃねぇか――テメェ等みたいな通過点に興味
はないが、精々楽しませてくれよな?


高町なのは……必ずぶち殺してやるから、精々首を洗って待っていろ!!



クククククク……クハハハハハハハハハハハハ……ハ~ッハッハッハッハッハッハッハ!フワ~ッハッハッハッハッハ!!!!!!!












 To Be Continued…