Side:なのは
ここ数日、訓練して思ったのは、ナカジマ姉妹の皆は、文字通りの類稀な使い手だって言う事だね。
スバルとノーヴェとギンガがオーソドックスな格闘型で、ウェンディが変則的な動きで相手を翻弄する伏兵で、チンクは中距離型で、ディエチはバリバリの砲撃型と、姉妹
チームでバランスが取れてるよ。
そして、此れだけでも充分強力だけど、其処に指揮官としてティアナを加えると、その力は更に高くなる。
ティアナ自身の戦闘能力は、ナカジマ六姉妹と比べたら低いけど、だけど其れを補って余りある広い視野と冷静な状況分析、そして的確な指示を出す能力を備えてる。
鍛えれば、間違いなく最強クラスの指揮官魔導師になるのは間違いないよ。
「嬉しそうですね、なのは?」
「嬉しそうに見えた、シグナム?……いや、実際に嬉しいのかもね。
ティアナもスバルもノーヴェも、ギンガもチンクもディエチもウェンディも、全員が底知れぬ可能性を秘めているから……其れをこの手で開花させるのは嬉しい事なの。」
「確かに、才ある新人を、己の手で育てると言うのは、教導者の冥利に尽きますからね。」
でしょ?
あの子達には、もっともっと成長してほしいんだ!!あの子達ならきっと、私達の予想を上回る結果を出してくれると思うからね!!
「確かに……その可能性は否定できませんね。」
「寧ろ可能性は大だからね。」
鉄は熱いうちに打てって言うから、一番伸びるだろう時期に理想的な教導が出来たかもしれないの。
熱い内に打たれた鉄は、やがて鋼になって行くからね――その鋼が、そしてどんな刃になって行くのかじっくり観察させて貰うよ。
魔法少女リリカルなのは~夜天のなのは~ 夜天114
『偶には休暇も必要ですから』
さて、取り敢えず此れは如何言う事かなクロノ君?
今日のトレーニングが終わったと思ったら、機動六課が出動する程の事件も起きてないのに、行き成り呼び出されて……一体何が有った言うのかな?説明プリーズ!
「あぁ、大した事じゃないんだが、明日から3日間、君達を含む機動六課全員に休暇を渡しておこうかと思ってね。
君達は良くやってくれてるが、偶には休みも必要だろう?――常に神経をとがらせていたら、何をやるにも巧くはいかないからな…温泉にでも行ってリフレッシュする
って言うのも悪くないだろう?」
「それは、確かにそうかもね。」
確かに休息は必要だね。
気を張り続けて物事に当たった所で、休息がなければ、只無駄に疲れちゃうだけだからね……なら、この粋なプレゼントは、有り難く頂戴するのクロノ君♪
「此方から協力を申し出たんだ、此れ位の待遇は当然だと思ってる。
まぁ、偶の休日だから思い切り羽を伸ばして楽しんでほしい。疲労を溜め過ぎて、過労で倒れたなんて事になってしまったら、流石に笑えないからな。」
「なはは……其れはそうだね。
でも、確かにミッドに来てからはあんまりゆっくりしてた記憶はないから、偶の休日は楽しまないとなの♪」
尤も、此方が休暇でも、最高評議会の過激な連中にとっては知った事じゃないだろうから、休暇中に何が起きても対処できるようにだけはしておく心算だし、有事の際
には直ぐに出動するけどね。
まぁ、取り敢えず皆に休暇の事を伝えないとだね。
「ではハラオウン提督、我々は此れで。――なのは。」
「うん、行こうか♪」
「ヤレヤレ……マッタク仲の良い事だ。」
?クロノ君が何か言ってたみたいだけど、何言ってたんだろう?小声で聞こえなかったの……ま、多分悪い事じゃないから大丈夫だよね♪
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と言う訳で六課本部(クロノ君が各部署に掛け合って、宿舎付きの本部を用意してくれたの)に来た訳なんだけど、此れ、如何言う状況?
「我、拳極めたり……」
「ちょりーん……」
目が赤く染まったノーヴェが仁王立ちして、その足元にははやてがKOされてて、ノーヴェの背には『天』の一文字……如何見ても、ノーヴェがはやてを瞬獄殺したように
しか見えないんだけど、何でこんな事になったの?
って言うか、ノーヴェは何時の間に殺意の波動に目覚めてたのかな?
「たった今ですよ姉さん。
状況を分かり易くかつ簡潔に説明するのならば、練習後のシャワーを浴びて寛いでいた所、はやてが何を思ったか行き成りナカジマ姉妹とティアナにセクハラ紛い…
と言うか、セクハラその物の行為を――分かり易く言うならば、背後からの胸揉みを敢行しまして、ギンガ、スバル、ティアナ、ディエチが犠牲になったのです。
ですが、ノーヴェに手を出したのが運の尽きでした。
ボーイッシュな外見とは裏腹に、如何やらノーヴェは相当な乙女だったらしく、胸に触られた瞬間に顔を真っ赤にしてカウンターの肘打ちをブチかまし、其のまま蹴り上
げ、そして此れは羞恥による怒りの為せる業なのでしょうが、殺意の波動の極滅奥義ではやてを完全KOしました。35ヒットの見事なコンボでした。」
「……何してるのはやて。」
自業自得以外の何者でもないよ其れは。
たま~~~に、私やなたねにも同じ事してくるけど、其れは姉妹相手のおふざけだと思ってたんだけど……如何やらそうじゃないみたいだね?……オヤジだよはやて。
「オヤジて酷!!こんな純情可憐な乙女に対してオヤジやなんて、無慈悲で無体にも程があるで姉やん!!!」
「普通にセクハラかます女性の事を、純情可憐な乙女とは言わねーの。少しばかり、日本語の意味を考えやがれなのはやて。」
「姉やんの方が上手やったーーーー!!!」
私に勝とうだなんて、10年早いよはやて。魔導でも口の巧さでもね。
って言うか、公然とセクハラかまさないでくれるかなぁ?どんな些細な事でも、最高評議会の連中の耳に入ったら良い攻撃材料になりかねないんだからね?分かった?
『次やったら集束砲ブチかましますからね?』
「り、了解ですーーーーー!!!」
ならば良し!!
ノーヴェもゴメンね?不肖の妹が迷惑かけたみたいで。
「あ、いや……まぁ、アタシとしてもやり過ぎちまった感じですから気にしないで下さい。
其れよりも、なのはさんとシグナムさんは、何だってクロノ提督に呼ばれてたんすか?若しかして、何か厄介事でも起きちまったってとこですか?」
「あぁ、そう言う事じゃないの。
実は、明日からの3日間、私達機動六課に休暇が与えられたの。その通達にね。」
「休暇っすか?まぁ、偶にはゆっくりしたいって思ってた所っすから、アタシ的には万々歳っすけどね~~~♪」
そう、休暇だよ。
オークション以降も、小規模ながら出動は多かったし、普段はトレーニング漬けだったから、ここらへんで息抜きしないと身体も精神も参っちゃうからね?この休暇を使っ
て思い切りリフレッシュするといいと思うんだ。
勿論、何が起こるかは分からないから、最低限の警戒はしておいてほしいけど、この休暇を楽しんでほしいの♪
「異論はないです!!」
「少しばかり息抜きしたかったのは事実ですから、此れは有り難いですよ。」
「よっしゃーーー、遊ぶっスよーーーー!!」
「はしゃぎ過ぎだウェンディ、姉は少し心配になってしまうぞ。」
なはは、此れは思った以上に効果が有ったみたいだね。
なら、私から言う事はこれ以上は何もないよ。――皆、明日からの3日間は怪我に注意して、思い切り楽しんでね?折角のPresent Holidayなんだから♪
そして、楽しむと言えば私もなの。
折角だから、デートしようかシグナム?
「はい!?ででで、デートですか!?」
「あれ?嫌だった?」
「滅相もありません!!
なのはとのデートならば、寧ろ本望!と言うか、貴女が言い出さなければ構想を練りに練った上で私の方から提案しようと思っていたくらいですから!!本気で!!」
「じゃあOKって事だよね?」
「勿論です!!」
なら、問題なしだね♪
考えてみると、シグナムと2人きりでお出かけする事って此れまでなかったから、凄く新鮮な感じがするね?……ふふ、余計に明日が楽しみになって来たの♪
――――――
――翌日
Side:シグナム
ふぅ……まさか、なのはとこうしてデートする事に成るとは思っても居なかったな。
私となのはは恋人同士故、こう言った事はオカシナ事ではないのだが、2人きりで出掛ける機会などなかったから少しばかり緊張してしまうな……烈火の将としては有
るまじき姿なのだろうが、なのは相手では仕方なかろうな。
私となのはは同室故に待ち合わせなど要らないと思ったのだが、『先に起きた方が着替えてロビーで待ってるって言うのは如何かな?』と言う、なのはの提案に同意し
た事で、私は今現在なのはが来るのを六課本部のロビーで待っている。
流石になのはと出掛けるのであれば、ジャージと言う訳にも行かないので、何時ぞやなのはが選んでくれた『和』の意匠を取り込んだ服(ゼノサーガ2のシオンの衣装)
を選んでみたのだがオカシクないだろうか?……如何にも気になってしまうな。
「ゴメン、待たせちゃったかなシグナム?」
と、如何やらなのはが来たようだ。
いえ、其れほど待っては………って!!――此れは一体なんだ!?
髪型は何時ものサイドテールだが、その服装は素晴らしすぎます!!
無地の白いボタン付きシャツに、桜色の上着を羽織り、其れに若葉色のミニスカートを合わせ、足元はやや底の厚いサンダル型ブーツを採用して、見事ですよなのは!
「なはは……似合ってるかな?」
「実に良く似合って居ます!!それ以外には言いようがありません!!」
「なら良かったの♪……シグナムも良いコーディネートだね?凄く良く似合ってる。カッコいいよ♪」
お褒めに預かり恐悦至極ですよ。
では、参りましょうかなのは?折角の休日ですので、思い切り楽しむとしましょう。
「うん!確りエスコートしてねシグナム?」
「御意に。
こう言った時に、主をエスコートできないなど、守護騎士の将の名折れですからね……些か無粋な部分が有るやも知れませんが、誠心誠意務めさせて頂きますよ。」
「ふふ、お願いね♪」
「無論です。」
そして、なのはと手を繋いで(五指を絡めた所謂『恋人繋ぎ』)デートの開始だ。滅多にある事ではないから、此の機会を楽しまねばな損と言う物だな。
――――――
Side:???
……此処は、何処?……なんで、如何して私はこんな所に居るの?
暗くて冷たくて、誰も居ない場所に、如何して私は居るんだろう……それも、こんなに重い荷物を引き摺って……如何して、私はこんな場所で、こんな事をしてるの…?
如何して私はこんな目に遭ってるんだろう…?
分からないよ……分からないけど、助けて――ねぇ、ママ――
To Be Continued… 
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