Side:なのは


マッタク予想してなかった、スカリエッティさんからの同盟の話……メリットとデメリットを考えた場合には、絶対的にメリットの方が大きいから、同盟締結は良いと思うの。
三月ちゃんの戦闘能力は中々の物だし、スカリエッティさんから紹介された他のメンバーも、情報処理や潜入活動のエキスパートみたいだからね?

確かに、私達だけでも戦力は充分だけど、現行戦力だと、情報処理に長けてるのはシャマルだけだし、潜入活動が出来る人は居ないから、その辺を補う意味でも、スカ
リエッティさんとの同盟は結んでおくべきだよクロノ君。

少なくとも、マイナスにはならない筈だから。



「……なのはが、其処まで言うなら拒否する理由は無いか。
 其れに、ドクター・グランツの旧友と言うのならば、その科学力と技術力は信頼するに値するからね――そちらからの申し出は、受けさせていただくよ。」

『其れは有り難い。同盟を結んだ以上は、此方も出来る限りの事はさせてもらうよ。
 其れと三月だが、そちらで適当に使ってくれて構わない。私の娘ではあるが、その頑丈さは目を見張るものがあるし、戦闘に於いては役に立つ筈だからね。』


「待てコラ親父!!同盟を締結したとは言え、自分の娘を、簡単に売り渡してんじゃねぇ!!」

『HAHAHA!同盟を締結したからこそさ。
 同盟が締結したと言う事は、言ってみるならば、私達となのは君達は真の仲間となったと言っても過言ではない……ならば、其処に娘を預ける事に躊躇などないさ。』


「もっともらしい事言ってんじゃねぇ!!アンタ絶対楽しんでるだろ!!」

『まぁ、否定はしないけどね?』

「OK、今度会った時は覚悟しとけよ?死なない程度にフルボッコにしてやんぜ。」

『おやおや、其れは怖い事だね。覚悟を決めておくとしよう。
 まぁ、其れは其れとして、此れから宜しく頼むよ高町なのは君、クロノ・ハラオウン提督殿。』



三月ちゃんの扱いとか、突っ込みたい事はあるんだけど、此処で其れを言うべきじゃないね。
其れに、頼りになる仲間が増えるって言うのは、実際に嬉しい事だからね?――此方こそ、宜しくお願いしますねスカリエッティさん!



「此方こそ、宜しく頼む。ミスター・スカリエッティ。」

『うむ……と、一つ言い忘れていた!!私の事は、是非とも『ドクター』と呼んでくれたまえ!其方の方が、色々と雰囲気も出るからね!!』



……まさか、呼び方を指定されるとは思わなかったけど、兎に角、頼もしい仲間が増えたのは有り難い事だったの♪













魔法少女リリカルなのは~夜天のなのは~  夜天113
『埋もれし才能を発掘せよ!!』












で、同盟締結の翌日。
今日も良い天気。絶好のトレーニング日和だね♪

クロノ君の民間協力者の部隊っていう扱いの私達だけど、管理局の訓練施設が使えない訳じゃないから、思い切り利用しないと損だからね。特に実戦形式の訓練だと。



「さぁ如何した?もっと打って来い。お前の力は、こんな物ではないだろう?」

「はぁはぁ……本気で挑んでんのに、拳が掠りもしねぇとは、流石は夜天の守護騎士の将って事かよ……マッタク持って次元が違いすぎるぜ。
 だが、俺は自分からは倒れねぇ!!マダマダ、行くぜシグナム姐さんよぉ!!」

「その意気や良しだ。存分に打って来るが良い。」



……あっちでは、シグナムと三月ちゃんが、全力で戦ってるみたいだけど、其れは横に置いといて、ナカジマ姉妹+ティアナには、此れから私とシグナムとグルムを抜い
たヴォルケンリッター+なたね&はやてのチームと模擬戦をやって貰うの。

実力的は相当な差があるけど、此れは勝ち負けを見る物じゃないから、思い切りやってね?
それと、ナカジマ姉妹&ティアナは、夫々の得意分野をよく考えてポジション編成をしてみて。チームで戦う場合は、個々の技量の他に、チームワークとチーム内での夫
々の役割を的確に割り振る事が大事になって来るから。



「はい、やってみます!」

「勝つ気で行きます!!」



ふふふ、良い返事だよ。
此れは、若しかしたら予想以上の物が見れるかも知れないし、ティアナに関しては、この模擬戦が起爆剤になる可能性は充分にあるからね。

「さて、活きの良さそうな新人が、歴戦の騎士と、一流クラスの魔導師の混成チームに対して、何処までやってくれるか見せて貰おうかな?」

「見せて貰おうかって……流石に、この模擬戦は無謀すぎるですよマイスター?
 確かにスバル達は、並の管理局の魔導師と比べたら実力はあると思うです。実戦経験はないですけど。でも、守護騎士達との力量差は月と鼈どころじゃないです!」

「うん、そうだね。普通にやったら、まず瞬殺だろうね。」

「だったら……」



だけどねグルム、戦いは『戦力の質』だけでは決まらないんだよ?
確かにティアナ達のチームじゃ、ヴィータ達のチームには遠く及ばないけど、其れはあくまでも正面切っての真っ向勝負を挑んだ場合に限られるんだよ?でも、正攻法だ
けじゃなく、使えるあらゆる手段を講じたらどうだろうね?

其れこそ、魔力閃光弾や、魔力煙幕弾、ティアナの幻影、をフルに活用したら勝機は0とは言えないんじゃないかな?
加えて、新人チームと夜天チームには決定的な違いが有るのに気が付かない、グルム?



「決定的な違いですか?………あ!!!夜天チームには『指揮官』となる人が居ないです!
 反対に、新人チームはティアナって言う指揮官が居る……何時も、練習する時はティアナが指示を出してたってスバルが言ってたですから!!」

「正解♪
 まぁ、シャマルが参謀的な存在だから、ある程度の指示を出す事は出来るだろうけど、指揮官と言う事は出来ないからね。だから、夜天チームは、夫々の判断で動く
 事になると思うんだよ。
 対して新人チームは、ティアナって言う指揮官が、ナカジマ六姉妹に指示を出すっていう形になる………この差は、意外と大きいかもだよ。」

さて、ポジション編成が出来たみたいだね?
うん、此れはまた見事な編成になったね。

先ずは夜天チーム。
遊撃のフロントアタッカーにヴィータとはやてを配置し、中核のセンターガードになたね、その両翼を護るガードウィングにズィルバとナハトヴァール、チームの守護の要と
してザフィーラがバックガード、そして支援専門のフルバックにシャマルか……実に見事なポジショニングだね。

対する新人チームは、遊撃のフロントアタッカーにスバルとノーヴェ。
センターガードは……やっぱりティアナだよね。
その両翼を護るガードウィングは、ギンガとチンク。此処までは、夜天チームとポジション分けに差はない。
だけど、残る2つが完全に違う。
新人チームには、防御専門のバックガードと、支援専門のフルバックが居ない代わりに、後方支援砲撃担当の『バックファイア』にディエチを、そしてウェンディは……もし
かしたら、滅多に見る事が出来ない、貴重なポジション。戦場をかき乱して、敵の混乱を誘う事を目的とした『トリックスター』なのかも知れないね。

このポジショニングの差が、如何出るのか……楽しみだよ。



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で、始まった模擬戦だけど、此れは予想以上だったかな?
地力で言うなら新人チームは、夜天チームの足元にも及ばないんだけど、その戦力の差を、ティアナが見事な指示で埋めてるって所だね。お世辞抜きに大した物なの。

そして、思った通り、ティアナは自分のチームのみならず、戦場全てを見通してるかな。
広い視野で、戦局を見極め、そして悪くない指示を出してるし、スバル達もまた其れに従ってる。
加えて恐ろしいのは、ティアナの射撃能力だね。開始早々、夜天チームの上空から雨霰の魔力弾を降らしたと思ったら、チームに指示を出しながら牽制の魔力弾を放っ
て、夜天チームの動きを鈍らせていたからね。

尤も夜天チームは、地力で勝るから、徐々に押し始めているんだけど、明確な指揮官が居ないせいで、どうしても統率性に於いて僅かな綻びが有るみたいなの。
如何に個々の能力が高くても、其れを纏め上げる指揮官が居なければ脆さを露呈するって言う所かな?

己惚れる訳じゃないけど、私が指揮官として存在してる時のヴォルケンリッターはあんなモノじゃないからね。勿論、なたねとはやてに関してもね。
其れでも守護騎士には、今までに蓄積したきた戦闘経験があるから、負けてはいないんだけど、ティアナが講じた奇手・奇策には手を焼いてるみたいなの……まぁ、模
擬戦開始と同時に、魔力弾を降らせるとは思わなかったし、其処からスバルとノーヴェが特攻かまして、チンクがランブルデトネイターの拘束投げナイフ攻撃を行って、デ
ィエチは攻撃の届かない距離から砲撃をブチかまして、ウェンディは兎に角飛び回って戦場をかき乱してるからね。

結果として、戦力差がありながらも、戦況は拮抗してる状態なの。

特に、フロントアタッカー同士のぶつかり合いは、見応え有かな?
スバルの拳とノーヴェの蹴りは、ヴィータのアイゼンとはやてのアロンダイトに全然後れを取ってないからね?……スバルとノーヴェは徹底的にクロスレンジで鍛えるの
が一番だね。

ガードウィングのギンガとチンクも最高評価レベルだね。
チンクが、無数のランブルデトネイターを放って無差別攻撃を行い、その攻撃の合間を縫って来た敵をギンガが攻撃するっていう感じだからね……新人とは思えないよ。

もしも此れが、相手が夜天チームじゃなかったら、其れこそ殲滅可能なレベルだよ?
学生の部活と思ってたけど、如何やらティアナ達は、部活の域を超えて魔導師としての力を高めていたみたいだね?…まさか、此処までやるとは思って居なかったの。



「確かに、思った以上にやりますね、彼女達は。」

「シグナム?三月ちゃんとの模擬戦は終わったの?」

「はい。如何やら出し尽くして、燃え尽きたみたいですので。」

「此れだけの強者との出会い……我が人生に、一片の悔いなし………!!」



うん、まぁ、分かってた事だけど、完全に圧倒したんだねシグナム。三月ちゃんが、真っ白に燃え尽きちゃってるの。……まぁ、直ぐに復活するだろうけどね。
それで、シグナムの目から見て、新人チームは如何かな?



「そうですね……マダマダ荒削りな感は否めませんが、指揮官のランスターを中心としてバランスよくまとめられた良いチームなのではないでしょうか?
 今はまだ経験不足故に、粗さが際立っている状態ですが、此れから経験を積み、そして研鑽を積めば、間違いなく最強クラスのチームになるのではありませんか?」

「シグナムもそう思う?
 そう、ティアナ達はダイヤの原石なんだよ……だから、だから磨き上げればきっと極上のダイヤモンドになってくれる。私は、そう思ってる。」

「その意見には、賛成ですよなのは。」



とは言え、戦力と経験の差はやっぱり大きいからね………



「此処で決めます!!!」

「デカいので、一気に行くわ!!!」



「集え明星、全てを貫く焔と変われ……ルシフェリオン・ブレイカー!!

「此処で引く事は出来ない……ファントムブレイザー!!!



互いに勝負をかけた、必殺の砲撃が炸裂!!!
互いに退かない押し合いを演じていたけど、その押し合いを制したのはなたねだった……まぁ、そうだよね。



「中々やりますね……心躍る、良き戦いでした。」

「やっぱりまだ勝てないか……でも、得るモノは有ったわ。……流石は、歴戦の騎士達、その力を存分に見させて頂きました――ありがとうございました!!」



勝ったのは夜天チームだけど、ティアナには勝利以上の価値が有ったのは間違いないだろうね。……此れは、鍛えるのが楽しみになって来たよ。
貴女の指揮官としての才能は、必ず私が開花させてみせる!!万が一のことを考えた場合、私以外の指揮官が居る事に越した事は無いからね……期待してるの♪








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Side:ティアナ


結果だけを言うなら負けだった。それこそ、其れこそ予想通りの負けだった。
幾ら、高校最強レベルとは言っても、私達が歴戦の魔導師や騎士に勝てるとは思わない……尤も、最初から負ける心算で戦う事は無いから、出来るだけの策を考えて
スバル達に指示を送ったんだけど、其れがかえって良かったのかも知れないわ。

結果論だけど、それで夜天チームの本来のペースを乱す事が出来たみたいだからね……結果的には負けちゃったけどさ。



「其れで良いんだよティアナ。」

「……なのはさん。」

「負ける事で見えて来るモノって言うのは、思いのほか多いからね。
 今回の負けは次に繋がる――そう言うモノなんだよ、ティアナ。―――良く、頑張ったね。
 其れに、ティアナは最後まで指揮官として戦い抜いた……実に立派だったよ、――研鑽を積めば、もっと良いセンターガードに成れると思うから、頑張ってね?」

「はい!此れからも精進します!!」

だけど、なのはさんは褒めてくれた。
……だったらもう一頑張りしないと嘘だわ!!



「でもまぁ、今日の訓練は此処までだから、此のまま各自散会!!使った物は、元の位置に戻しておくように。
 ……それじゃあ、お疲れ様でした!!ゆっくりと身体を休めてね。」

「了解しました、高町なのは教官!!」

「頑張ってねティアナ。貴女なら、きっと私と並ぶセンターバックに成れるはずだからね。
 だけど今はゆっくり休むべき時だよ――指揮官と将が居ないとは言え、ヴォルケンリッター+αと、アレだけ激しい戦闘を行ったんだから、消耗がハンパ無いでしょ?」



はい。
最大限ぶっちゃけて言うと、立ってるだけでも辛いです。……正直、何度も倒れそうになりました。



「やっぱりね。言うなればレベル1で、レベル100のラスボスに挑むような物だったからね、今回の模擬戦は。
 でも、だからこそ私は、ティアナの事を買ってるの。貴女には、指揮官としての類稀な才能が有るからね――その力、これらもドンドン伸ばしていくよ?」」

「は、はい!宜しくお願いします!!」

私に指揮官の才能が……信じられないけど、なのはさんが言うなら、きっとそうなんでしょうね。
そして、なのはさんにそう言って貰えた事が、心の底から嬉しく感じるわ――だって、なのはさんが、私自身も気付いてなかった私の才能を掘り出してくれたんだから。

なら、その期待には応えないと嘘よね?
でも、必要以上のハードトレーニングは逆効果だから、夫々に合ったトレーニングメニューを考えるのも悪くないわね……此れは、思った以上に忙しくなりそうだわ。








――――――








Side:???


……此処は何処なんだ?……そして、私は誰なんだ?
いや、私が誰であるのかは分かって居る……高町なのはの遺伝子をクローニングする事で生み出された生物兵器……それ以上でも、それ以下でもない。



――そう思っていた。



「個体番号、N-9999に付いてなのですが……」

「あぁ、あの出来損ないか。
 クローニングのし過ぎで、既に彼女の面影などなく、精々能力の一部を不完全な状態で受け継いでいるに過ぎん、子供だましの雑魚でしかない。
 洗脳が巧く行けば、私の部下にする事も出来るだろうが、費用対効果を考えると、その案もまた却下だろう………まぁ、所詮は失敗作だ、其のまま廃棄処分にしろ。」



この会話を聞くまでは。
……ふざけるな、この私が失敗作だと?能力の一部を不完全な状態で受け継いだ子供だましだと?……貴様等!!



――バリィィィィィン!!!



「「!!!??」」

「覚悟は出来てるだろうなテメェ等………私を馬鹿にしたその罪、身体で払って貰おうか?地獄への片道切符をくれてやる!!」

「「ひぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」」



死にやがれ、此のクソッ垂れ共がぁ!!



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……死屍累々って言うんだろうな此れ。
結局、此の工場の一切は、完全になくなった訳だな……すこしばかり、虚しいが、だが、おかげで目標も出来た。高町なのはをぶち殺すって言う目標がな。

私のオリジナルにして、最強の魔導師『高町なのは』!……貴様を倒した時にこそ、私は私として生きる事が出来る!!そう遠くない未来に、姿を見せてやる。

精々首を洗って待っていろ、高町なのは!!
貴様の首は、この私が、N-9999が貰い受ける!!――だから、私がお前を殺すまで、誰にもやられてくれるなよ。













 To Be Continued…