Side:シグナム


「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

「………………!!」



――ガキィィィィィン!!!



……私と、こうして互角に打ち合う事が出来るとは、予想以上の手練れだな槍使い?
己惚れる訳ではないが、夜天の書の守護騎士となってからおよそ1000年の間にお前程の腕を持った騎士と戦った事は無かった……戦乱期のベルカであってもな。

パワー、スピード、反応速度に戦術――そのどれをとってもAAAランクであるのは間違いないのではないか?

「故に問いたい。
 此れだけの力を有し、騎士としての誇りも持ちながら、何故こんな事に加担するのだ貴様は?――その力、破壊の為に磨いた訳ではないだろう?」

「………………」



……黙して語らずか。騎士としては、利口な方だろう。
だが、口を割らぬのならば、直接その身体に聞くまでの事……レヴァンティン!!



『委細承知!ヤマトフォームに換装する。』



ヤマトフォームとなったレヴァンティンに、断ち切れぬモノなど存在しない――其れは勿論貴様とて例外ではない。
それ故に、貴様を無傷で済ませる自信がない……貴様を斬ってしまうこの身の未熟を、如何か許してくれるか?槍使いの騎士よ。



「…………………」


――チャキ……



此れを聞いても、あくまでも戦うか……ならば、応えよう!!
夜天の魔導書の守護騎士が将、『烈火の騎士』シグナム、圧して参る!!我が剣閃、受けきれるモノならば、受けてみるがいい!!













魔法少女リリカルなのは~夜天のなのは~  夜天112
『制圧せよ、精鋭の戦士達!』












Side:なのは


うん、良い感じに敵を制圧できてるみたいだね?
守護騎士の皆は言うまでもないけど、ナカジマ姉妹も良い活躍してくれてるし、ティアナだってよくやってるよ。……なにやら謎の、乱入者も居るみたいだけどね。
まぁ、謎の乱入者については、スバルと一緒にガジェットを撃滅してるから、取り敢えず敵じゃないって言う事で考えておいても問題なさそうだね。仮に、敵だったとして
も、私かシグナムが出張れば大概如何にかなるから問題ないし。

さてと、其れは其れとして、いい加減このガジェットを纏めて吹き飛ばしてあげようかな?



「纏めてって……出来るんですか、なのはさん!?」

「出来るよ?……まぁ、やるのは私1人じゃないけどね?」

「は?」



行くよナハトヴァール。準備は良い?



「勿論です。……遠き地にて、仄暗き闇に沈め。滅びよ、レーゲンストリーム!!

「我等に仇なす者達を穿ち貫け……アクセルシューター・アラウンドシフト!!



――キュゴォォォォォォォォォォォォ……ドババババババババババババババババババババババババババババババババババババ!!



「なぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?これは……上空からの殲滅魔法と、自身の周囲360度全てを攻撃する全方位攻撃魔法!?」

「大正解♪問答無用の殲滅魔法と全方位攻撃から逃れる術は、何処にも存在してない……大人しく喰らって屑鉄になってスクラップ業者に回収されちまえって所なの。」

「笑顔で、サラッと恐ろしい事を言わないで下さい!」

「敵対する相手に対して慈悲は必要ないんだよ、ディアナ?」

「其れは確かにそうかも知れませんけど、だからって殲滅魔法と全方位攻撃で撃滅しなくてもいいんじゃないですか!?
 明らかに、オーバーキルのレベルを超えていた威力でしたよ今のは!?」



だろうね。私もナハトヴァールも、そうなる位の威力で放ったからね。


でもねティアナ……今の威力でも私とナハトヴァールは、6~7割程度の力でしか放って居ないんだよ?



「え?……う、嘘ですよねなのはさん?今のが6~7割程度だなんて……普通にディエチの砲撃の3倍の威力は有りましたけど!?」

「魔法に於ける年季の違いって言うやつだよ。それと、踏んできた場数の違いも大きいかな?
 魔法と出会ってから9年経つけど、その間に何度も文字通りの『命懸けの戦い』を経験してるからね……ヴォクシー事件の時は、実際本気で死に掛けた訳だし。」

「考えてみると、壮絶な子供時代ですよね。」

「だよね。まぁ、そう言う訳で、私とティアナ達の間に差があるのは仕方がない事なんだよ、今はね。
 でも、ティアナ達の才能は素晴らしい物が有るから、磨けば必ず極上の宝石になると思うよ?特にティアナは、私の最大奥義の『集束砲』を会得出来るかもだしね♪」

「そ、そうなんですか!?……って、なのはさん!!」



『『『ギギギギギギギギギギギギギ……』』』



ガジェット?……殲滅魔法と全方位攻撃の僅かな隙間で生き残った機体かな?
あらかじめプログラムされた命令に従う事しか出来ない機械だから仕方がないとは言え、最低限のAIを搭載して、撤退を選択できるようにしておいた方が良いんじゃない
のかな?此れじゃあ、無駄に戦力を磨り潰すだけになっちゃうよ?

まぁ、私達には関係ないから如何でも良い事なのかも知れないけど……取り敢えず、ウゼェから消えやがれなの。



『面倒なので消えて下さい。って言うか、思いっきり目障りですから。寧ろ視界に入るなクズ野郎。』



――ドゴォォォッォォッォォォオォオォオォォォォン!!!



「ほ、砲撃一発で敵残存勢力が全滅って……!!」

「全然弱いね。この程度なら、ヴォクシーが使役していた騎士達の方が、まだ強かったよ。
 って言うか、私達を倒したいなら、ガジェットの性能を最低でもガンダ○かエ○ァンゲ○オン級にまで引き上げなないと無理だよ……動く屑鉄に負ける気はないからね。
 それ以前に、夜天の主と守護騎士、そしてその仲間達に喧嘩を売ろうって言うのがそもそもの間違いなの……私達は、この程度じゃ揺るがないよ。」

「本気で凄いですねなのはさん……でも、今ので略終わりでしょうか?」



多分ね。
最高評議会だって馬鹿じゃないだろうから、此れだけの戦力の差を見せつけてあげれば余計な増援を送って来る事は無いだろうからね。ガジェットも有限だろうし、何よ
りも、これ以上手の内を曝すのは拙いだろうし。

だから、此処が撤収の時だよ。
今は、クロノ君の下に戻って、今回の戦闘から得られた情報を元に、此れからの事を考えて行かないとだからね……勿論、貴女にも一緒に来てもらうからね?



『大人しくお縄になりなさい。』



――バキィィィン!




「うおう!?なんじゃこりゃぁ!!!?」

「ガジェットを攻撃してくれてたから、敵じゃないとは思うけど、謎の乱入者を捨て置く事は出来ないんだよねやっぱり?……一緒に来てくれるよね?」(にっこり)

「お、おう……俺としても、寧ろ願ってもない事だぜ……つーか、この人の笑顔、ガチで怖すぎだろ……顔は笑ってるけど、目が全然笑ってねぇ!!…此れが夜天の主か!!



なら問題なしなの♪それじゃあ、全軍撤収ーーー!!
あ、其れからティアナ、今日は良く頑張ったね?初めての実戦で、アレだけ動く事が出来れば上出来だよ……日々の精進を怠らないようにね?



「はい!!頑張ります!!
 よろしくご指導ご鞭撻のほど、お願いします高町なのは師匠!!」

「まさか予想外の師匠呼び!?」

ま、まぁ、ティアナがそう呼びたいなら好きにして良いよ?私が彼是言う事でもないと思うからね。
でも此れは、将来有望な鍛え甲斐のある子に師事して貰ったって言う意味では悪くない……なら、徹底的に鍛えてあげるの。ティアナの潜在能力は凄そうだからね♪








――――――








Side:シグナム


ふむ、正に隙がないなコイツは。
デバイスの使い方、攻撃を回避する方法それらを総合的に判断しても、コイツの実力は凄まじい物が有る――一瞬たりとも気を抜く事は出来ん……其れだけの相手か。

「ムゥゥゥゥン!!」

「………」



私の記憶を探ってみても、此れだけの使い手に会った記憶がない――つまりは、現代では最強クラスの騎士と言う所か?相手にとって、不足はない!
よもやこれだけの手練れが居るとは思っても居なかっただけに、この戦いは心が躍るものが有る。……其処までの手練れとなれば、私の魂も黙ってられぬのでな!!

さぁ、存分にやろうか槍使いよ!!



「………」

「如何した?」

「…………。」



別動隊のガジェットが全滅し、撤退命令が発動された?だから、この場は勝負を預けるって、待てオイ!!其れで良いのかお前はーーー!!!


「…………」



――シュン!



……転移したか……こうなってしまってはどうしようもないか。
だが、何れ奴には問いただして答えさせねばなるまい、何故最高評議会などと言う下衆の極みに力を貸すのかをな……

何故、奴等に力を貸すんだ?誇り高きベルカの槍使いよ……騎士の誇りは、そんなに安い物ではないだろう?……其れなのになぜだ?…考えても答えは出ないか。

まぁ良い、此れからは会う機会も有るだろうから、勝負は預けるぞ槍騎士よ。







――――――








Side:なのは


成程、あのガジェットの集団は、やっぱり最高評議会の手先だったって言う事だねクロノ君?



「あぁ、間違いないだろう。
 手応えのないとの事だったが、あの会場に現れたのは、恐らくはダミー……最高評議会が自ら事件を起こし、其れを最高評議会傘下の魔導師に鎮圧させる事で世論
 の支持を得ようとしたのかも知れないな……君達が思い切り暴れてくれたおかげで、それも絵に描いた餅で終わった訳だけれどね。」

「其れは良いんだけど、シグナムが戦ったって言う騎士に付いては何も分からないのかな?シグナムが言うには、可成りの手練れらしいんだけど。」

「……其れについても調べは付いている。
 レヴァンティンに保存されていた画像を解析した結果だが……恐らく彼は『ゼスト・グランガイツ』と思って間違いないだろう…数年前にMIA判定されていた筈だが、まさ
 か、こんな形で再会するとは思って居なかったよ。」



クロノ君……



「だが、シグナムの報告から、彼が最高評議会の手駒と化してる事は間違いない。
 精神操作か洗脳かは分からないが、管理局最強の騎士が敵に回った事は間違いない……彼の力は本物だから、くれぐれも注意をしてほしい。」

「確かに、彼は真の騎士だったからな……アレを打ち倒すには、私も本気を出さねばならないだろうと思いますからね。」



シグナムが其処まで言うって言う事は、相当な人なんだね。
だけど、其れだけの人が自ら最高評議会に靡くって言う事は考え難い……恐らくは、クロノ君の言うようにMIA判定された後に、最高評議会が何かしたんだろうね多分。

まぁ、其れは何とかなるだろうから兎も角として……此の『謎の乱入者』は如何したモノかなクロノ君?



「如何したモノだろうなぁ?
 明らかな敵対行動をしたというのならば処分も簡単なんだが、彼女はガジェットの撃破に貢献してくれたからな……其れを踏まえると、法の下に裁くのも躊躇われる。」

「だよねぇ?」

諸手を上げて味方とは言えないけど、だからと言って敵とも言えない………本気で、如何したらいいのか迷うよ此れは。
大体にして、貴女は一体何者なの?



「何者って……セクレタリーズの特攻隊長トーレ・ザ・インパルス!本名、三月・スカリエッティ以外の何者でもねぇ!!」



うん、馬鹿正直に答えてくれてありがとう。取り敢えず、貴女が嘘を吐く事の出来ない性格だって言う事は良く分かったよ……絶対に嘘は吐けないタイプだろうからね。
だけど『スカリエッティ』って……若しかしなくても、前に聞いたグランツ博士のお友達?だとしたら――



――ヴィオン!



!?……光学ヴィジョンが行き成り!?……此れは?



『ふむ、上手く繋がったようだね?あ~~~、テステステス、本日は晴天なり。――うむ、マイク感度も悪くないようだ。』

「……誰なの?」

『おぉっと、此れは失礼!!不躾なコンタクトとなってしまったが、先ずは名を名乗らせてくれたまえ。
 私の名は、ジェイル・スカリエッティ!!一介の科学者さ!!以後、お見知りおき願おうか!!』




この人が、ジェイル・スカリエッティ……グランツ博士のお友達!!!……初めまして、高町なのはです。



『おぉ!君が此度の……否、歴史上初めて現れた夜天の魔導書の正統継承者か!!……ふむ、素晴らしい力を持っているようだね。実に素晴らしい魔力だ!!
 っと、スマナイ、少々暴走してしまったようだね。
 さて、今回こうして通信を繋げたのは伊達や酔狂ではない……此れは一種の提案なんだが、私と手を組む気はないかね、高町なのは君、クロノ・ハラオウン提督?』


「なに?」



でも、まさか、そんな大胆不敵な提案をしてくるとは思って居ませんでしたよスカリエッティさん。


だけど、その提案そのものは悪くない。……そう、思える感じがします――この同盟を、本気で考えても良いんじゃないかって考える位にはね。








――――――








Side:三月


コイツは、如何やら親父の望んだ展開になるかも知れないぜ。……おかげで俺は絶賛グルグル巻きだけどな。

っつーか、高町なのはさんには絶対逆らっちゃいけねぇな……下手に逆らったら、存在そのものが吹き飛びかねないからな……あの人には従うが吉だぜ。うん。
まぁ、親父との同盟は結ばれそうだから、命の危機を感じる事は無くなったんだが……ソロソロ、俺を拘束してるバインドは解いてくれねぇかなぁ!?
いい加減動きづらいんで、マジで解除してください!!お願いします!!!

何て声は届かず、自由になれたのは其れから2時間後の事だった……素性不明のまま、下手な乱入はすべきじゃないって、心の底から学んだぜ……













 To Be Continued…