Side:スカリエッティ


ふむ、オークション会場は、中々に賑やかな事になってるみたいだが、此れだけの舞台ならば、私達の存在を世に知らしめるには申し分ない……否、最高の舞台だ。
と言う訳で、出番だ三月、精々思い切り暴れてくれたまえよ?



「言われるまでもねぇぜ親父……正直、暴れたりなくてイライラしてたからな……ソイツを思い切り発散してやらぁ!!!」



――ゴォォォォォォォォォォ!!



「どわ~~~!!少し出力大きすぎますわよ、トーレ姉さま!!」

「少し出力がでかい位で如何したぁ!!出力の限界突破でもしなきゃ、あの人達と一緒に戦う事なんざ出来ねぇだろうがぁ!!
 この際、出力が如何のなんて事は二の次だ……俺は、俺の思ったままに動かさせて貰う!!――別に其れでも構わねぇんだろ親父?」

「あぁ、マッタク持って問題なしだ。――精々思い切り暴れて来てくれたまえ!!」

私の娘達の中でも、三月は類稀な才能を有しているから、その才能を開花させるためにも、少々荒療治的な訓練も施しはしたけれど、まさか此処までとは予想外だ。


だが、だからこそ期待出来る。
私が手塩にかけて育てた娘達だ、その力は最強クラスであろう事は間違いないだろうからね……まずは、三月の初陣を白星で飾るとしようかな!













魔法少女リリカルなのは~夜天のなのは~  夜天111
『Grober Balgerei-Anfang』












Side:なのは


ほらほらほら、如何したの?その程度の鈍い動きじゃ、オークションに出品された品の1つでさえも持ち出す事は出来ない――其れじゃあ只の良い的でしかないよ?
って言うか、狙いは私とシグナムだろうから、尚の事負ける事は出来ないの!!

穿てディバインバスター!!!



『Divine Buster.』


――ドゴォォォォォォォォォン!!




「斬り捨てる……紫電一閃!!



――ズバァァァ!!!



「瞬刃烈火、迷いはない!」



そのシグナムもまた大ハッスルだね?
私のバスターの隙を補う様な、見事なベルカ式斬撃砲……烈火の将は、味方だとこの上なく頼もしいってう事を実感した感じだね此れは。だから、頼りになるけどね。



「ご無事ですかなのは?」

「見ての通りだよシグナム。私は大丈夫……って言うか、この程度の相手に後れを取るような、柔な鍛え方はしていない心算だよ?」

「其れは心得ていますが、騎士としては、主の身の全てをお守りするのが役目故、怪我には十二分に注意をしておいてください。――約束していただけますか?」



そう言う事なら大丈夫だよ。
皆が、特にシグナムが私の事を大切に思ってくれてるのは良く分かるからね……無茶と無謀は絶対にしないって約束するの。夜天の主の名に誓ってね!!



「其処まで……ならば、私には信じる以外の選択肢などない。
 盲目的と言われるかも知れませんが、貴女の選んだ道は正解だと、私は信じています――何処までも、御一緒しますよなのは。」

「ありがとう、シグナム♪――なら、そろそろリミッター解除で行っちゃおうかな?」

『行きましょう。寧ろ行くべきです。手加減不要の相手ゆえに、全力全壊で()ってしまいましょう。』



レイジングハートも、バッチリ平常運転だね?其れが、実に頼もしいの!!
でも、やる前にチーム分けをしないとね。

「襲撃者は、恐らくまだまだやって来る筈だから、此方からも仕掛けるよ。
 ギンガ、ノーヴェ、チンクの3人は、なたね、はやて、ザフィーラ、シャマル、ズィルバと共にホテル内に残って、市民の避難誘導とホテル内の敵の殲滅、そしてオーク
 ションに出品されている商品を護って。
 他は、全て私と共にホテル外に出て、新たにやってくる敵を殲滅するよ――やれるよね?」


「はい、勿論です!」

「やってやりますよ、絶対に!!」

「その任、果たして見せましょう。」


「が、頑張ります!」

「大丈夫、アタシ達なら行けるよティア!」

「漲って来たッスね~~~!思い切りやってやるッス!!」

「うん、頑張る。」



良い返事だね?期待してるよ♪

其れじゃあそろそろ行こうかな……グルム!



「はいです、マイスターなのは!」

「ユニゾン、行くよ?」

「はい!!行くです……ユニゾン――」

「イン!!」



――轟!!



融合完了。今日も融合率120%です!



うん、良い感じ。流石は、グランツ博士が生み出しただけの事はあるよ……グルムとのユニゾンは、文字通り身体に馴染む感じ。其れこそ、長年使って来た得物を手に
しているかのように馴染んでるからね。

そして、ユニゾン状態になった私は正に天下無敵!この状態の私に勝つ事が出来るのは、多分調停者モードレベル2に変身したシグナム位しか居ないと思うよ?

故に、此の無人機械兵なんかは屑鉄でしかない……一機も残さずに殲滅するよレイジングハート!



『勿論です。序にコイツ等の残骸を屑鉄回収業者に売り払えばソコソコの金額になるでしょうから、六課の活動資金になりそうですし。』



言われてみれば確かにそうかも知れないね?全部金属製の機械な訳だし。
だったら、大破させないで駆動系を潰す方向で行った方が良いかもしれないね?売り払うにしても、無事な部分が多い方が高く売れるだろうから♪

でもまぁ、其れは其れとしても、此処で圧倒的な力を見せつておくのは良い手かもしれないね?――この無人機を嗾けた連中に、圧倒的な力の差を見せてやる事が
出来るだろうからね。

精々、誰に喧嘩を売ってしまったのか、後悔すると良いの!








――――――








No Side


こうしてチーム分けが成されて、本格的に始まった戦闘は、文字通り圧倒的だった。
ホテル内のガジェットは、はやてとなたねとギンガとノーヴェとザフィーラによって完封され、チンクとズィルバがガジェットの攻撃を捌きつつ市民の避難誘導を行い、出
品された品々は、シャマルが強固な結界で覆って防御している。
ホテル内は先ず大丈夫だろう。



そして、ホテルの外でもなのは達は略無双状態だった。

なのはの砲撃が、シグナムの斬撃が、ヴィータの轟撃が、ナハトヴァールの射撃が放たれる度に、ガジェットが1体、また1体と撃墜されて行く。正に一騎当千だろう。

無論、スバル達だって負けてはいない。
スバルは得意の格闘でガジェットを粉砕し、ウェンディはトリッキーな動きでガジェットを翻弄し、ディエチは砲撃と射撃を巧く使い分けてガジェットを撃破していく。

そしてティアナもまた、誘導弾をメインにした戦術で、ガジェットを1体1体確実に撃破していた。



――が、此れだけの混戦ともなると、予想だにしない事態と言うのは如何しても起きてしまう……或は、起きて然りな事なのかも知れない。



「しまった!!」


戦いの最中、ティアナの手元がすぐ近くで起きた爆発の影響を受けてぶれてしまったのである。
其れだけならば、大した事ではないが、最悪な事にデバイスのトリガーを半分以上引いていた状態であったために、ぶれた状態でトリガーが引かれてしまったのだ。

そして、撃ち出された魔力弾は真っ直ぐにスバルに向かっている。
仮に直撃したところで、スバルの頑丈さならば大丈夫だろう。なんせ中学時代は、『スバルはマウスの128mm砲を喰らっても絶対平気』とまで言われた位なのだ。

だがしかし、如何に頑丈とは言っても、己の放った魔力弾が親友を攻撃するなどと言う事は、ティアナでなくとも見たくない光景だろう。



――ドン!!!



だが、その光景は現実にはならなかった。



「中々に、悪くない魔力弾だね?」



何故ならば、なのはがティアナの放った魔力弾に、己の魔力弾をぶつけて軌道を変え、その全てをガジェットに着弾させていたからだ。
果たして、複数の魔力弾の軌道を変える事がとも思うだろうが、天性の空間認識能力を有するなのはにとって、複数の魔力弾を感知する事など、造作もない――つま
り、なのはには敵の魔力弾も、ティアナの魔力弾も、その軌道が読めていたのである。



「弾の強度は充分だけど、威力と弾速はもう少し上げた方が良いね。」

「す、凄い……!」



そして、ミスショットをしてしまった当のティアナは、己の前に立つなのはの凄さを、改めて実感していた。
こんな不測の事態にも慌てる事は無く、最善の選択が出来る『高町なのは』と言う女性の強さと、器の大きさを肌で感じたのである。



「此れだけの混戦だからフレンドリーファイヤーの1発や2発は有って当然なんだよ?だから、大切なのはその後の事。
 一度の失敗で恐れるよりも、其れをバネにして更なる高みを目指した方が良いよティアナ?
 其れに、失敗しても良いんじゃないかな?この場には、失敗をフォローできる人が集っているんだから……だから、失敗を恐れずに思い切りいってみようよ?」

「は、はい!!」



なのはは、決してティアナの誤射を攻める事はしなかった。
それどころか、フォローは出来るから、失敗を恐れずに兎に角思い切りやってみろと言ったのである。

普通の部隊であれば、味方への誤射など言語道断であり、即座に除隊だろう。
だがなのはは、ティアナの誤射の真実を見抜き、その上で失敗をしてもフォローが有ると言う事を伝えた上で、ティアナの能力の向上を目指したのである。


そして、其れは効果覿面!誘導弾の弾道を、己の誘導弾をぶつけて変える等と言う離れ業を披露して見せたなのはに対して、ティアナが抱いたのは憧れと羨望だ。


子供の頃からなのはに憧れていたティアナだが、成長してから改めてその力を見せられた今、その思いはより強くなった事だろう。
何よりも、その憧れの人が『失敗したらフォローしてあげるから、失敗を恐れずに思い切りやれ』と言ってくれたのだ――これ以上の事は無いだろう。



「クロスミラージュ……行くわよ!」

『了解しました。』



故に、恐れる物など何もない。
ティアナ・ランスターと言う少女が、真の『戦う者』として、覚醒した瞬間だった。








――――――








Side:スバル


分かってた。分かり切ってた事だけど、改めて目にすると凄いなぁ、なのはさんとシグナムさんて。無人機なんて、あの人達の前では『動く屑鉄』にすらならないよね?
圧倒的な破壊力の砲撃と射撃で敵を殲滅するなのはさんと、その砲撃と射撃をかいくぐって来た敵を、問答無用で斬り捨てるシグナムさん……正に最強その物だよ。



「ちぃぃぃ……燃えろぉ!!」

「雑魚がごちゃごちゃと……目障りな事この上ないの!」



――ドガァァァアッァァァァァァァァッァアァァァァァァァァァァァァァァァァァァン!!



今もまた、一撃で十数体のガジェットを屑鉄に変えて見せたからね……何て言うか凄まじい事この上ないよ。
だけど、だから頼りになる!アタシ達の全てを委ねる事が出来る……なのはさんだったら、きっと最上のエンディングを選んでくれるだろうからね。――って!!



『ゴギャァァァァアッァァァァァァアァァ!!』

「!!!!」

ガジェット!!
全然気づかなかった……だけど、此れは拙いかも――この直撃を喰らったら、幾ら何でも!!



――ガキィィィィン!!



「え?」

し、衝撃がこない?一体何で……?



「オイオイオイ、戦闘中に物思いにふけるのは止めておいた方が良いぜ?ガジェット共が何をしでかすか分かったもんじゃねぇからな?」

「!!!」

目を開けると、其処には青紫の髪をショートヘアーにした人が、私達を襲って来たガジェットを拳で貫いていた。――貴女は一体……



「トーレ・ザ・インパルス。其れが俺の名だから覚えときな。
 そんでもって、もっと言うなら俺等はお前さん達の敵じゃあない――俺達の敵は、最高評議会だからな……まぁ敵の敵は味方ってやつさ。」



少なくとも敵じゃないなら、助かります。――なら、このまま一気に行く!其れだけだよ!!








――――――








Side:シグナム


マッタク持って他愛ないな……この程度では、レヴァンティンの錆にもならん。この程度の屑鉄の相手をするくらいならば、三流映画を見る方が有意義と言う物だ。
そもそもにして、私となのはのコンビネーションは、剛健質実にして絶対無敵!敗北など、考える事すら出来んさ。

「貴方もそう思うだろう?」

「………」



黙して語らずか……私の前に突如現れた、槍使いの男は、中々に出来るようだな?
無言で槍を構えるその姿は、歴戦の強者と言っても過言ではないだろうが、それ以上に滲み出るオーラに、圧倒された……間違いない、コイツは強者だ!!

「一槍、お願いできるか?」

「……」



沈黙は肯定ととるぞ?――少しばかり、派手に行くとしようじゃないか!!――見せて貰うぞ、貴様の力をな!













 To Be Continued…