Side:スバル
そんなこんなで、やってきましたオークション当日。
クロノ提督が用意してくれたドレスを着込んで、ホテルアグスタに来た訳なんだけど、ドレスなんて普段着る機会がないから、似合ってるかどうか少しばかり不安かな。
ティアは良く似合ってると思うんだけど……アタシは如何かな?変じゃないかな?
「~~~///!!……アンタのその姿を変だって思う奴が居たら、アタシは速攻で眼科の受診を推奨するわ。
少しばかりカジュアルなデザインだけど、其れが逆に良く似合ってるんじゃないかと思うわよスバル。」
「本当に!本当に似合ってる!?」
「ティアの言う事に間違いはねぇっすよスバル姉ちゃん!
今のスバル姉ちゃんは、ボーイッシュな魅力を120%引き出した極上の美人さんっす!同性で姉妹じゃなかったら、アタシだって惚れてるくらいっすよ!!!」
えっと、其れは褒め言葉だよねウェンディ?なら、有り難く受け取っておくよ。
其れよりも、なのはさん達は?
なのはさん達も、クロノ提督が用意してくれたドレスやら何やらでドレスアップしてる筈だよね?
「アタシ達とは質が違うんでしょ?準備にだって時間がかかる筈よ。
だけど、其れだけにドレスアップしたなのはさん達は、きっと破壊力抜群の美しさを備えてると思うけど。」
「それは、確かにそうかもね。」
だけど、ワクワクだよ――なのはさん達が、どんなドレスアップをしてくるのか、楽しみだからね♪
魔法少女リリカルなのは~夜天のなのは~ 夜天110
『ホテル・アグスタ~六課初任務~』
Side:シグナム
ふぅ、漸く着替えが終わったか。
クロノ提督も、考えてドレスやら何やらを選んだようだが、真剣に悩んで選んだ結果、随分と高価な物を選んだようだな?衣服の事には明るくない私でさえ、此れが相
当に高価な物だと言う事が分かる。
果たして1着につきゼロが何個付く物なのか……あまり考えない方が良さそうだな。
「どう?似合ってるかなシグナム?」
そして、そんな中で着替えを終えたなのは……実に素晴らしい。薄い桜色のドレスが、良く似合って居ます。――正に、一国の姫君の様です。
ですが、此処は敢えて……
「シグナム?」
「……馬子にも衣裳だな。」
「えぇ!?」
そう驚かないで下さいなのは。本番は此処からですので。
「全く理解に苦しむ、こうしてドレスを纏って居れば只の可憐な姫君だと言うのに、何故鎧を纏い、剣を携えて戦場に出て来るのか。
だが、今のお前の身柄は俺の下にある。もう、戦場に出る必要などない……黙って俺の物に成れ。」
「へぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?あう、へう………ふにゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ~~~~~」
――ボン!!!
って、なのは~~~~!!!大丈夫ですか、お気を確かにーーー!!!
それ以前に何故そう成るのですか!?今のは、はやてに教えて貰った現代劇のセリフを真似ただけの物……その程度の事で、こうなりますか普通!?
「し、シグナムが言うと破壊力がハンパ無いんだよ普通に。
其れに『俺の物に成れ』だなんて……そのセリフは、普通に乙女殺しだよシグナム……我が人生に、一片の悔いなしなの――!!」
「其のセリフは死亡フラグですよなのはーーーーーーー!!!」
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はぁ、はぁ……落ち着きましたかなのは?
「うん、大丈夫だよシグナム。暴走しちゃってごめんね?」
「いえ、お気になさらずに。」
元はと言えば、柄にもない事をした私のせいですので。と言うか、『シグナムが言ってあげたら、なのは姉やんは絶対に喜ぶ』とか、逆効果だったじゃないかはやて。
なたねがはやての事を『悪戯好きの子だぬき』と称していた事が有ったが、成程あながち間違いではない様に思えて来たよ。
「なはは……まぁ、はやての悪戯は本当に誰かに害を与えるような悪質な物は無いし、笑って許せる範囲だから大丈夫だよ。其処の境界線は、弁えてると思うし。
其れよりも、さっきは暴走しちゃって良く見てなかったけど、シグナムも良く似合ってるね?」
「何故か、ドレスではなくスーツなのですがね。そのお蔭で、動き易いのは確かですが。
しかもスーツそのものは女性物であるにもかかわらず、何故かタイトスカートではなくスラックスでデザインは男性物風……明らかに特注品でしょう此れは?」
「多分ね。だけどだからこそ良く似合ってるんだよ?
9年前の授業参観の時じゃないけど、今のシグナムは『男装の麗人』その物だもん。すっごく格好いいの♪」
9年前の授業参観とは懐かしい物ですが、貴女が良いと言うのならば良しとしましょう。
何よりも動き易いので、有事の際にはそく動く事も出来るでしょうからね――さて、皆も着替え終わっている頃でしょう?待たせるのも良くありませんし、そろそろロビー
に向かった方が宜しいかと。
「そうだね。――それじゃあ、エスコートしてくれるかなシグナム?」
「Sicher. Meine Prinzessin.(御意に。我が姫君。)」
「Bitte, mein Ritter.(宜しくね、私の騎士様。)」
では参りましょう。
ふむ、予想通り、皆着替え終わっていたか。
しかし、此れはまた良く似合っているな?私達が自分で選んだ訳ではないのに此処までとは、クロノ提督は中々に『その人に合った物』を選ぶセンスが有るのかもな。
唯一の男性であるザフィーラにも、ワイルドさを損なわず、しかし正装である事を崩さない様に、紋付き袴を選んだようだしな……いや、意外な程似合うモノだ。
だが、お前は全く別人だなヴィータ?
「仕方ねぇだろ、子供の姿じゃ会場は入れねぇんだし。
子供の姿のままじゃ、中学や高校で問題になりそうだからって勉強してた変身魔法が、まさかこんな所で役に立つとは思わなかったけどさ。」
「そう言えば、お前は結局中学、高校と、本来の姿のまま過ごしたのだったな。確か『小さな先輩』として大人気だったと記憶しているが。
だがしかし、敢えて問うぞヴィータ……その大人モードで、何故私よりも、更には姉さん達よりも背が高い!!確実に175cmは有るだろう!」
「いっつも上から見られてんだから、こう言う時くらい上から見たって良いだろ!!こんな時でもなけりゃ大人モードになる事だってねぇんだから!!」
それは、確かにそうかも知れんが、普段見下ろしている相手に見下ろされると言うのは、何とも不思議な感覚だな?
だが、ヴィータの大人モードを予測してドレスを発注したクロノ提督の勘の良さには脱帽だがな?――一体、彼は何手先を読んでいると言うのだろう?或は、此れも才
能なのかも知れないな。
「多分クロノ君は、生まれつき勘が鋭いんだと思うよ?其処に、努力が加わって今のクロノ君があるんだと思うの。
そして、そのクロノ君直々に頼まれたお仕事だから、此処は秘匿部隊『機動六課』として、頑張らないとだよ?――皆も、気合を入れて行くよ?」
「「「「「「はい!!」」」」」」
「頑張るッス!!!」
「下らねえ事してきやがった奴は、その場でぶっ潰してやるぜ!!」
「其れが、我等の務めだからな。」
「気を引き締めて行きましょう!」
「己に課せられた任は果たさねば、だな。」
「ならば、果たすまでさ。」
「うん!頑張るです!!」
「思い切りやったろうやないか?……心がバーニングソウルしそうやで!」
「それでは、始めましょう。」
そして、なのはの統率力も、ある意味で『天武の才』なのかも知れないな?
はやてとなたね、そして我等守護騎士は兎も角として、スバル達までなのはの一言に従っていると言うか、完全に乗せられている感じだ。――つまりは、なのはが持っ
て居た生来の『カリスマ性』がそうさせているのだろうな?
マッタク、本気でトンでもないお方だな貴女は。
だが、だからこそ貴方に絶対の忠誠を誓う事が出来ると言うモノだ。
――お任せ下さいなのは、守護騎士の筆頭騎士として、何よりも貴女のパートナーとして全力を尽くします……さて、行くとしましょう!!
――――――
Side:なのは
そんな訳で始まりましたオークション。
珍品や名品が出てくるたびに、セレブな人達が競り落としてるね……何て言うか、失礼かもしれないけど、オークションて本気でお金持ちの道楽だよね?一般人だった
ら、こんな散財上等の催し物には出ようとすら思わないだろうからね。
まぁ、合法のロストロギアが出品されるって言う事もあって、此れだけの人が集まってるのかも知れないけどね。
一応クロノ君から、『何もしないと怪しまれるから、目ぼしい物が有ったら競り落としてくれて構わない。其処は経費で落とせる』と言われてるけど、此れと言って競り落
としたいと思う物が今の所は無いって言うのが現実かな?
スバル達もそうみたいだからね。
『さぁて、次なる品は此方!!
古代ベルカ時代のお宝で、なんとかの『オリヴィエ聖王女』が愛用していたと言われる耳飾り!!鑑定書付きの本物の本物!!先ずは、10万から!!』
だけど、次に出て来たのは……此れは!!!
鑑定書付きのオリヴィエの耳飾り……シンプルなつくりだけど、物凄くハートに響いて来たの……其れを手に入れろって!!それじゃあ、30万なの!!
此れは、絶対に競り落とさないと絶対に後悔するの!!
『行き成り30万来たー!!』
「なら、俺は50万だ!!」
「80万!!」
「95万!!」
ぐ……此れは思った以上に競ってくるね?
だったら、此処で切り札を切るまで………300万だよ!!!
『さささ、300万~~~!?他に誰か……い、いらっしゃらないようなので、此方の品は、貴女の物になりました~~~~!!』
やった、競り落とせたの!
「良かったですねなのは。
ですが、何故この耳飾りを?古代ベルカの意匠が感じられる、シンプルなデザインの良品だとは思いますが……」
「何となく、此れは誰にも渡したくないって思ったんだよ。なんで、そう思ったのかは私にも分からないんだけど、兎に角そう思ったの。」
「ならば、嘗ての聖王女の愛用していた耳飾りは、きっとなのはが受け継ぐべき物だったのでしょう。
だからこそ、貴女は其れを手に入れようとした――きっと、そう言う事でしょうからね。」
成程、そう言う考え方もアリかな。
でも、其れは其れとして――感じてるよね、シグナム?
「……えぇ、決して小さくない力が此処に向かってきています……恐らくは――」
――ドガァァァァァァァァァァァァァァァァン!!!
!!!……ステージが爆発して、中からガジェットが出て来た!?……如何やらこれは、クロノ君の読み通りの大当たりみたいだね!!
突然の事に、オークションに参加してたお客さんは大パニックだけど、落ち着いてください!!
大丈夫です、此処は私達と管理局が何とかしますから、誘導員の指示に従って速やかに避難してください!!絶対に立ち止まらない様に外に向かってください!!
「良くない予感ほどよく当たるとは言いますが、まさか予想通りの展開になるとは全く持って笑い話にもならないが……如何いたしますか、なのは?」
「此処で其れを聞くシグナム?
答えは決まってるよ……市民の安全を最優先にして、敵の殲滅!!但しガジェットは、出来るだけ破損させずに倒して、中の記憶媒体を取り出していく方向で!!」
「Jawohl.Meister NANOHA!(了解しました、なのは!)」
機動六課としての初任務……精々、私達の力を知ると良いよ、最高評議会!!――そう遠くない未来に、夜天の主が直々に裁きを言い渡してあげるからね!!
――――――
Side:スカリエッティ
此れは此れは、ホテル・アグスタのオークションでトラブル発生か。
其れほど大きな規模ではないが、襲撃を掛けて来たのは最高評議会が有する機械兵――ガジェットだったか……まぁ、ある意味で良いタイミングと言えるかもだよ。
「つまりは、いよいよ俺の出番って事か?――そうなんだろ、親父!!」
「あぁ、君の出番はもう直ぐだから、体を温めておきたまえ『三月』!!」
「言われるまでもねぇ……やるならトコトンやってやんぜ!!」
ならば大ハッスルしてくれたまえ。
ここいらで、我等の存在を世に知らしめる必要があるからね―――――――
To Be Continued… 
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