Side:シグナム


そんなこんなで、私達は、現在『次元航行艦アルテミス』に搭乗して、ミッドチルダに移動している最中なのだが……



「くか~~~~……」

「此れから先には緊迫した情勢が待っていると言うのに、其れを全く気にせず、移動用の船で熟睡をして見せるとは、相当に肝が据わっているな、なのはは?
 尤も、其れ位でなければ、困るのだが……果たして、なのはは怖い物が有るのかどうか、少し疑ってしまうな。」



其れについては大幅に同意しますよクロノ提督殿。
なのはは兎に角物怖じをしない上に、何が有ろうともどっしりと構えて、絶対にパニックになる事は無く、どんな時でも冷静に、そして綿密かつ大胆な作戦で戦いを切り
抜けて来たのですから、間違いなく大物なのは疑いようもない。

付け加えて言うならば、なのはは砲撃で撃滅できる相手に関しては怖いもの知らずですよ。



「成程な……だが、そう言われてみると、此れから大きな戦いに臨む事になるかも知れないのに、此れだけの大胆に寝る事が出来るのは、彼女ならではだと思う。」

「それだけ、なのはは度胸があると言う事ですからね。」

記憶を探ってみても、戦乱期のベルカに於いて、此処まで肝の据わった者は見た事がない……つまり、なのはの胆力は、戦乱期の猛者の其れをも上回ると言う事な
のだろうな。


ともあれ、そろそろ目的地に到着するようだから、そろそろお目覚めの時間ですよ、なのは。













魔法少女リリカルなのは~夜天のなのは~  夜天107
『夜天の主の宣戦布告である』












Side:なのは


あふ……何て言うか良く寝た~~~って感じだね。
次元航行艦に乗ってから少しして眠っちゃったから、あんまりミッドチルダに到着したって言う感じはしないんだよね……実際には到着してるんだけどさ。



「お目覚めになりましたか、なのは?」

「うん、おはよう、シグナム。」

「はい、おはようございます。
 余りにも熟睡していたので、若しかしたら起こしても起きないのではないのかと、少しばかり心配をしてしまいましたが、其れはどうやら杞憂であったようですね?」



ん~~~~?なんて言うか、不思議とアッサリ目が覚めたんだよね?何時も通りに、シグナムが起こしてくれたからかもしれないけど。
もっと言うなら、夜天の主として成すべき事は、寧ろ此れからが本番になりそうだから、身体は眠ってても、心の方は確りと起きていたのかも知れないね。



「かもな~~~。
 んでさ、アタシ等がこっちに来た事って、最高評議会とか言う奴等には知られてねーのか?こんなに堂々とやって来たら、流石に分かっちまうんじゃねぇの?」

「確かにヴィータの言う通りだな?その辺はどうなっているのだろうか、クロノ執務官?
 其れほど大きくないとは言え、管理局の次元航行艦がミッドに入港したとなれば、当然管理局の方でも其れは把握してると思われるのだが……」

「あぁ、恐らく――と言うか、確実に最高評議会のメンバーも、君達がこっちに来てる事は把握してるだろうが……だが、其れで良いんだ。」

「ほえ?其れって如何言う事なのクロノ君?」

此れからの事を考えると、私達がこっちに来たって言う事は向こうには知られない方が良いんじゃないのかと思うんだけど、そうじゃないの?
詳しく教えて貰えるかなぁ?



「なに、簡単な事さ。
 あのテロ紛いの一件から暫く経って君達はミッドにやって来た、だから連中はきっとこう考えるだろう『自分達の攻撃が高町なのはに脅威を感じさせ、次なる攻撃が
 行われる前に、自分達の傘下に入ろうと、ミッドにやって来た』とね。酷く浅い思考としか言いようがないんだがな。
 だからきっと、本局に到着して、僕の提督室に君達を案内したその瞬間に、向こうから通信が入るだろう、『自分達の仲間となれ』って言う感じの内容の通信が。」

「馬鹿の集まりなのでしょうか最高評議会は?
 幾ら己に都合の良い思考形態をしているとは言っても、姉さんが最高評議会に与しないのは火を見るより明らかだと言うのに、其れを狙うとは愚劣の極みですね。」

「所詮は欲に塗れた烏合の衆……我等の主の事を、全く理解していないと見える。」

「あぁ、彼等は自分達の物差しでしかなのはの事を計って居ないからな。
 だから、君には彼等からの通信が入ったら、ハッキリと己の意思を伝えて欲しいんだ。何だったら、最高評議会に対して宣戦布告してくれたって構わないさ。
 君達を、此方に連れて来ると決めた時点で、最高評議会との全面戦争は視野に入れているし、その為の準備だって行っていたからな。」



成程ね……なら、向こうからの通信が来たら、迷わずに全力全壊で『ノー』を突きつけてやるの!!
大体にして、夜天の主は、友や仲間には力を貸すけど、力で与そうとする輩に対しては徹底的に敵対する性質だって言う事を忘れたらダメだよ?……一度とは言え、
海鳴を襲撃したその時に、最高評議会は私の中で、そして私達の中で討つべき敵として認識されているからね。



「頼もしいな。
 9年前の時も思ったが、君こそが夜天の主には相応しいのだと思う――と言うか、きっとなのはは元来、人の上に立つ存在なんだろうな。
 人を引き付ける魅力に天性のカリスマ性に加え、人と人の絆を結ぶ力……マッタク持って、真なる指導者に必要な要素を全て備えているから、恐れ入るよ。」

「此れだけ頼りになる騎士の主が、ヘッポコのヘタレじゃ格好が付かないからね。」

「違いない。」

「では、参りましょうかなのは?
 我等の意思を示し、邪悪なる者を滅する為の戦いを始める為のステージに。」



うん、行こうかシグナム!
海鳴を襲撃した事は、絶対に許せないし、地球そのものを管理世界にしようなんて言うのが、ドレだけ傲慢で愚かな事なのか、バッチリ教えてあげるの!!



「燃えていますね姉さん?」

「今の私は『阿修羅すら凌駕する存在』だよなたね。」

「姉やん、アンタ何処のグラハムさんやねん!!」(分からん人はガンダム00グラハムでググってや。Byはやて)



其れ位に昂ってるんだよはやて。
少し強い程度の野良犬が、夜天の龍虎に盾突いた代償がドレだけ大きい物なのかって言うのは、身をもって味わわせてやらないとだから、やる以上は徹底的にね。



「あっちゃ~~~……これは、完全に姉やんの逆鱗に触れてもうたな最高評議会は――心の底から合掌やで。」

「最高評議会終了のお知らせが入りましたってやつだよな此れ。」

「お知らせどころか、始まる前から終わっている。
 マイスターなのはを敵に回した時点で、最高評議会には滅びの道しか残っていないと言う物だ。」



その通りだよナハトヴァール。
生憎と、私は明確な敵意を示した相手に慈悲をくれる程に優しくはないから、やるなら徹底抗戦で叩き潰すだけ!!だから、最高評議会だって叩き潰してやるの!!



「あぁ、頼りにしているぞなのは。」



任せておいてクロノ君!
最後の夜天の主として、そして何よりも高町なのは個人として、最高評議会は絶対に許してはならない、滅すべき相手だって今改めて確信したからね!!








――――――








Side:シグナム


さてと、そんなこんなでハラオウン提督の提督室に来た訳だが、提督殿の予想通りに、最高評議会からなのはに対して通信が入った。――が、その内容は呆れて物
が言えないと言うレベルではないな?

脅迫紛いの(実際に脅迫なのだが)交渉に加え、ドレも此れもがなのはの逆鱗に触れるような事ばかりだ。良く、なのはは耐えていると言うべきだろうな。



『如何に魔導技術を発展させたとは言え、あの星はマダマダと言うべきだろう。
 だからこそ、私達で保護してやろうと言うのだ……悪い話ではないだろう、高町なのは殿?』

「確かに、破格の条件と言えるかも知れませんが……答えは『否』です!私は、彼方達と組む心算は毛頭ありません!!
 何よりも、人の命を数字でしか数えられない相手と協力体制が結べる筈もありません……私は、最高評議会には与しない……此れが、私の意思です!!」

『後悔しますよ?』

「だから?後悔するのは貴女達の方だよ!!」



えぇ、その通りですなのは。
後悔するのは、この様な事を引き起こした最高評議会でしょうからね……故に、夜天の騎士の筆頭騎士たる烈火の将からも、一言言っておこうか?

宜しいですか、なのは?



「良いよ、バッチリ決めちゃってシグナム。」

「御意に。」

如何やら、己の予想通りには行かなかったようだな、最高評議会とやらよ?
だがまぁ当然だな?貴様等が幾ら策を練ろうとも、我等が主たるなのはは、常に貴様等の半歩先を見据えて作戦を立案しているのだからな…その差は強大だぞ?

其れでも、来ると言うのならば掛かってくるが良い……纏めて我がレヴァンティンの錆にしてくれる。



「アイゼンの頑固な汚れになりたい奴も来やがれってんだ!!」

「何が来ようとも、我等守護騎士に敗北は有り得ん……我等の主の心が折れぬ限りな。」



其れはつまり、我等には敗北は無いと言う事だぞザフィーラ?
我等の主たるなのはは、決して折れぬ、そして屈さぬ心の持ち主なのだからな――相手が誰であっても、なのはは自ら退く事は絶対にしないと断言できるさ。

そして、そんななのはだからこそ、私も……女同士とは言え惚れてしまったのだからな。



『貴様等……後悔する事になるぞ?』


「後悔だと…?させられるモノならばさせてみるが良い。
 我等はミッドに降り立ったが、地球には月村とバニングス、そしてフローリアン姉妹にテスタロッサ姉妹と言うSランクの魔導師が揃っているが故に、何が襲って来た
 所で、即時対処は可能な上に、即時撃滅が目に見えている。」

「こう言ったらなんだけど、貴方達は総じて地球を舐め過ぎだよ?
 確かに魔導技術の開発は遅かったかもしれないけど、グランツ博士の開発する魔導技術は、誰にも真似できないくらいの見事な完成度を誇る物なんだよ?
 現に、私達のデバイスだって、グランツ博士の調整と改修が有ったからこそ、その力を120%発揮できた訳だからね。」



ともあれ、最高評議会は何としてもなのはと我等を取り込みたいようだ。
この局面に、なのはが自ら矢面に立つと言うのは、ある意味で予想はしていたけれど、なのはの一撃が全てを終わりにしたと言えるだろう……圧倒的な正論で、己
を曲げずに目標を達する……その一撃が、最高評議会への強烈な一撃になったようですからね。



『く……また来る!!』

「二度と来るな、迷惑だ。」

そして、其れでもなお対立する輩には其れを撃滅して、真なる平和をこの地に齎すのが我等の役目だからな。
……その妨げとなる最高評議会は、此処で叩き潰しておかねばならないだろうな……精々首を洗って待っているが良い……夜天の剣士が、その命貰い受ける!!


後悔するが良い、貴様等は愚かにも夜天の主に手を出してしまったのだからな――その罪、貴様等の命と言う罰で払って貰うから、覚悟しておくが良い!!



「そうだね……アレだけの事を海鳴にやってくれたんだから、その代償は払って貰わないとだからね。」

「そうですね……其れでは、利息分を含めて払って貰うといたしましょう。
 寧ろ、利息分だけでは足りないでしょうから、大幅に熨斗をつけて返して貰う事になりそうだと言う事は否めない部分がありますけれどもね。」

ですが、此れで我等の意を、最高評議会に示す事が出来た。

尤も本番はこれからかもしれないが、何時本番が来たとて問題はない――どんな事にも即時対応が出来るからな!!








――――――








Side:スバル


そっか……やっぱりそうなっちゃったか……ある程度は予想していたと言っても、其れが現実になるのは別なんだよね……

だけど、分かったよお父さん、こっちも準備したら直ぐにそっちに行くから心配しないで?

大丈夫だよ、少なくともなのはさん達の足手纏いにはならない心算だから。……うん、うん、大丈夫だよ、分かってるから……うん、分かってる……其れじゃあね。



――Pi



「スバル、誰からだったんだ?

「あ、若しかして彼氏っすか?」



ノーヴェも、ウェンディもハズレ――相手はお父さんだよ。



「父さんが?」

「其れは少し気になるわね……」



ギン姉と、ディー姉もそう思うでしょ?……多分、お父さんは私達をミッドチルダに呼びたいんだと思うんだけど、其れが言い出せないで言えない感じなのかもね。

って、其れは今は如何でも良い事だとして、本当に重要なのは此処からだよ。


アタシ達姉妹は、此れからミッドチルダに向かいます……そして、現地で仲間と合流し、然る後に敵勢力の殲滅を行うのかも知れないから装備だけは忘れないで!
其れは絶対に守ってね?



「おうよ!……だが、其れとは別に燃えさせてくれるじゃねぇかよ……やってやるぜ、力の限りな!!」

「パパりんにも考えがあると思うッスからね……其れを聞きだした上でスバルねーちゃんの思いが伝われば、一番ベストっすよね♪」



確かにね……だけど其れは運の要素が大きいから何とも言えないんだけど、お父さんならきっとうまくやると思うから、アタシ達はアタシ達で、精一杯頑張らなきゃ!



「だな!」

「その通りね。」

「異論はないよ……」



其れじゃあ行くとしましょうか!!お父さんの待つ、ミッドチルダって言う場所にね!!













 To Be Continued…