Side:クロノ
第97管理外世界――地球で、此方でも警戒していた無人兵器『ガジェット』の襲撃が有ったとは、間違いないのかリーゼ?
「間違いないよクロスケ。つーか、曲がりなりにも師匠を疑いなさんなっての。」
「その襲撃そのものは、高町と騎士達が制圧したから問題ないんだけど、ガジェットが出て来たってのは、流石に無視できる案件じゃないでしょう、クロノ執務官殿?」
確かに其れは見過ごせないな。
ガジェットと言うのは、確か最高評議会が己の手駒として開発を進めていた、魔導エネルギーを核とした無人の戦闘兵器だった筈だ……それが、地球で暴れたなんて
言う事を見過ごす事が出来る程、僕は冷血でも冷酷でもない。
まして、その地に生涯の友とも言うべき存在が居るのならば尚更だ。――僕は此れから地球に向かう!!
執務官として、一提督としては間違った行動なのかも知れないが、今此処で地球に行かずに、己の職に埋没してしまったら、残るのは後悔だけかもしれないからな。
「……良く言ったクロスケ!其れでこそ、アタシ等の弟子だ!!」
「えぇ、ロッテの言うように、良く言ったわクロノ。
執務官とか提督とか、そんな肩書は抜きにして、必要な時に友の為に最善の選択が出来るのが、最高の魔導師だってお父様が言ってたからね……アンタは、その
条件を見事に満たしてるわよクロノ……頑張ってね?」
あぁ、勿論だ。
管理局の為に、世界の為に――そして何よりも、僕自身の為にも、最後の夜天の主と接触しなくてはならないだろうな。……覚悟は、決めておくべきだろうなきっと。
魔法少女リリカルなのは~夜天のなのは~ 夜天106
『世界はそして動き出す』
Side:なのは
さてと、あの襲撃から早数日が経った訳なんだけど……
「いらっしゃいませ~~!3名様ですね?」
「ケーキセットが2つと、シュークリームセットが2つですね?畏まりました、お飲み物は紅茶とコーヒーのどちらになさいますか?」
「持ち帰りで、シュークリーム7つ……畏まりました。」
「ご注文の品は以上でお揃いでしょうか?……では、ごゆっくり……」
何て言うか、あの襲撃が嘘だったんじゃないかって思う位に凄く平和な日々が続いてるんだよね?いや、平和な事そのものは、とても良い事なんだけど、あれだけの
事を仕掛けて来たんだから、アレを皮切りにガンガン来るのかと思ってたから、ちょっと肩透かしを喰らった気分なの。
「アレは只の挨拶だったのかも知れませんよ、姉さん。
或は、此方の戦力――主に姉さんとシグナムの戦闘力が、彼等の予想を遥かに超えていたために、戦力比の再考と投入戦力を考えているのかもしれませんね。」
「或は、初撃で大暴れして我等を警戒させておきながらも、次の襲撃までの時間を空ける事で我等の警戒の低下を誘い、油断した所に奇襲を掛けて来る可能性も充
分考えられますよなのは。
尤もこれは、戦乱期のベルカに於いて、数や質で劣る小国が大国を相手にする場合に良く使った戦法ですが……」
「ん~~~~?なたねとシグナムの言う事は、確かに一理ある感じだね?
最高評議会の傘下が、管理局の約半分だとしても、その中に果たしてオーバーA以上の魔導師や騎士がドレだけ居るかって言うところだし、全軍+この間の無人機
で攻めて来ても、私達と警察機動隊と自衛隊が出張れば、数でも質でも勝るだろうからね?」
加えて魔法に対して滅法強いAMFだって、自衛隊が所持してる戦車とかなら簡単に壊せるはずだから。
「仰る通りで……ですが姉さん、魔導技術が取り入れられた際に、日本の自衛隊は『国防軍』となった事をお忘れなく。
核ですら無力と化す魔導のバリアを開発する事に成功した事で、今や我が国が世界で占める地位は米国をも上回っているのですから。」
「あ~~……そう言えばそんな事言ってたっけ。
国防軍はあくまで国防の為の部隊であり、戦闘行為は自国への侵略行為、または領海・領空への無断侵入に対してのみ行い、他国への侵略行為には加わらない
の理念の下に活動してるんだったね。」
「その通りです……尤も、その現代兵器ですら、姉さんとシグナムが組むと、只の鉄くずな訳ですが。
と言うかですね、冗談抜きで、何時ぞやの国防軍に教導で行った時に、御二人で国防軍の戦車中隊を撃破した事から、割と冗談ではないのですがね此れも。」
「「戦力差がドレだけか知りたいって事だから、本気でやった。後悔はしてない。」」
「そのせいで、隊員が真っ白になって居ましたけどね。まぁ、魔導の有効性は示せたので良かったと思いますがね。
……ではなくて、今問題なのは、この間の襲撃以降、何のアクションも向こうからないと言うところでして……」
あぁ、そうだね。
願わくば、向こう側の動向が分かれば良いんだけど、流石に潜入捜査って言う訳にも行かないからねぇ?……グルムなら、その大きさからばれ難いかもだけど……
「呼びましたか、マイスター?」
「あ、ううん、呼んでないよ?グルムは小さくて可愛いねって言ってたの♪」
「ふえぇ?か、可愛いですか?」
うん。フルサイズでも子供の頃の私と同じくらいだし、其れよりも通常サイズが物凄く可愛いからね♪
お客さんの中には、通常サイズで一生懸命コーヒーを運ぶグルムが可愛いからって来てる人だっているんだよ?最早グルムは、翠屋不動のマスコットキャラなの♪
「なら、もっと頑張るです!」
「うん、頑張ってね♪」
――チリンチリ~ン
っと、新しいお客さんだね。
いらっしゃいませ~~~……って、クロノ君!?
「やぁ、久しぶりだななのは?
最後に会ったのは、グレアム提督の公聴会だったから、大体8~9年ぶりかな?」
「大体其れ位だよ!……でも、本当に久しぶりなのクロノ君!随分と会ってなかったけど、昔と比べて男らしくなった感じだね?背も可成り伸びたみたいだしね?」
「闇の書彼是に片が付いた後辺りから急激に伸び始めて、今じゃ175cmまで伸びたよ。
まぁ、そんな事は如何でも良いんだが、此れから少しだけ時間を取れるだろうか?僕達にとっても、君達にとっても大事な話があるんだ。」
大事な話?……うん、大丈夫だよ。そろそろ昼のラッシュも終わるから、あと30分もすれば手が空くからね。
「そうか、ならその頃にまた来る。」
「いや、店内で待っていてくれクロノ執務官殿。」
「そうだぜ、折角来たんだから、久しぶりに翠屋のシュークリームとコーヒーを味わって行けよ?つーか、それ以外の選択肢はねぇからな?」
そ、其れは若干脅迫が入ってる気がするよヴィータ?
でも、ただ待ってるって言うのもアレだから、奥の席で待っててくれてもいいかなクロノ君?シュークリームとコーヒーを持って行くから、少し待っててもらっても良い?
「構わないが……だが、あの絶品シュークリームとコーヒーが味わえるのならば、そのお誘いを断る事は出来ないな。
だが、そうなると……持ち帰り用にシュークリームを12個用意して貰っても良いだろうか?エイミィと母さん、其れにアリアとロッテにお土産としてな……と言うか、持
って帰らないと、僕は明日の朝日を拝めないかもしれないからな……」
そ、其れはまた何とも……でも、了解ですクロノ執務官♪
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さてと、お昼のラッシュも一段落して、漸く一息って所だね。
ゴメンねクロノ君、待たせちゃって?
「いや、アポなしで来たんだから、此れ位は仕方ないさ……まぁ、相変わらずの繁盛ぶりは見事だと思うけどな。
こんな事を聞くのは野暮かもしれないが、なのはは矢張り翠屋の二代目になる心算なのか?君ならば、多分上手くやるだろうとは思うけれど……」
「うん、其れが私の夢かな?
尤も、其れを実現する為には、お母さんからシュークリームの仕込みを任されるくらいにならないとだけどね。」
「成程、道は平坦ではないと言う事か。
……さてと、久しぶりに会ったから積もる話もあるんだが、其れは後にして、そろそろ本題に入らせて貰っても良いだろうか?僕の目的でもあるからな。」
良いよ。
寧ろ、クロノ君がわざわざ来たって言う事は、何かあったとしか思えないからね。
「相変わらず勘が良いな君は……あぁ、実際に何かあったさ――最高評議会が、地球の、しかも海鳴を狙って攻撃を仕掛けたと言う事がね。」
「「「「「「「「「「!!!!」」」」」」」」」」
そ、其れってまさか、この間のテロ紛いの襲撃の事かな?
「あぁ、そうなる。
事後確認になってしまったが、リーゼ達が詳細に調べて、最高評議会が起こした事だと言う事に辿り着いた訳だから、信憑性は保証付きだ。疑う余地もないさ。」
「リーゼ姉妹……確かに彼女達の調査の結果ならば、信頼に値するだろうな。」
だね。
何よりも9年前の事件の時には、私達を助けてくれたから、リーゼさん達を信頼こそすれ疑うなんて事は無い――って言うか出来ないよクロノ君。
「そう言ってくれると僕としても有り難い。己の師匠が、他者に信頼されていると言うのは嬉しい事だからな。
だが、皆まで言わずとも分かるだろうが、最高評議会が遂に活動を始めたのは間違いない――仄暗い己の欲望を成就する為に。
最高評議会のトップには、最早人間らしい理性を期待するだけ無駄だ……己が欲望を叶える為ならば、この世界の人の命など簡単に奪う事も厭わないだろうさ。」
「んだと……ふざっけんな!!
其れってつまり、平和に暮らしてる爺ちゃんや婆ちゃんも殺すって事かよ?……冗談じゃねぇ!あの優しい爺ちゃんと婆ちゃん達を殺されて堪るかよ!!」
「確かに冗談にしても性質が悪すぎる……何よりも、其処までの私利私欲思考は、戦乱期のベルカであっても見る事は無かったと言うのに……呆れて物が言えん。」
ヴィータ、シグナム……うん、冗談じゃないね。
其れに何より、この街が戦場になるなんて言う事は絶対にゴメンだと思っていたから、シャマルに超広域封鎖結界を習得して貰ったくらいだもん。
「マッタク君らしいな?
だが、この街が戦場になる事は無い――と言うか、管理局の不始末が他の次元世界に飛び火するなど、有ってはならない事だから、決着はミッドチルダで付ける。
そして、其れに先だってお願いがあるんだなのは……最高評議会の壊滅の為に、君の、君達の力を貸してほしい。
手前勝手な願いだと言う事は重々承知しているが、アレを打ち倒し、そして管理局を改革して立て直すには、君達の力を借りないとダメなんだ……頼む!!」
「……クロノ君て、意外とバカなの?」
「な、失礼だな行き成り!?」
だって、私達が『ノー』って言うと思うの?
これが、最高評議会からの申し出だったら、間違いないく一秒否決なんだけど、今回は友達のクロノ君の頼みなんだから、無下に断るなんて言う事は出来ないよ。
其れに、こう見えても人を見る目は有る心算だから、邪な思考を持ってる人は直ぐに分かるし……それらを踏まえても、クロノ君には協力OKなの!皆も良いよね?
「「「「「「「「勿論です!」」」」」」」」
「なんか血が騒いで来たわぁ!!」
「意外と熱血ですね、はやて姉さん…」
「ね?」
「君のカリスマ性には、事有る毎に驚かされるよ。
だが、確かにこの戦力が味方になると言うのは有り難いし、頼もしい……君との協力関係が結べただけで、僕は最高の仕事が出来たと、そう言う事が出来る。」
其れは、些か過大評価かもだけどね。
でもそうなると、私達は――
「暫くミッド生活と言う事になるだろうね
まぁ、その間の彼是は此方で全面的にバックアップするから安心してくれ――寧ろ此れくらいしないと、誰が何をするか分からないからな。」
「確かにそうですね。」
いずれにせよ、私はしばらくミッドに行く事になるのは避けられないか
だけど、其れで最高評議会を潰せるって言うなら、寧ろ僥倖って言った所だからね?――やるからには徹底的にやらせて貰うの!!
「あぁ、徹底的な。ならば、その力を貰い受けるぞなのは!!」
「モチのロンだよクロノ君!」
最後の夜天の主の力、思う存分発揮させて貰うから。
だから期待しててていいよ!最高評議会なんて言う、最低にして最悪の連中を倒すには、この私が、最後の夜天の主が、鉄槌を喰らわせる以外に手はないから!!
全力で協力するよ、クロノ君!
新しい時代、其れは私達が作る物……迷惑な老害にはそろそろ退場してもらわないと、だね!!全力全壊で吹き飛ばしてやるから、覚悟は決めておきなよ?
敵対者に、手心を加えてやる程、私達は優しくはないんだからね!!
To Be Continued… 
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