Side:なのは
突入した先で展開されていたのは、無人と思しき機械兵器が、犯人グループを攻撃している様だった。
私は聖人君子じゃないから、悪行を働いた人を手放しで許す事は出来ない――でも、然るべき裁きを受けさせずに殺すなんて言う事は、絶対に間違ってる事だよ!
其れに何より、この海鳴でこんな事をするなんて……!!
「何処の誰かは知らねぇが、こんな事を平気でするなんざ、テメェ等……外道だな?
なのはの言う通り、悪人に情けをかける心算は毛頭ねぇが、だからと言って即ぶっ殺していいってモンでもねぇ。
テメェ等みたいな機械に言っても無駄かも知れねぇけど、テメェ等はコイツ等から罪を悔いる権利と、罰を受ける義務を奪っちまった……コイツ等がもう一度真っ当な
道を歩む選択肢を摘み取ったんだ!!……アタシは其れが許せねぇ!!!」
「罪人には罰が必要ではあるが、其れは死罪とは限らぬ……我等が主の眼前でのその所業、覚悟は出来ているのだろうな?」
「覚悟が出来ていようと出来ていまいと関係ないだろう……」
「纏めて撃滅する。只それだけの事だ!!」
「行きましょう、マイスター!」
許せるはずがない…!!其れは、如何やらヴォルケンリッターの面々も同じだったみたいだね?……うぅん、むしろ当然の事だよね、此れは。
でも、だったら手加減も何もしなくて良い……全力でやっちゃってくれていいから!!
「夜天の主、高町なのはの名において命ずる。
守護騎士達よ、魂なき殺戮の機械兵器を一機残らず殲滅せよ!!」
「「「「「「Jawohl Meister NANOHA!!(了解しました、主なのは!!)」」」」」」
グルムは私とユニゾンね?
「はいです。マイスターなのは!」
其れじゃあ行こうか?この、謎の機械兵を、先ずは一機残らず纏めて撃滅するよ!!
魔法少女リリカルなのは~夜天のなのは~ 夜天104
『ガジェットに見え隠れする影』
Side:シグナム
ヤレヤレ、一体何処の誰がこんな物を海鳴にけしかけて来たのやら。
なのはは『来るもの拒まず』な性格ではあるが、貴様等のような殺戮兵器は拒否・拒絶一択でしかないぞ?……なのはは、誰よりも平和を願っているからな。
故に、この世界の平和と平穏を脅かしかねない貴様等には即時退場願うところだ――まぁ、挑んだ相手が悪かったと思ってあきらめるが良い。
なのはもグルムとユニゾンしているから、貴様等が勝つ可能性などは、既に消え去ったと言っても過言ではない――勝率は精々0.0000000001%と言った所だ。
まぁ、先ずは散るが良い!!飛竜一閃!!
「ディバインバスター!!!」
――ドゴォォォォォォォン!!!
此れは、偶然乍ら私の炎熱砲と、なのは必殺の直射砲が、良い具合に融合して、機械兵器を打ち据えたようだな?
私の炎熱砲に、ユニゾン状態のなのはの直射砲の威力が上乗せされたら、山を一つ消し飛ばす事が出来ると言っても過言ではない……故に、機械兵器は撃滅され
た筈だと思うのだが……
『『『『『『ギョギャァァァァァァァァァァァァ!!!』』』』』』
無傷とは行かないが、マダマダ動く事が出来るようだ――が、何ゆえコイツ等は動く事が出来ている?
巨大なダンプカーですら、一撃でくず鉄へと変えるなのはの直射砲と私の炎熱砲……その融合砲撃を真面に喰らったにも拘らず、こうして行動可能だとは一体…?
「シャマル、奴等に何か特殊な力が働いていないか調べてくれ。
ドレだけ頑丈な装甲であろうとも、なのはと私の攻撃を同時に喰らって無事とは、少し考えられん……なにか生き残る為の『裏技』が、奴等には有る筈だ。」
「シグナムとなのはちゃんの同時攻撃を受けて破壊されていないって言うのは、確かに何か『仕掛け』があるのは間違いないわ。
何とかクラールヴィントと『仕掛け』を解析してみるから――そうね、3分だけ時間を貰えるかしら?」
3分でいいんだな?ならばその3分の間に、市民を全て避難させておくのが良いだろうな?
……幸いにして、突入の際になのはが開けた穴が有るから、其処から逃がしてやれば良いのだが、此の無人機械兵器が市民を襲うかも知れんからな……ならば!
「ズィルバ姉さんと、ヴィータとザフィーラは、なのはと私と共に機械兵の相手を、フローリアン姉妹とナハト姉さんは市民の避難誘導を頼む!」
「あぁ、了解だ。」
「ハッ、任せとけ!!」
「……承知した。」
「私にお任せ、WOK~~~♪」
「はい、任せて下さい!!」
「出口はこっちだ、慌てずに此処から外に出るんだ!」
「皆いい動きだね?現場での指揮も出来るって言うのは、流石はヴォルケンリッターの筆頭騎士って言ったところかなシグナム?」
戦乱期のベルカに於いては、書の主が戦場には不在である事も多々ありましたので、その様な場合は私が戦闘の指揮を取っていましたら、此れ位は普通ですよ。
其れに、現場に於いては的確な指示が必要不可欠故、主である貴女を差し置いて指示を出すと言うのは如何かと思ったのですが、各員に支持を出した次第です。
「ううん、良い判断だよ。
現場では、誰よりも早く状況を見極めた人物が的確な指示を飛ばしてこそだからね――で、そのシグナムはこの機械兵を如何見るかな?」
「そう言って頂けると光栄ですよなのは。
しかし、この機械兵は……何とも分からない事の方が多いのは否めないでしょう?――一体誰が、何の目的で此処に送り込んだのかまで含めて、あらゆる事が。」
「そうなんだよねぇ……?
犯人グループの一人を殺害した事から見ても、この機械兵は犯人グループが所持して居たモノではなく、別の勢力が持って居たモノだと思うよ。
何よりも、私とシグナムの攻撃を受けても大破しなかったその頑丈さには、目を見張るものがあるからね――一体どんな絡繰なのかを知りたい所なの。」
其れは、現在シャマルが解析していますのでしばしお待ちを。――とは言っても、解析結果が出るまで、待って居る等と言う心算は無いのでしょう、なのは?
「其れを此処で問う?」
「矢張り愚問でしたか……ならば、私も本気で行くとしましょう!!」
――轟!!!
「調停者モードのレベル2……手加減抜きの全力全壊って所だねシグナム?」
無論です。
心なき機械兵器に対して、大盤振る舞いかもしれませんが、この状態であるのならば大概の敵は如何にか出来ますから、この状況では悪手ではないでしょう?
「其れはそうだね?……其処!!」
「背後からか?……甘い、貫け!!!」
――ドガァァァアァァァァァァァアァァアァァン!!
して、背後から機械兵が襲ってきたようだが、背後を取った程度で私となのはを如何にか出来ると思うなよ?
自慢する訳ではないが、相手が誰であろうとも、私となのはは気配を感じ取る事が出来る――故に、ドレだけ死角から攻撃した所で無駄だと言う事を知るが良い!!
「よし、解析出来たわよシグナム!!」
っと、此処でシャマルが解析を完了したか。
ならば単刀直入に言うが、奴等にはどんな『仕掛け』が施されていたのだ?
「あの機械兵は、戦乱期のベルカで生み出されたAMF――アンチ・マギリング・フィールドが搭載されているみたいだわ。」
AMFだと!?一体何処でそんなモノを……!!
いや、其れよりも、限りなく魔法が効き辛い相手だと言うのは、何ともやり辛いのだが……魔法が効き辛いのならば、物理的に斬り捨てるまでの事!!
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉ………燃えろぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
――バガァァァァァァァァァァァン!!
そして同時に、無手の格闘戦もまた有効なのは火を見るよりも明らかだろう?
加えて、私の琴月で沈黙したところを見ると、AMFで無効に出来る範囲を超えた破壊力が有れば、機械兵などおそるるに足らんか……貴様等は纏めて叩きのめす!
覚悟は良いな、機械兵器が!
――――――
Side:なのは
結果だけを言うなら、AMFの影響下でも問題なく能力の全てを発揮できるレヴァンティンとグラーフアイゼンを有するシグナムとヴィータの活躍で、被害は犯人グループ
の1人だけだったって言うところだね。
被害者が一人だけだったって言うのは、数からしたら大したモノであるのかも知れないけど、やっぱり命が消えてしまうって言うのは良い気分じゃないよ。
もしも、あと10秒早く現場に到着する事が出来ていたのなら、その『たった一人の犠牲』だって出さずに済んだのかも知れないからね……やりきれない気分なの……
如何に夜天の主と言われても、此れじゃあ……
「私は、無力だよねシグナム?」
「なのは?」
無力だよ。
だって、罪を犯したと言え、犯人グループの一人はあの機械兵に殺されちゃったんだよ?…私は、其れを止める事が出来なかった…救えた筈の命を救えなかった!
私は、誰にも死んでほしくないのに――!!!
――ぎゅ……
「へ?シグナム?」
「そんなに思いつめないで下さいなのは。
確かに、犯人グループの一人については無念の極みでありますが、其れは貴女のせいではない……そう、只タイミングが悪かっただけで仕方のない事でしょう?
寧ろ、此れだけの事で、被害者が犯人グループの一人のみであったと言う事は、凄い事ですよ?……一歩間違えば、全滅してもオカシクなかったのですからね。」
シグナム……でも、それでも……あと少しだけ早かったら、誰も死なずに済んだ!!
なのに其れが出来なかった……其れが、何よりも悔しいんだよ私は!!
「えぇ、分かっています……貴女ならばそう思う――と言うよりも思ってしまうでしょう。
如何に守護騎士の将とは言っても、私にはその思いは完全に理解する事は出来ません――故に、せめて共有させてください、貴女の悔しさと悲しみを。」
「シグナム……」
「夜天の主だからと言って、気張らなくてもいいんです……我等で足りるのならば、遠慮せずに頼って下さいなのは。
貴女の悔しさも悲しみも、私に分けて下さい。――そうすれば、悔しい事も悲しい事も、半分になります。――貴女の背負う業は、私も共に背負って行きますから。」
シグナム……うん、ありがとう。
こんなに良い守護騎士――臣下に恵まれたなんて、私はきっと世界一の果報者だね。
んん……そ、其れは兎も角、この機械兵は一体何処の誰が仕掛けて来たのかな?
殺戮と破壊行為がなければ、グランツ博士の最新発明のゲリラ的お披露目会って言う可能性も考えられるけど、人死が出てる以上、その可能性は除外されるよね…
「其れは分からねぇが、少なくともコイツ等をけしかけてきた連中は、グランツ博士と同等の技術力を有してるのは間違いねえかもしれねぇと思うぜ?
あの機械兵に搭載されてた、AMFは古代ベルカの技術――其れを完全に再現するなんて言う事は、凡百な技術者や科学者じゃ絶対無理な事だからな――!」
「何よりも、平然と人の命を奪う事の出来る機械を導入するなど、正気の沙汰とは思えないでしょう。
私の鼻で嗅ぎ分けた結果に過ぎませんが、あの機械兵は、略間違いなく時空管理局の最高評議会とやらが関わっている筈……遂に、動き始めたと言う事かと…」
時空管理局の最高評議会!!
確かに、その派閥に属する者達なら、此れ位の事はやるかも知れないね………マッタク持って、本気でふざけるななの!!
こんな方法で、喧嘩を仕掛けて来るって言うなら、受けてあげる!!――だけど、無関係な人を巻き込むって言う事は絶対に許さないし、絶対に屈しないからね!!
「えぇ、絶対に屈しません。
真の主である貴女と出会った今、我等守護騎士にも『退く』と言う選択肢は有りません――どんな時であっても、お供いたしますよなのは。」
「うん、ありがとう。」
取り敢えずは、この機械兵の残骸をグランツ博士に解析して貰おうか?
博士だったら、此れが何処で作られたのかを解析するのは朝飯前だろうし、ともすればAMFへの対抗策だって開発しちゃうかもだからね。
だけど、何れにしても、最高評議会との戦いが始まったのは間違いなさそうなの……
――――――
Side:スカリエッティ
ふむふむ、8年とは随分と我慢したと思うが、あの脳味噌共は遂に耐えられなくなったみたいだね?――まぁ、アレが今の今まで我慢していたと言う事に驚きだが。
が、此度のガジェットを使った襲撃は悪手だね?……君達が何らかの関わりがあると言う事をなのは君達に気付かせるだけの結果となってしまったのだからね。
「んだよ、終わっちまったのか?……肩透かしを喰らった気分だぜ……」
「………………」
「あん?『出番がないのは平和な証拠』って、そりゃそうなんだけどよ七緒、やっぱ暴れてぇんだよオレは!!」
「……………」
「『脳筋』て、言うわね七緒?……三月限定で、マッタク持って否定も何も出来ないんだけどさ……」
そして、今回は出遅れてしまったが私の娘達だって実力は折り紙付きだ。
次に何か起こったその時は、介入させて貰うよ?――時空管理局の最高評議会は、そろそろ歴史の中から、存在を抹消されても良い頃だろうからね………!!
To Be Continued… 
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