Side:なのは


よし、此処をこうして、それで星形のクッキーを添えて……出来た!!
私考案の、翠屋の新メニュー『天の川パフェ』!!如何かな、シグナム?



「良いのではないでしょうか?
 天の川の英語名『ミルキーウェイ』を思わせる優しい色合いに、アラザンと星型クッキーで星を思わせるアクセントを加えて絶妙なバランスを醸し出していますよ。
 勿論、一番大事なのは味なのですが――試作品を殆どヴィータが完食した事から見ても、味の方も問題なく抜群であると言って差し支えないと思います、なのは。」

「なら、此れは大成功って言う事だね。」



現在私は、翠屋を継ぐために、調理師の専門学校に通いながら、時間が有れば翠屋で実戦修業真っ最中!
まぁ、そんな中でブレイブ・デュエリストとしての出動も有るから、傍から見れば物凄く忙しく映るんだろうけど、私的には充実してるから、忙しさは其れほど感じないの。

大体にして、今は『翠屋の二代目』って言う目標に向かってる真っ最中な訳だから、忙しさなんて感じてる場合じゃないよ!

ゆくゆくは、ヴォルケンリッターの皆や、はやてやなたねと一緒に翠屋を続けて行きたいからね。



「その言葉、桃子殿が聞いたらきっと喜びますよ?」

「かも知れないけど、今の私は未だ半人前だから、此れをお母さんに言うのはもう少し先の事だよ。」

翠屋を継ぐって言う事は、半端な腕前で言って良い事じゃないからね。――だから日々精進だよ。
魔法も料理も、日々の精進無くして、上達は有り得ないからね!!



「仰る通りです。――私も、トコトンまで付き合いますよなのは。」

「うん、ありがとうシグナム♪」













魔法少女リリカルなのは~夜天のなのは~  夜天102
『Das ruhige Poltern』












Side:リンディ


不毛な議論て言うのは、きっとこう言うモノを言うのかも知れないわね……本当に、身にもならない議論だわ此れ。



「だから、何度も言っている様に、アレだけの魔導技術を有している第97管理外世界は、新たに管理局の管理世界とすべきだろう!
 何よりも、あそこには闇の書を制御した魔導師が居るのだ……彼女を、高町なのはを管理局員として、此方に引き込まない手はない!絶対に引き込むべきだ!」

「其れもそうだが、先ずは向こうの世界を此方の管理世界にするのが先決だろう?
 此方の管理世界にしてしまえば、件の魔導師とて此方に付かざるを得ないだろうしな――君は如何思うね、リンディ・ハラオウン提督?」



予想通り私に振って来たか……マッタク、本音を言うならば、私利私欲しか頭に無い貴方達とは会議の場に付きたくはないのだけれど、立場上其れは無理でしょうか
ら、せめて己の意見だけでも述べさせて貰うわ。

簡潔に言うなら、私は高町なのはさんを管理局に引き入れる事も、第97管理外世界『地球』を、新たな管理世界とする事についても反対です。



「ほう?理由を聞いても良いかね?」

「先ず、高町なのはさんは何が有っても己の意志を貫く人ですから、彼女に彼女の目標と目的がある以上、管理局員にはならない事は火を見るよりも明らかです。
 仮に、強引に局員にしようとしたその時は、彼女の守護騎士達が管理局に対して攻撃を行う事も想像に難くありません。
 次に、地球は管理世界にすべきではないでしょう。――可也新しいとは言え、地球には地球の魔導文化が構築されていますので、其れを此方で管理する事は物理
 的に不可能です――まして、地球の意思は一枚板ではなく、多くの国々の思惑が交錯しているが故に、そもそも管理世界にする事が不可能ですわ。」

「リンディの意見には、私も同意するわ。
 下手にあの世界に干渉したら、火傷じゃ済まない痛手を被る――其れは、先ず間違いない事ですもの。」



あらあら、ナイスアシストよレティ。


でも、恐らくは今回も平行線で終わるでしょうね。
最高評議会の派閥と、私とレティの派閥に属する局員はほぼ同数で、様々な議論を決定する為の決議権を持つ局員も夫々半分ずつだから、何処まで行っても決着
はつかない……だからこそ、同じ議題で8年も無駄な議論を続ける事になった訳だしね。


だけど、最高評議会派閥は、そろそろ限界でしょうね――此方から突っつかなくとも、近い内に、何らかの行動を起こす可能性は可成り高いと思うわ。



「静粛に!定時となったので、此れで本日の会議は解散する!!」



「……今回も決着つかずか……まぁ、予想はしていたけれどね。」

「だけど、何時までもこの状態は続かないでしょうね――貴女も、そう思っているんでしょうリンディ?」

「魔導こそを至高の物と信じ、しかし人手不足に悩み、己の欲にまみれた『世界の平和』を謳う彼等が、なのはさんの様な稀有な魔導師を捨て置く筈がないわ。
 加えて、なのはさんを管理局に取り込む事が出来れば無条件でヴォルケンリッターも付いて来るし、彼女の仲間達も引き込めるかも知れないもの。
 何よりも、なのはさんを取り込んだ場合は、グランツ博士の協力だって取り付ける事が出来るかも知れないでしょう?――彼の天才的な頭脳も、魅力の筈だわ。」

「何れ、地球に対して何らかのアクションを起こす可能性は、決して小さくないか……
 でもリンディ、貴女が言っていたように、地球と言う場所は多くの国が存在し、その意思は統一された一枚岩ではないのでしょう?
 仮に、先ず管理世界にするための階段やら何やらを設けるにしても、一体何処の誰と話を付ければ良いのかが問題になって来るんじゃないかしら?」



そうね。
でも、彼等はきっとこう考えているわ――『第97管理外世界で魔導の技術がもっとも発達しているのは、高町なのはの故郷だ。ならば、その国の最高権力者と話しを
つけてしまえば、後は芋蔓式に他の国々も、管理世界になる事を了承する筈だ』とね。

だけど、そこに落とし穴があるのよ。
なのはさんの故郷である日本て言う国は特殊で、政治の世界での最高権力者は総理大臣と呼ばれる人なんだけど、国としての最高位には天皇陛下って言う方が居
て、法を根本から変える時には天皇陛下が是としなければダメらしいのよ。



「つまり、総理大臣と天皇陛下の双方が管理世界になる事を了承しないとならないって事?」

「そう言う事。
 だけど、話し合いがダメになったその時は、直接的な手段に打って出る事は、想像に難くない――まぁ、そうなったらそうなったで、即返り討ちに遭うのがオチだわ。
 仮に地球を攻撃する事になっても、私の傘下の局員は行かせる心算はないし、其れは貴女も同じでしょレティ?」

「えぇ、勿論よ。
 と言うか、もしも最高評議会がそんな馬鹿な事をしたらその時は、逆に最高評議会を討伐する為の部隊を派遣しても良いとすら思っているわ。」



ならいっその事、面倒な事が起きる前に、最高評議会の脳味噌連中を『アルカンシェル』で消滅させちゃおうかしら?
そうすれば、馬鹿な事を考える事も出来なくなるわよね?



「其れはそうかも知れないけど、其れをやるとミッドの市街に多大なる被害が出るから、絶対にやらないでよリンディ?」

「あらやだ、冗談よレティ♪」

「冗談なら冗談らしいテンションで言いなさい……!」



其れもそうね♪……ってアラ?
あれは、ナカジマ三佐?……如何かしましたかナカジマ三佐?



「おぉ?リンディ嬢ちゃ……ハラオウン提督と、ロウラン提督か――いや、ちょいとばかし思うところがありましてね。」

「敬語は無しで良いですよナカジマ三佐――もとい、ゲンヤ先生。
 今は階級こそ上ですが、私もリンディも、貴女の教え子の一人なんですから、昔の様に接してくれた方が気が楽ですよ?」

「……だろうな。俺自身もガラじゃねえと思ってるしよ。
 まぁ、俺も今の管理局の事を考えると、色々思うところが有ってな――そう遠くない未来に、最高評議会の連中は地球に何らかのアクションを起こすのは確実だ。
 そうなっちまった場合、地球出身である俺やグレアムの旦那は肩身が狭くなるのは確実だからな……少し身の振り方を考えといた方が良いと思ってよ。」



身の振り方……若しかして地球に行かれる心算ですか?



「此のままだとそうせざるを得なくなるだろうな。って言うか、今の情勢を考えると、そう遠くない未来にそうなっちまうだろうよ、俺みたいな地球出身の局員はな。」

「矢張り、そうなりますか……」

「ま、仕方のねえ事かもしれねぇが、地球での働き口は有るだろうから、其処までの重い事とは思ってねぇけどな。
 だが、事と次第によっちゃ、アンタ等も局との縁を切る事を考えといた方が良いかもしれねぇぞ?」



確かに、其れは考えておいた方が良いかも知れませんわね。――事と次第によっては、管理局に見切りを付ける事も考えておいた方が良いかも知れませんから。


願わくば、そんな事態に陥らないようになって欲しいのですが、其れは望み薄でしょうからね。



「だろうな。
 だが、連中が馬鹿な事をしたその時は、なのは嬢ちゃん達が、特大の鉄槌を下す事は間違いねぇだろ?
 其れを踏まえると、最高評議会の連中の思惑なんざ、始まる前から終わってるって言っても過言じゃねぇよ――連中じゃ、なのは嬢ちゃんは取り込めねぇからな。」



其れを言ったらお終いですよナカジマ三佐。


けれど、世界が大きく動くのはそう遠くないでしょうね――そうなった時、貴女はどんな決断を下すのかしらね?……高町なのは、最後の夜天の主は……








――――――








Side:なのは


さてと、今日も今日とて、忙しくも充実した日々を送る事が出来たね?新作のスウィーツは、シグナムの後押しも有って翠屋の新メニューに追加されたしね。

だけど、此れで満足は出来ないの。
シグナムと違って、私は未だお母さんから『シュークリームの仕込み』は任せて貰ってないからね……シュークリームの仕込みを任されない限りは、マダマダなの!!



「その向上心は見事ですが、なのはの腕前ならば、近い内にシュークリームの仕込みも任されるのではないかと思いますよ?
 現に、この間の練習で作ったシュークリームは、桃子殿の究極のシュークリームを知らなければ、超一流パティシエの作った一級品と言っても過言ではありませんで
 したからね……もっと、自信を持っても良いと思いますよなのは。」



そうなの?……シグナムにそう言われると、ちょっと自信が付くかな?――兎に角、日々精進あるのみだね!



「その意気です、なのは。
 私もマダマダ学ぶ事は多い故、共に精進していきましょう。」

「うん、そうだねシグナム♪」

日々此れ精進は、大事な事だからね。


翠屋を継ぐためにも、もっともっと頑張らないとだよ。








だけど、其れとは別に、そう遠くない未来に、きっと大きな戦いが起こると思うんだ――恐らくは、管理局との間にね。


勿論そんな事は無いのが一番なんだけど、私の勘がそう告げているんだ……もしもその時が来たら、頼りにしているからねシグナム?



「其れはまた、何とも物騒な予感ですが、貴女の勘は鋭いので、只の勘だと捨て置く事は出来ませんからね。
 ですが、その様な事態が起きたその時は、言わずもがな私は――否、我等守護騎士は、貴女の刃と、盾となって戦う所存です。
 それに、長き旅路の末に、漸く巡り合えた我等の真の主である貴女の為に戦えると言うのは、騎士にとっての誉れ……最高の栄誉であり、喜びなのですから。
 ですから、その様な事が起こったら、迷わず我等に命じて下さい――『守護騎士達よ、敵を排除せよ』とね。」

「そんな時が来たら、その時には……うん、頼りにしているよ。」


だけど、きっと私の予感は現実になる。



でも、下手に攻めて来たらその時は、夜天の主と守護騎士、そして夜天の仲間達が襲撃者を撃滅するから、その心算で居た方が良いよ?


相手が何であろうとも、この世界の……私達の平穏は崩させない!!――其れが、最後の夜天の主たる、高町なのはの誓いと決意だから、絶対に砕けないよ!!















 To Be Continued…