Side:雪奈


年明けの1月に登記が完了して、『プラチナアウトローズ』は業務を開始したんだが、事前のネットでの宣伝効果もあって、先ずはDLゲーム
が僅か3日で100万ダウンロードを記録するって言うトンでも事態になるとは予想外だったぜ。
でもってそれを皮切りに、ネットショップの方も絶好調!特にアウトローファッション部門が大盛況だ……千鶴ちゃんの姉ちゃんのデザイン
は流石って所だぜ。
でもって、現役JKが起業して成功したとなったら、其れはマスコミ共にとって格好のネタになるから学校の無い日は取材の日々だったぜ。
まぁ、アタシの恩師にインタビューする場合は担任である山ちゃん先生だけにしてくれって言っといたけどな……アタシが起業に成功して社
長になった瞬間に、アタシを敵視してた生活指導の田辺が恩師としてインタビューに答えるとかムカつく事この上ないからな。

だが、其れとは別に雑誌のインタビューで、副社長であるマユがアタシの不良としての武勇伝をつらつらと語った時には流石に肝が冷えた
ぜ……1対200の喧嘩を制したとか知られたらどうなるか分かったもんじゃなかったからな。
けど、記者さんは意外とユーモアが分かる人だったらしくて、マユのトンでも発言も話半分に聞いてくれてたから助かったぜ……マユが言
った事は事実だからな……此れに関してはGJだったぜマユ。


さて、順調な滑り出しだったアタシの起業なんだが、ここで問題発生――会社に直接的なダメージは無いが、問題発生だ。



「ユキ、お見合いをする心算は無いかな?」

「お見合いって、アタシは未だ未成年だぞ親父?」

「其れは分かってるんだけど、ユキが起業して成功した事を知った会社の重役から『息子のお見合い相手に』って言う話が沢山出るように
 なってね……まぁ、そっちはユキが未成年だと言う事でお断りしてるんだが……」

「今回ばかりはちょっと話が違うのよ……取引先の会社の重役さんからの頼みだから、下手に断る事も出来ないの。
 だから、形だけでもお見合いしてくれないかなぁ?そこで何をどうするかはユキちゃんの好きにして良いから。」



まさかの見合いとはな……だが、アタシは結婚する心算なんぞ毛頭ねぇから丁重にお断りさせて貰うぜ?……今のアタシがやるべき事は
どこぞの馬の骨とも知れねぇ野郎と結婚する事じゃなくて、アタシの会社を大きくする事だからな。
ま、事情が事情だけに見合いだけはするが、アタシがその相手と付き合う事になるのはぜってー有り得ねぇとだけ言っとくぜ。









ヤンキー少女とポンコツ少女とロリッ娘とEpisode Final
『ヤンキーとポンコツとロリッ娘』










そんな訳で見合い当日。
場所は、一人頭結構な値段を取られそうな高級料亭の1室……可成り値段がしたんじゃないかと思うが、其れもまた相手方が見栄を張っ
たって事なのかもな、知らんけど。

で、相手は親父とお袋が務める会社の取引先の取締役の息子か……取締役ってのは確かに会社じゃ役員になるんだが、アタシの親父と
お袋は取締役よりさらに上の専務と常務なんだけどな。因みに親父が専務でお袋が常務な。
親が同席するのは当然で、向こうも両親が揃ってる訳なんだが……何ちゅう、アンバランスな夫婦だこれ?
如何にも『自分取締役』ですって感じの、小太りの中年オヤジに、バッチリメイクしたバリバリ若作りのオバハン……ぶっちゃけ此のまま漫
才コンビとしてデビュー出来そうだわ。

でもって、一番肝心な見合い相手は……本当にこの親から生まれたのかと疑いたくなるような、世間で言う所のイケメンか。
しかも、日本人らしい顔立ちのイケメンと来てるから、コイツ結構モテんじゃね?まぁ、アタシにゃ全く持って如何でも良い事だけどな……あ
ぁ、さっさと終わらせて何時もの面子でゲーセン行きてねぇなオイ。

さて、本日のアタシの服装だが、見合いだからと着飾ったりはしないで、普通に学校の制服だ。
相手の男と、親同士はスーツだったり袴だったりと正装なんだが、高校生のアタシは生憎とスーツなんぞ持ってねぇし、設立した会社が会
社だけに多分これからも買う予定はねぇって事で制服でな。
学生にとって制服は正装だから失礼にゃならねぇし。



「いやはや早乙女さん、此度は此方のお願いを聞いて頂き誠にありがとうございます。」

「いえ、此方こそ……娘はまだ未成年ですが、こう言った事も此れから先の人生勉強になると思いますので……」

「いえいえ、よもや高校在学中に起業して会社を興してしまうとは驚天動地!そのような優秀な娘さんであるのならば、引く手数多であっ
 た筈でしょう?
 その中で、私共の息子との見合いを承諾してくれた事には感謝しかありませんなぁ。」



で、見合いが始まってまずは親同士の軽い挨拶ってか……だけどなぁ、オッサン、親父達が見合いを断らなかったのはアンタが会社の取
引先の重役だったからだっての。
もっと言うなら、親父達の方が役職は上だからな?言わねぇけど。



「まぁ、私達だけが話していても事は進みますまい……ほれ、先ずは挨拶せんか。」

「はい。……初めまして、伊集院光と言います。」

「よし、ちょっと待て。取り敢えず突っ込ませてくれ。
 伊集院光だと?その100人が見たら99人はイケメンですって答えるであろう見てくれで伊集院光って、あのデブ芸能人と同じ名前とかア
 リかっての!羽生結弦ですって自己紹介された方がまだ納得いくわ!!」

「はぁ、よく言われるんですよね其れ……マッタク、なんでこの名前を付けたのか両親のセンスを疑います。」

「あ、其処は疑問に思ってんのな。」

「子供の頃は、散々名前をネタにされましたから。」

「だろうな。
 既に知ってると思うが、早乙女雪奈だ。仲間内じゃ雪女って呼ばれてる。」

「雪女……成程、その銀色の髪は白銀の雪原を思わせる――貴方にその異名を送った相手は中々のセンスの持ち主のようですね。」



そう来たか。
そうじゃなくて、雪女ってのはアタシにボコられた馬鹿共が、アタシの強さに恐れをなして、アタシの名前をもじってつけた渾名なんだがな。
まさか、そう言う解釈で来るとは思わなかったぜ。

「まぁ、アタシも雪女の名は気に入ってるんだ。
 とりま、月並みな質問だけど、アンタ趣味とかあんのか?」

「そうですね……意外と思われるかもしれませんが、実は結構アウトドア派でして、ツーリングやスポーツクライミング等が趣味なんです。」

「ツーリングが趣味か、実はアタシもだ――まぁ、アタシの場合は普通のツーリングじゃなくて、族のヘッドと一緒のバイオレンスツーリング
 だけどな。
 序に言っとくとアタシの趣味は、ツーリングとゲームとケンカと○○狩り狩りってな。」

「其れは、とても個性的ですね。」



其れで済ますのかオイ!普通は引く所だろ此処は!!
コイツ、思った以上に手強いってか、イケメンの天然かオイ!!性質悪い事この上ねぇな……天然が相手だと、何をやっても暖簾に腕押
し糠に釘だからな……下手すりゃアタシの方がコイツのペースに呑まれちまうかもだからな。

その後も適当なやり取りが続いた所で、相手の親父が『此れからは若い者同士で』つって、此の部屋にはアタシと伊集院だけが残された
訳なんだが……ぶっちゃけ空気が死んでる。
さっきまでのやり取りで聞きたい事は聞いちまったから、会話が成り立たねぇ!!

「……………」

「……………」

「……………」

「……………」

「……………」

「……………」

「……………」

「……………」

「……沈黙が痛い。」

「同感ですね。」



だよなぁ……なぁ、ぶっちゃけた事を聞きたいんだが、此の見合いってアンタが望んだモンなのか?アタシの私見を言わせて貰うなら、ア
ンタ此の見合いに前向きじゃねぇだろ?



「そうですね、僕自身は前向きではありませんでした……ですが、両親の勧めだったので断る事も出来ずにですよ――そして失礼を承知
 で言わせて貰うのならば、僕は貴女にも興味は無かった。
 現役高校生で起業して会社を興したと言うのは凄いと思いましたけど、それ以外は惹かれるモノがありませんでしたから……ですが、実
 際に会ってみてその認識は変わりました。
 貴女は僕が思っていた以上に魅力的な女性でした……正直な事を言うと、此の見合いで貴女に惚れました――僕と結婚を前提にした
 お付き合いをしていただけませんか?」

「そう来たか……だけど、悪いがアタシの答えはノーだ。
 確かにアンタはイケメンの部類なんだろうが、アタシの好みじゃねぇし、アンタとは違ってアタシはアンタに惚れる事は出来ねぇんだ……だ
 から、縁が無かったと思ってくれ。
 ってか、アンタほどのイケメンならアタシよりもいい女引っ掛けられんだろ?ナンパでもしてみりゃ良いぜ。」

「無理です!僕は貴女に惹かれた……此の思いはもう止まらないんです!!」



うわぁ、めんどくせぇなオイ!
ハッキリとノーを突き付けてやれば諦めると思ったら、其れでも諦めねぇとは根性が有るって言うのか、其れとも諦めが悪いって言うのか。
どっちにしても厄介だなクソッタレ!!

アタシがそんな事を思ってるとは夢にも思ってないだろう伊集院は、アタシに迫って来る……嫌ならぶっとばしゃ良いんだろうが、コイツを
ぶっ飛ばして見合いが破談になったとなったら、親父とお袋に迷惑をかけちまう!!



「僕は本気です!雪女さん、是非僕とーー!!!」



伊集院の手がアタシの方に触れようとした次の瞬間――



「おう、坊主……テメェ誰に手を出してんだ?」

「へ?」

「んな!?」

ドスの利きまくった低音ボイスと共に銀ちゃん参上!!そして、伊集院盛大にビビる!!
まぁ、行き成り背後にスカーフェイスのスキンヘッドのグラサン黒スーツが現れりゃビビるわな……じゃなくて、何をしに来たのよ銀ちゃん?



「姐さんの親父さんから連絡をいただきまして、こうして参上した次第でさ……親父さん達も悩んだ末に、此の見合いは外部から壊す形で
 破談にしないとならねぇと思ったんでしょうや。」

「其処で銀ちゃんか……こりゃ良い手だぜ。」

「でも、これだけじゃありませんぜ?……お嬢、雪女の姐さんはこっちです!!」

「そっち!……雪女のお姉ちゃんーーー!!!」

「って、今度はメユかよ!!」

メユが現れて、アタシに向かってダイビングハグ……何だよ泣いてんのか?



「だって、雪女のお姉ちゃんが結婚するって聞いたから……そんなの絶対やだったの!!」

「あぁ、そう言う事か……安心しなメユ、アタシはコイツとは結婚しない。ってか、多分一生結婚しないんじゃないかと思うわアタシって。
 こう言っちゃなんだが、結婚して家庭を持つよりも、生涯やりたい事を我慢しないでやり抜く方がアタシの性に合ってるからな……つー訳
 で、アタシはアンタと付き合う気はないぜ伊集院。」

「そうです、貴女が雪女さんと付き合おうとは烏滸がましいにも程があります。」

「みぎゃーーー!?」



っと、今度は伊集院の背後からマユ登場ってか……お前、気配を消して人の背後から現れるの止めろって――相手によってはショックで
心臓発作起こしちまうかもだぜ?



「そうなれば一撃必殺ですね、素敵です。」

「素敵じゃねぇよ!!」

ったく、登場早々ポンコツかましやがって……だが、コイツ等が今のアタシに必要な奴等でもあるんだよな――だから、もう一度だけ言っと
くぜ伊集院。


アタシはお前と付き合う心算は毛頭ねぇ。



「そんな……僕は君を愛してしまったと言うのに!!」

「知るかボケ、一方通行の愛なんぞ迷惑以外の何物でもないわ――ってか、アタシはテメェと一緒になるよりも、コイツ等と一緒に居る方が
 万倍楽しいんだ。
 だからよぉ、もう一度だけ言うぜ?アタシの事は諦めな……そんで二度と面見せんな。今度アタシの前に現れたその時は、テメェの野郎
 としての選手生命を永遠に終わらせてやるからな?
 幾ら天然でも、此処まで言や分かんだろあぁ?」

「ひ、ひぃ!!!」



少し凄んでやったら、逃げてった……如何やらイケメン天然は作ってたキャラだったみたいだ――本物の天然なら、この程度で逃げ出した
りはしねぇからな。
だけどまぁ助かったぜマユ、メユ、銀ちゃん……お蔭さんで、親父達に迷惑が掛からないように見合いをぶっ壊す事が出来たからよ。



「これしき如何って事はねぇです……お嬢の頼みが決め手でしたがね。」

「雪女のお姉ちゃんは、私のお姉ちゃんだから、何処の誰とも知れない人とは結婚して欲しくなかったんだよ。」

「メユ……お前本当にいい子だな。あとでラーメン奢ってやるよ。」

「わーい♪」



あぁ、もう本当にかわいいなオイ!!
んでマユは、何で此処に来たんだ?



「何となくです。」

「何となくかよ!!」

でも、其れが結果的には見合いをぶっ潰す事に繋がったんだから、お前の『何となく』ってのは存外馬鹿に出来ねぇのかも知れないな?
そう考えると、お前も凄いのかもな。



「お褒めに預かり光栄です。」

「今回に限っては褒めてるから光栄に思っていいぜ。」

結局このごたごたで見合いは破談になって、はじめは伊集院の両親が彼是言ってたが、親父とお袋が自分の会社での地位を明らかにし
たら大人しくなっちまったか……平取締役と常務、専務じゃ格が違うからな。
取引先の重役って事で親父もお袋も下手に出てたが、見合いがぶっ壊れたなら下手に出る必要は無くなったって事なんだろうな。
ま、乗り気じゃなかった見合いだからぶっ壊れてスカッとしたぜ。
ありがとなメユ。



「ううん、此れは私の我が儘だから。
 ねぇ、雪女のお姉ちゃん、これからも私のお姉ちゃんで居てくれるかな?」

「へっ、何を当たり前の事言ってんだお前?お前が望むなら、アタシはずっとお前のお姉ちゃんで居てやるよ。」

「雪女のお姉ちゃん……大好き!!」

「おう、アタシもお前の事は大好きだぜメユ♪」

「これは、相思相愛でしたか。」



マユ、其れは多分間違ってるぜ。
だけど、改めて実感したぜ……アタシに必要なのは、メユとマユだってな――だから、これからもこのチームでバッチリ行こうぜ?ヤンキー
娘とポンコツ娘とロリッ娘のチームは最強だって世界に知らしめてやろうぜ!!



「おーーー!!」

「お~~~。」

「こう言う時くらい、抑揚付けろっての……ったく本気でポンコツだなテメェは。」

「お褒めに預かり光栄です。」

「此れは褒めてねぇっての!!」

ったく、テメェは何処までもポンコツだなマユ……だが、其れがお前だから絶対に変わるんじゃねぇぞ?――見合いは破談になったが、アタ
シ達の道はまだ始まったばかりだからな!!
行こうぜ、マユ、メユ!アタシ達が目指す果てない未来に向かって!!――アタシ達の道は、ここからだぜ!!









 Fin



キャラクター設定







ヤンキー少女とポンコツ少女とロリッ娘

原作:吉良飛鳥


STAFF



企画・原案:吉良飛鳥



ストーリー構成:吉良飛鳥&kou



Specialthanks:読んでくださった読者の方々。



Thank you For Reading



Presented By 自由気侭



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