Side:雪奈


起業するって決めて色々と勉強してる最中なんだが……



「雪女さん起業するんだってね?
 凄いじゃん!応援するから頑張ってよ!って言うか、私は服飾関係の仕事に就きたいから、そっちの専門学校に進む心算なんだけど、
 卒業したら雪女さんの会社で雇ってくれるかな?」

「君が起業するとは予想外だったが、予想外だったからこそ夢がある……君の会社のホームページの作成は僕に任せてくれたまえ!!
 自慢ではないが、こう見えて1日の平均閲覧者が1000人を超えるウェブサイトを立ち上げたからね……必ずや君の役に立って見せよ
 うじゃないか無いか雪女君!!」



何処から聞きつけたのか、アタシの起業に関してアプローチを掛けてくる奴が増えてきた気がするぜ……それも、即戦力になりそうな奴
が多いのに驚きだ――今回の2人だって、即戦力間違いねぇからな。
だけどな、未だ起業する前段階なのに、そんな事言って良いのか――アタシが企業に失敗しちまったらお前等は路頭に迷う事になるの
かもだぜ?



「雪女さんの事は信頼してるから♪」

「君のような不良が起業を目指すと言うのは並大抵ではありません……その果てない夢に僕は感動したのです……だから、この僕の全
 てを、雪女さん、貴女に捧げます!!」



マジかオイ……コイツは、マジで責任重大だぜ――アタシが起業に失敗しちまったら、コイツ等は路頭に迷う事になっちまうからな……な
にが何でも、起業は成功させねぇとな。
簡単な道のりじゃないが、だからこそ遣り甲斐があるってモンだ……1人で、200人ぶっ倒しに行った時の気になりゃ、大概の事は如何
にかなると思うしな。










ヤンキー少女とポンコツ少女とロリッ娘とEpisode49
『不良と蜂蜜とチリソース』










んで、其れを皮切りに、学校内からスタッフの申し出をしてくる生徒が続出して、気が付けば会社設立時の従業員は50人になる位にまで
増えてたってか……幸先が良いって言うのか此れ?



「良いんじゃないでしょうか?此れもある意味で人徳と言えるでしょうから。」

「まぁ、スタッフが集まるのはいいんだけど、ドイツもコイツも一体何処でアタシが起業するって事を聞きつけたんだ?
 少なくともアタシはお前と委員長と山ちゃん先生以外には言ってねぇぜ?この学校の連中に限ってはだけどな……まさか、お前が言い
 回ってる訳じゃねぇよなマユ?」

「何故私限定なのでしょうか?」

「委員長は、そう言う事しなさそうだからな。」

「成程、納得です。
 ですが、広めているのは私ではなく山寺先生です。この間、提出し忘れたプリントを職員室に持って行った時の事なんですが、山寺先
 生が『うちのクラスのユキちゃんが起業しようとしてるの』と仰ってました。」

「アンタが犯人かよ山ちゃん先生!!」

まさかの犯人に吃驚だぜ!!
でも、それ以上に驚きなのは、アタシが起業するって事を知って、協力を申し出てくる奴が結構いるって事だ……アタシが最強の不良だ
って事は、少なくとも同学年の奴等は全員知ってる訳だから、普通に考えりゃ『最危険人物』って認識されて、声を掛ける事すらねぇと思
うんだが、なんで協力者が出てくるってんだ?



「貴女は知らないでしょうけど、貴女は結構この学校の生徒から感謝されているんですよ雪女さん?」

「あん、如何言うこった委員長?」

「貴女はこの学校にお礼参りに来た不良や、街中で迷惑行為やら何やらをしてる不良と喧嘩して叩きのめしていただけなのでしょうけれ
 ど、そのお陰で助かった人は多いと言う事です。
 カツアゲされていた所を貴女に助けられた人も居ますし、お礼参りを撃退したと言うのは、この学園の女子の純潔を守ったとも言えます
 からね……貴女の喧嘩は、無意味な暴力の行使ではなく、誰かを助けていた訳です。」

「あ、そうだったのか。」

取り敢えずカツアゲとかお礼参りとか苛めとかムカつくから片っ端から喧嘩で叩き潰してただけだったんだが、其れが誰かの役に立って
たってのは何かむず痒い感じだぜ。
ってーと何か?アタシに協力申し出て来たのは、アタシが無意識に助けてた奴等だって事か?



「恐らくはそうなのかと思いますねぇ?流石は最強の不良、人助けも出来るとはお見事です、凄いぞカッコいいぞーーー。」

「海馬社長か!つーか、そのセリフを言うならもっと抑揚をつけて、さらに津田ボイスを真似して言え!!」

「其れは難易度が高すぎますねぇ?」

「だったらやるなよ、このポンコツが!!」

「豚骨ラーメンの亜種で、ポンコツラーメンと言うのは如何でしょうか?」

「知らんわボゲェ!!」

なんだよポンコツラーメンって!
麺は茹で過ぎてクタクタで、スープは出汁が濃すぎて臭くて、ぐのチャーシューは生焼けで、メンマはちゃんと浸かってなくて、味玉の代わ
りに臭いのキツイピータンでも乗ってんのか?



「麺には黒ゴマをふんだんに練り込み、スープにはイカスミを混ぜた塩とんこつを使用し、具にはきくらげ、表面を焦がしたチャーシューとノ
 リ、燻製卵をトッピングした黒いラーメンでしょうか?」

「其れは、見た目は兎も角食ったら旨そうだな。」

そう言えば、アタシに協力申し出てきた奴の中に、ゲーム研究会の会長が居たな?
自作で同人ゲームも作って、ネットで無料配信してるとか言ってたから、そのゲームをダウンロードして遊んでみたが、中々の出来だった
な……こりゃ、アイツの能力を生かすには、ゲーム業界にも手を出した方が良いかもな。



「ゲームですか……『ザ・番長番付』と言うのは如何でしょうか?
 プレイヤーは自分の分身となる不良を作って、各地の不良と戦って不良の頂点を目指すアクションゲームで、特定の条件を満たすと隠
 しキャラである雪女さんと戦えるようになり、見事勝利すると雪女さんが最強の味方ユニットになると言う……」

「マユ、今すぐ企画書作ってゲー研の会長の所にもってけ。多分そのネタ通るわ。」

「はい、了解しました。」



な~んか、とんとん拍子に話が進んでて、少し怖い気がするんだが、変に躓いて停滞するよりは遥かに良いと思っておくか……取り敢え
ず順調に事は進んでるからな。
このペースで行けば、多分だけど卒業式前には起業出来そうだからな……もしもそうなったら絶対話題になっちまうだろうな。



「現役高校生が起業したとなれば話題騒然は間違いないでしょう?
 ですが安心してください雪女さん……そうなった場合には、私の実家の持てる力の全てを持ってして、貴女の会社をあらゆるメディアに
 発信しますので!!」

「抑えるんじゃなくて煽るんかい!!
 つーか委員長、ちょっとキャラ崩壊してねぇ!?アンタそんなキャラじゃないだろ!!」

「そんな事を言ったら、第2話の私と、今の私は全然別人です!」

「ぶっちゃけた上にメタいなオイ!!」

確かに昔の委員長と今の委員長は別人としか思えねぇけどよ……だからこそ、アンタとこんな関係になるとは思っても居なかったぜ委員
長?――不良と委員長ってのは、絶対に相容れないモノだと思ってたからよ。



「其れは私もですよ。ですが委員長は不良への、不良は委員長への偏見をなくせば案外分かり合えるのではないのでしょうか?
 私達がいい例でしょう、雪女さん?」

「違いねぇや。」

考えてみると、去年は苛めを行ってた中坊を一緒に懲らしめたりもしたからな……親友とは絶対に言ってやらないが、アンタはアタシの最
高の悪友ってやつだぜ。
起業したら、顧問弁護士の事は頼りにさせて貰うからな。



「ふふ、お任せください。」

「不良と委員長の友情……尊いですねぇ?」

「「のわぁぁぁぁぁ!?」」


い、行き成り声かけてくるんじゃねぇ!つーか、何時の間に戻って来たんだマユ!!一切気配を感じなかったぞオイ!!



「可能な限り存在感を薄くしてみました。分かり易く言うのならば戦闘力を1にしてみました。」

「其れは凄いと思うが、無駄に能力使ってんじゃねぇ。」

「普段使う事がないモノですから。
 其れよりも雪女さん、企画書を作らずに、さっきのゲームの内容を口頭でゲー研の会長さんに話したら、『面白そうだ』とOKを頂く事が出
 来ました。
 早速フルCGで製作を始めるようです……絶対に起業に間に合わせると言っていたので、雪女さんの会社の初商品はゲームのDLにな
 りそうですね。」

「マジか。」

まぁ、其れは其れで話題になって会社にはプラスになるかもだ。
しかしまぁ、ゲーム業界にまで業務を拡大したとなると、可成りの手広く事業を展開するマルチ会社になるのは間違いねぇが、手広く出来
る分だけ面白そうだぜ。
同じ位大変な事も有るだろうけど、だからこそやってやるってガッツも沸いて来るからな!!



「その意気よ雪女さん!」

「燃える雪女さん……燃えても溶けない不思議です。」

「いや、お前の思考回路の方が不思議だぜマユ。」

このポンコツ回路は、きっともうどうしようもねぇんだろうな……ま、コイツと一緒に居る事が当然と思ってる辺り、アタシも大分コイツのポン
コツに毒されてんのかもしれねぇけどな。
ま、其れは其れで案外悪くねぇかもだ――マユは千鶴ちゃん以外で出来た初めてのダチ公だしな。
そう言えば、副社長がマユだって事には誰も触れねぇが……アタシがいりゃぁ何とかなると思ってんだろうなぁきっと。否定はしねぇけど。



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でもって放課後、場所は磯野崎組の大広間。
上座に座るのはアタシとマユとメユで、下座には磯野崎組の幹部連中が座ってる訳で、そんな場所で何をしているのかと言うと……

「第1回にして最終回!アタシの会社の名前決めましょうレース!!」

「わーー、パチパチパチ。」

「マユお姉ちゃん、声に出さなくても良いと思うんだけど……」

「メユ、言うだけ無駄だ。」

「あ、ヤッパリ。」



其れがマユだからな。
さて、今やってるのは、アタシが設立する会社の会社名を如何するかについての話し合いってな――話し合いって言うよりも、アイディア
の披露会ってのが正しいかもだけどな。
さて、何か良いアイディア有るか?



「雪女の姐さん、雪女なので『スノーガール』てのは如何でしょう?」

「安直過ぎんだろ流石に。」

「雪女ポンコツカンパニー!」

「ポンコツって入ってる時点で、信用がねぇだろ。」

「雪女と愉快な仲間達。」

「何でやねん……と言いたい所だがマユの事を考えると微妙に否定できねぇ。」

「北極より愛を込めて。」

「詩人だが、其れは会社名としてどうなんだ?」

「此処はいっその事nWoで如何でしょうか?」

「銀ちゃん、其れ一番アウトだわ。」

真面な意見が出なかった……唯一期待してた銀ちゃんですら、まさかの答えだったからな……メユ、なんかアイディア有るか?社名が無
いと色々困るんだよ。



「ん~~……そうだ!!プラチナアウトローズって言うのは如何かな?」

「プラチナアウトローズ?」

直訳すれば白金の不良ってか?……だが、悪くねぇな?
そもそもにしてアウトローを会社名に採用してる所は何処にもないから、この会社名だけでも相当なインパクトを与えるのは間違いない。
そのアイディア、貰うぜメユ!



「えへへ、やった~~!!」

「あぁ、もう可愛いなオイ!!」

思わずメユをハグしたアタシは悪くねぇ!悪い筈がない!!可愛いは正義だから異論は認めねぇ!!

だが、会社名が決まったなら、事業計画書も大体出来たから、起業まではあと一歩って所か……絶対やり遂げてやろうじゃねぇか!!
アタシが起業を成功する事が出来れば、世の不良共に希望を与える事も出来るしな。



そして其れから、アタシは必死に勉強やら何やらをして起業に必要な事を全部やって、その年の3学期……1月に起業して法務省に必要
な登記もした。
本当に、アタシは現役女子高生で社長になっちまった訳だ……はぁ、色々取材とか有るんだろうな――起業に成功したのは喜ぶべき事
だけど面倒な事この上ないぜ。
でも、ここからがアタシの新たなスタートなんだから気合を入れないとだ――せっかく企業に成功しても、其れがぽしゃったら、マッタク持っ
て笑えないからな。









 To Be Continued… 



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