Side:雪奈


起業するとは言ったけど、起業するには何を如何すれば良いのかさっぱり分からねぇ……晩飯の時に聞こうかとも思ったけど、飯時の話
題でもねぇと思って言い出さなかったら、何時の間にか風呂入って9時回ってたとは……こりゃ、相談は明日かな?
ふぅ、風呂出たぜ~!って、もう晩酌してたのかよ親父もお袋も?



「アハハ、今始めたばかりだよ。」

「んだよ、飲みたいななら飯の時に言ってくれりゃ良いのによぉ?そうすりゃ、今日の飯に合う酒、見繕ってやったんだぜ?」

「いやいや、食事の時はユキの料理を確り味わいたかったからお酒は如何かと思ってさ。
 会社の飲み会で居酒屋に行ったなら兎も角、娘の作ってくれた晩御飯を肴に飲むと言うのは流石にね……それに、こうしてLED照明
 の色を変えてバーの雰囲気での家飲みも良いだろう?」

「やっぱお酒飲むなら雰囲気も大事にしたいしね?」

「さよか。」

酒なんぞ、ビールか缶チューハイを、ポテチとかつまみに部屋飲みするだけだから雰囲気とか言われても分からん……あ、此れがガキと
大人の違いって奴か!
大人は只飲むだけじゃなくで、雰囲気も大事にするって事か!覚えとこ。

んで、ウィスキー飲んでんのか?
簡単なモンで良かったらつまみでも作ろうか?酒だけ飲むよりも、適当に食いながら飲んだ方が悪酔いしねーって話だったからな。



「そうねぇ……其れじゃあお願いしちゃってもいいかしらユキちゃん?」

「おうよ、任せときな。」

ウィスキーなら、少しコッテリ系の方が合うかもな。
そうだ、晩飯の時には聞けなかった事、今聞いてみっか。勿論、つまみを作ってからだけどな。









ヤンキー少女とポンコツ少女とロリッ娘とEpisode46
『不良と粉末大蒜とトンカツソース』










良し、出来た。親父、お袋、お待ちどうさん!



「おぉ、良い匂いだね?此れはカレーかな?」

「アレ、でもユキちゃん鯖の水煮缶を開けてなかったっけ?」

「おう、開けたぜ鯖缶。
 コイツはサバの水煮缶を使って作った鯖カレーなんだよ。」

鯖の身は半分にして中骨を取って耐熱皿に並べて、其処に一味唐辛子、粉コショー、カレー粉をふりかけて、チューブのおろしにんにくと
おろししょうがを適量乗せる。
バター2カケを乗せたら、缶詰の汁を上からかけて、スライスした玉ねぎを目一杯乗せて、後は500ワットのレンジで6分半加熱すれば、
お手軽簡単な鯖カレーの出来上がりってな。
今回はウィスキーに合うようにバター大目のスパイス大目で作ってみたけど、其処ら辺を調節すれば普通に飯のおかずにもなる一品っ
て訳だ。



「此れは美味しそうだ。ありがとうユキ。」

「此れくらいどうって事ねぇって。
 其れよりもさ、親父とお袋に聞きたい事があったんだけどさ、今聞いても良いか?」

「あら?何か悩み事?良いわよ、遠慮しないで言ってちょうだいユキちゃん。」

「なら単刀直入に聞くけどよ……会社ってどうやって作ればいいんだ?」

「「……は?」」

「いや、だから会社作るのってどうやればいいのかなって。
 多分色々手続きとか必要なんだろ?役所とかにも提出する書類ってのがあるんだろうし……その辺の事は如何すれば良いのか教え
 て欲しくてさ。
 って、何おもしれー顔してんだよ夫婦そろって?」

「いや、だって……」

「ねぇ?」



あんだよ、こっちは真面目に聞いてんだぜ?



「うん、其れは分かってる。分かってるんだけど、なんで行き成り会社を立ち上げる話になってるのか理解出来なくてちょっとね?」

「あぁ、実はさ。アタシ高校卒業したら起業しようかと思ってんだ。」

「「はぁ!?」」



いやさ、アタシも高3だろ?
24まではアタシの好きなようにやらせてくれるって事だったけど、何時までも不良とかやってられねー訳だし、将来の事真剣に考えるべ
きだと思った訳よアタシとしては。
だけどさ、アタシって不良じゃん?しかも、この地域の不良だけじゃなくてアタシの噂聞きつけた不良連中ともケンカ繰り返して、全戦全勝
して関東最強の不良になってる訳よ。
加えて、単位落とさないようにしてるとはサボりの常習犯、飲酒喫煙は当たり前で、しかもメユ経緯でヤクザとも付き合ってんじゃん?
こんなブラックJKが進学できる大学や専門学校なんざまずねぇし、就職するにしても同じだろ?だから、起業してみようかなって。



「あ、あぁ成程ね。
 確かに、ユキの場合は進学や就職は難しいだろうなぁ……喧嘩やサボりだけなら兎も角、ヤクザと付き合いがあると言うのは世間的
 に余り良い印象じゃないだろうからね。
 磯野崎さんの所は、本物の侠客だし、この地域では『堅気には絶対に手を出さない本物の任侠者』って思われてるから兎も角、そうじ
 ゃない所では只の反社会的勢力としてしか見られないだろうからね……」

「ユキちゃんなら、私達が務めてる会社で採用は出来ると思うけど……」

「いや、其れは親のコネで入社したみてーでカッコワリィだろ流石に。」

「其れで起業か……そのチャレンジ精神は見事なモノだ。実際に起業して大成功した人達は沢山いるからね。
 だが、大成功した人達の10倍以上の数の失敗者達が存在するのが起業と言う道だ……上手い事行けば万々歳だが、失敗したら其
 処でお終いだ。
 1度起業に失敗したら2度目は無いと言われる程、起業は厳しい……其れでもやるのかいユキ?」



へっ、其れを聞いて俄然やる気が出て来たぜ親父!
其れに、アタシの場合は失敗しても滑り止めがあるから大丈夫だって!!



「「滑り止め?」」

「起業してダメだったらその時は、アタシ磯野崎組に入るから。つーか、『ダメだった時にはウチに来ればいい』ってメユに言われたから。
 序に言うと、アタシだったら入って即幹部だとよ。」

「「……はい~~~~!?」」

「予想してたとは言え、起業するって言った時以上の反応をどうも……つーか、夫婦揃って同じ反応するとか仲いいねアンタ等……」

にしても、我ながら極端な二択だよな此れ。
新鋭会社の女社長か、其れとも大ヤクザ組織の女幹部兼メユの専属ボディガードか……正に両極端だぜ。まぁ、どっちに転んでも生活
に困る事はねぇだろうけどな。
困るどころか、親父とお袋の老後の為の金だって心配する事なさそうだぜ。
……って、翌々考えたらアタシって貯金500万もあるんだから、成功するかどうかも分からない起業よりも、メユの所に行く方が良くね?
其れなら、500万は手つかずで残るし、安定するよな?



「いや、先ずは起業の方向でやってみたらどうだいユキ?
 今は資本金が1円でも株式会社が設立できる時代だから、やるだけやってみると良い――と言うか、資本金が500万と言うのは少な
 くない額だから、業種によっては巧く行くんじゃないかな?」

「そうなのか?なら、ヤッパリ先ずは起業だな。
 んで、如何すりゃいいんだ?」

「ゴメンねユキちゃん、私達って自分で会社を起こした訳じゃなくて、普通に就職して、仕事で結果を出して重役になっただけだから起業
 するのは如何すれば良いのかとかはあんまり知らないのよ。」

「あ、そうだったのか……」

「だけど、僕達が務めてる会社は、社長が起業して立ち上げた会社なんだ、
 それでね、今度の日曜日に起業についてのセミナーをやる事になってるんだけど、興味があるならユキも出てみないか?きっと、何か
 のヒントになると思うんだが……」

「マジか!!」

そりゃ参加するしかねーだろ!
起業を考えてたアタシには、渡りに船じゃねーかオイ!!親父、アンタ最高だぜマジで!!



「大した事じゃないよ。僕達が直接アドバイスをする訳じゃないしね。
 ユキが起業するって言ったのには驚いたけど、其れがユキの選んだ道なら僕達は細かい事は言わない……僕達が奪ってしまった12
 年間の埋め合わせの12年、其れをどう使うかはユキの自由だからね。
 ユキの選んだ道を、僕も母さんも全力で応援させて貰うよ。」

「ユキちゃん、起業って言うのは決して楽な道じゃなくて、困難の方が多い茨の道だけど、貴女ならきっと結果を出す事が出来るだろうか
 ら、やれるだけやってみなさい。
 私もお父さんも、応援してるから。」

「……ありがとよ。」

正直言うと、反対されるかと思ってたんだが、応援されるとはな……こりゃ、益々気合い入れねぇとだ!
先ずは、今度の日曜日の起業に関するセミナーに参加しねぇとだな!マユの奴も誘って参加一択だぜ!

起業のノウハウを知らなきゃ、起業する事も出来ねぇからな!!




んで、その後……



雪女
『今度の日曜、親父とお袋が務めてる会社で起業に関するセミナーやるらしいからお前も来い。』


マユ
『何で私が?』


雪女
『あのなぁ、起業したらお前も一緒に会社の設立者にって言っただろ?だから、オメーも一緒に行くんだよ!理解できたか?』


マユ
『そう言えばそんな事を言っていましたね……分かりました、了解です。
 時に、スーツとか着て行った方が良いのでしょうか?』


雪女
『いや、アタシ等高校生なんだから制服で良いだろ?制服は公の場で着ても良い物らしいからな。』


マユ
『成程。其れでは受けがいいようにセーラー服で行きましょう。』


雪女
『いや、其れうちの学校の制服じゃねぇから!!!』


マユ
『セーラー服は正義。』


雪女
『意味わからねぇ!!』



以上、マユとのLINEのやり取りだ。
セミナーでやらかしてくれるなよとは思うんだが、多分無理だよなぁ……アイツのポンコツを治す事の出来る薬とか開発したら、ノーベル
賞取れんじゃねぇかな?
冗談じゃなくて割と本気でな。

だが、取り敢えずまずは今度の日曜のセミナーだな。
其処で起業のノウハウを勉強して、全ては其処からだぜ!!









 To Be Continued… 



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