Side:雪奈


ソフトボール大会の助っ人が終わり、健全な不良生活に戻った訳なんだが……

「閉門まであと1分だ!飛ばすから確り掴まってろよマユ」

「では、お言葉に甘えて。」

「突っ込むぜオラァァァ!!」



――ズドバァァァァン!!



「どわぁ!!くおらぁ、早乙女!原チャリに乗ったまま門を通るなと何度言えば分かるんだお前は!ちゃんと降りてから手で押して通れ
 と言ってるだろうが!!」

「わっりーな、其れやってたら間に合わなくなってたんでよ。
 まぁ、アタシはサボっても良いんだが、マユの奴はサボると確実に単位落とすだろうから出席させねぇとなんだわ?つー訳で納得して
 くれや!」

「雪女さんのおかげで今の所無遅刻ですねぇ~~。」



今日も今日とて、マユとの2ケツで登校ってな。
先公がなんぞか言って来たが、不良であるアタシに校則を守れってのがそもそもにして馬耳東風だっての――そもそも、校則どころか
国の法律すら守ってねぇしなアタシは。
さてと、試合は公欠扱いだったから良いとしても、授業に出てねぇ事には変わりねぇから、あんましサボると内容が分からなくなっちまう
から今日は真面目に授業受けねぇとだな。









ヤンキー少女とポンコツ少女とロリッ娘とEpisode44
『不良と胡椒とチキンブイヨン』










んで、此れは何よマユ?



「雪女さんが公欠で居なかった時に取っておいたノートです。
 サボったのならば兎も角、公欠であるのならば授業内容はちゃんと伝えておくべきだと思いましたので、私のノートで良ければどうぞ
 使って下さい。」

「おう、ありがとうよマユ……って言う所なんだろうがな、お前なんだよこのノート!全く持って読めねぇよ!
 なんだよ此の文字!ハングルか、象形文字か、古代神官文字か、はたまた宇宙人の言語か!!」

「失礼な、日本語ですよ?崩れているだけです。」

「嘘こけ!!アタシの知る限り、どんなに崩して書いても日本語が、漢字や平仮名が、動植物や飛行機の形になる筈がねぇだろ!!
 つーか、お前は此れがなんて書いてるのか分かんのかオイ!!」

「分からなければノートになりませんよ。
 因みに此方が英語のノートになります。」

「予想してたが、筆記体の大量のLに横線やら点が付いてるってか!!」

こんにゃろう、ポンコツはノートまでかよ……しかも、此れで本人はちゃんとノートの内容を理解する事が出来るってんだから驚きだっ
てんだ。
今更かもしれないが、お前間違った方向に進化した人類じゃないよなマユ?



「はぁ、普通の人間だと思います。
 間違った方向に進化した人類……自分のライフが相手より下の場合、装備モンスターの元々の攻撃力は3000になる、自分のライ
 フが相手よりも上の場合、装備モンスターの攻撃力は100になると言った所でしょうか?」

「いや、知らないよ。」

元々の攻撃力が3000になるってのは、某過労死ウォリアーに使いたい感じだけどな。



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さて、本日の4限目は体育で、今日からは柔道の授業。
まずは受け身の練習なんだが……マユよ、何故に前方回転受け身の練習でそのまま転がり続けて壁に激突すんだオメェは?こんな
所でもポンコツ発動すんなよオイ!
受け身の練習で壁に激突する奴とか初めて見たわ!!



「初めてですか、其れはとてもレアですね?つまり私は、オゾンの上で金色になってしまう位のゴールドレアと言う事ですね?」

「いや、オメェは精々ノーマルパラレルが良い所だろ。」

「其れでも、光ってるのを選択する辺りに、雪女さんの優しさを感じます。
 時に、バファリンの半分は優しさで出来ていますと宣伝していますが、其れを踏まえると優しさと言うのは医薬品であると言う事なの
 でしょうか?」

「いや、其れは絶対に違うと思うぜ……てか、普通はそんな事考えねぇっての。考えんのはお前だけだからな!!」

「私だけですか……やはり私は極レア品ですね。」



知るかボゲェ!!
ったく、大会期間中はコイツのポンコツは形を潜めてたが、大会が終わった途端に溜めてたポンコツ力が大爆発だなオイ!!こりゃ、
今日は結構忙しい事になりそうだぜ。
そんな訳で、宜しく頼むぜ委員長?



「そうですね……頑張るとしましょう、主に学校が無くらないようにする為に。」

「だよな……特に今日は午後に理科の実験があるからな。」

古座気の野郎が余計な事をしないとも限らねぇしな。
取り敢えず午後は要注意だとして、今は体育の授業だ――授業の後半は、実戦形式の乱取りだったんだが、男子相手でもアタシは
楽勝だっての。
自慢じゃねぇが、親父とお袋にやらされてた稽古事の中には柔道もあって、アタシは小学生で黒帯取得してっから、そんじょそこ等の
男子高校生なんぞ目じゃねぇっての。
ま、柔道だけじゃなくて空手も黒帯レベルだけどよ。

でだ、委員長が可成りやるのは良いとして……マユの奴が持ち前のポンコツ力で勝ちまくったってのは、突っ込むだけ無駄なんだろう
なきっと。
なんだろう、アイツはこの先の人生でもポンコツ力が変な作用を起こして結果的に良い事になる気がしてならねぇわ……アイツのポン
コツ力は若しかしたら世界を変える――訳はねぇな多分。



んで、4時限目の後は昼休み。
昼飯は安定の学食だ。
4限が体育で腹減ったから、アタシは……カツカレー大盛り。其れが飯で、おかずはコロッケとハンバーグとサバの味噌煮と回鍋肉。
でもって、味噌汁の代わりに味噌ラーメン。牛乳は1リットルのパックで宜しく。



「あ、相変わらず凄いメニューですね雪女さん?」

「テメェで言うのも何だが、燃費悪いんだわこの身体は。……だが、真に突っ込むべきはマユのメニューじゃね?」

「ですね……パプリカを練り込んだうどんに、パプリカパウダーを混ぜ込んだ衣のフライドチキンに、飲み物はアセロラドリンクで、デザー
 トはいちごのムース。
 見事なまでに真っ赤ですね。」

「この赤さに無限の可能性を……」

「「微塵も感じねぇよ!!」感じませんよ!!」


マユは、真っ赤なランチだったからな。
真っ赤なのは、夕陽と猿のケツだけで充分だってんだ……アタシと委員長の突っ込みが息合ってるのには驚いたけどよ。

取り敢えずランチは無事に済み、午後の理科の時間も無事に切り抜ける事が出来たぜ……つーか、古座気の野郎、硫黄ガス発生の
実験とか何考えてんだっての。
そんな実験をやったら、マユがポンコツ発動して、発生した硫黄ガスに点火して大爆発しちまうだろうが!!……実験内容を聞いたア
タシと委員長がサンドイッチハイキックで古座気をKOしたのはわるくねぇ。
学校を守るにはこうするしかなかったからな。



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そんなこんなで放課後。
今日の放課後は、メユと千鶴ちゃんと合流してゲーセンだ。
んでもって今は、アタシとメユ、マユと千鶴ちゃんのタッグでエアホッケーのダブルスで対戦中だ!……千鶴ちゃんが強烈なスマッシュ
を打って来たが、甘いぜ!

此処だぁぁぁ!!!



――カコーン!!



スマッシュに対するカウンターの一撃!
此れに対処するのは難しい……1点は貰ったぜ!!



「そうは行きません。」

「って、マユ!!」

此処でマユがゴールキーパーに回り、アタシが打ったカウンターのパッドを防いだんだが……マユが弾いたパッドは、在ろう事かその
まま宙を飛んで、ゲーセンの店長にダイレクトアタックをかましてターンエンドってか?
マッタク持って、何を如何やったらこんな事になるのかは分からないが、オメェのポンコツ力がヤバいってのはよく分かったぜマユ。



「お褒めに預かり光栄です?」

「褒めてねぇよ!つーか何で疑問形!?」

「何となく、でしょうか?」

「其れは無いよマユお姉ちゃん……」

「ユキちゃん、アンタ中々個性的なダチが居るんだな?」



個性的ね……確かに其の通りだぜ千鶴ちゃん。
だけど、個性的でポンコツだけど、マユと一緒に居るってのは悪い気分じゃねぇから、マユはアタシにとってのソウルメイトなのかも知れ
ねぇな。
何よりも、コイツのポンコツに付き合うのは、存外悪くねぇって思ってるアタシが居るからよ。

もしかしたら、アタシとマユが出会うのは偶然じゃなくて必然だったのかもしれないぜ。



「運命を感じますね?」

「感じんな馬鹿。」

取り敢えず、今日は平和に過ごす事が出来ましたってな……今日も1日、ご苦労さんだぜ。









 To Be Continued… 



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