Side:雪奈


ソフトボール大会の地区予選何だが、1回戦で優勝常連校をコールドした事で火が点いたのか、その勢いのままにあれよあれよと勝ち
抜いて、気が付きゃ決勝戦まで来てましたとさ。
此れは流石に驚きだ。



「雪女さんが助っ人で参加しているのならば、驚く事でもないでしょう?」

「そうそう、ユキちゃんが助っ人ならな。
 つーかよ、ユキちゃんだったらどんな部活に助っ人参加しても余裕で活躍できんだろ?」

「雪女のお姉ちゃんだったらきっと出来るよ♪」



ある日の放課後、マユとメユと千鶴ちゃんと一緒にグレートモスバーガーでの駄弁り……今更だが、特服の千鶴ちゃんが良く入店でき
たもんだぜ。
んで、話題はソフトボール部の快進撃についてだ。
アタシが助っ人に参加してるって言うがよ、うちのソフトボール部の連中ってか、今年の奴等は普通に強いぞ?アタシが助っ人に入らな
くてもいいとこまで行けたんじゃねぇかと思っちまうぜ。
ま、怪我で欠場してる奴が戻ってくるまでは、確りと助っ人を務めさせて貰うけどよ。



「頑張ってね!
 今度の決勝戦、ソフトボール部の皆さんに差し入れ持ってくから!」

「メユ、お前は本当に良い子だな。」

しかし、メユからの差し入れって事は=磯野崎組からの差し入れになる訳で……ヤクザからの差し入れがあった部活って、問題になら
ねぇかちょっと不安だぜ。








ヤンキー少女とポンコツ少女とロリッ娘とEpisode43
『不良とバターと辛子明太子』










そんな訳でやって来たぜ決勝戦!
何と今年の決勝戦は、両校とも初めての決勝進出って言うスゲェ事態だったらしく、地区予選であるにも拘らず、結構見に来てる人達
が居るな?
ま、弱小校と無名校がジャイアントキリング繰り返して決勝に来たとなれば注目もされるわな……地元紙の記者とカメラマンも居たし。

決勝の相手、府中太陽学園は部員はすくねぇが、実力は高い感じだな。
試合は進みに進んで、8回の裏のアタシ達の攻撃なんだが、現在スコアは5-4と府中太陽学園が1点のリードだ……まさか5点も取ら
れるとは思ってなかったが、剛速球もライジングボールもサイコボールも、何回も投げてりゃ対策されるって事か。
だが、アタシが打たれても、こっちだって打線が火を噴いて1点差で食らいついてるからまだまだ分からねぇな?この回を含めて、後2
回の攻撃がある訳だしよ。

8回の裏はアタシが先頭打者で、先ずは冷静にフォアボールを選んで出塁。
続く3番は三振に倒れたけど、4番がキッチリと仕事をするセンター前ヒットで、その間にアタシは3塁へと進んで、1アウト1・3塁の大チ
ャンスだ。
バッターは5番の部長……外野フライなら1点入るから、気楽にいけよ部長。

で、ボールカウントは2ボール2ストライクとなった5球目。



――カキーン!!



打った!
けど、バットの根本だったから打球には勢いがねぇが、部長のパワーのおかげでやや深めの外野フライになった……行くぜ、爆速タッチ
アーップ!!
初速からほぼトップスピードで走り出したんだが、相手のレフトも中々の強肩みたいで、この分だと結構ギリギリだ――普通ならな。

「どっせいやぁ!!!」

ホームベースの数メートル前からスライディングと言う名の超低空飛び蹴りでホームに突っ込む!オラァ、避けねぇとスパイクで斬りさい
ちまうぞ!!



「うわぁ、あぶな!!」

「避けてくれてありがとよ。」

「あ。」

「作戦通り。」

アタシの飛び蹴り染みたスライディングに驚いたキャッチャーがアタシを避けたおかげで返球を捕球する事が出来ず、アタシは余裕でホ
ームイン。此れで同点。
1塁ランナーも、ボールの処理をしている間に3塁まで進んで、此れで2アウト3塁。
外野に転がせば逆転のチャンスなんだが……なかなかそうは事は進まず、6番がフォアボールで出塁するも、7番がキャッチャーフライ
に倒れてチェンジ。
そして最終回。

さてと、剛速球は兎も角、ライジングボールとサイコボールに対処されるのはキツイな?
どっちも途中までは同じ軌道だから見分けがつきにくいんだが、府中太陽の連中はバットを限界まで長く持つ事で、変化する前に打つ
って言う作戦だから、ミートされなくても球数が多くなっちまうぜ。
だが、そう言う事なら……此れで如何だぁ!!!



――ズバン!!!



「ストラーイク!!」

「!!更に手前で変化した!?」



変化する前に打たれるなら、もっと前で変化させてやれば良いって訳だ。
流石にコイツには即対処できなかったらしくて2者連続の三振!
で、3人目もツーナッシングに追い込んで……喰らえや!!



――轟!!



ライジングボールかサイコボールかと思わせておいてからの超剛速球だ……変化球に警戒してる相手には、高速のストレートは決まる
ってな。
アタシの思惑は当たって三振!!



「雪女のお姉ちゃん、危ない!!」

「へ?」

ってバット!?すっぽ抜けちまったのか!!


――ドガァァァァ!!


ぐ……何とか顔面は避けられたけど、右肩を強打しちまった……骨は折れてないみたいだけど、流石のアタシも金属バットのダイレクト
アタックは効いたぜ……!!



「ゴ、ゴメン!すっぽ抜けちゃって!!!だ、大丈夫!?」

「おうよ、こちとら不良だから此の位の事には慣れてんだ……木刀で後ろから打ん殴られたのに比べたら大した事はねぇって。」

「まさかのViolence!!」



不良だからな。
しかし、流石に此れはいってぇ……こりゃ確実に腫れてくるだろうな?……そうなったら、流石に投げる事は出来ねぇから、どうしても9
回の裏で逆転して貰わねぇとだ。
次は下位打線の8番からで、場合によっちゃアタシまで回るが、正直この状態で打てるとは思えねぇんだよな。



「大丈夫。雪女さんまで回さずに、1点取るから。」

「そうそう、だから安心してよ!!」

「お前等……わりぃ、頼むわ。」

金属バットが当たった部分をアイスノンで冷やしちゃいるが、案の定腫れて来た肩が、直ぐに腫れが引くとは思えねぇからよ。
そんな訳で9回の裏。
まずは8番がフルカウントからの2ベースで出塁し、続く9番が冷静に送って1アウト3塁のチャンス。
打者は1番……コイツが決めなきゃアタシに回る……フォアボールがデッドボールで出塁したなら、アタシは見逃し三振でも良いが、ア
ウトになっちまったらそうも行かねえ……延長戦だけは勘弁だから頼むぜオイ!!
2球続けてファールで、2ナッシングと追い込まれた3球目……



――カキーン!!!



行ったー!!!
真芯で捉えた打球は右中間を破って、その間に3塁ランナーがホームインして、サヨナラ勝ちだ!!なんつー劇的な幕切れだよ!!
試合が終了した瞬間、ベンチから全員が集まって監督の胴上げだ!
そして観客席からも大声援!
万年初戦敗退の弱小校が、ジャイアントキリングを連発した末に優勝して全国への切符を手にしたとなれば盛り上がるなってのが無理
な話だからよ。



んで、全国大会に出場する事が出来た訳で、全国大会が始まる頃には、怪我してた奴も全快したんだが、若しもの時の為に、大会が
終わるまでアタシは助っ人として参加する事になった。
そんな全国大会だが、1回戦を何とか勝ち抜き、2回戦で去年の優勝校とぶつかり……死力を出し尽くした末に、何とか競り勝つ事が
出来たんだが、2回戦で持てる力の全てを出し尽くした多摩川南は、3回戦で20点差を付けられると言う、嘘の様なぼろ負けを喫して
大会を終えた。
だが、2回戦で持てる力の全てを出し尽くしたソフトボール部の連中に悔いはないみたいだったから良かったぜ……悔いが無いんなら
例え負けても悔しくはないだろうからな。






「で、此れは何よ?」

全国大会3回戦から数日後の休日に、アタシはソフトボール部の連中に呼び出された……焼き肉屋に。此れ、どういう状況?



「打ち上げ兼、私達からのお礼って所だよ雪女さん。
 貴女のおかげで、私達は悲願の全国大会に出場する事が出来た……そのお礼の意味で、今日は私達ソフトボール部の奢りで雪女
 さんをおもてなしってね!」

「え?アタシの力だけじゃねぇだろ?」

「だとしてもだよ。
 雪女さんが助っ人を引き受けてくれなかったら、大会に出場する事も出来なかった訳だから、ちゃんとお礼をしないと気分が悪いの。」



サイですか。
だがまぁ、そう言う事なら有り難く御呼ばれするぜ。過ぎた遠慮は逆に失礼になるからな……喰い放題コースって事だったから手加減
は必要ねぇ、リミッター解除!!
ってな訳で、焼き肉パーティは大いに盛り上がった。アタシが『豪快一本バラカルビ』をカットしないで丸ごと行ったら拍手喝采だったぜ。

因みにだが、ソフトボール部は今年の活躍に興奮した帰宅部の生徒が緊急入部した事で、廃部が取りやめになったらしい。
何と言うか、全てが巧く行った感じだな。

此れで、やっとアタシも不良業を再開する事が出来るぜ……取り敢えず、其処でカツアゲしてるクソ野郎、アタシとやらないか?楽しい、
楽しい喧嘩をな!!










 To Be Continued… 



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