Side:雪奈


「雪女さん、お願いだから力を貸して!!」



まずは状況を説明すると、女子ソフトボール部の部長から力を貸してくれと言われましたとさ――なんでやねん。



「この前の草野球大会で、雪女さんのチームは優勝したんだよね?……その力を貸して欲しいの!!ぎりぎり9人しかいない部員の1人
 が怪我しちゃったかから、此のままじゃ大会に出る事も出来ないから。」

「成程そう言う事か。」

そう言えば、うちのソフトボール部って、去年も今年も新入部員が居なくて、今の3年が引退したら廃部が決定してるんだったよな確か。
最後になる大会に出る事も出来なかったなんて事になりゃ、そりゃ悔いが残るってモンだからな……そんで、草野球大会で優勝しちまっ
たアタシの所に頼みに来た訳か。
良いぜ、そんくらいならよ。
アタシの力がどれ程役に立つかは分からねぇが、万年1回戦負けを脱却する事だけは約束してやんぜ。



「ホント?ありがとう、雪女さん!!」

「おうよ。ってかよ、よくもまぁアタシになんぞ頼む気になったなお前?
 自分で言ってりゃ世話ねぇが、アタシは学校一の不良だぜ?『参加してやるから10万払え』とか言われる可能性考えなかったのか?」

「雪女さん、そう言う事しないでしょ絶対?
 確かに不良だけど弱い者苛めはしないし、寧ろ弱い者苛めしてる人を叩きのめしたって聞くし、お礼参りに来た元生徒を返り討ちにした
 りしてるから、悪い人じゃないのは皆知ってるし。」



マジか?……若しかして、生活指導とか一部の教師には敵視されてっけど、一般生徒にゃそうでもないのかねぇ?
世の中分らねぇもんだぜ。










ヤンキー少女とポンコツ少女とロリッ娘とEpisode40
『不良とハチミツとマーガリン』










しかしまぁ、この間の草野球大会の優勝が原因で、ソフトボール部の助っ人をやる事になるとは思わなかったぜ……委員長は性格的に
大会の事を周囲に言う様な事はしねぇだろうから、テメェが広めやがったなマユ?



「はい。雪女さんの活躍はもっとこう、広く伝えた方が良いと思いましたので。
 多少色を付けて、雪女さんの投球の最大速度には20kmほど盛らせて頂きましたが。」

「20km盛ったって……マックス170kmだろ其れ!
 なんだその剛速球!エンジェルスの大谷翔平超えてるじゃねぇか!ってか、そんなん普通のミットで捕球したら銀ちゃんの手の骨に異
 常が出るわ!!」

「因みに試合を決めた逆転満塁ホームランは、あのグラウンドの近くを通っている電車の高架橋に直撃したと言っておきました。」

「高架橋直撃弾って、アタシは清原か!!」

「因みに、助っ人参戦をするのならば私も参加しましょうか?」



話題を変えんじゃねぇよ行き成り!そしてオメェは要らねぇよスットコドッコイ!
オメェが助っ人として参加した日にゃ、守備ではエラー、バッティングでは連続三振……なら未だしも、バッドで土掘り起こしたり、打った
ら打ったで、ボールが変なバウンド起こして主審にアッパーカット喰らわせたりするだろ絶対!
其れだけなら未だしも、バッドがすっぽ抜けて相手選手にダイレクトアタックなんぞかましてみろ!間違いなく乱闘になんぞ!!



「乱闘になったら雪女さんが全部叩きのめすから大丈夫でしょう?そして相手選手は試合続行不可能になって我が校の勝利です。
 素晴らしいですね。」

「心配する所がちげぇ!つーか、そんな事態になったら普通にウチの学校の方が失格になるわボゲェ!」

「相手チームをすべて倒したのに失格になるとは理不尽な。」

「理不尽なのはテメェの思考形態だよ大馬鹿野郎!!」

だがまぁ、助っ人参加はNGだが、応援に来るのは問題ねぇと思うから、どうしても参加したいなら応援の方で参加しろや。
普通に学校ある日でも、山ちゃんに言えば公欠扱いにしてくれるだろうからな。



「雪女さん、堂々と不正する話をしないで頂けますか?」

「かてぇ事言うなよ委員長?
 男子野球部の応援は全生徒公欠扱いになんのに、他の部活の応援に行くのは公欠扱いにならないってのは不公平だろ?甲子園だ
 けが部活じゃねぇんだしよ。」

「其れはそうかも知れませんが……」

「生徒会長様の権限で、『部活の大会の応援に行った場合は公欠扱いにする』って校則作ってくれねぇかな?」

「……前向きに検討させて頂きます。」



お、否定されると思ってたんだが意外と脈ありっぽいな?
堅物に見えて、意外と委員長は話が通じるところがあるから、若しかしたら若しかするかもしれねぇな此れは。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・

・・・・・・

・・・



んでもって放課後。
ナンボ助っ人とは言え、大会の時だけ参加ってのは良くねぇと思うからソフトボール部にだ――驚かれると思ってたんだが、部長が話を
しといたみたいで、そんなに驚かれる事はなかったな。

そんで部長、アタシのポジションは何処で、打順は何番になるんだ?



「ポジションはピッチャー。」

「え?」

「だからピッチャー!
 怪我しちゃったのってピッチャーの人だったんだよ~~!雪女さんは、マックス170km出るって事だったから、ソフトボールの下投げで
 も結構早いの投げられるでしょ?」

「170kmはマユが盛った話なんだが……まぁ、マックス150kmは出るから、下投げでも130kmは出るんじゃねぇかな?」

しかしまぁ、ピッチャーか……こりゃ責任重大だぜ。
打線がいくら頑張っても、投手がダメだったら勝つモノも勝てねぇからな……ピッチャーに求められるのは『自軍が1点取れば勝てる』だ
けの防御率だ。
上等だぜ、ピッチャーの大任を引き受けてやろうじゃねぇの――んで、打順は?



「最初は4番とも思ったんだけど、2番をお願いしても良いかな?
 2番なら初回から打順が回って来るし、下位打線から始まったイニングでも打順が回って来る事が多いから、4番よりもチャンスが来る
 事が有るって言うし。」

「最近言われてる『2番最強説』か。」

初回に満塁で4番に回るなんてのは所詮期待値だからな……現実的に考えれば、初回や下位打線で始まるイニングに確実に打順が
回って来て、しかも場合によっては塁が1つは埋まってる状態で打順が回って来る2番に強打者を置く方が点には繋がり易くなるんだよ
な……打撃にしても大役を任されちまったか。
んで、大会の目標は?



「成績は関係ないかな……私達の全力を出せる試合が出来れば其れで良いんだ。」

「オイオイオイ、『目標は?』って聞かれたら、『優勝』位は言えよ。
 確かにテメェの全力を出すのは大事だけどよ、やるからには勝ちてぇじゃねぇか?どうせなら全国制覇する位の気概で挑もうぜ!!」

「優勝って、マジで?」

「おうよ、大マジだ!!」

其れによ、想像してみろや?
万年1回戦負けの弱小校が、地区大会で優勝ってだけでも相当なインパクトになるだろ?……盛大なジャイアントキリングブチかまして
やろうじゃねぇか!!



「優勝……そうね、優勝だね!!今年の私達の目標は、優勝だね!!」

「優勝だって!」

「優勝か……」

「優勝……良いね。」

「私達の目標は、優勝だ!」

「優勝だ!!」

「「「「「「「「優勝!優勝!!優勝だーーー!!!」」」」」」」」」



おぉっと、良い感じに火が点きやがったな?
如何やらソフトボール部に足りなかったのは『勝利への貪欲さ』だったみたいだぜ……だが、其れに火が点いた今、今年のソフトボール
部は此処から大化けするかもな。
取り敢えず、大会が始まるまでの期間は、猛練習あるのみだな!!気合入れろよテメェ等!!



「「「「「「「「おうよ!!」」」」」」」」



って、此れじゃ誰が部長か分かったもんじゃねぇな。









――そして激しい練習中だ……内容は――スポコン漫画が引くレベルだと言っておくぜ









そんでもって練習を終えて、今はマユとメユと一緒に駅前のラーメン屋だ。
親父とお袋は今日は遅くなるって言ってたから、晩飯は外で済ます事にな――マユは、何だかんだでソフトボール部の練習が終わるま
で待ってて、メユは塾の帰りの所をバッタリ会ったんだけどな。



「雪女のお姉ちゃん、ソフトボールの高校大会に出るんだ?応援に行くね!!」

「おぉ、そいつは嬉しいな?メユの応援が有ったら、アタシは大リーガーにも勝てるかも知れねぇからな。」


一応源一郎さんに連絡して、メユと一緒に晩飯食う事を伝えたんだが、アッサリとOKされたな……そんだけアタシは信頼されてるって事
なのかも知れないけどさ。
んで、今夜のメニューだが、アタシは期間限定メニューである『ピリ辛豚バララーメン』――特製のピリ辛ダレで和えた豚バラ肉とモヤシを
トッピングした濃厚塩とんこつラーメン――にオプションで味玉とチャーシューとメンマを付けた奴に餃子とミニチャーシュー丼のセット。
メユは塩チャーシュー麺に唐揚げのセット……好物のコンボって所だな。
んでマユは……何だその青いラーメンと餃子は?



「新発売のブルーラーメンと青い餃子のセットです。
 この青色は天然色素から取ったとの事なので、身体にも優しい青い食品に惹かれてしまいました……とても美味しそうですね。」

「どう見ても旨そうにゃ見えねぇって……青は食欲減退色だぜ普通に?」

「青が許されるのは、かき氷のブルーハワイだけだよね……」



だな。
でもまぁ、商品にしたって事は味其の物は商品に出来るレベルだって事だから、不味い訳じゃねぇんだろうな……見た目のインパクトが
ハンパないから、話題性も充分だしな。
其れは其れとして、味玉1個やるよメユ。卵好きだろお前?



「うん、大好き!ありがとう、雪女のお姉ちゃん!!」

「此れ位気にすんなっての。」

ぶっちゃけて言うなら、メユにやる為に味玉追加したようなもんだからな。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・

・・・・・・

・・・



そんなこんなでやって来ました抽選会!!
部長は果たして、何番を引き当てたのか……



『多摩川南高校、5番!!』



5番って……行き成り全国大会常連校の『世田谷五輪高校』が相手かよ!!――だが、相手にとって不足はねぇ……万年1回戦敗退
の学校が、全国大会常連校を倒したとなれば、話題沸騰間違いなしだからな!!
最大のジャイアントキリングをかましてやろうじゃねぇか!!――コイツは燃えて来たぜ!!









 To Be Continued… 



キャラクター設定