Side:雪奈
さてと、そんな訳で始まった女子ソフトボール大会だが、地区予選じゃ応援なんてそんなにあるもんじゃねぇだろと思ってたんだが、その
予想は見事に裏返されちまったぜ。
「雪女のお姉ちゃんファイトー!!!」
「雪女の姐さん、やっちまってください!!」
「ユキちゃん、負けんなよ!!」
メユだけじゃなく、銀ちゃんを筆頭にした磯野崎組の応援に加えて、千鶴ちゃんのチームまで応援に来るとは思ってなかったからな?
だがお陰でアタシのパワーはマックス振り切れ状態になってるから、誰が相手も負ける気がしないぜ!
相手は優勝常連校らしいが、だからこそやりがいがあるってモンだ――最大のジャイアントキングをかましてやるから、覚悟しろよ!!
「雪女さん、ウチの応援が少し物騒な気がするんだけど……」
「部長、其れには突っ込まないでくれ。」
大体アタシのせいだけどさ。
まぁ、おっかなそうな人達だけど悪い人じゃないから安心してくれ……アタシにピッチャーライナーが直撃したり、デッドボールが有ったら
ちょっと怖い事になる可能性が捨てきれねぇけどな。
ま、アタシは其れを易々と喰らってやるような間抜けじゃないから、その可能性は杞憂に過ぎねぇけどな。
ヤンキー少女とポンコツ少女とロリッ娘とEpisode41
『不良と山葵と出汁醤油』
でもって試合開始で、先攻は世田谷五輪高校から……可成りの重量打線だから、理想は三者連続三振か、3人ともアウトにするのなら
『打たせて取る』が最適なんだが、そんなダセェ戦術はアタシの好みじゃないから、真っ向から行かせて貰うぜ?
ケンカってのは、真正面から挑んでだからな!
「プレイボール!」
主審のコールと同時に先ずは第1球!
ソフトボールの下投げだと野球みたいな複雑な変化球は投げられねぇから、必然的にスピードと球の重さが重要になって来る訳なんだ
が、野球と違って振りかぶる事の出来ないソフトボールじゃ体重を乗せるのも楽じゃねぇ。
だが、独特の投球フォーム故に、振りかぶらなくても腕の回転の速さである程度の体重を乗せる事は出来るぜ!!
――ズバン!!
「ストラーイク!!!」
おし、絶好調!
相手のバッターは大分驚いてるみたいだな?……弱小校と当たって楽勝と思ってたら、まさかの剛球が来て吃驚したって所かオイ?
悪いが、今年の多摩川南は強いぜ?……アタシが居るってだけじゃなく、来年は廃部が確定してるって事で、部長以下全部員の闘気
がマックスになってるからな!
舐めてると痛い目見んぞオラァ!!
――ズバン!!
――バスン!!
「ストラーイク!バッターアウト!!」
へっ、先ずは3球三振ってな!
だが、今ので少なくとも攻撃に関しては油断は無くなった筈だ……ナンボ速くて重い球でも、甘く入ったら持ってかれるのは確実だろう
な?
となれば、アレを試してみるか……下投げのソフトボールだからこそ出来る魔球をな。
さぁて、コイツが打てるかな?
――ギュル!!
「んな、球が浮き上がった!?」
「ストラーイク!!」
下投げだからこそ掛ける事の出来る逆回転を強烈に加えた事で、打者の手元で浮き上がる魔球――名付けて『ライジング・シャインボ
ール』!
推定130kmは出てるであろうボールだが、下投げは上投げよりも10km速く見えるって言うし、更に手元で浮き上がってと来たら打ち辛
い事この上ないだろうぜ。
結局初回は3者連続三振に切ってやったからな。
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その裏の攻撃。
1番バッターはショートゴロに倒れ、ノーアウトランナーなしでアタシの出番か……此処はキッチリと助っ人の役目を果たさないとな。
まずは球種を見極める為に、連続ファールで態と追い込まれて、其処からボールを2球出させての5球目。
際どいカーブをバットに当てて三遊間だが、此れはバウンドが大きいとは言えゴロ何だろうが、雪女を舐めんじゃねぇ!!
――ヒュゥゥゥゥン!!
「セーフ!!」
「うっそだぁぁ!?」
「ところがぎちょん、マジなんだな此れが。」
自慢じゃねぇが、アタシの足は全盛期のイチロー張りだから、内野ゴロでも最速で処理しねぇと内野安打になっちまうから気をつけろ。
序に言うと、アタシは塁に出る事自体が危険だから、敬遠とか無駄だからな。
「多摩川南に、まさかこれ程の選手がいるとは思わなかったわ……何で今までスタメンで使ってこなかったのか謎ね?」
「そりゃあれだ、アタシが今大会限定の助っ人だからだ。」
「へ、貴女正規の部員じゃない訳!?」
「おうよ、怪我での欠員が出ちまったから、その穴埋めの助っ人に過ぎないぜアタシは。
つっても、ガキの頃に親父とお袋に多種多様な稽古事をさせられてたお陰で、ありとあらゆるスポーツに精通してはいるけどな。」
「もしかしなくてもチートキャラ!?」
「ま、否定はしねぇわ。」
体育祭に球技会、アタシが所属したクラスが例外なく優勝してるからね。間違い無くアタシはチートキャラだわ。
多分だけどやろうと思えば、世界人口100億人とケンカしても勝てるんじゃねぇか?……金属バットを装備したアタシなら、多分出来ると
思うな。
まぁ、其れは其れとして、サイナラ!!
「へ?」
3番打者への投球と同時に盗塁慣行!!
相手チームのキャッチャーも良い反応をしたが、其れで刺されるアタシじゃねぇ!!
「セーフ!!」
スライディングする事なく余裕のセーフ。
ウシ、絶好調だからもう一本盗塁狙ってみっか!足も有るって事を意識させときゃ、アタシの事は歩かせる事すら出来なくなるからな。
――ダッ!!
又も投げると同時に走って盗塁!!
3塁への送球は2塁よりも近くなるから、3塁への盗塁は難しいんだが、此処はヘッドスライディングで!!!
「セーフ!!」
際どかったが、ギリギリのセーフ。
此れで1アウトランナー3塁……外野に転がすか、或いは外野フライで1点入る状況だから、気負わずに行けよ?犠牲フライで1点なん
てダサい事考えずに、最低でもセンター前ヒットで1点の心算で打てば、最悪でも犠牲フライは打てるからな。
アタシが2盗塁を決めた所でカウントは1ボール1ストライク……次の3球目は……
――カキーン!!
打ったか!!
だが、打球は弧を描いて飛んだモノの勢いがなく、センターフライだったが……先制点は貰ったぜ!!超速攻のタッチアーップ!!
センターから鋭い返球が飛んでくるが、アタシの敵じゃねぇってんだこのスットコドッコイが!!
不良を舐めんなよ!!
――ドガバァァァァァァン!!
ベースカバーのキャッチャーを吹っ飛ばす形でスライディング!!
かなーり危険なクロスプレイだったかもだが、アタシはマッタク持って無傷……アタシにフッ飛ばされたキャッチャーも、身に付けてたプロ
テクターのおかげで無傷だったみたいだな。良かったぜ。
んで、其の後は4番が豪快な三振をしてチェンジとなったんだが、初回に1点取る事が出来たのは大きいぜ――この勢いのまま、衝撃
のジャイアントキリングをかましてやろうじゃねぇか!
優勝常連校だか何だか知らねぇが、アタシとやる事になったってのが運の尽きだぜ――悪いがぶっ倒すぜ?覚悟しとくんだな!!
To Be Continued… 
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