Side:雪奈


時は進んでゴールデンウィーク。でもって、今アタシが居るのは河川敷のグラウンド――分かり易く言うのなら草野球の会場。
何だってこんな所に居るのかと聞かれれば、商店街のおっちゃん達が草野球大会にエントリーしたのは良いけど、当日までに必要なメン
バーが集まんなかったって事で、急遽参加する事になったとしか言いようがねぇ。
そう言う意味では、アンタも大変だな委員長?



「いえ、其れ程でもありません――寧ろ少し身体を動かしたいと思っていた所ですので、ナイスタイミングですよ。」

「さよか。
 でもよぉ、やるからには勝ちたいよな?」

「其れは、異論はありませんよ?」

「なら、勝つとしようぜ?」

「頑張ろうね、雪女のお姉ちゃん!委員長お姉ちゃん!」

「……雪女さん、此れは破壊力がありますね?」

「マジでメユは天使だろ委員長?」

因みにメユもメンバーに入ってたりするんだが、マユの奴は強制的に応援に回した。
コイツに真面な守備が出来る筈がねぇからDH制なしでは出す事が出来ねぇし、バッターで出た場合でもバットがすっぽ抜けてピッチャー
の顔面にダイレクトアタックとか有り得っからなぁ?
ま、偶にはこう言うのも悪くねぇから、思いっきり野球を楽しむとすっか!
今日は会社も休みだから、親父とお袋も応援に来てくれたからな。










ヤンキー少女とポンコツ少女とロリッ娘とEpisode39
『不良とこし餡とホイップクリーム』










そんな訳でアタシ等のチームのスタメンだが――



・1番 ライト 魚屋の兄ちゃん
・2番 ショート 大工の源さん
・3番 ファースト メユ
・4番 ピッチャー アタシ
・5番 セカンド 委員長
・6番 サード 寿司屋の大将
・7番 レフト ケーキ屋の姉ちゃん
・8番 センター 蕎麦屋のゴツイ兄ちゃん
・9番 キャッチャー 銀ちゃん
・控え 無し



って感じだな。
てかよ、現役女子高生に女子小学生、果てはヤクザまで居るチームってどんなカオスだこれ?メユと銀ちゃんが参加してる事で、観客席
には磯野崎組の皆さんが来てるしよぉ?



「良いんじゃないですか?草野球大会なら問題ありませんよ――プロ野球や世界大会なら大問題かもしれませんが。
 ですが、ヤクザの応援がある以上相手が気後れするのは間違い無いと思いますよ雪女さん。」

「そらまそうかも知れないが、だとしてもスゲェ光景だと思わねぇかマユ?」

「凄いですねぇ?
 そして、そのヤクザとお知り合いの雪女さんはもっと凄いと思います。ヤクザがお友達の女子高生とは、可成りの希少価値ですので、い
 その事、希少生物として登録されては如何でしょう?」



誰が希少生物かこの野郎。
真顔でサラッとトンでもねぇ事言ってんじゃねぇっての!つーか、アタシだけじゃなくてお前と委員長もヤクザと知り合いだからな?



「言われてみればそうですね?ビックリです。」

「ビックリしてるようにゃ見えねぇな相変わらずよ。」

ま、コイツの抑揚のなさは何時もの事か。
んな事よりも、試合を頑張らねぇとな!



「おう、ユキちゃん!ホームランかっ飛ばしてくれよ!」

「任せときな千鶴ちゃん!特大のホームラン打ってやるぜ!」

千鶴ちゃんも応援に来てくれたとなったら、1回戦敗退ってのは避けたいところだぜ。
まぁ、1回戦の相手が何処かって事になるんだが……



「しょらっしょー!」

「しゃーす!」

「ピッチングそらしゃ!」

「らっしゃー!!!」



大学の野球部か……めっちゃ硬派みたいだが何言ってんだかさっぱり分からねぇ。マユ、お前分かる?



「アレは宇宙人語でしょうか?NASAに解読を求めたいです。」

「うん、お前に聞いたアタシが悪かったわ。」

しかしまぁ、大学の野球部とは行き成り強い所と当たっちまったなぁ?……ま、頑張りますかね。



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「「「「「「「「「「「「「「「「「「よろしくお願いします!!」」」」」」」」」」」」」」」」」」



そんなこんなで試合開始。
相手チームからの先攻だが、後攻であるアタシ達のチームの方が勝つ可能性は大きいって訳か――最終回の裏での攻撃が出来るか
らな。
つっても、負ける気は毛頭ないぜ!!







「ナイスピッチですぜ、雪女の姐さん!」

「うっし、絶好調!」

試合前の投球練習でも好調だ。
自慢じゃねぇが、アタシのストレートはマックス150km出るから、早々打てるもんじゃねぇ。加えて其処に超高速カーブと超高速フォークも
加わるから、打つのは簡単じゃねぇってな。
ま、捕球が出来るのは銀ちゃんだけだけどさ……そういや、元西武ライオンズの名捕手も銀次郎って名前だったな。



で試合開始なんだが――



「ストライク!バッターアウト!!3アウトチェンジ!!」



まずは初回をバッター3人で終えてやったぜ。
まぁ、相手はアタシみたいな女子高生がピッチャーって事で舐めてたみたいだが、だからこそアタシの超速ストレートと超速カーブ、超速
フォークが良い感じに決まったんだけどな。
んで、その裏の攻撃なんだが、先ずは先頭打者の魚屋の兄ちゃんは三振に倒れ、2番の源さんがショートゴロに倒れた所で3番のメユ。
もしもメユに手加減なしの剛速球を投げて来たら文句の一つでも言ってやる心算だったんだが、流石に此処は手加減して、可成り緩め
の球を放ってくれたな。
だが、メユは其れを見事にミートしてセンターオーバーのツーベースヒット!
此れは期せずしてチャンスだな?4番としての仕事をしっかりやらねぇとなんだが……



「ボール!!」



初回のアタシのピッチングを見て只者じゃないと思ったのか、敬遠策に出やがったか……だがな、あめぇんだよ!!
敬遠のボール球も……ドッせいやぁ!!!


――カキーン!!!


ジャンプで飛びついて金属バット一閃!!
でもって打球は伸びに伸びて見事にホームラン!!先ずは2点先制だぜ!!――其の後は、委員長がツーベースで出塁するも、其の
後が三振で残塁か。
だが、初回に2点ってのは大きい――此のまま一気に行くぜ!!



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そんなこんなで試合は進んで最終回。
流石は大学の野球部、アタシの球種を見極められて、9回の表に一挙5点を入れられて現在5対2か……こりゃ、結構厳しいな。
取り敢えず先頭打者の銀ちゃんが出塁して、続く魚屋の兄ちゃんがバントで送って、源さんが意地の内野安打で出塁して、メユがシング
ルヒットで出塁して、満塁で4番のアタシか。
外野に飛ばせば2人帰るだろうが、其れだとまだ負けてるから、ここはホームランしかねぇな。
初回のアレで、アタシに敬遠は無意味だって事は、相手も知ってるだろうからな――勝負しようぜ!!



――ビュオ!!



来た来た!!インコースの超速ストレート!!
其れを待ってたぜ!!

「王貞治!!」

「はい、実に見事な一本足打法です。」



その一球を一本足打法でジャストミート!!!
打球はそのままスタンドに飛び込んで、サヨナラの満塁ホームランだ!!劇的な幕切れってのはこの事だぜ!!――大学の野球部に
勝ったってのは大きいな。

んで、その勢いのままにアタシ達のチームは勝ち進み、乗りと勢いで優勝しちまったぜ……ま、こんなのもアリと言えばアリなのかもな。
そんでもって、その後の打ち上げも大いに盛り上がったぜ!!
寿司屋の大将が大盤振る舞いの貸し切りにしてくれた事も有って、飲めや歌えの大宴会だったからな!――アタシとマユのデュエットが
思った以上に好感触だったのは意外だったけどね。


だけど、此の草野球大会での優勝が、アタシに予想もしてなかった事を呼び寄せる事になるとは、流石に予想してなかったぜ。









 To Be Continued… 



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