Side:雪奈


季節は進んで、冬に突入。
天気予報では、今年一番の寒波が入ってるってことで、昨日の夜から雪がちらほら舞ってったんだが……まさか、朝起きて一面が銀世界にな
ってるとは思わなかったぜ。
積雪量は5㎝ってところだが、東北ならいざ知らず、関東では5㎝の積雪ってのは可成りの大ごとだ――今は雪は降ってないとは言え、晴れて
る訳じゃねぇから溶けるって事も無いだろうから、交通機関はマヒしてんなこりゃ。

スマホで調べたら、案の定JRは始発から全線運休、その他の電車も殆ど運休――なのに、な~~んでか、京王線だけ動いてんだよな?
台風が来た時も京王線だけは動いてたし、京王電鉄は気合の入れ方間違ってねぇかオイ?気合があるのは良い事だけどよ。

しかしまぁ、交通機関がマヒしてるとなると今日は休校かな。
徒歩で通ってる連中は兎も角、電車やバスで通ってる連中はどう足搔いたって登校できねぇもんな……山ちゃんに電話して聞いてみっか。

スマホをポチッとな。

「あ、山ちゃん。おはようさん。」

『おはよう雪ちゃん。如何したの、こんな朝早くに?』

「あのさ、今日って学校どうなってんの?この雪で交通機関マヒしてんだけど。」

『あぁ、其れね……此れから一斉送信でメールするところだったんだけど、今日は学校お休みよ――そもそもにして教師が学校に行けないん
 じゃ話にならないし。』

「其れもそうか。
 聞きたかったのは其れだけ、朝早くに悪かったな……時に山ちゃんは、今日はどうやって過ごすの?」

『寒いから、おこたでヌクヌクかな~~~?ミカンはたくさんあるし~~♪』


「其れは、とっても正しい日本の冬の過ごし方だな。」

しかしまぁ、休校か……今日はさぼらずに出る心算だったから肩透かしを喰らった気分だぜ。
親父とお袋は仕事で2日前から九州の方に出張してるから居ねぇし……どうせ暇だから、街に繰り出してみるか――雪の街ってのも、面白そう
だからな。










ヤンキー少女とポンコツ少女とロリッ娘とEpisode29
『不良と練乳イチゴのかき氷(極甘)』











取り合えず外はめっちゃ寒いから、ヒートテックの上下を装備して、ジーパンに長袖のシャツ、更にニットのカーディガンを着て、フード付きのコ
ートを羽織って、靴は……雪が入って来ないように脛までのロングブーツにすっか。
おし、これで完璧!!

何で、外に出てみたんだが……さっみぃ!!!なんだ此れ!!!
スマホで確認したら、日中の最高気温がマイナス2度って、其れ絶対関東の最高気温じゃねぇだろ!東北とか北海道の最高気温だろ絶対!
うおぉぉ、冬の間これ以上に寒い所で暮らしてる東北の人達を尊敬するぜマジで。

とは言え、出てきちまった以上は寒いからって戻るのはなしだけどな。適当にぶらついてりゃ、その内身体も温まってくるだろうしな。
先ずは何所に……そうだな、湖の畔の公園に行ってみるか。
この寒さなら湖が凍ってて、いい景色が見れそうだからな。



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つー訳で湖の畔の公園、『大和記念公園』に到着――今更だけど、大和記念って、ここは戦艦大和と何か関係があった場所なのか?……そ
んな訳はねぇか。ま、何か由来はあるんだろうけどな。
にしても、何度来ても思うんだが、ここは可成りの規模の公園なんだよな。
遊具の類はねぇけど、スケボーパークはあるし、子供が遊ぶには十分な芝生の広場があって、一角にはオープン型のカフェもあるからな。
ってか、この雪でも店開けてんのかよ。

「おーっす、マスターのおっちゃん。
 こんな時でも店開けてるとか気合入ってんなぁ?客来るのか?」

「あぁ、雪女ちゃんか。
 まぁ、普段ほどは来ないけど、これだけ積もった状態でも外出する人はいるから、それなりにお客さんは来てるよ?やっぱり、こういう時には
 温かいモノが欲しいだろうからね。」

「まぁ、そう言うのもあるか。」

かく言うアタシも客だからな。
キャラメルホットミルク1つ頼むわ。



「はいよ。
 ってか、ずいぶんと可愛いの頼むね?雪女ちゃんだったら、甘さ控えめのカフェラテかと思ってたんだけど。」

「普段ならそれだけど、こう寒いとな。
 こういう時は、甘めのノンカフェインの方が身体が温まるんだよ。」

「あぁ、成程ね。
 ハイお待ち。200円ね。」



はいよ。
そんじゃ、おっちゃんも仕事がんばれよ~~~。

ふぅ、寒い日には甘いホットミルクが身体に染みるぜ――見てみりゃ予想通りに湖が完全に凍ってやがる……これでもっと氷の厚さがあったら
スケートが出来たんだろうが、関東では其れは望めねぇよな。
……まぁ、湖畔に腰かけて、氷に穴開けて釣りをしてる気合の入った釣り人は居たけどよ。

んで、そのまま公園をぶらついてたんだが……何してんだメユ?それとメユのダチ公のガキンチョ共?
雪の日にもかかわらず、外に出て遊ぶって言うのは、とっても健全で健康的な子供らしいからアタシとしては褒めてやりたい所なんだが、雪玉
作って何してんだ?



「あ、雪女のお姉ちゃん!!」

「雪の日に雪女が来た!!」

「でも、白装束じゃない……残念。」

「だから、雪女ってのはあだ名であって、アタシはガチの雪女じゃねぇっての。――んで、何してたんだメユ?」

「えっとね、皆でスッゴク大きな雪だるまを作ってたの!
 胴体の方は出来てるから、今は頭を作ってたところなんだよ。」



へ~~~……ってマテや。
今作ってる雪玉が頭なのか?すでにメユの身長と同じくらいあるじゃねぇかよ!!……これが乗る胴体って、どんだけでかいんだオイ!!



「胴体はあれ♪」

「すごく大きいです!!」

アタシの身長と同じくらいあるじゃねぇか!
作るのは良いが、どうやってその頭を胴体に乗せる心算だ?まぁ、持ち上げるだけならお前らが全員でやれば出来るだろうが、明らかに高さ
が足りないから乗せられねぇだろ?



「「「「「あ。」」」」」

「作るのに夢中で気付かなかったってところか。」

だがまぁ、作っちまったモンはしょうがねぇから、まずはその頭に顔をつけてやれ。出来上がった雪だるまがのっぺらぼうじゃ仕方ねぇしよ。
顔を作るための材料は持って来てんだろ?



「うん!
 目には丸く切り抜いて黒く染めたベニヤ、口には針金のハンガーの壊れたのを黒く塗ってきたから。」

「準備は万端ってわけだな――なら、まずは顔を作っちまえ!!」

「「「「「はーい!!」」」」」



素直な子供ってのは可愛いねぇ……メユもそのダチ公も、今時のガキンチョにしては珍しいくらいに擦れてなくて純粋だから、ついつい構いたく
為っちまう――もしかして、サンタクロースを信じてたりするかな?
もし信じてたら、サンタクロースの代わりに、プレゼントを贈ってやっても良いかもな。

さて、顔が出来たみたいだから、ここからはアタシの出番だ……どっせい!!



「うわ、顔が持ち上がった!!」

「雪女さん、すごい怪力!!」

「なめんな、アタシはやろうと思えば、100㎏近い野郎を片手攻守吊りにする事が出来るから、これくらいは余裕なんだよ!!」

でもって、持ち上げた頭を胴体にむかってホイっとな。



――ボスン



おし、大成功!
見事に超巨大雪だるまの完成だな!



「うわ、すごい!!」

「雪だるまが一瞬で出来上がった!!」

「さすがは雪女、雪の扱いはお手の物……」

「でも、これは自慢できるよ!こんなでっかい雪だるま、見た事ないと思うから。」

「ありがとう、雪女さん!!」



まぁ、大したことはしてねぇから気にすんな。
其れよりも、これだけの大作――3メートル近い雪だるまを完成させたんだから、記念撮影しようぜ?雪ダルマは、何時か溶けてなくなっちまう
から、きっちりと写真に収めておかねぇとだからな。

三脚なんて上等なモノはなかったんだが、幸運にも凍った湖を撮影に来てた自然カメラマンが居たんで、そいつに頼んでスマホのカメラで写真
を撮ってもらったぜ。
其れだけじゃなく、そのカメラマンもこの超巨大な雪だるまに衝撃を受けたらしく、自分のカメラでも写真を撮ってたけどさ……写真のデータは、
あとで送ってくれるって事だったから楽しみだぜ。

まぁ、この兄ちゃんがとった雪だるまとアタシ達の写真が、後に写真専門誌の表紙を飾る事になるとは思ってもいなかったけどよ。
さてと、雪だるまは完成したが、ずっと雪の中で作業してて、身体が冷えてるだろ?カフェテラスで、温かい飲み物を奢ってやるよ。何が良い?



「「「「「キャラメルホットミルク!!」」」」」

「だよな♪」

寒い日にはそれが一番だからな。
どでかい雪だるまを完成させて、記念撮影して、そのあとはカフェテラスで温かい飲み物で一息ってな……雪の日には、こんな楽しみ方もあっ
たって感じだな。



んで、その後、適当にぶらついてたら、まさかのマユと委員長にエンカウント!……こいつ等も、休校で暇になったから街に繰り出してきたクチ
だろうな。
あ~~……お前ら、これからの予定は?



「私はありません。取り敢えずで外出しただけですので。」

「私も予定はありませんね。
 強いて言うのならば、買い物があったのですが、其れももう済ませてしまいましたから。」

「ならよ、一緒に飯にした後で思い切り遊ばねぇか?
 雪遊びはさっき済ませちまったから、カラオケでも如何よ?……思い切り歌って寒さを吹き飛ばそうぜ!!」

「良いですね、その案乗りました。」

「昼間からカラオケ、と言うところですが、休校ならばそれもいいでしょう、御一緒させて貰いますよ雪女さん。」

「決まりだな!」

でもって、この後は、昼飯に行きつけのラーメン屋で熱々のラーメン食って、後はカラオケ屋で適当に軽食を頼みつつ、オールナイトを敢行しち
まったぜ。
思いがけない雪の日だったが、思いのほか楽しむことが出来たぜ。

まぁ、カラオケオールナイトを終えて家に戻ったら、如何やらメユ達が作ったらしい、アタシの身長と同じサイズの雪だるまが玄関先にあって驚
いたけどな。
此れもまた、雪の日ならではのサプライズって事なのかもな。――まぁ、こういうサプライズなら楽しくていいけどよ♪








 To Be Continued… 



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