Side:雪奈


学期末テストも終わって、冬休みに突入して、気が付きゃ3日後はクリスマスだ――マユとメユはクリスマスって、もう予定は入ってんのか?



「私の方は予定はありませんね?
 我が家では、昔からクリスマスだからと言って、特別な事をした事は有りませんので……」

「マユお姉ちゃん、其れってどうなのかな?
 えっとね、私は昼間はウチでパーティやるけど、夕方からは予定はないよ?って言うか、夜からはパパとママは毎年運営してる店のクリスマ
 スパーティに顔出す事になってるから。」

「マユは兎も角、メユの方は大変だなオイ?
 磯野崎組は、結構いろんな方面に事業展開してっから、運営してる店の数だってハンパねぇだろ?」

「流石に全部回る事は出来ないから、23区内のお店だけだけどね。」



にしたって、全店顔を出すってのは大変だぜ――源一郎さんの事だから、顔を出さなかった店にも電話位は入れるだろうからな?……本気で
良い親分さんだよなあの人って。
だが、そう言う事なら2人ともクリスマスの夜は暇だな?
だったら、アタシの家で盛大にパーティしようぜ!お泊り会も兼ねてさ。
親父もお袋も、会社から嫌がらせされたんじゃねぇかって思う様に、クリスマスの日に東北の取引先への出張を入れられちまったから、アタシ
も暇だから、思い切り盛大にやろうじゃねぇか!!



「其れはグッドアイデアですね。」

「うん、其れ良い!大賛成!!」

「なら、決まりだな!」

委員長も呼べると良いんだが……アイツの家もアタシんとこと負けず劣らずの資産家だから難しいだろうなぁ……アタシと違って、委員長は御
令嬢だろうしな。
ま、クリスマスカード位は送っといてやるか。










ヤンキー少女とポンコツ少女とロリッ娘とEpisode30
『不良とケーキとラムチョップ』










さてと、クリスマス当日!正確には、クリスマスイブ当日!!
先ずはメユのいない昼間にプレゼントとかの買い出しだ……午前中から暇してたマユの奴を引っ張ってきてだけどな――ったく、クリスマスな
んだから、少しは楽しもうとしろよ?



「はぁ、此れでも楽しんでいるのですが?
 と言うか、クリスマスを楽しむのは良いのですが、如何にも最近の日本人のいい加減さが気になりまして。
 生まれたら神式、死んだら仏式、クリスマスに教会で賛美歌を歌った1週間後には神社で柏手打ってると言うのは如何なんでしょうか?」

「日本には八百万の神が居て、来る者拒まず去る者追わずって事で納得しやがれ。」

「成程、言い得て妙ですね。」



ま、日本的にはこう言うのは只のイベントであって宗教的なモンは関係ないから、気にするだけ無駄ってモンだ。
其れよりも買い物を進めるぜ――まずは、パーティにゃ欠かせないプレゼントなんだが、メユにはパーティの時に渡してやるのと、サンタクロー
スからのプレゼントの2種類を用意してやらねぇとだ。
無難な所だとヌイグルミってところなんだが、普通のヌイグルだと銀ちゃんが用意してそうなんだよなぁ……ヌイグルミにしても絶対に被らねぇ
ようなモンにしないと拙いよなぁ?

さて、どうしたモンか――って、此れは!!!『ハイパーデラックスぬいぐるみ・ユキヒョウさん』じゃねぇか!!
1/1サイズのユキヒョウのヌイグルミ……一部のコアなファンを除いて買う人が居なかった為に、早々に生産中止になった激レア品があるとは
驚きだぜ!!
値段は……このレア度で2万なら安い。これは買いだな。此れなら流石に被る事はまずねぇし。
となると、サンタのプレゼントだが、これは靴下に入るサイズじゃないとなんだよな?



「それで、お悩みだと思ったので、私はメユさんに此れをプレゼントしようかと。」

「マユ、何そのバカでかい靴下?これは何か?ダイダラボッチの靴下か?」

「いえ、商品名は『ゴジラの靴下』でした。」



ゴジラかよ!!
って言うか、なんだってそんなモンを売ってんだ?受け狙いか!!



「いえ、此れは如何やらサンタクロースを信じている子供達の為に開発された商品みたいですよ?
 どんなプレゼントでも入るようにと考えて作られた商品のようです――結構売れているらしいです。」

「マジか?……持ち前のポンコツで変なモンを選んだのかと思ったが、今回は大正解だったって訳か。」

「えっへん。」

「ま、今回は褒めてるから良いぜ。」

となると、サンタからのプレゼントも制約が殆ど無くなった訳だから、選ぶ幅が広がった訳だが、アタシからのプレゼントがぬいぐるみだって事を
考えると、サンタからのプレゼントが被ったらダメだ。
となると、此れだな?
メユの奴はロボットアニメも好きみたいだから、其れのプラモデルなら喜んでくれるだろうからな――1/60のPGは値が張ったが、此れでメユ
が喜んでくれるなら安いもんだぜ。



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買い出しが終わったら、今度はパーティの準備だ。
ツリーは既に出しといたから、飾りつけはマユに任せて、アタシは料理の準備だ――流石のマユでも、ツリーの飾りつけで大惨事って事はねぇ
だろ。電飾は既に取り付けてあるから、後は飾りを枝にぶら下げるだけだからな。

そんな訳でパーティメニューの作成開始だ。
魚屋で仕入れた新鮮な海老とホタテとサーモンはカルパッチョにして、塩味のラスクをカナッペ風のオードブルに仕上げて、スープはクリスマス
をイメージしたクリームポタージュ。
でもって、メインディッシュは雪女式の、ラムチョップの塩固め香草焼きだ!
クリスマスと言えばローストチキンなんだろうが、そんなのはありきたりだから、此処はラムチョップを使ってな。――マル鳥よりも、ラムチョップ
の方が安いしな。

後はクリスマスパーティには外せないケーキを作って完成だ。
定番のブッシュ・ド・ノエルだけじゃなく、雪ダルマ型のケーキも用意してな。

「マユ、ツリーの飾りつけは如何よ?」

「完璧です雪女さん。」

「へぇ、中々やるじゃねぇか?」

つるす飾りのバランスも良いし、綿を使った雪の表現も良い感じだぜ?……お前、美術の成績は低いのに、こういうのは得意なのな?



「人間には、得手不得手と言うものがありまして、学校の授業は私には向きませんが、そうでないのならば意外と行けるんですよ?」

「その能力を学校の授業に生かせよ……って言うだけ無駄か。」

「誉め言葉として受け取っておきます。」

「誉めてねぇよバカ!!」

「其れは残念です。」



ったく、コイツはほんとにぶれねぇな!!ある意味で、感心するぜ。



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でもって、夕方6時、メユがやってきてクリスマスパーティの始まりだ!!


「「「メリー、クリスマース!!」」」


先ずは、グラスで乾杯ってな。
アタシとしては本物のワインを飲みたい所だったんだが、メユが居るから子供向けのシャンメリーで妥協だ……流石に小学生に酒飲ませたと
か大問題だからな。
さてと、それじゃあこれはアタシからのプレゼントだメユ。



「うわ、大きなぬいぐるみ!!ありがとう、雪女のお姉ちゃん!!」

「へへ、喜んでもらえたならよかったぜ。」

「では、これは私から。」

「……おっきな靴下?」

「此れだけの大きさの靴下なら、サンタクロースがどんなプレゼントを持って来ても入れる事が出来るでしょう?」

「あ、そう言う事か!ありがとう、マユお姉ちゃん!」



如何やらアタシ達からのプレゼントは気に入ってもらえたみたいだ――なら、此処からは無礼講だ!思い切り食って、そんでもって飲もうぜ!
テレビに家庭用カラオケマシンも繋いでるから飲めや歌えの宴会だぜ!!
料理も沢山あるから、遠慮しないで食ってくれよ?



「うん、いただいてます!
 カルパッチョも、カナッペもスープも全部美味しいけど、この羊は最高だよ雪女のお姉ちゃん!
 パパに何度か一流のレストランに連れて行ってもらって、ラムのローストを食べた事があるんだけど、このラムは今まで食べた中でも一番!
 シンプルな塩味なのに、スッゴク深い味わいがあるよ!!」

「へへ、コイツは只のローストじゃねぇ……複数の天然塩や岩塩を混ぜた特製の塩釜に閉じ込めて焼き上げた塩固め焼きだからな。
 複数の塩の旨味が、ラムの持つ旨味を最大限に引き出してるって訳だ。」

「塩にまでこだわった逸品と言う訳ですか……これ、普通に一流ホテルのレストランで提供できますよ雪女さん。」

「へ、嬉しい事を言ってくれるじゃねぇか!」

そんだけの高評価なら、作った甲斐があったってもんだぜ。
因みに料理だけじゃなく、デザートのケーキも大好評だったぜ――特に雪ダルマ型の奴がな。
其れからもパーティは盛り上がって、自宅カラオケで楽しんだりした――そう言えば、こうやってクリスマスを楽しんだのは、大分久しぶりな気
がするぜ。



で、パーティも終わって後は寝るだけ――メユはアタシと一緒に寝たがってたが、アタシと一緒だとサンタクロースが来ないかも知れないって
事を言って別室で寝てもらう事にした……そうじゃないと、サンタクロースからのプレゼントは渡せないからな。

午後11時……メユが眠ってる部屋に入ると、完全に熟睡してんなこれは。
枕元には、マユがプレゼントしたバカでかい靴下か……メリークリスマス、メユ。サンタクロースからのプレゼントは、靴下の中に入れておくぜ。



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んで、翌日。



「雪女のお姉ちゃん、マユお姉ちゃん!サンタさんからのプレゼント、2個来てた!!」

「は?」

「おや?」



メユが2つのプレゼントを手にして来た――一方はアタシがプレゼントしたプラモデルだが、もう一方は見覚えがねぇ……マユ、お前メユにサン
タのプレゼントやったか?



「いえ、あげていませんよ?」

「だよな……」

と言う事は、あの2つ目のプレゼントはまさか……!!――これは何とも、貴重な体験をしちまったって所なのかもな……サンタクロースは実
在するかもって事だからな。
だが、もしも本当に存在してるならお疲れさまだぜサンタクロース……メユの夢は壊れないで済んだからな。



「此れを聖夜の奇跡と言うのでしょうか?」

「かもな。」

何にしても今年のクリスマスは、アタシ史上最高のクリスマスになった、其れだけは間違いねぇな。








 To Be Continued… 



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