Side:銀次郎


義理を通さねぇクソッタレ共をぶっ潰しに来た訳なんだが……コイツは俺等の出番はなかったか?
雪女の姐さんに言われて、マユ嬢ちゃんを連れて来た訳なんだが……まさかこうなるとは思ってなかったぜ――マユ嬢ちゃんのポンコツとやら
が発動して、俺達が何するまでもなく、敵の親分が伸びちまったからな。

手をかけたローラー付きチェアが滑って棚にぶつかって、その棚が倒れて、その衝撃で別の棚が倒れて、棚の上に会ったダルマが、組長の頭
にダイレクトアタックかまして伸びちまったってのは流石に笑えねぇってもんだ――まぁ、俺達は大助かりだったけどな。



「アニキ、俺は夢でも見てるんですかい?」

「夢じゃなくて現実だ、目の前の事を受け入れな。」

俺だって、夢を見てるんじゃねぇかって思ってるけどよ。
取り敢えずマユ嬢ちゃん、アンタいい仕事してくれたぜ。



「はぁ、お褒めに預かり光栄です。」



相手の親分が伸びちまった以上、その他の連中は何も出来やしねぇから、この戦いはアッサリとケリが付いたな――拳銃やら刃物も使ってね
ぇから、警察沙汰にもなりゃしねぇし。
まさかこんなに楽に仕事が終わるとは、マユ嬢ちゃんのポンコツ力とやらに感謝だ……尤も、そのポンコツを組長の屋敷で発揮してほしくはね
ぇけどな。










ヤンキー少女とポンコツ少女とロリッ娘とEpisode27
『不良と本格杏仁豆腐の素(甘め)』











Side:雪奈


メユのリクエストを受けて、メイド姿で商店街に繰り出す事になったんだが……此れは流石に恥ずかしいぜ――こんなフリフリのメイド服なんて
のはアタシのイメージじゃねぇ!!一応、ちょっとした変装みたいのはしてるけどよ。
イメージじゃねぇんだが、メユとの約束だし、何よりもメイドって立場上断る事は出来ねぇし、メユの悪意のない笑顔見せられちまったら、従うし
かねぇよなぁ……最強の不良も、純真無垢な子供にゃ勝てねぇって事だぜ。

「其れでお嬢様、奥様から頼まれたお使いは何でしょう?」

「えっとね~~……」



だが、そんな心の内は顔に出さないのが礼儀!(?)
今のアタシはメユのメイドとして確りと仕えるべきだからな!
で、買い物の内容は……漢字がすくねぇのはメユがまだ小学2年生だからか?


・ひき肉(あいびき肉)
・玉ねぎ
・ジャガイモ
・ニンジン
・生クリーム
・ホワイトシチューのルー
・マッシュルームの缶詰


一見すっとシチューの材料にも見えるけど、此れは違うな。

「此の買い物ですと、今夜のメニューはホワイトソースのハンバーグ、付け合わせは粉吹き芋かフライドポテト、或いはジャガイモのチーズ焼き
 とニンジンのグラッセと言った所でしょうか?」

「へ?シチューじゃないの?」

「鳥のもも肉ではなく、合い挽き肉と書いてあったので其方の可能性が高いかと。」

ぶっちゃけ、ホワイトソースを一から作るよりも、ホワイトシチューのルーを牛乳と生クリームで溶かして、片栗粉でとろみをつける方が簡単な上
に安くて済むんだよな……汐さんも其れを知ってるみてぇだな。

「其れでは、買い物を済ませて帰りましょう。
 帰ったら、私は料理の方を開始すると致しましょう。」

「ほえ?何で雪女さんが?」

「料理もまたメイドの仕事ですので。」

やるとなったらとことんやらねぇとだしな。
どうせなら、アタシのバリウマなハンバーグを喰わせてやるってもんだっぜ!ハンバーグは、カレーとハヤシライスに並ぶアタシの得意料理でも
あるからな!

つー訳で、商店街で買い物開始だ。
駅前に大型スーパーもあるんだが、商店街の方が割りが安い上に人情営業でまけてくれたりしてくれっから、珍しく此処の商店街は大型スー
パーに客持ってかれてないんだよなぁ。



「おやおや、親分さんの所のお嬢ちゃんじゃないか?今日はキレイなメイドさん付きでお買い物かい?」

「えへへ~~、今日だけね♪」

「偉いねぇ。はい、ご注文の合い挽き肉だ、気をつけて持って行くんだよ。
 其れと、此れは肉屋のおばちゃんから、お嬢ちゃんへのご褒美だ。そっちのメイドさんの分もあるからね。」

「うわ、熱々のコロッケ!ありがとう、おばちゃん!」

「どうもありがとうございます。ご厚意、痛みります。」

こう言う事も有るからな。
でも、取り敢えずバレなくて良かったぜ……流石にばれるのはアレだから、髪型を1本の三つ編みにして、更に伊達眼鏡を掛けて来たんだが、
此れだけの事で結構バレねぇモンだな。

「お嬢様、荷物は私が持ちますので。」

「大丈夫。お肉は私が持つから、雪女さんは八百屋さんで買った物を持ってくれるかな?」

「……確かに、重量的には八百屋での購入物の方が重くなりそうですね。」

玉ねぎもジャガイモもニンジンも、数買うと結構な重量になるからな。
でだ、その八百屋で生のマッシュルームを見つけたんで、缶詰の代わりにこっちを購入。やっぱり生の方が旨いし、おっちゃんがまけてくれた
おかげで缶詰よりも安く買えたからな。
そんでもって、更に珍品の『育った大ぶりのマッシュルーム』も売ってたから、こっちはアタシの自腹で購入。
傘が開いて拳大になったマッシュルームは、普段食べてる傘が閉じたのとは比べ物に成らねぇうま味があるから、コイツをバター焼きにすれば
ハンバーグの付け合わせとしても最高だしな。
此れで、買うモノは全部買ったから、後は帰るだけだ。



「……雪女さん、ですか?」

「雪ちゃん?」



と思った矢先に、委員長&山ちゃん先生とエンカウントだとぉ!?ミラーフォースだとぉ!!?
クソ、商店街のおっちゃん達にはバレなかったのに、何だって此の2人にはバレたし……てか、なんで一緒に居るんだよ山ちゃん先生と委員長
はよ!!



「いえ、買い物に出かけたら偶然会ったので、一緒に買い物を。」

「其れで雪ちゃんは何でメイドさんの格好してるの?」

「……学園祭の時の約束で、私は本日1日、お嬢様のメイドを務めさせて頂いている次第です。」

「雪女さん、その言葉遣いは……」

「メイドですので。」

「なり切ってるのですね……」

「流石は雪ちゃん。写真撮っても良い?」

「其れは、私ではなくお嬢様に許可を取って頂けますか?」

何とかマユの写真送付だけは止めたってのに、此処で新たに撮られて堪るかって話だし、今のアタシはメユのメイドだから勝手に判断するのも
如何かと思うからな。



「えっと……写真撮影は駄目!
 雪女さんは、私だけのメイドさんだから!!」



メユ、その思いにアタシは感涙ぶっこきたい気分だ……委員長は兎も角、山ちゃん先生は絶対に写真に収めるだけじゃ飽き足らず、印刷やら
アルバムやらに収めようとすっからなぁ――ガキの頃のゴスロリ衣装だけじゃなく、今のメイド姿を永久保存されるとかちょっとアレだしな。



「そんなぁ~~!
 グレちゃってヒールな雪ちゃんも良いけど、成長した雪ちゃんの可愛い格好なんて極レアだから写真に収めておきたいのに~~!!」

「「「(汗)」」」



山ちゃん先生、少し自重しようぜ?
アタシだけじゃなく委員長とメユも若干引いちまっただろ……山ちゃん先生が可愛い物が好きだってのは知ってるけど、今のアタシの可愛い格
好なんざ期待するなよ――今のアタシは、雪ちゃんじゃなくて、最強の不良である雪女だからな。
其れはそうと委員長、この事学校の連中には……



「安心して雪女さん、絶対に言いふらしたりはしないわ……だけど、愛雪さんのメイドはちゃんと務めて下さいね。」

「勿論、その心算ですので。」

委員長は約束は守る奴だから心配はねぇな。
そんなこんなで委員長と山ちゃん先生と別れて、帰路についたわけだが……また胸糞の悪い場面に出くわしちまったなぁ?



「オイコラ坊主、ぶつかっといて謝罪も無しかオイ?」

「いってー!ぶつかられた場所が折れちまったぜ!!こりゃ、治すために金が必要だなぁ?……有り金出せや、兄ちゃんよ?」

「そ、そんな!其れにぶつかって来たのはそっちの方じゃ……」



今時カツアゲかよ……ったくダサい事この上ねぇ。

「お嬢様、アレは如何いたしましょう?
 直接的に関係はないので、無視する事も出来ますが……見過ごしてはいけませんよね?」

「うん、あんなのは論外。
 お父さんも『外道と極道を履き違えてる奴等には容赦するな』って銀次郎さん達に言ってるからね……あの人達は外道だから、容赦しないで
 やっちゃって。」

「了解しましたお嬢様。」

つー訳で、なーにダサい事してやがんだテメェ等?今時カツアゲなんぞはやらないぜ?



「「「「何故メイドさん!?」」」」

「其れが今日のアタシの役目だからな。」

其れよか、アタシの前でカツアゲをかますとは良い度胸してんじゃねぇか……この最強の不良にして、本日限定で最強のメイドと化した『雪女』
さんの前でよぉ?
テメェ等、覚悟は出来てんだろうな?



「て、テメェが雪女だと!!」

「メイド服が激似合う事にカルチャーショック!!」

「だが銀髪のフリフリメイド……凄くそそるじゃねぇか!!ぶっ倒して『禁則事項』と『放送禁止』と『検閲により削除』で楽しませて貰おうじゃねぇ
 の!やる気が出て来たぜ!!」



揃いも揃ってカス共か……ってか、誰がテメー等みたいなチンカス野郎にやらせるかってんだ。
アタシとやりたいってんなら、最低でもタッキー並みの容姿と、スタン・ハンセン並の強さを身に付けて来やがれだぜ……アタシに勝てないよう
なクズに、やらせてやる心算は毛頭ねぇよ。

「其れではお嬢様、少し行ってまいります。」

「気をつけてね……手加減しなくていいから。」

「畏まりました。」

さぁてと、メユから、お嬢様から手加減なしで良いと言われたんで全力で行かせて貰うぜぇ?……だが、アタシが全力を出すとなった以上、テメ
ェ等の等の敗北は絶対だ。
まぁ、精々カツアゲなんてダセェ事をしたテメェ自身を恨むんだな……徹底的にぶっ潰してやるから覚悟しやがれ――最強の不良にして、今日
だけのスーパーメイド、雪女の力を、其の身に刻み込みな!!

取り敢えずこのクズ共は、徹底的に叩きのめしてやるぜ!!











 To Be Continued… 



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