Side:雪奈


季節は学園祭の季節――其れは良いんだが、委員長よ何だってアタシ達のクラスは、『メイド&執事喫茶』なんて物をやる羽目になったんだ?
ぶっちゃけて言うなら、在り来たりすぎる。
つーか、アタシがメイド服とか有り得ねぇからサボるぞオイ。



「……果たしてサボれますかね?」

「あん?如何言うこった委員長?」

「愛雪さんに、学園祭で雪女さんがメイドさんになるってメールしましたが?」

「なんだとぉ!?」

そんなメール送られたら、メユが学園祭に来るのは確実じゃねぇか!!――でもって、そうなったらサボる事なんぞ出来ねぇ……アタシのメイド
服姿を楽しみにしてるであろうメユの期待を裏切る事は出来ねぇからなぁ。
仕方ねぇ、学祭には出てやんぜ――だが委員長、マユのシフトは絶対にアタシと一緒にしろよ?
そうじゃねぇと、アイツがポンコツ発揮した時にフォローできる奴が居なくなっちまうからな。



「其れは心得ていますよ雪女さん。
 以前貴女が風邪で欠席した時に、西行寺さんには貴女が絶対必要なのだと身をもって知りましたので。」

「OK、其れなら問題ないぜ委員長。」

まぁ、マユの奴はドンだけの対策しても其れを平然と超えるポンコツを発揮してくれるんだが……対策しないよりはマシって事でな――如何か
学祭が無事に終わる事を、神様とやらに頼んどくか。
……帰りに近所の神社寄って、賽銭ぶっこんどくか。割とマジでな。










ヤンキー少女とポンコツ少女とロリッ娘とEpisode25
『不良とラー油と豆板醤(激辛テイスト)』











さて、学園祭当日だ。
日曜って事も有って、いやまぁ、人が来る事来る事……一応駅が近い学校だから、車で来る奴は少ないんだが、此れが郊外の学校だったら駐
車場が大混雑だろうな。
メイド&執事喫茶をやるアタシ達は、女子がメイド服、男子は執事服に着替えてる……恐らくだが、この衣裳は絶対にアキバのコスプレ専門店
で買って来たよな。
まぁ、衣装の出所は良いとして、何だってアンタまでメイド服に着替えてんだよ山ちゃん先生?



「山ちゃん先生ってなんかいいわね?
 授業中も山寺先生じゃなくて、山ちゃん先生って呼んでも良いのよ雪ちゃん?」

「いや、授業中は呼ばねぇから。
 んで、なんでメイド服着てんの?」

「折角だから、私もメイドさんになって接客しちゃおうかなぁって。
 もっと言うなら、子供のころメイドさんって言うのに憧れを抱いてた事があって、一度メイド服って来てみたいと思ってたのよ~~♪」

「さよか。」

そう言えば、山ちゃんは昔っから可愛い物が好きで、服もどっちかってーと可愛い系が多かった……そういや、『可愛いから』って理由で、ゴス
ロリの衣装着せられた事有ったっけか。
まぁ、山ちゃんが着たかったってんなら文句はねぇんだが、山ちゃんはこの学校の教師の中でも一番若い上に、ちょいと童顔入ってるから、普
通に生徒でも通じそうだよなぁ、同じ格好すると。

しかしよぉ、アタシのメイド服ってどうなんだ?
自分で言うのも何だが、メイドにしてはガラ悪くねぇ?



「其処は演技で何とかカバーすればいいでしょう?
 其れと、メイド服其の物はよく似合っていますよ雪女さん――そもそもメイドは元来欧州のモノですから、日本人離れした容姿の雪女さんは、
 寧ろこのクラスの誰よりもメイド服が似合ってると言えますので。」

「ドイツの富豪の家で働くメイドさん……ですがその実態は、マフィアと繋がりのあるスクールガールですね。」

「委員長は兎も角、オメェは其れらしい事言ってんじゃねぇマユ!」

つーか、マフィアと繋がりのあるスクールガールって、まんまアタシの事だろ!!日本全国どこを探したって、ヤクザと付き合いのある女子高生
なんざ、アタシ位なモンだからな!
取り敢えず、アホな事言ってねぇで仕事すっぞ!客が来たからな!!



「そうですね。それでは……おかえりなさいませご主人様。」

「おかえりなさいませ、お嬢様。」



メイド&執事喫茶、此処に開店だな。



「おかえりなさいませ、ご主人様?」

「……何でオメーは疑問形なんだよ……」

一抹の不安は残るけどよ。



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取り敢えず今の所は、マユのポンコツで被害が出る事だけは避ける事が出来てるぜ……主にアタシと委員長のおかげでな!!アタシだけじゃ
なくて、委員長も極力フォローに回ってくれてるから助かる事この上ねぇ。
つーかマユ、一体全体どうやったら、コーヒーを運び終わって振り返っただけで手にしたトレーがフリスビーみたいに吹っ飛んでくんだよ!!
アタシが一足飛びでキャッチしたから良かったような物の、キャッチ出来てなかったら大惨事だったぞオイ!!



「何故でしょうか?果てしなく謎ですね。
 アメリカのFBIに調査依頼しましょうか?若しかしたらXファイル科が調査に来てくれるかもしれません。カモン、モルダー&スカリー。」

「来る訳ねぇだろ馬鹿野郎!!」

てかよ、普通の事を普通にやろうとしてポンコツな結果になるって、オメェ呪われてんじゃねぇだろうな?……冗談抜きで、一度お祓いしてもら
った方が良いんじゃねぇか?



「お祓いして貰ったら何とかなりますかね?」

「いや、ならねぇと思う。」

オメェのポンコツは筋金入りだから、神様でも治すのは相当に難しいんじゃねぇかって思うからな――




「オイコラ、メイドさんよぉ?んだ、この温いコーヒーは?客舐めてんのか?」




なんて事を考えてた矢先に、何やらガラの悪い客が来やがったみてぇだな?
黒いズボンに黒いシャツに、黒の革ジャンにイギリス国旗みたいな模様のバンダナ……目付きも悪いし、こりゃ確実にいちゃもん付けて料金を
踏み倒すのが目的だな。

こりゃ、アタシの出番だな……言いがかりつけられた生徒は完全に怯えちまってるからな。

「此れは失礼しました、温め直させて頂きますね。」



――ジャキ!



「ファイヤー!!!」



――ゴォォォォォォォォォォォ!!!



背中の凶器入れから、小型ガスバーナーを取り出して、コーヒーカップごと火炎放射ブチかまして、一瞬にしてコーヒーを沸騰させてやったぜ!
如何でしょうご主人様、お望み通り熱々のコーヒーにさせて頂きましたが?



「ふざけんな!飲める訳ねぇだろこんなの!!
 つーか、テメェはなんてもんを取り出しやがんだオラ!!」

「温いと文句を言っておきながら、温めたら飲めないとぬかすとは、感心できませんねご主人様?
 ですが、そんなご主人様にはお仕置きが必要かと思いますので……大人しく眠れやボゲェ!必殺、淑女のフォークリフト!!」



――ベッキャァァァァァァ!!!!



「ぺぎゃラッパ!?」

「恐喝かける店間違えたな?
 このメイド&執事喫茶にはよぉ、天下無敵の不良の雪女様が居るんだ……カスリ目当てで来店したチンピラにゃ容赦しねぇぜ――って、聞こ
 えてねぇだろうけどな。」

「うわぁ……相変わらず見事なジャーマンだね、雪女のお姉ちゃん――うん、完全に伸びてる。」

「雪女の姐さんのジャーマンは、初代タイガーマスクもビックリの美しさっすからねぇ……取り敢えず、お疲れさんです姐さん!!」



っと、来たのかメユと銀ちゃん。
まぁ、こういう馬鹿野郎はぶちのめしてナンボだろ――ってか、学園祭の模擬店にいちゃもん付けてくるとか、小者にも程が有るってもんだぜ。
其れは其れとして、おかえりなさいませお嬢様。
ご注文はお決まりでしょうか?



「えっとね、シュークリームとミルクティーで。」

「自分は、ティラミスとカフェラテで。」



……メユは兎も角、銀ちゃんが似合わねぇ事この上ねぇが、見た目と違って、銀ちゃんはスウィーツ男子なんだよなぁ……聞いた話だと、駅周
辺の甘味処はフルコンしたらしいからな。
ま、アタシ達の店だけじゃなくて、折角学園祭に来たんだから、色んな出し物を楽しんでくれよメユ?祭りってのは楽しんでナンボだからな。



「勿論その心算だよ♪
 其れよりも、そのメイド服とっても良く似合ってるよ雪女のお姉ちゃん――お姉ちゃんみたいなメイドさんなら、欲しいなぁ……」

「なら、今度の日曜、この格好で一日メイドでもやってやろうか?其れ位なら構わねぇぞアタシは。」

「ホントに?」

「おうよ。」

アタシは嘘は吐いた事ねぇからな。
つーか、ガキンチョとの約束で嘘吐くとか最低最悪だからよ――お前が望むなら、一日メイド位はやってやるって。



「其れじゃあ、お願いして良いかな?」

「承りましたお嬢様。」

ってな訳で、来週の日曜はメユの家で一日メイド確定だな――まぁ、偶には良いだろうってやつだ。メユのメイドになるってのも悪くねぇからな。

んで、其の後は普通に学園祭が進行し、休憩時間には、アタシとマユとメユ、銀ちゃんと委員長で学祭回ったりして、結構楽しかったぜ。

フィナーレのキャンプファイヤーでは、ガラにもなくフォークダンスに参加したりしたからな――去年はサボったが、今年の学園祭は色々と楽しめ
たのは、間違いねぇな絶対に。











 To Be Continued… 



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