Side:レーシャ


「いってきま〜す♪」

「はい、行ってらっしゃい♪くれぐれも車には気を付けるんやで?」

「は〜い!」

今日も今日とて元気に登校!
お父さんの出勤時刻は、私の登校時刻よりも早いから、私よりもずっと早くお仕事に出かけて行った。
まぁ、ちゃんとお母さんと一緒に『いってらっしゃい』はしたけどね……尤も、私と違ってお母さんの『行ってらっしゃい』は凄く熱烈なんだけどさ…


万年新婚て言うのかなぁ?お父さんとお母さんは、結婚して2年経った今でも、誰もが認めるくらいにラブラブなんだよね。
お父さんは余り表情が変わらないから分かり辛いかもしれないけど。

だけど、お父さんとお母さんの仲がいいのは嬉しいし、私の事も大事にしてくれるから何も不満も不平もありはしないよ…凄く幸せだもん。

「君達も元気に生まれて来てね?お姉ちゃんも楽しみに待ってるから♪」

「おぉ?こらまた盛大に蹴ったなぁ?……『元気です!』って所かなぁ?
 こんだけ元気やったら、お産は覚悟しとった方がえぇかもしれへんけど、元気なら元気に越した事はあらへんからね。
 っと、また蹴ったか!……ふふふ、『いってらっしゃいお姉ちゃん』やて。」


お母さんのお腹はもうはち切れそうな感じで、シャマル先生曰く『何時生まれてもおかしくない』って。
そのせいかは分からないけど、私もお父さんも、最近は朝出かける前にお母さんだけじゃなく、お腹の子達にも前以上に話しかけてる気がする。


だって楽しみなんだもん、私の弟と妹……元気に生まれてくれるといいなぁ…











遊戯王5D's×リリカルなのはViVid  絆紡ぎし夜天の風 序章2
『生まれ出る命――そして……』











Side:はやて


ふぅ……予定日の4日前か〜〜……さっすがにこの状態で動くのは大分しんどいわ〜〜〜。
遊星とレーシャが家事は手伝ってくれるし、偶になのはちゃんが『今晩のおかずに』って料理持って来てくれるから可成り助かっとるんやけどね。

まぁ、母体がキツイのはお腹の子供が元気な証言う事やから安心やけど……あ〜〜〜、掃除するのもしんどいわ〜〜〜。

洗濯物は乾燥機が有るから良いとして、流石にお掃除ロボットは無いからなぁ……?遊星に頼めば作ってくれるかも知れへんけどね。


しゃーない、しんどくても動けん訳やないし、掃除機で簡単に済ませるか。
遊星もレーシャも『出来る範囲でやって無理はしないで』って言うし、意地張って無理したら2人にしこたま怒られてまうからなぁ?

無理せん程度に頑張りますか!!


あ、そう言えば絨毯用のサイクロン掃除機が具合わるなってたなぁ?……遊星が帰ってきたら見てもらお。



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――ゴク、ゴク、ゴク………


ぷはぁ〜〜〜!一仕事終えた後のあま〜〜いホットミルクは堪えらえへんなぁ〜〜。
はちみつ入りのホットミルクは身体が温まって、母体をリラックスさせてくれる言うて沙羅さんが教えてくれたモンやけど、此れはえぇわ〜〜。
身体がポカポカして、ゆったりまったりリラックスや……六課時代からは想像も出来へんくらいに、ゆったりしとるね私も…

無理せず8割程度でとは言っても、家事を一通りやればやっぱりお昼になってまうしなぁ〜〜〜。



――ピンポ〜〜〜ン



「おぉ?来客とは珍しいなぁ?はいは〜〜い、今行くから少し待っててな〜〜〜〜〜。」

って、ノーヴェやないの、ドナイしたん?


「いや、ウェンディの奴が『今日はアタシがおやつを作るッス!』とか言ってクッキーを作り過ぎたんでおすそ分けに来たんですよ。
 あの凄まじい量は流石のギンガとスバルでも喰い尽くすのは難しいらしくて……」


ギンガとスバルが根を上げるって、ドンだけの量をこさえてんねんウェンディは。
けど、そう言う事やったら有り難く頂いとくな〜〜。遊星もレーシャもクッキーは大好きやから喜ぶと思うしなぁ♪

「あ、折角やから上がってて?お茶くらいは出すで?」

「あ、お構いなく……」


おぉ、礼儀も出来とるね。
まぁ、そう言わんと上がっててや。遊星もレーシャも居らんと、結構退屈やから話し相手にでもなって欲しいんやけどなぁ?


「そう言う事なら構わないですけど……じゃあ、おじゃまします!」

「ハイハイどうぞ〜〜〜♪」

お茶は……まぁ、一息入れてたところやから用意せんでも良いし、お菓子は御煎餅とこのクッキーでえぇやろ。


まぁ、何や無理矢理誘ってもうた感じやけど、最近はドナイや?チンク達とは巧くやれてるかなぁ?


「えぇ、まぁ其れなりに。
 アタシが嘱託扱いになった事で家に居る事が多いってのが原因かもですけど、チンク姉達も大分今の家に慣れて来たみたいで。
 ただ、ウェンディが如何にもアニキやチンク姉に懐きまくって……其れは良いんですけど、アイツってアニキ達より背がでかいから、その……」

「クロウ君はめっちゃ複雑な気持ちやろうなぁ……チビはつらい…分かるでその気持ち……


まぁ、ナカジマ家も『家族』として巧くやってるみたいやな♪
念願の『長男』を得て、師匠は御満悦何やないの?実は夜毎にクロウ君と晩酌を楽しんでたりしてるんと違う?


「大当たりです。まぁ、2人とも深酒はしないんで安心なんですけどね。
 お父さんはアニキが居て嬉しいみたいですし、アニキも『親父』が居るってのは嬉しい事みたいですよ。
 そう言うはやて司令は……って、聞くまでもないですよね?遊星さんはアレですし、レーシャはアタシでも分かる位に良い子ですから。」


ホンマにね。
最高の旦那と、あんなに可愛い娘が居て私ごっつ幸せモンやで?しかもそろそろ家族が増えるしなぁ〜〜♪
子供が生まれる事考えて、こんだけの大きな家買ったのは正解やったね。


「広い家ですよねホントに……ベビー用品も揃ってるみたいですし、此れなら何時生まれても大丈夫なんじゃないですか?」

「備えあれば何とやらって事でそろえたからなぁ?何時飛び出して来ても大丈夫やと思うよ。」

まぁ、ホンマに大変なんは生まれてからやけどね。



さてと、2年生はそろそろ授業が終わる頃やから、レーシャが帰ってくるな。


「もうそんな時間ですか!?……じゃあ、あまり長居しても悪いんで、アタシは帰りますね。」

「うん、また来てや♪」



――ズン……



「!?」

「……はやて司令?如何しました?」

「いや……なんや、お腹に違和感が………重いと言うか、何と言うか……」



――ズッキィィィィィィィィィ!!!!



「!?――!!!!!!!」

な、何やこの激痛は!!!ま、まさか破水した!?う、生まれる言うの!?
……あ、アカン……覚悟はしとったけど、想像以上の痛みやこれ……沙羅さんが『出産の痛みは地獄』って言うとったけど…此れは凄まじいで。


「はやて司令?……まさか、生まれるってのかよ!!
 え〜と……よし!!…………もしもし!こちらN2Rのノーヴェ・ナカジマ!!妊婦1名が産気づいた可能性あり、至急救急車をまわされたし。
 ……はぁ?今出払ってるだぁ?だったら、ワゴンかなんかに簡易サイレンくっつけてとっとと送ったデータの住所に迎えに来い!!
 るせぇ!!良いからやれってんだよ!不動はやて二佐が産気づいたって言ってのんが分かんねぇのかテメェは!!
 母体と子供に何かあったら責任とれんのか?取れねぇだろ!!だったら四の五の言わずに助産婦共々出動させやがれ!!
 それから産院の方にはシャマルさんを待機させとけよ?……不動二佐が産気づいたって言えばすぐ来るからグダグダ言わねぇでやれボケ!」


おぉう……見事やなぁノーヴェ……大凡17歳とは思えん頼もしさや。
って〜〜〜〜!!おぉう、ホンマに元気やなこの子達は……私等に早く会いたくなったのは分かったから少し我慢してや……!!


「はやて司令、取り敢えずソファーに横になって下さい。5分くらいで来ると思うんで。
 体を締め付けるモノは良くないんで、下着とかのホックを緩めますよ?」

「はぁ、はぁ……さ、流石は災害現場で大活躍のN2Rのエースやなぁ……応急処置の仕方も板についてるわ……頼もしい事や。
 そんでや……頼もしい序でに、遊星に連絡入れて貰って良いかなぁ?後レーシャにも……2人とも生まれるの楽しみしとったから。」

「了解です!!」


予定日より4日も早いけど、せやけどやっと………最後の一頑張りやな……!!








――――――








Side:レーシャ


今日も学校は終わって、家に――って、アレ?家の前に……アレって救急車……の簡易版だよねぇ?
まさかお母さんに何かあったの!?


「慎重にな!司令は陣痛が結構きつそうだから、丁寧に運べよ?」




「ノーヴェ!!」

「レーシャ!!
良いタイミングで帰って来たなお前も。」


良いタイミング?……って、そうじゃなくてお母さんに何かあったの!?お母さんは大丈夫!?


「心配すんな、産気づいただけだ――生まれるんだよ、お前の弟と妹がな。」

「え?」

生まれる?……予定日よりも4日も早いのに……だけど、生まれるんだ!!!私の弟と妹が!!
この事お父さんには?


「連絡したに決まってんだろ?
 仕事はまだ残ってるみたいだったが、マリーさんとシャーリーが一手に引き受けてくれたみたいだ――速攻で病院に来るってさ。」


だよね!……ノーヴェ、私も!!


「みなまで言うな、当然お前も連れてくに決まってんだろ?
 おい、はやて二佐の娘さんも同行希望だ、乗れるよな?……おし、なら大丈夫だ!!
 大丈夫だレーシャ、乗れ!!一気に病院まで突っ切るぜ!!」


うん!!


頑張ってお母さん……お父さんも来てくれるから!!








――――――








Side:遊星


ノーヴェから『はやてが産気づいた』って連絡を受けて、最速で病院に来たが、タッチの差で救急車の方が早かったか……残念だ。

本当なら仕事が残ってるんだが、『ちゃんと立ち会って来てください!!』って、俺を送り出してくれたマリーとシャーリーには感謝だな。


「お父さん、お母さん大丈夫だよね?」

「大丈夫だレーシャ、はやては必ず元気な子を産んでくれる………俺はそう信じてる。」

「……うん。」


レーシャも不安なんだろうな――かく言う俺も相当に緊張はしてるが。


こんなに緊張するのは若しかしたら人生で初めてかもしれない……ダークシグナーやイリアステルとのデュエルでも此処まで緊張はしなかった。
此れが自分の子供が生まれるって言う時の緊張何だろうか?

俺が生まれる時に、父さんも同じように緊張したんだろうか?


「してたみたいよ?レクス君とルドガー君からの後聞き情報なんだけどね。
 遊ちゃんが生まれる時も、あの人は凄く緊張して、普段の『頼れるリーダー』の姿は何処にも無かったって言っていたわ。」


そうなのか母さん?
だが、その時の父さんの気持ちは分かる気がするな……期待と不安が入り混じった緊張……ある意味自然な事なんだろうな。

名前はもう決めてある、後は無事に生まれてくれれば他に言う事は無いもない………最後の最後だ、頑張ってくれはやて!!








――――――








Side:はやて


「頑張ってはやてちゃん!!……そう、いきんで!!!」

「ふぅぅぅ……あぁぁぁぁっぁぁぁ!!!!」

痛い…痛い……一瞬でも気を抜いたら気を失いそうや――せやけど、帝王切開なんて絶対ゴメンや!!この子達は私の力で生まないと……!
ふぅ……ふぅ……んん〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!


「1人目の頭が見えたわ!!もう少しよ!!頑張って!!」

「あ……あ………あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっぁ!!!!!!」





「んぎゃぁぁぁぁぁ!!おぎゃー!!!」

「1人目……元気な男の子よ、はやてちゃん!」


男の子の方が先やったか……無事生まれてくれてよかったわぁ………せやけど此れで終わりやない……もう1人も送りださな!!!



――ズキン!!



「う……あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

「もう1人!!……双子とは言っても此処まで間隔が短いなんて………もう一頑張りよはやてちゃん!!!」


分かっとるよシャマル……何が何でもこの子達は……!!

で、出ておいで………先に生まれたお兄ちゃんが待ってるで?……う…あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!


「いきんではやてちゃん!!そう、その調子!!頭が見えて来たわ!!!」


やったらもう一頑張りや……私も頑張るから、貴女も頑張って……!!

「あ……く……あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


「………んぎゃ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」

「2人目…無事生まれたわはやてちゃん……1人目に負けず劣らず元気な女の子よ。」


無事に……良かった…無事に生まれてくれてよかった……!

こんにちわ、私の赤ちゃん……私がママやで?


「「あう〜〜〜♪」」


あはは……可愛いなぁ………此れが私と遊星の、そしてレーシャの………うん、取り敢えず――生まれて来てくれてありがとうな♪








――――――








Side:レーシャ


2つの産声を聞いてから1時間が経って――


「大丈夫かはやて?」

「お母さん、大丈夫!?」

私とお父さんは、赤ちゃんと対面した後でお母さんの居る病室に――流石に疲れたよねお母さんでも。


「大丈夫や………2人とも、あの子達見て来た?……可愛いやろぉ?」

「うん……何て言うか、あの子達が一番可愛かった。」

「そう思うやろ?……お腹を痛めて産んだ甲斐があったわぁ〜〜〜♪」

「そうだな……お疲れ様、はやて。」


お疲れ様、お母さん。


「はは……マッタクもう…出産の疲れが飛んでもうたわ。
 遊星、レーシャ……私は、今物凄く幸せな気分や……ありがとうな……」

「ありがとうは私達の方だよお母さん……元気な子を産んでくれて、本当にありがとう。」

「頑張ったな……」


「ホンマにもう……そう言えば、2人の名前は決まってるんか?」


そう言えば……如何なのお父さん?随分悩んでたみたいだけど……


「決まってるさ。
 女の子の方は俺から『遊』の字を取り、それと『陽』の字を合わせて『遊陽』
 男の子の方ははやて――疾風から『シュターム』って言うのは如何かな?」

「遊陽とシュターム……良い名前やね……」


流石はお父さん!ネーミングセンスもぴか一だね♪
シュタームと遊陽……私の弟と妹……沢山可愛がってあげなきゃだよね♪

だけど其れ以上に――改めて、お疲れ様でしたお母さん――シュタームと遊陽を産んでくれて、本当にありがとう……凄く嬉しいよ♪








――――――








同日深夜


No Side


――ウィーン…ウィーン……ガッガッガッガ!!


深夜の誰も居ないホビーショップT&Hで、カード製造用のマシンが勝手に動き出し、1枚のカードをこの世に生み出した。
其れはイラストもテキストもない白紙のシンクロモンスターのカード。

其れが何なのかを知る者は居ない――



だが、このカードが持つべき者の手に渡ったその時に、物語は大きく動きだす事になる。











 To Be Continued…