Side:ノーヴェ


なんだ?レーシャの奴、動きが鈍くないか?……いや、より正確に言うなら、何かに気を取られ、力を発揮し切れてねぇ……そんな感じを受けるな?

だが、如何してそんな事になっちまてるんだ?
贔屓する訳じゃないが、レーシャはチビ共の中でも頭一つ抜きんでてる強さで、それこそインターミドル本戦でも、トップファイターと互角に戦えるだけ
の力を持って居た筈だ……それが、何でこんな事になっちまてる?

緊張するってガラでもないだろうから……まさか、体調に何か不具合が出たのか!?



「………いや、其れは無いだろうな。アイツは、体調管理にも、人一倍気を使って居た訳だからな。」

「旦那……それは、確かにそうだけどよ。
 だからこそ、分からねぇじゃねぇか!何でレーシャが全力を出す事が出来ねぇのかを!!アンタは、弟子の事が心配じゃないのかよ旦那ぁ!!」

「心配はするが、試合中の彼是を、俺が心配した所で何になる?何にもならんだろうが。
 突き離すような言い方だが、試合中に起きた全ての事は、自分で如何にかするしかないってのが、武道の世界なんだ…俺もそうだったからな。」



其れは……確かにそうかも知れないが……レーシャが潰されたら元も子もねぇだろ!!いや、簡単に潰されないとは思うけどよぉ!?

何れにしろ、アタシに出来る事は無いか……だったらせめて、コーチとして、お前が勝てるように、最大の声援を届けてやるよレーシャ!!!!











遊戯王5D's×リリカルなのはViVid  絆紡ぎし夜天の風 Rainbow86
『開眼!一撃必殺『風の拳』!!』











Side:レーシャ


くっそ……少しずつ、でも確実に私の耳に届く風の音は大きくなって来てる!!――下手したら、此のまま全ての音が掻き消されちゃうかもだよ!
そしてこの音は、少なからず私にも影響を与えてる……



レーシャ:LP12000
クラッシュエミュレート:左肩、右膝、右ひじ強度打撲




僅か数分で、結構ライフを持ってかれたからね。
ったく、こっちの攻撃はほとんど効かない上に、相手の攻撃はダメージ甚大で、しかも風の音を何とかしろって、ドンだけのハードモードよ此れは!!
ぶっちゃけ、一般ユーザーだったらコントローラー投げ捨てるほどの難易度よ此れ!!


……まぁ、これを如何にかしない限りは、2回戦に駒を進める事が出来ないって言う事なのかもしれないけどさ。



「ハッ!!!」

「ちぃ……!!」

加えて、相手の戦闘スタイルが厄介って言うのも有るかもね?
ナオミの戦闘スタイルは、所謂『ボクシング』で、足を使って的確に間合いを計りながら牽制のジャブを放ち、機を見て必殺の拳が飛んでくる――そ
レだけなら兎も角、ナオミの腕のリーチは110cmと、異常なまでに長いから、完全に私の間合いの外から攻撃を届かせる事が出来るんだよね。

ホント、厄介だわ!!
でも、この手の相手には、拳のリーチの外からの飛び道具で、攻略出来る事も少なくないから……其れを試して――



――ザァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ……!!


「!!!……く、風の音が!!」

「何処を見ている!!」



しま!!……風の音に気を取られてる隙に間合いを詰められた!!

「のわっ!!」

っぶな~~~!!
咄嗟に、ギリギリで回避できたから良かったモノの、今のは直撃してたら残りライフ半分は持って行かれてたわね………マジで、ヤバすぎるわよ!



『おぉ~~っとぉ?一体何があったレーシャ・Y・不動ーーーー!
 動きに何時もの切れがない!それどころか、試合に集中しきれていない感じがするぞ~~~?本戦の大舞台に、緊張しているのか~~!?』




大舞台での緊張程度だったら、ドレだけよかった事か……其れよりも、ずっと厄介な状況なのよこっちは!!



――ザザァァァァァァ……カ…ゼ……サァァァ……ケ……


く……今度は風の音に交じって、人の声みたいな物が!!――えぇい、いい加減うるっさい!!!



――バキィ!!!!



「がっ!!……なに?」
ナオミ:LP29900→27800



「……はい?」

風の音を振り払うように攻撃したら、拳がナオミにクリーンヒットして、初めてダメージらしいダメージが入った……じゃなくて、今の感覚は一体何?
何時ものドクガミとは違う。……何て言うか、もっと自然な流れで出たと言うか、何時もの雷拳の荒々しさが薄かったと言うか、そんな感じだったわ。



「やるじゃないか……今のは中々効いたよ?いよいよエンジンがかかって来たって言う所かな?」

「だと良いんだけど……まだ、全開とは行かないかもねぇ此れ……風の音の正体は、まだ分かってないし、今こうしてる間にも私には風の流れる音
 がずっと聞こえてるんだからさ……」

「風の音?私には何も聞こえないが……まぁ良い、『自分からは潰れない』って啖呵を切ってくれたんだから、私をガッカリさせないでほしいわね。」



いやまぁ、そりゃあ言った以上は潰されない心算だけど、状況が最悪に悪すぎるのよ此れは!!
こんなに集中力が乱されたんじゃ、最終奥義の無式を使う事だって出来やしないし、其れ以前に全ての技が中途半端になって、今みたいなダメー
ジを与えるのも難しいからね……

でも、だからって試合中にこっちが万全の状態になるまで待ってくださいと言う訳にも行かないから、自分の力で何とか状況を抜け出さないと!!

取り敢えずこれ以上のダメージは拙いから、このラウンドは遠距離攻撃で牽制しながらインターバルまで持ち込むのが上策ね――インターバルで
体力を回復できれば大丈夫だと思うし、インターバル中に風の音を何とかできるかも知れないから。



――カ…ザァ…ノ……エ……サァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ………



「喰らえ!!!」

「飛び道具……成程、インファイト専門の私に対しては悪くない戦術ね?……だけど、其れで何処まで持つかしら?」

「取り得ず、インターバルまでは!!」

「……開き直ったねぇ?」



――ザザ……ザァ…声……ケ……ザァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ………



「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァ!」

「無駄無駄無駄無無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ぁ!」


『なんとぉ!!矢継ぎ早に射撃を繰り出すレーシャに対し、ナオミはその全てを的確に打ち落としていく!!
 此れがスーパールーキーと新人潰しがかみ合った結果のラッシュ攻防なのかーーー!!
 何れにしても、レーシャJoJoとナオミDIOの凄まじいラッシュ合戦だーーーー!!!』


「「其れは絶対に違うと思う!!」」


いや、突っ込み入れてる場合じゃないんだけどね。
今の所は、拮抗してるけど、風の音で集中力が乱れてる私じゃ徐々に押されるのは目に見えてる……其れでも何とかインターバルまでは逃げきら
ないと……此処で負けたら、ミウラと戦う事も出来ないからね!!

取り敢えず、この流れを一端止める為に、直射砲撃で――


――ザァァァアァァァァァァァァァァアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァアッァァァアァァァァァ!!


って、此処で、今まで出一番大きな風の音が!!これじゃあ!!



「隙ありだ!!」

「しまった!!!」


一足飛びからの強烈なボディブロー……回避は間に合わない……なら防御を!!



――ザァァァ………風の声を聞け。風の声を聞いた先に、新しい門が開ける。



「え?」

今まで風の音に紛れて聞こえてた声がハッキリと……それに、今一瞬見えたのは『スターダスト・ドラゴン』?
其れに風の声を聞けって………風の声……風の力………成程、貴方は教えようとしてくれてたんだね、私の中に眠る新たな力に――



「Crash!!!(砕けろ!!)」


――バキィィィィィィィィィ!!!ドッガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァアン!!!



レーシャ:LP12000→100




『クリーンヒットーーーーーー!!!
 辛うじてライフが100ポイント残ったが、レーシャは場外まで吹き飛ばされてしまった~~~!果たして、試合は続行可能なのか~~~!!?』


「……所詮は、予選での超新星だったみたいね。
 ネットとか各所で噂になっていたからドレだけの武闘家とも思ったけど、矢張り噂に尾鰭は付き物か……」



……まぁ、其れは否定しないわ。ってか、ウチのお母さんは、噂に尾鰭どころか背鰭に胸鰭に腹鰭に鰓鰭色々つけて誇張しまくるの得意だからね。



「なに?」

「ふぅ~~~……ギリギリライフは残ったか。
 でも、今の一撃と風の音が何を伝えようとしてたのか分かったおかげで、漸くエンジンがかかったよナオミ――このラウンド、此処から逆転する!」

「!?……何があったかは知らないが、先程までとは別人だね……今の貴女なら、スーパールーキーと言われるのも納得できそうだわ。
 でも、貴女にだけ聞こえていたと言う風の音……其れは一体何だったのかしら?」



プレシアさんのクローンである私の先天属性は雷で、私も其れを最大に生かすように戦って来たし、鍛えても来た。
だけど、其れだけじゃなかったんだ私の力は………知らず知らずのうちに、私はお父さんから『風』の力を受け継いでいたんだ――そして、悟った。

拳は雷の様であると同時に、風の様な物でもあるってね。



「ふぅん?中々に詩人な言い方をするわね?だけど、拳が風のような物であるとしてどうやって風の存在を知らしめる気かしら?
 雷ならば、火花放電や落雷などでその存在を万人に示す事が出来るけど、目に見えない風は如何する?家でも吹き飛ばすのかしら?」

「……そんなモノは必要ないわ。
 風の存在を知らしめる為には、木の葉を花弁を、ほんの一枚かすかに揺らしてやれば良い……其れだけで、風の存在は十二分に認識できる。」


――ザッ


だから此処は、ルーキーの我儘に付き合って貰うよナオミ?
望まざる二つ名とは言え、『新人潰し』の異名をとる貴女が、ルーキーの最大の一撃に付き合わないとかは無いでしょ?



「その名は好きじゃないんだけど……いいわ、その挑発に乗ってあげる。」

「其れは感謝感激。」

巧く行けば逆転勝利……失敗したら即敗北か――なら、絶対に成功させて見せるわ!!



「……行くよ!!」



来た!!
大人状態の私の腕のリーチは80cmほどで、対するナオミのリーチは110cm………普通に打ち合ったら、私の拳が届く事は無いけど、此れならどう
だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!



「な!拳を狙って来ただとぉ!!」



打ち出された拳に、対しての攻撃ならリーチの差は関係ない!!
うおりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあっぁあぁぁぁぁぁぁぁ!!打っ飛べぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!



――ドッガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァン!!!



「ぐ……うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
ナオミ:LP27800→5300
クラッシュエミュレート:右手指全本骨折、右手首脱臼、右肘脱臼&亀裂骨折、右肩亜脱臼&亀裂骨折、全身裂傷




『吹っ飛んだぁ!!!そしてなんという破壊力!!一気に2万ポイント以上のライフを削り取り、更にはナオミの右腕を完全に殺したーーー!!
 レーシャ・Y・不動、逆境からの強烈な一撃で、凄まじい反撃だーーー!!!』



はぁ……はぁ……此れが今の私の全力全壊だよ……受け取ってくれた?



「あぁ、存分に堪能させて貰ったよ『風の拳』をね。――試合中に新たな力に開眼するとは、スーパールーキーの名は伊達じゃないわね。
 本音を言うならもっと戦いたい所だけど……審判、私は此処でギブアップするわ。」

「へ?」

「ライフはインターバルで回復できるだろうけど、右腕をインターバルで完全回復するのは不可能でしょうし、効き腕が満足に使えない状況じゃ、新た
 な力を得たこの子とやり合う事は、出来ないだろうからね。」



「ナオミ・エクレールのギブアップを承認!よって、勝者レーシャ・Y・不動!!」



勝った?……いや、勝たせて貰えた?



「其れは違うわよレーシャ……勝ちを譲ったんじゃないわ。これ以上戦っても、アタシの勝ちが見えないからギブアップ――サレンダーしたのよ。
 まさか、ライフを100ポイントまで削った挙句に、こんな攻撃が待ってるとは思わなかったわ。」

「ゴメン……マダマダ未熟で、此処までの威力は必要なかったわ。」

「でしょうね……だけど、貴女が見つけた『風の拳』は、とっても興味深いから、此れから如何進化していくのかをじっくりと見させて貰う事にするわ。
 2回戦も頑張りなさい?……貴女は『新人潰し』に勝ったんだからね。」



……押忍!絶対に勝って見せるわ!!
何よりも、2回戦の相手はミウラだから、絶対に負ける事が出来ないからね――この風の拳……否『真・光速拳』を携えて2回戦に挑んでやるわ!


「………」(ニッ)

「!!………」(ニッ)



客席のミウラに笑いかけてやったら、一瞬驚いた顔をしたけど、直ぐに笑みを返して来たからね……これは、次の2回戦が楽しみになって来たぜ!








――――――








Side:はやて


いよっしゃーーーーー!!!最悪のピンチを乗り越えて、レーシャの逆転勝利や!!やっぱり、私の娘は宇宙一やで~~~!!……と、喜ぶ所な
んやけど、遊星は何を難しい顔してんねん?
レーシャが勝ったんやで?しかも新しい力に覚醒した末にや……此処は、親として喜ぶところとちゃうの?



「いや、レーシャが勝ったのは勿論嬉しいが、それ以上にレーシャが新たな力に開眼した事がな……土壇場で、風の力を見つけ出すとは、レーシャ
 は、俺達が思っている以上の逸材なのかもしれないな。」

「って、そんなん今更やん?
 レーシャのベースはプレシアさんで、更に夜天の主である私と、天下無敵のデュエリストである遊星が親なんやで?普通の女の子筈ないやろ。」

「……其れを言われると、反論が出来ないな。
 だがレーシャは、この戦いで武闘家としてのレベルを大きく上げたのは間違いないから、次の2回戦…ミウラとの戦いが楽しみになって来たな。」



そやな。
光速のレーシャと豪打のミウラ……この組み合わせはバッチリかみ合うやろうからね。

夜天の守護騎士に鍛えられた豪打が上か、其れともチートバグの教えを受けた速打が勝るのか……此れは、今から楽しみになって来たで!!


だけど言える事は只一つ――レーシャとミウラのバトルは、インターミドルの歴史に名を残すであろう、凄まじいバトルになるって事やで!!
次の2回戦、始まる前から楽しみになって来たわ~~!!

2回戦での活躍も、期待しとるよレーシャ♪











 To Be Continued… 








*登場カード補足