Side:ヴィヴィオ


総師範に呼び出されて、此処に来た訳なんだけど……何で私だけが呼び出されたんだろうね?
格闘の彼是に付いての事だったら、私達全員が呼び出されても良い筈だから、此れは私個人に用が有ったって考えるのが妥当だよね、間違いなく。
だけど、だったら尚の事私を……?



「おぉ、来ていたかヴィヴィオよ。」

「総師範……押忍!」

「ほっほっほ、現代格闘技の型とは言え、武の礼儀も出来ておるな?まぁ、武の礼儀に於いては今も昔も大差ないがの。
 じゃが、如何に力と技を磨こうとも、礼に始まり礼に終わる、武の礼儀を忘れてしまっていては、大成は望めぬモノよ……礼を失する者が武の頂点を
 極めた事など、有史以前から有り得なかった事じゃからな。」



あ、其れは稼津斗師匠も言ってました!
試合の中で、心理戦を絡めた挑発行為は兎も角として、格闘家として礼を失する事をしてはならないって、口を酸っぱくして言っていましたから!!!



「なる程の……矢張り彼は達人じゃったか。
 まぁ、其れは其れとしてじゃ……ヴィヴィオよ、お前さんはこの格闘技の世界で、一体何を得んとしておるんじゃ?……其れを教えてくれんかのう?」

「やっぱりそう来ますよね……」

総師範程の人だったら、私が格闘技に向いてないって言うのは、即刻見抜いていただろうからね。
恐らくは、武器を使った戦闘技術何かを勧めて来るのかもしれないけど、私は素手での格闘を止める心算は毛頭ない……格闘で頂点を極めるのが、
私とノーヴェの目標だからね!












遊戯王5D's×リリカルなのはViVid  絆紡ぎし夜天の風 Rainbow82
『総師範による適性検査』











Side:レーシャ


ヴィヴィが総師範に呼び出されたって事で、気になって後を付けて来たんだけど……どんな状況だ此れ?
小さなテーブルに向かい合わせになって座ってるヴィヴィと総師範。声は聞こえないけど、私には超高性能のリラが居るからね?

「リラ、集音モード。」

『クリ~~~♪』



これで2人の会話もバッチリ分かりるって訳!……断じて盗み聞きじゃないからね。大事な親友の事が心配でやってるだけだから。其れだけだから。



「お主も気付いているじゃろう?この先、武術家として上を目指すと言う事が、己にとっての茨の道であると言う事は?」

「才能的な問題……ですよね?」

「主に資質の問題じゃな。」



如何やら総師範は、ヴィヴィが本来格闘に向かないって言う事を言ってるみたいね。

まぁ、確かにヴィヴィは、チームナカジマの中でも身体能力も魔力もダントツに低い。圧倒的な動体視力で、最強のカウンターが放てるとは言っても、
格闘家として見た場合、身体能力の低さは致命的だからね。

って言うか、ヴィヴィの能力を考えたら、普通はミカヤンやヴィクターみたいに、武器戦闘を選択するのがベターなんだよね?……ミカヤンとヴィクター
は、身体能力も滅茶苦茶高いけどさ。

ぶっちゃけヴィヴィの動体視力を考えると、格闘でカウンターをブチかますよりも、刀でも装備して居合のカウンターをブチかます方が効果覿面だし。

でも、ヴィヴィが其れを選ばないのには理由が有るんだ……


「お主の能力を生かす競技は他にもあろうし、戦闘競技に拘るのならば、刀等の武器を手に取るだけでも大分違う。槍などは特に向いておろう。
 であるにも拘らず、素手の格闘に拘るのは、何か理由が有るのかね?」

「私は、ノーヴェの作品なんです。」

「ほう?」



そう。ヴィヴィは、自分で言ってる通りノーヴェの作品なんだよね。
戦闘機人であるノーヴェは、その身体のせいで、あらゆる大会に出場する事が出来ない。だから、自分の強さを確かめる事が出来ない。自分の強さ
がドレだけのか、知る事が出来ない。

だからノーヴェは、己の持てる技術の全てをヴィヴィや私達に伝えようとしている……自分では成しえる事が出来ない夢を、私達に託してくれたんだ。
特にヴィヴィには、ノーヴェ自身が思い描く理想の格闘戦技――打撃格闘家の花道、技術で相手を制するカウンターヒッターを実現させようとしてる。
後の先を取る、極端な言い方をするなら『弱い人でも強い相手を倒せる技術』で、格闘に向いてないヴィヴィが勝ち上がってくことも、ヴィヴィとノーヴ
ェの夢なんだよね。
だから、ノーヴェが諦めないうちは諦めないって、前にヴィヴィが言ってたっけ。



「コーチとの絆は美しい物じゃの。」

「勿論其れだけじゃないんです――私自身にも超えたい人達が居るんです。」

「ほう?武術家かね?」

「あ、武術家ではないんですが、鬼か魔王かって位強い人達で…」



……その気持ちは分かるけど、自分の親に対してその例えは如何なのよヴィヴィ?なのはさんが魔王なのは、多くの人の共通認識だから兎も角と
して、フェイトさんに『鬼』とか言ったら、ガチで泣いちゃうと思うよ?

でもまぁ、自分の親を超えたいって言うのは当然だよね?
私だってお父さんとお母さんの事は超える心算だもん。……特にお父さんは!!現在デュエルで、1勝も出来ず、遂にこの前、目出度く100連敗を達
成しちゃったからね!!

結局のところ、ヴィヴィも其れが一番の譲れない理由なんだろうし。



「譲れん理由としてはまぁ妥当じゃの。
 そもそも、其処等のジジイに言われたくらいで曲げるような信念だったら、此処まで強くなっておらなんだろうしな?」

「伝説の武術家に御助言頂けるのならば、素直に曲げる方が正しいと思うんですが……」

「ふむ…とは言え、ワシも指導者の立場じゃから、若い才能が向かぬ道に進んで、その芽を潰してしまうのは良しとせん。
 そこでじゃ……一つ賭けをせんかヴィヴィオ?
 ワシが今から、三度お前に打撃を打ち込む。勿論当てぬようにじゃが、其れを後ろや下に避ける事なく、目を開けていられたなら其れで良し。
 しかし、もしも怖くて下がってしまったり、目を閉じてしまったりしたら……自分の行く末を、少し考えてみておくれ。」

「……はい。」



と、此処で何やら妙な事になって来たね此れ?
当てないようにするって言う事は、寸止めか、紙一重ギリギリで外すって事なんだろうけど、其れでも伝説の武術家の打撃に対して避ける事をせずに
目を開けて居ろってのは、結構な難度だよ。
まぁ、ヴィヴィなら受けて当然だけどね。……私にとっても良い機会だし、伝説の武術家の打撃って言うのを見せて貰いましょうか~~♪

先ず一撃目!!



――ビュオ!!



……はい?
な、なに今の!?気が付いたら、総師範の拳がヴィヴィの顔の前で止まってた!!結構距離が有ったはずなのに、踏み込みすら見えなかった…!
あのスピードだと、ヴィヴィの動体視力でも捕らえられたかどうかは怪しい感じがするわね……!!
アレを見る為には……リラ、コンタクトモード!



『クリクリ~~!!』




「クリス、コンタクトモード!!」



って、ヴィヴィもコンタクトモード?
……やっぱりヴィヴィにも見切れてなかったんだ。
圧倒的な動体視力を持ち、お爺さんから『見切り』を伝授されてるヴィヴィにも見切れないって総師範の打撃はドレだけ速いの?……若しかしなくても
マッハ突きをも凌駕してるんじゃないかな?
だとしたら、伝説の名に恥じない感じだけど……ともあれ今度が二撃目!!



――轟!!



……今度は、ヴィヴィの左側頭部ギリギリ紙一重の一撃。……コンタクトモード使用で、漸くギリギリ見る事が出来たって、本気で凄すぎますって!
でも、今のでもヴィヴィは避ける事はしないで、目を開けてた……次の一撃をクリアすれば!!



「では最後の一発じゃ。
 しかし、ワシももう歳じゃ……万が一当ててしまったその時は……まぁ、ゴメンの?



――ゾクゥ!!



ヤバい!!今度の一撃はヤバイ!ヤバすぎる!!
今度の一撃は、寸止めも紙一重の空振りも無い……最後の一撃は外してくれない!!確実に、ヴィヴィに当てに来る!当てに来てる!!本気で!

アレを喰らったらヴィヴィはどうなる?
重傷で済めば僥倖、競技選手としての選手生命が断たれたで済めば御の字、最悪の場合は……死!!

冗談じゃないわ!!
確かにヴィヴィは、本来格闘に向いてないけど、己の目標と信念に、ノーヴェの目標も背負ってこの道を選んだんだから、其れを他者が断絶して良い
理由なんて何処にもない!
何よりも、ヴィヴィの未来を、道半ばで途絶えさせる事なんて出来ない!!だったら、私は―――!!!



「「ハァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!」」



――ドゴォォォォォォォォォォォォッォォッォッォォォン!!



「ふむ、まぁ合格じゃな。」



って、あら?
総師範は、ヴィヴィの放ったカウンターを左手で、私のコマホフリを右手で制して……若しかしなくても、こうなる事が予想出来てた!?



「お前さんが来てる事は、分かっておったからの?」

「来てたのレーシャ!?」

「いやまぁ、ちょいとヴィヴィが気になったからね……って言うか、気付いてたのに放置しとくとか、中々良い性格してますね総師範?」

「ホッホッホ、この歳になると色々とあっての?まぁ、ジジイの道楽と思って許しておくれ。」



コンチキショウ、そう言われたら何も言えないじゃない。……此れにはこれ以上突っ込まないが吉ね。
其れよりもヴィヴィ、今のカウンター凄かったじゃない!此れまでに見たヴィヴィのカウンターの中でも一番だったよ今のカウンターの一撃は!!



「私も驚いてるんだけど……何て言うか、時間が遅くなったような……」

「そいつは、お前さんが死の間際で見せた集中力の成果じゃよ。
 矢張り『神眼』の領域に半歩程度は踏み込めている様じゃ。元の鍛錬は勿論、アイリンの指導も効いとるのかもな?
 走馬灯の一つや二つ見えたかの?」

「見えましたバッチリ!!会話もしちゃいました!!
 ん?でも死の間際って事は……本気で当てる気だったんですか総師範!!」

「ほっほ、避けてくれなんだら、ワシは今頃犯罪者じゃの~~♪」



いや、笑い事じゃないから総師範。
って言うかそうなったら総師範が人生にピリオド打ってるからね?……ヴィヴィに試合以外で何かあったら、その瞬間に次元を超えて桜色の集束砲
撃が降り注ぐからね……なのはさん怖い。



「極限の見切りにして必中の一撃を叩き込む『神眼』……使い熟せればお前さんの武器となるだろうヴィヴィオ。
 そしてレーシャもまた、己の戦い方の先に見る物が有るじゃろう――じゃが、何れの場合も死の淵に立ち続ける覚悟が必要になって来る。
 覚悟が足りなければ死ぬ。試合で身体は死なずとも、刻まれる敗北に心の方が殺されて行く……其れでも、徒手空拳の武を続けるか?」

「総師範が教えて下さった、死の心構え、胸に刻みます――刻んで続けます……私はこの道で強くなる!!」



んで、総師範の総括を聞いてもヴィヴィの意思は変わらないわよね。
そして其れは私だって同じ!!真の格闘家の道と、真のデュエリストの道……その両方を、私は絶対に極めて見せる!!其れが私の道だからね!



「ほっほっほ……此れだけ活きの良い若者が居るのならば、武の道は安泰じゃな。
 ヴィヴィオもレーシャも、型は違うが、己の武の道を大切に踏みしめて行きなさい……お主らの歩む武の道…ワシも楽しみに見させてもらうよ。」

「「押忍!!」」



伝説の武術家に、此処まで言って貰ったんなら、其処まで行かないと嘘だからね!――極めてやるわ、私の進むべき武の道って言うモノをね!!!



「時に……ノーヴェ先生や、ウチの孫たちには今の事は内緒な?……怒られるから。」

「「お、押忍……!!」」


なんか、しまらない感じになっちゃったけど、今回の事は良い経験になったわ――まぁ、見ててよ総師範。私達が紡いでいく『道』って言うモノをさ!!













 To Be Continued… 








*登場カード補足