Side:アイリン


試練を与える側として参加すると言う事で、技の試練の道を進んでいるのですが……薄暗い洞窟で見ると、より破壊力と言うか迫力と言うか、怖さが際
立ちますわね稼津斗さん?

こんな事を言ったら本末転倒かも知れませんけど、その見てくれは私でも恐怖を覚えてしまいますわよ!?もっとマイルドな変装は無かったんですの?



「XXに変身して、髪をオールバックにして天狗の面を付けるって選択肢も有ったんだが、それだと出てった瞬間にレーシャに大爆笑されそうだからな。
 そうなると緊張が解けちまって訓練にもならないだろ?
 だったら、多少引かれてもこっちの怖い見た目の方が遥かに良いって訳さ――此れが相手なら、闘わざるを得ないからな。」



それは……確かにそうかも知れませんわね。
何れにしても、この方の実力は其処が知れませんわ――ともすれば、世界人口の全てを敵に回したところで、勝ってしまう位なのかもしれませんわ。



「しかしまぁ、弟子を直々に鍛えるってのも良いもんだ。
 最近はメニュー重視で、俺とのスパーリングは全くやって居なかったから、良い機会とも言える――ドレだけ強くなったのか、見せて貰おうか?
 無論、課題は浮き彫りにするけどな。――ヴィヴィオとミウラの方は頼んだぜ、お嬢様?」

「お任せ下さいまし。」

でもまぁ、やる事に変わりは無い訳ですから、私も私の役目を果たしましょう。――ヴィヴィオさんとミウラさん……此の御二人の力を伸ばして差し上げま
すわ!!私にとっても、良い経験になるでしょうし。

さぁ、行きますわよ!!












遊戯王5D's×リリカルなのはViVid  絆紡ぎし夜天の風 Rainbow78
『Probe mit der Sachkenntnis』









Side:レーシャ


受けろ……このブロウ!!!



――ドガバァァァァァァァァァァァァン!!!



はぁ、はぁ……此れで10体目の木人撃破。ヴィヴィとミウラが1体も撃破出来てない事を考えると、可成りのハイペースなんだけど、此れだけの量を相
手にするのは、流石にキツイ物があるわぁ。

まぁ、此れも持久力の訓練になると思えば辛い事も無いんだけどね。

寧ろ大変なのはヴィヴィ達よ。
己の苦手を徹底的に攻めて来る木人に対して、碌な反撃が出来ずに、1体たりとも倒す事が出来ないでいる――此れは、あまり宜しくないわね。

ヴィヴィは来年があるとは言え、ミウラにはまだ試合が残ってるから、此処で苦手を何とかしないと試合に影響しかねないからね?
だからと言って、一朝一夕で出来る事でもないんだけど、こればっかりは気合入れて、根性出して頑張るしかねーでしょ。スポ根上等ってやつよ!!

「はい、邪魔!!」



――バゴォォォン!!



って、今気付いたけど、普通に打撃で倒そうとするからパワー不足が祟るんであって、今みたいに魔法でブッ飛ばす分には全然問題ないんじゃない?
打撃は威力不足でも、魔力の方は割かし凄まじい訳だしね?伊達に大魔導師の遺伝子継いでないって言うか、魔力に関してはチートレベルだし。




「木人一同、動作停止!直立姿勢!!!」



ん?なに今の声?この声に反応して、木人が全部止まっちゃったけど……試練の終わり、じゃあないよね?



「高町選手、リナルディ選手、不動選手も気をつけ!」

「「は、はい!!」」

「押忍!!」

「不動選手は兎も角、高町選手とリナルディ選手は、そんな様子じゃあ、此の三岩窟『技』の道の番人!!
 アイリン・ハーディンの試練は、抜けられません事よ!?」



……誰?見た感じ同い年っぽいけど。
てかゴメン、自信満々に登場したところ悪いんだけど、その登場の仕方は如何かと思うわよ?如何に、この試練の番人であるとは言っても演出過多だ
って――イベントデュエルのラスボス登場じゃないんだから……

な~~んか、ミカヤン達の方にも美人な執事(?)さんが現れたみたいだし、試練の最終段階って言うのは間違いなさそうなんだけどさ。



「さてと……御三方の相棒は、私が預からせて頂きます。」

「クリス!!」

「スターセイバー!!」

「リラ!!」

「返してほしくば私に一撃を打ち込んでいただきましょう――高町選手とリナルディ選手ならば、お二人同時でも構いませんのよ?」

「一撃で良いんですか?」

「なら、すぐに取り返しちゃいます!」

「ふふふさぁて……出来ますかしら?」



――この子、アイリンて言ったけ?可成りの手練れだわ。
ルーフェンの武術家って言う事は、恐らく中国拳法に似た『柔の拳』を得意としてるだろうから、カウンター型のヴィヴィと、一撃型のミウラには相性最悪
の相手なんじゃないの此れ?

力量は同じくらいだろうけど、相性の差でアイリンの方が有利、一撃を入れるだけでも簡単じゃないでしょうね。

「って、ちょっと待て。
 ヴィヴィとミウラは同時にOKって、私はどうなるのよ?まさかとは思うけど、ヴィヴィとミウラが試練達成した暁に挑戦しろって事なの?」

「そうではありませんわ。と言うか、そんな事をしたら貴女には試練にならないのではなくて?
 ソース元は明かせませんが、貴女ならば私が、此のお二人の相手をしている間に、私の動きを見切って、次に挑戦した時に一撃入れるくらいは造作
 も無い事ではありませんの?」



……其れは確かに否定しないわ。
デュエルも格闘も、先ずは相手を見る事が大切だから、お父さんからはデュエルで、お母さんからは魔導戦で、師匠からは格闘戦で『見る目』を鍛えら
れましたんでね~~~。



「なので、貴女には貴女専用の番人を用意してありますので、精々楽しんで下さいな?」

「VIP扱い?其れは、楽しみだわ。」

「ふふ、さて、彼を見ても同じ事が言えますでしょうか?」

「?」



――ジャーン、ジャララーラー、ジャーン、ジャーララララー、ジャララーラーラージャジャジャジャジャジャジャ~~ン!!



って、何故に唐突に豪鬼のテーマが!?――まさか……



「愚かな……失せろ!!」



――バキバキバキバキバキ!!!



「フン、笑止!」



思った通り、私の背後から行き成り黒い胴着の人が現れて、停止命令を受けたにも拘らず動こうとしていた木人を瞬獄殺で葬ってくれたよ……如何に
木人とは言え、あの頑丈なのを一撃で倒すとは半端な使い手じゃないわね。
てか、黒い胴着に、逆立った赤い髪と、同じく赤い目に暗褐色の肌って、リアル豪鬼かい!!てか、絶対稼津斗師匠でしょ此れ!!!!



「……何でバレたし?」

「バレバレっすよ師匠……ヴィヴィとミウラは気付いてないけど、私が相手の気や魔力の質を探れるって事忘れないでね?
 てか師匠から習った事だから。」

「そう言えばそうだったな。」



まぁ、ヴィヴィは其のおっかない見た目に泣き入ってるし、ミウラに至っては立ったまま気絶してるから、迫力は凄いと思うけどね?……あ、ミウラの口か
ら魂が抜けかけてる。

あっちはアイリンに任せとくとして、師匠が私の番人となると、どんな試練を与えてくれるのかしら?



「取り敢えずはスパーリングだな。時間無制限の――その中でお前の課題を浮き彫りにする。
 お前は確かに強いが、俺に言わせればマダマダだ……我は拳を極めし者、ウヌが無力さ、その身をもって知るが良い!!



――轟!!!



!!……此の闘気は、師匠もマジって事かな?100%ではないだろうけど、殺意の波動モードである以上は普段の5倍は強いだろうから、気を抜いた
ら一瞬でやられるわ絶対に。



「行くぞ!!」



動きを読んで、あらゆる可能性を考慮すべし!
稼津斗師匠のスタイル的に、一足飛びで間合いを詰めて来た際に使って来る攻撃は、略間違いなく拳打か掌打、何れにしても手での一撃の筈だわ。



飛燕烈風脚!!

「!?」

じゃなくて蹴り技!?……だけどこの技は振りが大きいから、ダッキングで躱せば反撃――



「甘い。」



――ガスゥ!!



「が!?」

と思ってたら、ダッキングで避けた所に踵落とし!?……技のモーションを途中でキャンセルして踵落としに変化させて来たって言うの?……其れは確
かに出来ない事じゃないけど、実戦でやるって相当な事じゃない!?

いや、稼津斗師匠なら出来て当然とも思うけどさ。



「休んでる暇などないぞ?」

「ぐ!!!!」

さらに続く稼津斗師匠の猛攻!!幾ら何でも防ぎきる事なんて出来ないわよ!!!見切れる動きでもないし!!



「おぉりゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!」



豪昇龍拳!!

威力は高いけど、隙が大きいから、其処にカウンターを――



「浅い!!」



――バキバキバキィ!!!



「がはぁぁ!!」

と、途中で竜巻斬空脚に変化するとか……変則的にも程がある――何時もの稼津斗師匠の戦い方とは全然違う……予測が全く立てられないわ…!
師匠相手だから勝てるとは思ってないけど、此れは少しばかりヤバいかも……



「……其れがお前の弱点だレーシャ。」

「はい?」

唐突に何ですか師匠?



「お前は天才タイプで努力も怠らないから、何れは最強の座に上り詰めるだろうが……今のお前には決定的な弱点があるのさ。
 お前は相手の行動から次の攻撃を予測し、其れへの対抗策を何通りも考える事が出来るんだが――それ故に、自分の想定していた事でない事が起
 きた場合にすぐさま次の手を打つ事が出来ない。
 先読みの能力は見事だが、其れを超えた事態が発生した時に平常心を保つ事が出来なけば駄目だ。
 そしてもう一つ――ペース配分にも気を配るべきだな。」

「ペース配分?……って、アレ?」



――ガクン



足に力が入らない……え、何で?
確かに試練は簡単じゃなかったけど、マダマダ行ける筈なのに――如何して!?なんで、行き成り腰砕けになっちゃうの!?



「其れが弱点其の2、ペース配分の稚拙さだ。
 此れに関しては、予選の今までが楽勝だったせいで、体力や気力、魔法力の配分など度外視していたせいもあるんだが、長期戦になった場合には
 途中でスタミナ切れを起こす可能性も充分にあるって訳だ。――要するに、序盤からアクセルを全開にしてたら、ガス欠を起こすって言う事だな。」

「ペース配分……」

言われてみれば、確かに此れまでの試合て、殆ど苦戦してなかったからペース配分度外視して全力でやってたわね……消耗してもインターバルで回
復出来てたし。

でも、此れからの都市本戦は其れだけじゃあ駄目って事ね。



「そう言う事だが――ガス欠状態じゃ幾ら何でもきついだろ?ギブアップするかレーシャ?」

「誰がギブアップするんですか師匠?冗談だとしたら、余りにも笑えねーし、マジだとしたらお母さん直伝のハリセン突っ込みをブチかますところだよ!!
 確かに、きついけど私は絶対に自分からは倒れないし降参もしない!!」

其れに、こんな所で立ち止まってたら、ミウラや番長に勝つ事なんて出来ない!!――だから、まだまだガンガン行きますよ、稼津斗師匠!!



「やっぱりそう来るか……マッタク、本気でネギや小太郎と一緒に修業させたいもんだぜ……何処まで伸びるか分かったもんじゃないからな。
 ヘトヘトのガス欠状態だからこそ見える物も有るからな……己の限界を超えて見せな!!」

「押忍!!」

やってやる!絶対にこの試練を超えてやる!!


『グルルルルルル……!』

『グオォォォォォォォ……!』




何よりも、光子竜と閃光龍も応援してくれてるから、途中でギブアップなんて言う事は有り得ないし、しちゃいけない!!!だから、行くよ稼津斗師匠!



「良いぜ……来な。――ウヌが真の力、見せて見よ!!



ぶっちゃけると、立ってるのも精一杯で、息も荒いんだけど、不思議と身体は重くない――寧ろ、此れを超えた先には新たな世界があるんだと思う!!
其処に至る為にも、勝ち負けは兎も角として、この試練の突破は必須!!……だから、見せてやる、不動の拳を!!夜天の力を!!



――轟!!



限界突破上等!!文字通り、全力全壊でやってやるわ!!――その先にある高みに至る為にね!!











 To Be Continued… 








*登場カード補足