Side:セイン


ふあ~~~っと、何にしても陛下と覇王っ娘のバトルは、身応え十分だったね~~?競技者じゃないアタシも、思わず熱くなちゃった位だから、格闘ファン
からしたら、垂涎の隠れた名勝負だと言っても過言じゃないわアレは。

って言うか稼津兄ちゃんも『歴史に残る名勝負』だって言ってたからね。――だから、アンタも負けない様に頑張んなシャンテ?
アンタの才能は、陛下に勝るとも劣らない部分があるんだからさ?



「その心算だけど、今はちょっと気分じゃない。
 すっごく不本意だけど、気晴らしになるかも知れないから、チャンピオンとお嬢様を案内して来るから、こっちは宜しくねセイン。」

「おいコラ、仮にもアタシは先輩なんだから、せめて敬称なり、頭に『シスター』なり付けろっての……って、聞いてねぇし。」

其れだけ、あの2人のバトルは衝撃的だったって言う事かもしれないけどね。



――バン!!



「「セイン!!」」

「おかえり双子~~。首都への出張は如何だった~~~?」

「別にいつもと同じ。」

「それよりも、陛下とアインハルトお嬢様の試合は?」


其れは今し方終わった所。
互いに全力を出し切ったから、今は医務室だけど、特に怪我はないみたいだし、コーチ陣とリオコロレーシャが付いてるから心配いらないんじゃねーかな?



「そう……其れなら安心だけど…」

「ちなみに勝ったのは!?」



うちの陛下のKO勝利。それこそ、文句のつけようがない位に、見事なKO勝利だったよ。











遊戯王5D's×リリカルなのはViVid  絆紡ぎし夜天の風 Rainbow63
『The color of the sky and the world』









Side:レーシャ


ヴィヴィは、アインとの激戦を制したのは間違いない。
それこそ、目の肥えた玄人格闘ファンが見ても、ヴィヴィの完全勝利だったって言うのは覆しようもない事実なんだけど……



「兎にも角にも、今日のお前の戦いは無茶苦茶だ。
 勝てたから良いってもんじゃねぇぞ?反省点を挙げて行ったら、この説教はいつ終わるか分かったもんじゃねぇんだからな!?覚悟しとけよオイ!!」



絶賛お説教の真っ最中~~。
まぁ、色々な事情が有ったとは言え、今日のヴィヴィの戦い方は、本来のヴィヴィのスタイルとはかけ離れた物だったからね~~~……ノーヴェが説教す
るのも分かる気がするわ。



「実戦投入レベルだった『ダブル』は兎も角としても、ディフェンダーに頼り切った戦法はまるでなっちゃいねぇ!
 アタシがいつ、あんな風に攻撃を受けきってみろなんて教えたか?
 ましてや、格上のハードヒッター相手に『真正面からの弩突き合い』なんて戦法を、アタシが何時教えた?えぇ!?
 あぁ言う戦法は、体格にもパワーにも恵まれた稼津斗の旦那みたいなバリバリのパワーファイターがやる戦法であって、まかり間違ってもお前がやって
 良い事じゃねぇ!!其れ位は分かってんだろ!!」

「うぅ……教えて貰った事を出来なかったのは……その、凄く反省してます。」



一見すれば厳しいモノ言いだけど、其れも此れもヴィヴィを思っての事だから、此れ位の説教は甘んじて受けなさいなヴィヴィ。



「あの、コーチ、お叱りはその辺で……」

「黙れチビ共!お前等も聞いとけ!!
 良いか?アタシが教えてんのは、競技試合で使う為の『技術』だ。そいつをコロナはマイストアーツの土台にするし、リオは自分の春光拳に取り込んでい
 く――此れからはアインハルトもだ。
 で、アタシがヴィヴィオに教えてんのはバリバリの正統派!打撃格闘家の花道の一つ――スピード!センス!反射神経!技術で相手のパワーとタフネ
 スを翻弄する『打たれずに打つ』カウンターヒッター!
 其れがお前の資質に一番合ってるし、お前の夢にも一番近いんだ。」

「……うん。」



私の場合は、スピードで相手を手玉に取るスピードファイターって所だけど、確かに資質に合った戦闘スタイルって言うのは、一番大事な事かも知れない。
其れを分かってるからこそ、ノーヴェは少しきついモノ言いになっちゃってるのかもね。



「習い覚えた事と違う、無茶な戦い方で勝ったとしても、その勝利は明日には繋がらねぇ。
 まだ体も出来てないお前等が、目先の勝利欲しさにそんな事を続けてたら――まぁ、良くても中等部の間に致命的な故障を起こして選手生命終了だ。
 幾ら何でも悔しいだろそんなのは?」

「――はい。」



其れでも、ノーヴェが何も言わずに試合を続行させたのは、ヴィヴィとアインの特別な事情を汲んでの事だから、二度は無いよね?ノーヴェも言ってるし。



「今回みたいな事は、今後は二度と許さねーからな?」

「お、押忍!
 コーチの許可がない限り、二度と今日みたいな戦い方はしません。」

「本当だな?」

「押忍!」

「お前等も良いな?」

「「「押忍!!」」」

って言っても、私はその限りではないんだけどね~~?ノーヴェもそんな事は百も承知だろうけどさ。



「よし、ならこの話は此処でお終い。説教も此処までだ。明日からまた、新生5人チームで練習だな。」

「――うん。」



其れは其れとしても、やっぱりノーヴェって指導者に向いてると思うなぁ?
締めるところは確り締め、叱る時には厳しく、でもその中に優しさを混ぜて叱ってくれて、其れが終わったら後には引き摺らせないで次なるステップに目を
向けさせる……本気で、シューティングアーツの指導者免許取ったらいいと思うよ。



「あの、只今戻りました……」

「「「アインハルトさん。」」」

「お~~、おかえりアイン。」

「に加えて、お茶とお菓子の配達だよ~~~♪」



別行動してたアインが此処で合流。其れと同時に、セインとオットーとディードが、お茶とお菓子の配達。
実を言うと、此れは結構楽しみにしてたんだよね~~~?オットーの淹れる紅茶は美味しいし、意外な事にセインはお菓子作りが得意だったみたいで、特
にクッキーは絶品だからね♪



「セイン、俺用に持って来てくれた?」

「決まってんじゃん?
 ちゃんと持って来たよ、稼津兄ちゃん用に古代ベルカ時代から、王族の間で親しまれてきた最高級のスコッチを。」

「高かったんじゃないのか?」

「大丈夫、必要経費で落とせるから。」



……なんか、セインと稼津斗師匠が妙な事を言ってたみたいだけど、私は何にも聞いてない。うん、マッタク持って何も聞いてないから一切合切無問題!

其れよりも、今は午後のお茶の時間を楽しむ時だよ。



にしても、試合前よりも格段に良い表情をしてるじゃないアイン?なんて言うか『憑き物が落ちた』って言う感じかな?清々しい感じがするわよ。



「そうかも知れません。
 此度のヴィヴィオさんとの模擬戦を経て、私は漸くクラウスの記憶を継いだだけの存在ではない、アインハルト本人に成れたのだと思います。
 ですから――改めて、此れからも宜しくお願いします、レーシャさん。」

「うん、此方こそ、改めて宜しくね♪」



ヴィヴィの無茶が齎した結果だけど、私達の絆は今回の事でより一層深まったのは間違いない――うぅん、新たに紡ぎ直したって言うのが適切かな?
ともあれ、此処からが新生チームナカジマの始動だから、またキッチリとやって行かないとだよね。

それじゃあ、チームの絆が深まったって言う事で、やりますか!!



「うん、良いと思うよ?」

「寧ろグッドタイミングじゃない?」

「私も良いと思うかな?」

「レーシャさんの次の試合での勝利を願う意味でも、良いかもしれませんね。」



そこでそう来るかアイン!!
でも、反対者は居ないから……其れじゃあ行くよ?チームナカジマ……ファイ



「「「「「おぉぉぉぉぉーーーーー!!!」」」」」



決まったね♪
そして此れを決めた以上、私も次の試合は何としてでも勝って、本戦出場を決めないとだわ――ま、絶対に本戦には駒を進める心算だけどね!








――――――








Side:セイン


そっか、お見舞いメンバーが増えるんだ?
此れまでは陛下とレーシャとスバル位だったけど、お見舞いメンバーが増えればその分賑やかになるから、イクスも喜ぶんじゃないのかな?



「ま、来るかどうかは分からないけどね?」

「いや来るでしょ普通に?
 あのお嬢様はベルカの王族の系譜で、聖王、覇王、冥王をライバル視してるけど、嫌ってる訳じゃないから『友達』のお見舞いには来ても良いでしょ?」

「……初めてアンタが先輩シスターに見えた。」



待てコラ、こちとら12人姉妹ではどっちかって言うと姉ポジだったんだよ?此れ位は普通に出来るっての。
てか、イクスの世話を任されてる時点で、結構私は信頼されてるんだよ?



「あぁ~~……カリムとシャッハ直々の御指名だったらしいからね~~~~……セインて本当は凄いんだね。
 んで、時に今日の其れは何?」



この野郎、無理矢理話題そらしやがったな?
まぁ、あんまり調子こいてたら、その時はディープダイバー使って、岩の中に置き去りにしてやる心算だったんだけど、其れは勘弁してやろう。



「此れはお客さんからの頂き物。せめて、香りだけでもイクスに楽しんでもらおうと思ってさ。」

「いいねえ?」

「でしょ♪」

付け加えて言うなら、香りの様な外部からの刺激って言うのは、眠り続けてる人間にはいい刺激になって目を覚ます切欠になる事も有るらしいからな。
一日でも早く、イクスには目覚めて欲しいからね。



さてと、お邪魔するよイクス――って、何じゃありゃ!?
イクスの胸の辺りに形成された茜色の魔力の球体……アレは如何考えても普通じゃない――思わず私もシャンテも身構えたけど、でも、其処に居たのは
とっても小さな女の子だった……其れこそ身長が20cmあるかどうかと言う子供が居た。

まさか、此れって――イクス?

そのつぶやきと同時に、小さな少女がゆっくりと目を開けたのだと言う事を知ったのは、少し後になってからの事だった。














 To Be Continued… 








*登場カード補足