Side:レーシャ
取り敢えず、ヴィヴィの思いは言葉ではアインに伝えたけど、多分それだけじゃあアインには……精々2割伝わってれば良い方って感じでしょうね。
実際に、ヴィヴィの言葉を聞いたアインは、まだ困惑したような表情を浮かべてる訳だし――或は、自分の思いと覇王の記憶が交錯して、如何すれば良い
のか、訳分からなくなっちゃってるのかも知れないけどさ。
「その可能性は大いに有るやろなぁ?
特に、アインハルトみたいな『真面目を絵に描いた様な子』って言うのは、総じて己の定めたルールから抜け出す事が難しい……せやから、エレミアの手
記から、覇王の思いを知った今、ヴィヴィオやレーシャ達と一緒に居て良いのかって、悩んどるんやろうね。」
「だが、その悩みそのものは悪い物じゃない。
悩みに悩んで、そして仲間と本気でぶつかり合って、その先で答えを得る事が出来たら、其れはより仲間との絆を強くしてくれるだろうからな。」
お母さん、お父さん……うん、そうだよね!
今は迷ってるけど、此れまでに私達とアインが紡いだ絆は、決して嘘じゃない!!そして、その絆が有れば、ヴィヴィの思いだってきっとアインに届く筈!
「ラウンド2、スタート!!」
だから頑張れヴィヴィ!
そして、アインもヴィヴィの思いに応える覚悟を決めて――その覚悟が決まった先に、覇王とかは関係ない、本当の絆が紡ぎ直される筈だからね!!
遊戯王5D's×リリカルなのはViVid 絆紡ぎし夜天の風 Rainbow62
『貫く思いを拳に載せて』
Side:アインハルト
ヴィヴィオさん……私なんかの為に、何故其処までするのですか?
私は、貴女が身の危険を冒してまで、向き合う価値のある人間ではないのに――オリヴィエを救う事が出来なかった、覇王の末裔なのに、其れなのに!
どうして、貴女の拳からは、蹴りからは、溢れ出る思いを感じ取れるのでしょうか?
一流の戦士の攻撃には魂が宿ると言う話を聞いた事が有りますが、今のヴィヴィオさんの攻撃は、正にその通り…否が応でも、その思いを感じてしまう。
私に対して伝えたい思いが、分かってしまう……感じてしまう……文字通り痛いほどに!!
「でぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇい!!!」
――ガシィ!!!
一体これまで、ヴィヴィオさんはドレだけの思いを抑えつけていたんだろう?
思えば、2度目の試合以降、私は自分では割り切ったと思っていたけれど、其れでも何処か無意識のうちに、ヴィヴィオさん達と本音で接するのを避けて
居たのかも知れない。
無意識のうちに、分かった顔をして、でも本当は何も分かってなくて……ヴィヴィオさんは、出会ってからずっと笑いかけて来てくれたのに、一生懸命踏み
込んできてくれていたのに、私は只の一度も、本当の意味で心を開いた事は無かった!!
この子の……この子達の笑顔にずっと癒されて、其れに甘えて!!
「はぁ!!!」
――バキィ!!
「てぇぇい!!」
――ドゴォ!!
私は――――――!!
「覇ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
――ガキィ!!!
……手応え有。確実に入った。防御0のヴィヴィオさんの顔面に的確に……此れなら――
「っ!!」
「!?」
な……た、耐えた!?
まさか、攻撃が当たるその瞬間に、重心を後ろに倒して私の拳の威力を逃がし、受けるダメージを最小限に留めたと言うのですか!?……いえ、それだけ
ではなく、僅かな状態反らしは、反撃の一撃に勢いと重さを加算する!!
「やぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
――ドガガァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!
――――――
Side:レーシャ
……此れは、特大のが入ったわね?
まぁ、ヴィヴィが咄嗟のスウェーバックで、ダメージを逃がしたのには驚いたけど、其の後の一撃は相当に重くて強烈な一撃だったんじゃないの此れ!?
攻撃に魔力を全振りした拳に、スウェーバックからの勢いを付加して放たれたカウンターのボディブローは相当に強烈だったことは間違いない上に、その
一撃で吹き飛ばされたアインは、壁に激突……ボディブロー、壁への激突、そして落下のダメージ……普通だったら此れでKOって所だろうね。
ディエチも、タオルを投げようとしてるけど………だけどさ、そろそろ気が付いたんじゃないのアイン?
確かに、物心ついた時には、もうクラウスの記憶はアインの中に有ったんだと思う。其れこそ、楽しい記憶だけじゃなくて、辛い記憶や無念な思いも受け継
いで来たんでしょう……その色々の末に、春先の『襲撃事件』を起こしてたんだろうしね。
でも、貴女が『覇王』であったなら、出会えなかった人達が居るんだよ?
ヴィヴィにも、リオにも、コロナにも――そして私にも、貴女が貴女だったから、覇王じゃなくて『アインハルト・ストラトス』として、覇王流を継いだからこそ出
会う事が出来たんだよ?
「な、アレを喰らって立つかハルにゃん!?」
「あ、呆れた頑丈さと言うか、根性ですわね……!」
「アインハルトさん!!」
「頑張って~~~!!!」
そして、仲間として過ごした日々が有ったから、其処で紡がれた絆が有ったから、今こうしてまた立つ事が出来たんでしょうが!其れを忘れちゃダメだよ!
「――やれます。」
「――良かった、やっと何時ものアインハルトさんだ。
何時も一生懸命で、そして優しい、私達の大好きなアインハルトさんだ。」
うん、そしてアインの目には何時もの……うぅん、今までよりもハッキリとした、強くて綺麗な光が宿ってる。きっと本来のアインの瞳の輝きなんだろうね。
サファイアとアメジストの輝きの異虹彩は、きっと今までで一番綺麗に輝いてると思うわ。
「良い一撃を頂いて目が覚めた気がします。
ですが、今は試合中故に、感謝の思いは拳に載せます―――受けて頂けますか?」
「はい――勿論、全力で!!」
其れを目にした、ヴィヴィのエメラルドとルビーの異虹彩も、今日一番の輝きを放ってるわね……まぁ、やっとこアインが目を覚ました訳だから当然だけど。
けどまぁ、次の攻防が最後になるのは間違いないわね。この攻防では、ヴィヴィも本来の戦い方をするだろうし。
過去の呪縛から本当の意味で目を覚ましたアインが逆転の一撃を決めるか、其れともヴィヴィが最後の最後まで己の意思を貫いてアインを倒すかの二つ
に一つ……だけど、此処まで来たら、勝って見せろヴィヴィ!!
――ざぁ……
「疾っ!!」
――グン!!
「覇王断空!!!」
先に仕掛けたのはアイン!
大きく踏む込んでからの断空で勝負をかけたけど、此処はヴィヴィが『カウンターヒッター』としての能力を全開にして、鮮やかに回避!!
でも、アインも避けられる事は想定して居たみたいね?すぐさま拳を引いて、今度は打ち下ろし……って、此れってまさかの断空の二連撃!?
決まれば間違いなく必殺だけど、ヴィヴィも既にカウンターの一撃が発動してる――!!これは、何方の拳が先に届くか、コンマ1秒の勝負!!
「一閃必中ッ!!エクシードスマッシュ!!!!」
――ドゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!
――その結果を制したのはヴィヴィだった。そして此れで決まったわ今度こそ。
今の一撃は魔力を攻撃に全振りしたなんて物じゃない……自分の残りの魔力の全てを詰め込んで放った感じだった。
そんな一撃が、交差法のカウンターでアインの顎を撃ち抜いた訳だから、脳が強烈に揺れて、脳震盪を起こす間もなく失神確定よ……あ、タオル入った。
「試合終了――ヴィヴィオの勝ちだよ。」
タオルを投げ入れたのは、アインのセコンドのディエチ。
試合の結果は、2ラウンド3分、ヴィヴィのTKO勝ちって所だね……よく頑張ったわね、ヴィヴィ。……まぁ、あとでノーヴェからの説教は確実だけど。(汗)
まぁ、今はアインね。
ヴィヴィもリオもコロナもアインの所に行ってるし……まぁ、非殺傷設定だから死ぬ事は無いんだけど、お~い大丈夫アイン、生きてる~~?
「アインハルトさん!!」
「………?」
良かった、目を覚ました。
大丈夫アイン?状況分かってる?
「私がKOされたと言う事は理解していますよレーシャさん。
――ですが、如何してヴィヴィオさんが泣きそうな顔をなさってるんですか?……貴方は勝者なんです、もっと胸を張って下さい。」
「でも…あの……」
「貴女が悲しい顔をしていると―――私も悲しくなります。
ヴィヴィオさんは強い子です。だから―――笑ってください。」
此れは……予想外だったわ。
まさか、アインがあんな風に笑顔を見せるなんて思わなかった……うぅん、アインがこの笑みを浮かべられたのは、きっとヴィヴィの思いが通じたからね。
「リオさんとコロナさん、そしてレーシャさんも、本当にありがとうございました。」
「何言ってんのよアイン……私達は、仲間でしょ?水臭い事は言いっこなしだよ。」
「……そう、でしたね。」
「アインハルトさん…!!」
って、ちょ泣くなヴィヴィ!!気持ちは分かるけど泣かないで!!
てか、試合に勝って、想いは伝わって、更にアインも笑ってくれたし、褒めてくれたんだから泣く要素は何処にもないでしょ!?
「そ、そうなんだけど……あ、あれ?お、おかしいなぁ?」
「……ごめんなさい……私はチーム最年長失格ですね。――これからは、もっと確りしますから、此れからも貴女達と共に歩む事を許してください。」
「――許すだなんて……勿論ですよアインハルトさん!!」
――ギュ……
んで、ヴィヴィはアインに抱きしめられて……まぁ、此れで丸く収まったって所――
『クラウス、やっと会えました……』
『あぁ、やっと会えた……ずっと探していたよオリヴィエ。』
!?……あ、あれ?一瞬ヴィヴィとアインの背後に、オリヴィエとクラウスの姿が見えたような気が……否、此れは私の見間違いじゃないわ。
そっか、クラウスとオリヴィエも漸く分かり合えたんだ。ヴィヴィとアインが、本当の意味での絆を紡いだことによってね。
随分な遠回りだけど、若しかしたら、その遠回りを終わらせて、覇王の記憶の継承を止める為に、ヴィヴィとアインは出会ったのかもね……運命によって。
でも、そうだとしても、其れは運命をも超えた。
だって、此の一戦で、チームナカジマは本当の意味で一つになった訳だし――何よりも、此処から、私達の本当の意味での『此れから』が始まるからね!
To Be Continued… 
*登場カード補足
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