Side:レーシャ


にしても、今のヴィヴィのカウンターは、文句のつけようがない位に完璧に決まったわね?
特に、アインみたいな強打者であればある程、カウンターで叩き込むダメージは大きくなるし、完全に顎を捉えていたから、相当に効いたのは間違いない。



「立ったけど……其れだけね?」

「うん、軽く突っついただけで倒れるやろね。」

「大丈夫です!」

「アインハルトさんは、こんな時でも強いですから!」

「二人とも陛下とアインハルトのどっちの応援なのさ~~~?」



でも、コロナもリオも、ヴィヴィとアインの両方を応援してる。どちらも大切なチームメイトだから……て言うか、其れ位は察した方が良いと思うよシャンテ?
何て言うか、其れを察してないのって、多分貴女だけだからね?



「……マジで?」

「大マジだっての……なんだか、後輩シスターの事が途端に不安になって来たよアタシ……」

「……まぁ、頑張れセイン。」

「うぃ~っす、頑張るよ稼津兄ちゃん。」

「なんか、理不尽にディスられてるような気がすんだけど此れ……」



そりゃ、普段の行いのせいだと思うよ?
でもまぁ、リオとコロナの声援を受けて、アインが持ち直したのは間違いないみたいね?ダメージは残ってるけど、瞳に闘志が戻って来たからね……


とは言え、今のアインが手負いの虎なのは間違いない。
その手負いの虎を相手に、獅子と化したヴィヴィは、此処から一体如何攻めて、そして己の思いを届かせるのか……此れは、目が離せないわね絶対に!











遊戯王5D's×リリカルなのはViVid  絆紡ぎし夜天の風 Rainbow61
『This is gonna be a match to remember』









でも、幾らダウン復帰したとは言え、顎に完璧な一発を喰らったせいで、今のアインには『足を使った』攻撃が出来ないから、必然的に自らは動かずに足場
を固めて、そして相手の攻撃に対処しながらカウンターを叩き込むって言う戦法を取らざるを得ない。

実際に、ダウン復帰後の攻防は、終始ヴィヴィが攻め続けて、アインは其れを捌くので手一杯になってるからね。



「う……あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」



――ドゴォォォォォォォォォォォォォン!!!



そうであっても、ヴィヴィのボディアッパーに合わせて、叩き付け式のハンマーパンチをカウンターで叩き込んだのは見事としか言いようがないわね。
其れこそ、並の選手だったら、この一撃でKOされたって不思議じゃない所だけど―――



「やります。」



「打撃も衝突も完全に防いだ……ヴィヴィの防御は綺麗よね。」

「「はい♪」」



ヴィクターの言うように、拳打のダメージも、ダウン時の衝突も、セイクリッドディフェンダーで完璧に防いで、結果として被ダメージは0。
アインの捌きとカウンターも見事だったけど、ヴィヴィの防御はその上を行っていたって言う事ね――尤も、初披露のアクセルスマッシュWを2度目で見切っ
たアインの力は大したモノと言うより他はないでしょうけどね。



でも、其れだけに、そろそろアインはヴィヴィがいつもとは違う事に気が付いたんじゃないのかな?
何時ものヴィヴィだったら、自分の技が破られても、それを『凄い』って言っちゃうところだけど、今日のヴィヴィはそうじゃなく、常に戦う姿勢な訳だからね。


だからこそ、アインは気付いたんじゃないかな?ヴィヴィオの中に明確な『怒り』が潜んでいるって言う事に。
勿論怒りだけじゃなくて、もっといろんな感情が混ざってるんだけど、闘志と尤も結びつきやすい怒りの感情が、戦う中で表に出て来てるみたいだしね。



――ヴィヴィオさんは怒ってる?きっと私が怒らせるような事をしたんだ……



ってな事を多分思ってるんじゃないかな?
其れは正解でもあり間違いなんだけど、多分気付かないわね今のアインじゃ。

メンタル面で大きな差があるにもかかわらず、更には攻撃を完全に防ぐディフェンダーのせいでアインは決定打をヴィヴィに撃つ事が出来ない上に、さっき
の顎への一撃で足にも力が入らないっていう、絶対的な不利な状況で思考も纏まらないだろうからね。

このままだと、ヴィヴィのラッシュで削られて終わりだよアイン?――其れこそ、ヴィヴィの思いも何も知る事が出来ないままに……

だから、もう少し頑張れっての!!



――轟!

――ガクリ……

――ブオォ!!

――ドゴォォォォォオォォ!!!




「!?」


っと、ヴィヴィが放った大振りの一撃に対して、アインの足の力が抜けて期せずしてそれを回避、でもってカウンターのボディブローが炸裂した……けど、ア
インはきっと今の一撃で気付いたでしょうね、『ヴィヴィの極端な強化』に。



「あ、そう言う事なんやね?」

「そうね。」

「えっと、如何言う事?」



ジークとヴィクターは流石に気付いたみたいね。
えっとね、ヴィヴィって決して魔力量が多い訳じゃなくて、限られた魔力量を、攻撃と防御の瞬間に完全に集中させてる訳なの。

で、その魔力を防御に集中させたのがディフェンダーで、攻撃する拳に集中するのがアクセルスマッシュ。此処までは、理解できたシャンテ?



「まぁ、魔力運用の巧い子は、此れを見事に使うよね?」

「だけど今日のヴィヴィは、攻撃の時も防御の時も、夫々に魔力を100%全振りしてるのよ。」

「いぃ!?ってちょっと待って、防御ゼロの所に打撃を喰らうって……!」

「水着姿で、お腹を棘付きハンマーで殴られるような感じ?」



良い例えだねルールー?
若しくは、青眼の白龍3体の攻撃をダイレクトアタックで喰らう感じかな?



「いや~~~!!や~め~て~~~!!その例えどっちもマジで怖すぎるから!!
 って言うか、そんな攻撃喰らって、如何して陛下は生きてるのさ!!アインハルトの豪打を、防御0で喰らったら、普通は内臓破裂確定じゃないの!?」



普通ならね。
だけど一応バリアジャケットが有るから、衝撃は緩和されるし、今日のヴィヴィは弩デカいダメージ程度じゃ、倒れない強さが有るからね。


まぁ、気付いた手前、アインはヴィヴィの事を考えてノーヴェを見やるけど、残念ながら今日のノーヴェは決着が付くまで試合を止める心算はないわよ?
其れに――




「試合中ですよ。余所見はダメです。」

「如何して――」



ヴィヴィは折れないからね。



「其処までして、私に勝ちたい理由がありますか?」

「ありますよ――両手いっぱい、胸いっぱいに。
 だけど、其れは言葉じゃ届かない事だから……だからぶつけるんです、『今の私を』!『私達』の『今』を!!」

「ヴィヴィオさんの伝えたい事……すみません、まだ分からないんです。
 だけど、その戦い方は危険ですから……私が止めます――――そして、止めた上でお話しを聞かせて頂きます!!」



うんまぁ、その選択は間違いじゃないわアイン。――だけどね、ヴィヴィがそんな戦い方を選んだのは、アインが原因なんだよ?
この間の、エレミアの手記を読んだ後に、静かに、だけど明確に示されたアインの『拒絶』の意思が、ヴィヴィにこんな無茶な戦い方を選ばせたんだよ?
それを自覚して理解しない限り、今のヴィヴィをアインが止める事なんて、出来ないわよ!!



「覇ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

「!!!」



そして試合再開!

此れまで通り、攻めるヴィヴィと守るアインだけど、さっきと全く同じ攻防って言う展開にはならないでしょうね?
アインはヴィヴィの防御の弱点が分かった訳だから、ムザムザダメージにならない無駄打ちはしない――代わりに、ヴィヴィの攻撃と同時に攻撃する、か。

確かに其れなら、ヴィヴィはディフェンダーが使えないし、防御0の所に攻撃を喰らう事になるけど、逆にアインだって攻撃に全振りしたヴィヴィの攻撃を喰
らう事になる訳で、最後に物を言うのは身体の頑丈さと、其れをも上回る思いの強さって言うところかな?


現実に、この状態になってから、既にヴィヴィはKOされてもオカシクない位のダメージを受けてる筈なのに、今もってアインと打ち合ってるからね。



「精神が肉体を凌駕したって言うやつなのかも知れないな、此れは……」

「多分正解だぜ遊星。
 身体がKOレベルのダメージを受けてても、脳が其れを『痛い』と感じなければ如何って事はないからな……ったく、気合い入れ過ぎだろヴィヴィオは。」



其れだけ、此の一戦はヴィヴィにとって大切なモノなんだよ、お父さん、稼津斗師匠。



「ホンマ、ヴィヴィオはなのはちゃんの娘やなぁ?もしもなのはちゃんが同じ立場に立たされたら、間違いなく同じ事をするやろうからね?
 血は繋がってなくとも、想いと魂って言うモノは受け継がれて言うもんなんやろな。」

「そーですよお母さん?
 私だって、お父さんとお母さんとは血は繋がってないけど、お父さんとお母さんの両方の魂と意思を受け継いで行く心算だからね♪」

「そか……其れは、私としても嬉しい事やでレーシャ?――ホンマ、レーシャが私等の娘で良かったわ。」



改めて口にすると、少し小っ恥ずかしいんだけどね。
って、そうだ試合は!?




――ドガスゥゥゥゥ!!!



あ~~~……ちょっと目を離した隙に、アインの良いのがヴィヴィのボディに炸裂したわね~~?此れには、流石のヴィヴィもダウン判定は確実だわ……



「「ヴィヴィオ!!」」

「ダウン!!」





「相討ち戦法かよ?ったく、此れだから魔力と身体に恵まれてる奴は!!」

「そうでもないわ――被弾は覚悟していたでしょうけど、最後のアレは……」

「アレは古流武術の『一拍子』だな。
 攻防を一動作で行う高等技術だが、ソイツをあの若さで使うとは、正直って末恐ろしい物が有るぜ……」



相当なテクニックだったみたいね。




「ヴィヴィオさん………」

「ま、まだKOコール入って居ませんから!!」



だけど、其れを喰らっても尚ヴィヴィはKOされてない。
カウント8でギリギリ立って、ファイティングポーズをとって続行の意思を示す――此れは相当に、心が強いのよね。



「1ラウンド終了。インターバル60秒だ。」



んで、此処で1ラウンド終了のコールと共に、1分間のインターバルに。
ヴィヴィからしたら、恵みのインターバルって言っても過言じゃないでしょうね――さっきの攻防で、相当に消耗した筈だからね。



「ヴィヴィオさん、もうこれ以上は!!」

「……次ラウンドで、勝ちますから……私が!」



でも、そのインターバルですら、ヴィヴィにとっては、己の思いをぶつける時間でしかないんでしょうね。



「私が、オリヴィエのクローンだって言う事は、前にも言いましたよね?過去の記憶はないけれど、その体質は受け継いでいた。
 ――ゆりかごの『鍵』として生み出されたのが私で、大好きだった優しい人の事ですら、私はこの手で殺しかけました。
 この黒いバリアジャケットは、その時の服装――心も体も自分の思うようにならなくて、どうして良いか分からなくなって。
 だけど、その時に助けてくれた人が居たんです!」



ゆりかごでの戦いか……あの時は、私も危うくお父さんを殺しちゃうところだったんだよね。
だけど、お父さんとなのはさんが、私とヴィヴィを救ってくれた!――私の痛みも涙も運命でさえも受け止めてくれたんだ!!……だから――!!



「私がその人から教わったのは、ぶつかり合わないと伝わらない事が有るって言う事――そして、撃ち抜く力は思いを届ける為にあるんだって言う事!」

「私は……ヴィヴィオさんに、そんな風に思って頂く人間では……」

「そんなの知りません!」



私達の思いも、貴女に託すわヴィヴィ!



「私達にとって、アインハルトさんは大好きで大切な先輩ですから!
 だから、アインハルトさんを倒せるくらいに強い子なんだって言う事を証明して、そしてもっともっと私達に頼って貰うんです!!」



だから、その思いは必ず届けてよ?

その思いが届いて、そして通じた先にこそ、きっと新たな世界が待っているのかも知れないからね。















 To Be Continued… 








*登場カード補足