Side:アインハルト
今日は、ヴィヴィオさんとの試合の日。
連絡を貰った時には驚きましたが、同じチームとして日々トレーニングを積んでいるのならば、偶にはスパーリングをすると言うのも悪くはないでしょう…な
によりも、此のスパーリングを持ってして、私はヴィヴィオさん達の下を離れる事が出来るかも知れないのですから。
と、そう思っていたのですが――
「ほらほら此れ、昔のヴィヴィオっすよ~~?」
「あはは、懐かしいなー?
今でこそ、歳の割に確りしてるけど、あの頃のヴィヴィオって、本当になのはさんにベッタリだったよね?何が有っても絶対に離れないって言う感じで。」
「そうだね……でも、それだけになのはさんと一緒の写真は、何て言うか凄く安心してる感じがするよ。」
よもや訪れて来たナカジマ姉妹の方々が、昔のヴィヴィオさんの写真を見せてくれるとは思いませんでした。
今でこそ、歳の割に凛としているヴィヴィオさんですが、幼い頃は本当にお母様にべったりの甘えん坊で、そして少しばかり泣き虫だったようですね?
此の写真の中にも、何枚か涙を浮かべて居る物が見受けられますから。
「だね~~……あの頃のヴィヴィオは本当に泣き虫で寂しがり屋だったよ。
まあ、昔からレーシャは今みたいに確りした子だったから、なのはさんが居ないその時には、レーシャがヴィヴィオをなだめてたりしたんだけどね。」
「そうなのですか…」
どうしても揺らいでしまう。
私は、去るべきなのか、それとも共に前を進むべきなのか――貴女との試合の果てに、その答えは得られるのでしょうか?……ヴィヴィオさん……
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『聖王vs覇王~黒き聖王出陣~』
Side:レーシャ
そんな訳で、ヴィヴィとアインの試合当日。
此処に集まってるのはチームナカジマの面々と、ノーヴェと稼津斗師匠、お父さんとお母さん、チャンピオンのジークと、雷帝ことヴィクター、そんでもってル
ールーとセインと、魔女っ娘フォビア、あと序にシャンテ。
既にヴィヴィは会場入りして、試合前の調整と言った感じでストレッチをしてる――んだけど、なんだかいつもと様子が違うわね?
アインとの試合に気合を入れたのは当然としても、其れとは違う力を感じる…………成程、ヴィヴィはヴィヴィで、ちゃんと此の試合に対する覚悟と意思を
決めて来たんだね?……本気で、大したモンだわヴィヴィ。
となると、大体8割は成功したと見て間違いないでしょうね。
再び頑なになってしまったアインの心をほぐす事が出来なければ大失敗なんだけど、ヴィヴィならきっとやってくれる筈……ヴィヴィもその心算だろうから。
「遅れてしまってすみません。アインハルト・ストラトス、参りました。」
そんでもってアイン到着!――精神面は兎も角として、肉体面でのコンディションはバッチリみたいね。
だけど、アインもきっとヴィヴィの雰囲気が違う事には気付いてるんじゃないかな?
少なくとも今日のヴィヴィは、只のスパーリングをする訳じゃなくて、アインと本気で戦いに来てる訳だからね。
試合形式はフル装備での、2ラウンド一本勝負で、ライフ計測は無しで、決着はKOかギブアップのみかって言う、文字通りのガチンコ勝負。
――アインと、セコンドのディエチは『軽い練習試合或はスパーリング』位に思ってたんだろうけど、今日のヴィヴィは完全な試合モードだから、油断してると
一撃で意識飛ばされるわよアイン。
ま、直ぐに意識を切り替えたのは大したモノだけど……お父さん、お母さん、今のアインじゃヴィヴィには勝てないよね?
「あぁ、恐らくな。
経験と実力はアインハルトの方が上だが、今日のアインハルトは精神面でのコンディションが良くない――其れでは己の力を完全に引き出す事は出来な
いし、普段はしないようなミスだってしてしまう可能性もある。」
「対してヴィヴィオは、アインハルトに対して思う所は有るんやろうけど、今のところ其れは表に出さずに試合の準備をしとる。
それに、なのはちゃんから聞いた話やと、昨日は非番のなのはちゃんと一日中『キャッチボール』しとったみたいやから、色々と強化されとるやろしね?」
流石、お父さんとお母さんも良く見てるって言うか、相変わらずの眼力で。
っと、如何やらそろそろ始まるみたいね。
「それじゃあ、二人ともジャケット装備。」
「武装形態――」
「セットアップ!!」
――ジャキィィィィィィン!!!
「!?ヴィヴィオのアレは……まさか……」
「ヴィヴィ、其れは……そのバリアジャケットは!」
お父さんも気付くよねやっぱり。――ヴィヴィのバリアジャケットが黒い……!
「ヴィヴィオさん、ジャケットの色が……?」
「あ、此れは昔使ってた色なんです。」
まぁ、間違って居ないけど、其れは……その色は4年前のあの時の、私共々レリックの力で暴走してしまった時の、『聖王ヴィヴィオ』の時の色じゃない!
アレは、ヴィヴィにとっては辛い記憶の筈なのに、敢えてそのジャケットを纏ったって言う事は、そうまでしてでもアインに伝えたいって言うヴィヴィの並々な
らない覚悟の現れって言う事なんでしょうね……
でも、そうだとすると、今日のヴィヴィの戦闘力は普段の倍じゃ利かないくらいかもしれないわ。
「二人とも、開始位置に。――ラウンド1……ファイト!!!」
そして、遂に始まった!
先に動いたのはヴィヴィ!開始と同時にジェットステップで斬り込んで行ったわね?――いつも鋭いけど、今日はまた格別の鋭さが有るわ此れ。
でも、アインも此れは『見えていた』から、的確にガードした――けど、初撃の勢いを殺さずに、其のまま左の打ち下ろし式ナックル!
――ドゴォ!!!
「!!!」
で、上段からの攻撃をガードする為に無防備になったボディに、強烈な前蹴り一閃!稼津斗師匠、あの前蹴りは空手主体の師匠から見て如何でしょう?
「100点満点の前蹴りだな。
打ち下ろし式ナックルを打つ際に、踏ん張ると同時に蹴り足に溜めを作り、ナックルをガードさせると同時に溜めた力を解き放つ。
速さと鋭さ、放つタイミングのどれをとっても文句のつけようがないさ――尤も、アインハルトも打たれ強さには定評があるからダメージは極小だがな。」
まぁね。……だけど今の一発で、アインもヴィヴィが『完全に試合のコンディションに仕上がってる』って言う事は実感したでしょうね。
牽制用に出す細かい打撃の鋭さも、何時もとは比べ物にならないし、回避行動だって最小限の動きで行ってる――で、回避の後にはまた細かい打撃の猛
ラッシュと来てるから、アインは中々攻勢に出る事が出来ないみたいだわ。
でも、アインだってヴィヴィのスタイルの事は知ってるから、どうすれば良いかは即分かるわよね?
ヴィヴィの真髄はカウンターだから、牽制用の打撃は其れほど威力は高くない――なら被弾覚悟で、技術を生かせる距離を殺せばって、そう考える筈。
実際に、ガードの状態を保ちながら、ヴィヴィとの距離を詰めて行ってるしね。
「強引?」
「せやけど、アレで正解や。
ヴィヴィちゃんの打撃力やと、ハルにゃんみたいに頑丈な子にはクリーンヒットをさせるしかダメージを入れる手段がない。
でも、突き離そうと強打を打てば隙が出来る――そして、一線級のインファイターは、その隙を逃さへん。」
「流石はジーク、良く見てるね。
だけど、強打の後の隙をガードしてくれる『盾』が存在する場合には、その限りじゃないんじゃない?」
――ガキィィィィィィィィン!!
あんな風にさ?
「アレって確か『セイクリッド・ディフェンダー』やったっけ?
ミウラちゃんとの試合の時は、腕にしか発動出来なかった筈やけど……まさか、この短期間の間に『身体の何処にでも』展開できるようになったん!?」
多分ね。
ヴィヴィは、兎に角魔力運用が上手だから、コツさえつかめばセイクリッド・ディフェンダーを身体の何処ででも発動できるようにするなんて言う事は造作も
ない事なんだよ……まぁ、その真価を引き出すには凄まじいまでの反応速度って言うモノが必要になる訳なんだけどさ。
でも、この盾が有れば、ヴィヴィは思い切って強打を打つ事が出来るし、ある意味でどんな攻撃にもカウンターを仕掛ける事が出来るように成る訳で……
「破ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ………アクセルスマッシュW!!!」
――ゴス!バキィィィィィィィィ!!!
見事に決まったわね、ヴィヴィの新技『アクセルスマッシュW』が!
略同時に繰り出される左のショートアッパーと、右の打ち抜き式アッパーカットの二連撃を初見で躱す事は先ず無理――しかも二撃目のアッパーカットは、
完全に顎を撃ち抜いたから、幾らアインが頑丈とは言え可成りのダメージが入ったはずよ。
「アインハルトさんと私の対戦成績は、3戦2敗1引き分け。多分今でも、10回戦ったらそのうち9回はアインハルトさんが勝つと思います。
だけど、4戦目の今日は私が勝ちます。――アインハルトさんに、今の私達の事を見て欲しいから。」
それが、ヴィヴィの覚悟と思いって事ね?
其れを聞いて、アインは如何応えるのかしら………
「5…6…!」
「!!……や、やれます!!」
まぁ、其れは私には分からない事だけど、ダウンカウント6でアインは復帰して、試合再開。
でも、ダメージを受けたアインと、ノーダメージのヴィヴィじゃ、又してもヴィヴィが攻勢に成るのは当然だよね?……再度的確なラッシュを展開してるし。
――ギュル!
そして此処で上段廻打!
底から予想できる攻撃は後ろ回し蹴りか、打ち下ろし式の回転踵落としだけど――
――クンッ……メキィ!!
蹴り下ろした足の起動を途中で変えてのミドルキック!!!見事な『可変蹴り』だわヴィヴィ!
そして、其処から更にヴィヴィのラッシュは続いてるんだけど、アインからしたら相当に嫌な相手だろうねヴィヴィは?
自分の攻撃はディフェンダーで完全にシャットアウトされ、逆に自分の攻撃は見切られてしまっている上に、カウンターで特大の一撃を喰らう可能性がある
って言うのは、やりにくい事この上ないと思うわ。
だけど、それでも――
「覇王……断空拳!!」
必殺の断空拳を放ったのは見事だわ。
けど、それも今のヴィヴィには通じず、紙一重で躱されて……
「せやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
――バッキィィィィィィィィィィ!!!
一撃必殺のカウンターが一閃!!
「垂直に堕ちた……完全に顎を捉えたわね、今の一撃は。」
「ホンマやね――ヴィヴィちゃん、100点満点のカウンターやで!」
一般的にはダメージが2倍になるとも言われているカウンターを、完全に顎に入れられたら、幾らアインハルトが頑丈とは言ってもダウンは免れないし、仮
にダウン復帰したところで足に来るのは間違いない。
「すっげ~~~!!……でも、陛下ってあんなに強かったっけか?」
「陛下は強いよシャンテ。
だけど、陛下は普段はその力を完全に発揮する事はあんまりないんだ――今日みたいな『特別な一戦』の時にこそ、陛下の真髄が解き放たれる訳さ。」
「!?」
「ん?どしたの?」
「は、初めてアンタが先輩に見えたよセイン。」
「待てコラ、其れは暗に普段のアタシは先輩シスターには見えねぇって事かい!!」
「うん。」
「ちったぁ否定する素振り位見せろや!ったく、本当に可愛くね―後輩なんだから!!こう見えても、アタシはシャッハやカリムから信頼されてんだからなーー!」
で、セインの言う通りヴィヴィは強いよ?
それに今日のヴィヴィは気合が入ってるから――『アインハルトさんとちゃんとお話しするんだ』ってね!
「其れでこの強さ?」
「思いの力は、実力差を埋めるんだよセイン?」
「成程。そう言えば、何時だったか稼津兄ちゃんもそんな事言ってたな。」
だから、頑張れヴィヴィ。
貴女の思いを、必ずアインに届かせてあげて!!――今のヴィヴィだったら、きっとその思いをアインに伝える事は出来るだろうと思うからね。
――全力全壊、思い切りやっちゃえヴィヴィ!!
貴女なら出来る!――って言うか、アインの事を解きほぐす事が出来るのは、貴女以外には存在して居ないだろうからね!!
To Be Continued… 
*登場カード補足
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