Side:ヴィヴィオ


アインハルトさんは嘘が下手だから、表面をどれだけ取り繕っても、私には分かってしまった――明確な拒絶が。
だけど、其れを其のままにする心算は無いけどね……レーシャも、私が何とかするだろうと思って、其れに関しては何も言ってこなかったからね。

普通なら、何か言ってくれてもって思うんだろうけど、何て言うのか、言わずとも分かるって言うのかな?レーシャが『アインの事は任せるよヴィヴィ』って言
ってくれたような気がしたからね……此れが信頼って言うやつなのかな?

だけど、取り敢えず今は、ゆっくり休みたいって言うのが本音だよ~~~。
無限図書探索は分かってた事だけど、予想外の襲撃に対処した事で、予定よりも体力使っちゃったのかな?……はぁ、もっとスタミナ面も鍛えないとだね。

「ただいま~~~。」

兎に角ゆっくり休んで、体力を回復して――



「おかえりヴィヴィオ~~~!」

「わわ、ママ!?」

ちょ、行き成り如何したの!?って言うか、帰ってくるの早すぎない!?



「だって、今日はお仕事が早く終わっちゃったんだもん。ヴィヴィオが遅いから、ママ寂しかったー!」

「って、そう言われましても……」

此れは、このテンションは――若しかして、ううん、若しかしなくても、今日のママは『あのモード』の日なのかも知れない。って言うか絶対にそうだよ此れ。

でも、ある意味で良いタイミングって言えるかな?今日はなんだか疲れたし、偶にはママに思いっきり甘えちゃっても、多分罰は当たらないと思うからね。










遊戯王5D's×リリカルなのはViVid  絆紡ぎし夜天の風 Rainbow59
『Stufen zur Zukunft』









さて、ママがどうなってるのかと言うと、今日のママはとてもテンションが高いって言う感じかな?
勿論、何時も私の事は大事にしてくれてるし、優しんだけど、時としてママは今日みたいに、物凄くテンションが高い時があるんだよ――名付けて『ママ力
全開モード』(命名私)って所かな。

私もママの事は大好きだから、此れは此れでいいんだけど、流石にお姫様抱っこは、少しばかり恥ずかしいかな?



「それと、折角だから晩御飯も張り切っちゃった♪」

「と言うと?」

「今日の晩御飯は、クリームシチューとミートパイ、其れからポテトとエリンギのマヨネーズチーズ焼きで~す。デザートはフルーツババロアね?」

「それは、何とも抗い難い大好きメニュー!」

ママの料理は何でもおいしいけど、クリームシチューとミートパイは絶品だからね。
其れこそ、この2つに関しては不動司令が『その絶品レシピを教えて欲しい』って言ったくらいだからね……流石は、ママだよ。



「お褒めに預かり、光栄の極みかな?
 それで、ご飯は既にできてるけど、先にご飯にする?其れともお風呂にする?」

「ご飯でお願いします!
 簡単にお茶はして来たけど、無限書庫で色々あって、流石に疲れちゃったし、お腹もペコペコなんです~~~!」

「ふふ、了解。
 其れじゃあ準備しちゃうから、手を洗って着替えて来なさいな。」



うん。



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・・・・・・・・・・・・

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・・・



と言う訳で、ディナータイム。
今更ながらに思うんだけど、ママは料理の腕だけじゃなくて、お部屋のコーディネートセンスも抜群に素晴らしいよね?食卓の調度品なんかは、全部ママ
が選んで揃えたらしいしからね?其れこそ椅子からテーブルに至るまで。

若しかしたら、此れも桃子お祖母ちゃんから仕込まれた事なのかも知れないけどね。

まぁ、其れは其れとして、何時もの事だけど、晩御飯の時って言うのは、ママとの会話が一番弾む時――今日一日に会った事を全部話す事が出来るし、マ
マも其れをちゃんと全部聞いてくれるから。



「無限書庫でそんな事が有ったんだ……大変だったね?
 でも、其れを何とか出来たなんてすごいね?はやてちゃんと遊星さんが居たとは言え、皆で其れを如何にか出来たって言うのは凄いと思うなママは。」

「まぁ、稼津斗師匠も居ましたから、何とかできない筈がないと言いますか……」

「確かに、あの人が出張って本気を出したら大概の事は何とかなるかも……って言うか、なっちゃうからね。」



不動司令も『もうエラッタする気も起きんで、このチートバグは』って、匙投げて永久禁止カードに指定してますので。(汗)
でも、そのチートバグな能力を『絆が生み出した、次元を超えた力の結晶だ』で済ます不動博士も大概だと思うんだけどね……

と、そう言えば明日はお仕事お休みだったよねママ?



「明日は非番だけど、其れが如何かしたの?」

「うん、ちょっとトレーニングに付き合ってほしいんだけど、良いかな?」

「勿論いいよ?誰かと試合でもするの?」

「うん、アインハルトさんとちょっとね。」

ママは、こう言う頼みを断る事は先ず無い。

多分、私が何をしようとしてるのは気付いてると思うんだけど、其れを深く詮索する事はしないし、何時だって私のやろうとしてる事を応援してくれる――其
れが嬉しくて、だからこそママから教わった事は、ちゃんと実践しようと思う訳で。

「ねぇママ、相手が誰であろうと、自分の思いを思いきりぶつければ届く――それで良いんだよね?」

「うん、其れでいいんだよヴィヴィオ。
 だけど、一番大事なのは自分の思いをぶつけるだけじゃなくて、相手の思いもすべて受け止める事だよ?――自分の気持ちだけをぶつけてしまったら、
 其れは一方的な思いの押し付けになっちゃうからね。」



うん、分かってる。
ママから教わったのは、大切な人とは常に同じ目線で話す事――痛みも悲しみも、ちゃんと分け合えるようにって言う事だからね。



「分かってるなら良し。
 でも、其れを分かった上でって言う事なら、明日のトレーニングは私もちょっと本気でやった方が良いのかな?」

「押忍、本気でお願いします!!」

寧ろ、アインハルトさんとやり合うなら、其れ位のハードトレーニングは必須だよ――前とは違って、今度の試合は絶対に負ける事は出来ないんだから!








――――――








Side:レーシャ


そう、絶対負けられないのよヴィヴィ!!……って、何言ってるんだろ私?
何となくヴィヴィから『絶対負けない』オーラが送信されてきたような………うん、余りにも電波な思考だから、これ以上は考えない方が良いかもしれない。

でもまぁ其れは其れとして、今頃ヴィヴィはなのはさんにトレーニング相手のお願いをしてるんだろうなぁ……ディフェンスの訓練をする場合、なのはさんは
最高の相手だからね。

逆に、オフェンスの訓練をする場合には、お父さんが最高の相手なんだけどね。モンスター5体並べても突破出来ない防御力は伊達じゃないし。

ま、今度の試合ではヴィヴィがやってくれる筈だから、其処は心配ないんだけどね。



だから、私の目下の悩みは―――

「これかな?いや、こっちの方が良いかな?此れは強いけど、かかし先生を外してまでデッキに組み込む事は……サイクロンは3積みすべきか否か………
 ジャンクロンの効果を生かすべく、もっとレベル2以下のモンスターは増やした方が良いのかな?でも、そうなるとフォトンの下級が削られるし……」

我がデッキの調整です!!

お父さんにも『大分いい感じに仕上がってる』って太鼓判を押して貰ったけど、だけど此のデッキには、マダマダ伸びしろがあると思うんだよね?
何よりも、秋にはデュエルの全国大会も行われるから、今の内にデッキを盤石な状態にしておくのは当然だもん。



「確かに、己の剣であるデッキを、常に盤石な状態にしておくと言うのは、デュエリストとして一番大事な事だな。」

「お父さん――まぁ、これはお父さんに教わった事だけどね。」

常に己のデッキと向き合い、そしてデッキと共に精進研磨する事で、デュエリストとデッキは何処までも強くなれる!そうだよね、お父さん?



「あぁ、その通りだ。
 そして、デッキの持つ無限の可能性を、ドレだけ引き出す事が出来るのかもデュエリストの腕の見せ所だな。真のデュエリストならば、デッキの可能性の
 全てを開拓してやらねばだからな。」

「せやな、流石に全てって言うんは無理があるかも知れへんけど、今の自分が思いつく最上を再現するのは大事な事やで?
 此れは、デュエルだけやのうて、ありとあらゆる事に言える事かも知れへんけどね。」



お母さん……確かにそうかもね。
一度に全てをって言うのは無理かも知れないけど、どの時々で自分の思いつく最上をやり遂げるって言う事は大事だからね……多分、ヴィヴィもそれをや
ろうとしてるんだよね――アインの事を放っておくことは出来ないから。

「お父さん、お母さん……人と人って、分かり合うのって難しいよね?」

「ん?なんやの突然?
 ……まぁ、友情やら何やら言ったところで、人と人は結局赤の他人である事は否定できへんからね……せやけど、だからこそ分かり合えるんと違うん?
 自分とは違う考え、相手の主張、それらを自分の中に取り込んで、そんで自分なりに理解して相手に伝えて、伝わらなかったらトコトン向き合って……き
 っとその先に、ホンマに分かり合えるって言う道があるんやと思うで?」

「思いだけでも、力だけでも、相手に何かを伝える事は出来ない。
 思いと力が一つになり、其れを伝えたい相手への思いが、最大級に膨れ上がったその時に、己の思いを相手に届ける事が出来るのかも知れないな。」



やっぱりそうなんだよね。
相手に思いを伝えたいなら、先ずは全力でぶつかってみる事だからね――其れを踏まえると、多分ヴィヴィは大丈夫な筈……てか、大丈夫一択だわ。





頑張れヴィヴィ。
エレミアの手記を読んで、今再び頑なになったであろうアインの心を解きほぐせるのは、貴女しか居ないんだから、そっちは全部を任せるわよ。

誰が欠けたって『チーム・ナカジマ』は存続できないんだからね――!








――――――








――翌日:区立中央スポーツセンター


No Side



アインハルトとの試合を翌日に控えたヴィヴィオは、なのはと共にこのスポーツセンターに足を運んでいた。
目的は、言わずもがな翌日の試合に向けての特訓だ。


「さてと、其れじゃあ始めよっか?」

「レイジングハート、お願いね?」

『All right.Training zone Standby.』



――ギュウン!




ヴィヴィオの問いになのはが応え、そしてレイジングハートがトレーニングゾーンを構築し、あっという間に訓練場の完成だ。
そして、其れだけではなく、なのははリミッターを解除した状態の『イクシードモード』でデバイスを起動!!――本気で、やる心算であるらしい。


「あれ?ヴィヴィオは変身無し?」

「うん、最初はこっちで。
 練習になれて来たら、大人モードでもお願いします!」

「うん、了解♪」


対するヴィヴィオは大人モード未解禁だが、其れもまた訓練の内なのだろう。


「じゃあ、先ずは一本。
 格闘戦を想定して、弾丸をドンドン打ち込んできてほしいんだ。」

「うん、ディフェンス訓練だね?」

「そう言う事です。
 なので、硬い球はうんと硬く、速い球はうんと速くでお願いします!」

「はい、了解です。」


普通に考えればあり得ないだろう。
オーバーSクラスの魔導師を相手に、齢10歳の子供が訓練を付けて貰うなどと言う事は、局の訓練校でも中々あり得ない事なのだが、其処は親子の特権
と言うモノだ――何よりも、ヴィヴィオもなのはもこの時を楽しんでいるのだから、無粋な事を言うべきでは無いだろう。


「行くよ、ヴィヴィオ?」

「お願いします!」


そして開始された訓練は凄まじいの一言である。
なのはが精製した魔力弾は、寸分違わずヴィヴィオに向かってカッ飛び、しかしヴィヴィオもまた己に向かってくる魔力弾を、時にははじき返し、また時には
ガードして、クリーンヒットを許さない。


「こんな感じで続ければいいんだよね?」

「バッチリ!この感じで、もっともっと!!」

「OK。其れじゃあ今度は、コンビネーション主体で行くよ?」

「押忍!」


そして訓練は更に激しさを増し、宛ら『S級魔導師育成訓練プログラム』ではないのかと思ってしまう位に激しく、強くなっていくのだ。

だが其れでも、ヴィヴィオとなのはの顔に浮かぶのは笑顔――今この時を、此の訓練を心の底から楽しんでいると言う事なのは間違いない事だろう。


『Sacred Heart.You should record it.(セイクリッドハート、貴女も録画しておくと良いですよ。)
 Pleasant catch of the family pf theholiday.(休日の親子の、楽しいキャッチボールです。)』



レイジングハートが、思わずこんな事を言ってしまう位のだから。


しかし、レイジングハートの此の言い分も間違いではないだろう――休日の親子の楽しいキャッチボールと言う表現は、決して否とは言えないのだから。








――――――









Side:ヴィヴィオ


はぁ、はぁ……彼是30分になるけど、やっぱりママは凄いね。
最初の内は、ガードも打ち返しも回避も出来ていたけど、疲労がたまってくると、其れが難しくなって来る――実際に、結構被弾率も増えて来たからね。

でも、だけど――!!



「どう?いったん休憩入れる?」

「まだまだ、此れから!!」

此処で休むなんて言う事は出来ないよ――折角何かを掴みかけてきたところだからね。


それに、明日の試合は絶対に負けられないから、絶対に勝たなきゃならない試合だから……だからもっと、もっともっとお願いしますママ!!



「ヤレヤレ……血は繋がってない筈なのに、その頑固さと言うか、一度決めたら曲げない信念は、子供の頃の私とそっくりだね。
 でも、だったらトコトンまで付き合うよヴィヴィオ?」

「押忍!!ドンドン、やっちゃってママ!!」

私の思いをアインハルトさんに届かせるためには、此れ位の訓練は当然だからね!!――私の思い、絶対に届かせますよ、アインハルトさん!!!













 To Be Continued… 








*登場カード補足