Side:レーシャ


取り敢えず、無限書庫の一件は、此れにて一件落着って所だけど、肝心の『エレミアの手記』が見つかってないんだよね~~~?
幾ら、フォビアを何とか出来たと言っても、目的の物が見つからないんじゃミッションエンプティーで満足出来ないから、何としても見つけ出したい所なん
だけど、こんな事が有った以上は此処に長居も出来ないし、此れは日を改めて再探索って事になりそうだわ……



「そいつはまぁ、仕方ねぇよレーシャ、こんな事が有ったんだから、管理局としても一度は無限書庫を閉じないと世間に格好が付かねぇだろうしな。
 ――まぁ、其れは居た仕方ねぇ事なんだが、アレは一体如何したもんだろうな?」

「あ~~~……如何したもんですかねぇ?」



「じ、ジークがこんなにちっちゃく可愛く……此れは、此れはもう辛抱堪りませんわ~~~~!!!」

「うにゃ~~~!?ちょ、やめ、放してヴィクター!!!苦しい、苦しいから~~~!!!」



ちっちゃくなったチャンピオンに、ヴィクターが絶賛ハートブレイクされちゃったからねぇ……確かにちっちゃいチャンピオンは可愛いけど、此処まで暴走
するとは、ヴィクターはドンだけチャンピオンの事が好きなのやら……ま、愛の形は人夫々だから、無粋な突っ込みは入れませんけどね。

でも、ミッションエンプティーは、本気で心残りだわ。



「そうでもないかもよレーシャ?……此れ、な~~んだ?」

「へ?リオ?」

その手にしてるのは……まさか、エレミアの手記!?何処で見つけたのよ!?



「そこでふらっとね♪
 少し読んでみたら、エレミア、クラウス、オリヴィエって名前が出て来たから、多分間違いないと思うよ?」

「偶然とは言え、良くやったわリオ!!此れでミッションコンプリートじゃない!!」

半ば諦めかけてた所に此れは、実に見事よ。
此れは、昨日のホテルの部屋に戻って、早速内容を読み解かないとだね!!










遊戯王5D's×リリカルなのはViVid  絆紡ぎし夜天の風 Rainbow58
『Die Geschichte die offenbart wurde』









で、ホテルの一室に戻って、手記を読み始めたんだけど……此れは中々、と言うか歴史的に見ても貴重な資料である事は間違いないわ此れ。
チャンピオンの御先祖様の『リッド』は、子供の頃にオリヴィエと出会って、その縁でクラウスとも知り合い、食客としてクラウスの城で数年間を過ごした
みたいね――クラウス、オリヴィエと共に、学問や武術を学びながら。

って言うか、両腕のないオリヴィエの義手を作ったのってリッドだったんだ……意外に器用だったんだね~~、ちょっと驚き。



「手記は10歳頃の記録からですけど、この時は平和な日常を送ってたみたいですね。」

「まぁ、俺等と大して変わらねぇ青春時代ってのを過ごしてたみてぇだな。」



だね。


あ、因みにチャンピオンはフォビアが『収縮』の効果を解除した事で元に戻ってるんだけど、ヴィクターが滅茶苦茶残念そうなのには、突っ込まない方が
良いんだよねきっと……てか、突っ込んだらいけない気がするし。

其れは其れとして、フォビアの御先祖の『魔女クロゼルグ』の事も書いてあるわね?



「そやね。『天真爛漫を絵に描いた様な悪戯猫。特にクラウスにはよく懐いていて――クラウスが王様になったら、魔女の力で助けてあげると、良く言っ
 ていた。――因みに僕には全く懐かなかったので、基本的に険悪だった。何故かは良く分からない。』……何でやろね?」

「まぁ、如何あっても気の合わない相手と言うのは居るモノですわね。」

「そーゆーもんだ。」



……確かに番長とヴィクターって、如何あっても気が合いそうにないもんね。
何となく、番長と委員長は、互いに認め合ってるような感じはするんだけど、番長とヴィクターは何と言うか……もう壊滅的に気が合わない……んだけ
ど、だからと言って顔合わせればいがみ合う様な仲の悪さじゃないって、なんかもうよく分からないわ。

其れよりも、手記の続きはどうなってるのヴィヴィ?



「えっと、其れから数年間エレミアは、クラウス殿下とオリヴィエ王女と共に、過ごしているんだけど、その中で戦乱が次第に大きくなって来たみたい。
 15歳当たりの記録から、クラウス殿下とオリヴィエ王女が戦地に出向いた記述も多くなって来てるからね。」



やっぱり古代ベルカと戦乱は、切る事が出来ないか。
それに、一国の王と、其処に居る王女ともなれば、戦場に出向く事も多いだろうからね……特にオリヴィエは、城の奥でじっとしてるような人じゃなかっ
たと思うから。

でも、確か此の頃から、数々の『禁忌兵器』が世に姿を現し始めたんだよね?



「そやな、『水と大地を穢す猛毒の弾薬、人も草木も全ての命を腐らせる腐敗兵器。
 束の間の勝利の後、自らも滅びの道を歩む手段を、追い詰められた国々が切り札として使い始めた。
 そして、聖王家はベルカの戦乱を終わらせる事を宣言し、聖王家の切り札『聖王のゆりかご』を起動――』……遂に来たな、ゆりかご……」

「4年前、スカリエッティが使った事を考えると、相当に凄まじい兵器だったことは想像に難くないな。」

「あの時は何とか止める事が出来たけど、若しもゆりかごの全能力が解放されて、全ての武装が展開されとったら、ミッドはなくなってたかも知れへん。
 戦闘艦と爆弾の違いはあるけど、ゆりかごは地球で言うところの『核』的な、最終兵器やったのかも知れへんね。」



もしも4年前、お父さんとなのはさんが、私とヴィヴィを止める事が出来なかったら、そうなってたのかも知れないわね……まぁ、先ずありえないけど。
あれ?でも、その時期にゆりかごの起動を決めたってなると、歴史の授業で習った、ベルカの戦乱期終結の時期と少し合わなくない?



「如何やら、此の頃のオリヴィエは『聖王家の王女』ではなく『シュウトラの姫騎士』として名が通っていた居たようです。
 クラウスの覇王流と、オリヴィエの武術は戦いをあっと言う間に終わらせるほどに強烈だったとか……戦う相手は、この2人に脅威を感じたでしょう。」

「だろうね。」

えっと、それで戦乱の中で、リッドとクラウスとオリヴィエの生活に大きな変化ってあったの?



「クラウスとオリヴィエが戦場に出向く以外は特にないようですね。
 戦いの合間に、クラウスとリッドが手合わせする事も有ったようです――只、クラウスはリッドが女性であると言う事には気付かなかったとか…」

「なんじゃそりゃ……」

つーか、5年も一緒に居るなら気付こうよクラウス殿下!?
幾ら何でも、15歳にもなれば身体つきだって女性らしくなって来るから、一人称が『僕』であっても気付くんじゃない?てか、気付かない方がオカシイ!



「あ~~~……此れは生涯、気付いてないパターンですね。」

「全然ダメじゃないのよ其れ……まさかとは思うけど、アインもミウラの事を男の子だとか思ってた訳はないよね?」

「……実は初対面の時、ほんの少しだけ、本当に少しだけ男性ではないのかと……」

「えぇ!?幾ら何でも、其れは酷いですよアインハルトさん!?」



……覇王の鈍感さは、確りと子孫に受け継がれてるみたいだわ。
まぁ、其れだけなら平和なんだけど、そうは行かないのが戦乱期――リッドとオリヴィエが、ゆりかご云々の話をしてから半月後に、魔女の森が『聖王
連合の威嚇による圧政を許す訳には行かない』と、半ば暴走した一部の国家の侵攻で焼かれ、その大半を焼失した……か。

更に、悪天候や土壌を汚す兵器の使用も有って、作物が取れず、兵も国民も疲弊……成程、其れを見て、オリヴィエは『ゆりかごの聖王』になる事を決
意したんでしょうね……リッドの手記を見る限り、誰よりも優しく、誰よりも強く、そして自分以上に他者の事を考える王女様みたいだったから。



「そうやねぇ……オリヴィエ王女は、ゆりかごとの完全な適合を見せて聖王家に戻る事になったみたいや。
 でも、其の後で、一度だけシュウトラに戻った事が有る記述があるなぁ?……尤もその時に、クラウスとオリヴィエがどんなやり取りをしたか、リッドは
 知らなかったみたいやけど、大体の予測が書かれてるで。
 『あの不器用な王子様は、己の全てをぶつけて大切な王女様を止めようとして、だけど若い覇王の拳は、聖王女を止める事が出来なかった。
  聖王連合の中にはクラウスの行為を厳しく咎める声もあったが、其れはオリヴィエがシュウトラに害をなさない様に懇願してくれたのだろう。』って。」



そして、ゆりかごは起動し、クラウスも、オリヴィエも、そしてリッドも、決して消す事の出来ない痛みを夫々抱えたままに、ゆりかごはその役目を果たし、
戦乱は静かに、そして確実に終結に向かって行った……か。



「滞在記は此処で終わってる。
 やけど、クラウスの一件以来、リッドも軟禁状態が続いてたみたいや……」

「グス……軟禁て、何でだよ!?リッドは何もしてねえじゃねぇか!!」

「多分、王家の人達がオリヴィエから遠ざけようとしたんだよ番長――オリヴィエに、心変わりや不慮の事態が起きないようにね。」

国外に出られなかった期間は10年。
その間に、クラウスは王位を継いで『覇王』としての武勇を歴史に刻み――



「ベルカ平定間近の時期に、戦場で命を落としました。」

「うん……手記の中身も其処で終わってる。
 えっと……大丈夫か、ヴィヴィちゃん?結構ショッキングな内容やったんやけど……」

「はい……大丈夫です。」



嘘吐け……相当に無理してるじゃない――アインもだけどさ。

ねぇノーヴェ、取り敢えずの目的は果たした訳だし、そろそろ一息入れた方が良くない?



「だな。流石に疲れただろうし、一旦上に戻るとするか。」



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ってな訳で、一息入れるために本局のスカイラウンジカフェに。
無限書庫から出る前に、お母さんがカフェラウンジに連絡入れてくれたおかげで、今は貸し切り状態で、飲み物やスウィーツはビュッフェ形式で、好きな
物を取れるようになってる。……流石、特務佐官からの連絡が入ると違うわ。

で、夫々に書庫探索での感想なんかを述べてるんだけど――チャンピオン、流石に其れには突っ込み入れても良い?



「チャンピオンなんて他人行儀やな~~?ウチの事はジークでえぇよ?
 その代わり、ウチも君の事を『レーちゃん』て呼ばせて貰うから♪」

「……だったらジーク、其れは何!?何なの、その『透明な丼に盛られたパフェらしき物体』は!?明らかにオカシイよ量が!!
 若しかしなくても、ジークって滅茶苦茶甘党!?或は、無類のお菓子好きとか!?」

「如何やろ?お菓子やジャンクフードは確かに大好きやけど、おでんやおにぎりも大好物やし……ウチって、基本的に大食いなのかも知れへんね。
 せやけどレーちゃん、君の師匠と比べたら此れは未だ可愛い方やと思うよ?」



へ?師匠って、ノーヴェは並にしか食べないから……若しかして稼津斗師匠!?



「稼津斗、其れは流石に盛り過ぎじゃないか?」

「てか、やり過ぎやろ其れ……因みにメニュー名は?」

「『テラ盛りDXフルーツあんみつパフェ』って所か?」



稼津斗師匠ーーーー!!!何ですか、その全高70cmは有りそうな超巨大パフェは!?
師匠は、酒だけじゃなくて甘い物も大好物なの!?



「酒と甘味と辛味は俺の好物だ。
 甘味はリンディ茶、辛味は言峰麻婆、酒はロシア製のアルコール度数70のウォッカとか余裕だからな。」



やっぱり、永久禁止カードはハンパ無いわね色々と。
仮にカードテキストとをエラッタしたところで、この人はオリジナルと同期して、あっという間に能力を底上げしてくれるから意味ないし!!



と、こんな事をやってる間にも、ヴィクターがアインとヴィヴィに話しかけたりしてたけど……アインは、間違いなく覇王の辛い記憶を思い出したよね?
ヴィクターも、そしてヴィヴィもきっと其れには気付いてる……私に出来る事は、なさそうだね――





そして、無限図書探索ツアーは無事終了って事になって、此処で現地解散。
とは言っても、夫々に此れからの予定を話し合ったりしてるみたいだけどね。――取り敢えずミカヤさんは、リオの実家を訪れる予定みたいね。

当の私はと言うと、またトレーニング再開だね。
私と番長、ヴィクターとミウラは4回戦進出だからね――次の試合もサクッと勝って、一気に都市本戦まで突き進みましょう!!



「勿論だぜレーシャ?
 大体にして、都市本戦まで駒を進めなきゃ、お前との喧嘩(試合)の機会は得られねぇだろ?……だから、お前も絶対に都市本戦まで勝ち抜いて来いよ?
 コイツは、俺との約束だぜ?」

「勿論駒を進める心算だよ番長。
 都市本戦に進まないと、番長ともミウラとも戦えないからね。――チームナカジマの最後の一人として、思いっきりやるだけだよ!!」

「言うじゃねぇか?……だが、其れでこそ俺の喧嘩相手(ライバル)だぜレーシャ!
 都市本戦で戦う事を楽しみにしてるぜ?――精々、最高の喧嘩(試合)をしようじゃねぇか!!」



押忍、勿論です!!その時は絶対に負けませんからね!!



あ、そう言えばアインとヴィヴィは……



「また週明けに会いましょう……」

「アインハルトさん……今夜、メールしますから!!」



やっぱりこうなっちゃったか。

ノーヴェに叩きのめされ、ヴィヴィとのバトルでアインは前に進む事を選んだけど、今回の一件で、覇王の後悔の記憶が蘇って来たって所ね?
恐らくは隠してる心算なんだろうけど、アインは嘘が下手だから良く分かるよ……ヴィヴィに、明確な拒絶の意を示したって言う事が……悲しいけどね。



「だが、其れを知ってお前は如何するレーシャ?」

「お父さん……こんな事を言うとアレだけど、何もしない。
 アインの心の内に渦巻く物を如何にか出来るのは、聖王の力を継いだヴィヴィじゃないと無理だと思うからね。
 ある意味では無責任なのかも知れないけど、アインの心の奥底に触れる事が出来るのは、多分ヴィヴィだけだと思うから、ヴィヴィに任せるよ。」

「そうか……」



ヴィヴィなら、きっと何と出来るって信じてるし、私達『チームナカジマ』の絆は、そう簡単に切れる物じゃないから。
だからきっと大丈夫――今回の一件の果てに、私達の絆は更に強くなるって、私は信じてるから、絶対に大丈夫だよ、お父さん、お母さん!!



「絆最強説……血は繋がってなくとも、やっぱりレーシャは私等の娘やね。」

「あぁ、誰が何を言おうとも、其れだけは絶対に変わらないな。」



でしょ?――だからきっと大丈夫。
私は、ヴィヴィとアインの事を信じて、事の成り行きを見守るだけ――黙って見守るのもまた、仲間として大事な事だからね!








――――――








Side:アインハルト


過去に触れてみて、改めて思った――いえ、思い出させられました。

ヴィヴィオさんとの模擬戦や、チームの皆さんとのトレーニングの中で、私は何時しか忘れてしまっていた――覇王の悲願と言うモノを。
護れなかった人を、救えなかった人を、今度こそ護り抜く絶対的な強さが欲しいと……その悲願が達成されるまで、私は絶対に笑ってはいけない……
そう誓ったはずなのに、彼女達と出会ってからの私は――だから、私は……もう、これ以上貴女達と一緒に居るべきではないのかもしれませんね……













 To Be Continued… 








*登場カード補足