Side:遊星
死が身近にあった古代戦乱期のベルカ――その時代を生きた若き覇王『クラウス』と、その最愛の人『オリヴィエ』、そして2人の掛け替えのない友人
であったヴォルフリッド・エレミア、通称『リッド』……恐らく、この3人は固い絆で結ばれて居んだろうな。
「ジークは、其の人の事を覚えてねーのか?」
「申し訳ないんやけど、アインハルトちゃんと違って、ウチには個人の記憶は殆ど残ってへんのや。
あるのは、エレミアの技の記憶と、朧げな先祖の記憶だけ……あんまし、アインハルトちゃんの期待には応えられそうにはないなぁ。」
「いえ、居て下さるだけで充分ですチャンピオン。
………ともあれ、エレミアもまたクラウスとオリヴィエの良き友人で、ともに学問と武道を学び、高める間柄だったのは間違いありません。
ですが、そんな穏やかな日々を嘲笑うかの様に、日々戦火は拡大し――遂に聖王家は、戦争に終止符を打たんと『ゆりかご』の起動を決めました。」
ゆりかご……スカリエッティが再生した、あの忌まわしき大量破壊兵器か。
4年前のあの時は、六課の皆が力を合わせる事で、如何にか落とす事が出来たが、もしも一歩力が及ばなかったらと考えるとゾッとしないな。
数年に渡った戦乱を、即時終息に導いたと言うその戦闘能力は、先ず間違いなく『最終兵器』レベルであるのは間違いないだろう――それが、戦乱期
のベルカでは、文字通りの切り札として使われたんだからな……
「結果として、ゆりかごの起動によって戦乱は終わりを告げる事になりました……オリヴィエ・ゼーゲブレヒトと言う、1人の王の命と引き換えに。
そして、クラウスとリッドもまた、戦乱の終わりを合図にその道が交わる事は無くなり――クラウスは、戦の中でその短い生涯を終えました………
受け継いでいる記憶故に、多少の差異はあるかも知れませんが、此れが私の受け継いだ覇王の記憶であり、私に話せる事の全てです。」
そして、その記憶を鮮明に受け継いでいるアインハルトは、一体どんな気持ちで今まで生きて来たんだろうな?
古代ベルカの王族と、その関係者が多数集って居るこの会合――願わくば、プラスの方向に進んでほしい物だ……心の底からそう思うな――
遊戯王5D's×リリカルなのはViVid 絆紡ぎし夜天の風 Rainbow50
『Erinnerungsdenkmal』
Side:レーシャ
学校の授業で、ある程度の歴史は習ってるけど、こうしてアインから生に近い記憶を聞かされると、戦乱期のベルカがドレだけ凄まじい世界だったのか
って、否が応でも想像できるよ……本当に、文字通りの『戦乱』だったんだね、古代のベルカは。
きっと、クラウス殿下は辛かったと思うよ?
愛する者を喪い、友人とも連絡が取れず、自らの臣下のみを頼りに戦乱末期のベルカを駆け抜け、その命を燃やし尽くして果てた訳だからね………
何よりも、愛する者を喪った悲しみって言うのは、私も少しだけ理解できるからね。
「レーシャさん?」
「如何言う事?」
「前にも行ったけど、私はプレシア・テスタロッサのクローンでしょ?
ハッキリとしたものじゃないけど、プレシアさんの記憶が『夢』って言う形で再生される事が珍しくない訳よ?――そして、其処には当然辛い記憶の再
生だってされる事があるからね。
――ぶっちゃけて言うと、この間、アリシアさんが死んじゃった時の記憶を夢で見たんだよ――何て言うか、一時プレシアさんが壊れちゃったって言う
話にも、物凄く納得した。って言うか、納得せざるを得なかった。」
記憶の再生に過ぎないのに、其れを見た私も思わず正気を失いそうになったからね――其れだけ、愛する者の死は衝撃が大きいって事なんだよ。
其れを踏まえると、その記憶を持っていながらも普通に生きてるアインは、マジで凄いと思うのです……
「私が受け継いでいるのは、あくまでも記憶――言うなればメモリーデータに過ぎません。感情まで受け継いでいるわけではありませんから。
まぁ、其れでも多少のクラウスの痛みを、本能的に感じる事は有りますけれども……」
其処に差異があるって訳ね。
「は~~~~……しかしまぁ、聞いてみるとスゲェ話だなオイ?」
「生の歴史の授業っすね!」
「……此れはまた、何とも勉強になるわ。」
番長&取り巻きの皆さん……まぁ、確かに此れは生の歴史の授業って言っても過言じゃないかもしれないけどね。
なら、折角の機会なんで、この貴重なお話を一切忘れずに、脳味噌の皴の奥底まで刻み込んでください。大丈夫、やれば絶対出来ますから!!!
「おっしゃ~~!上等だ、一言一句残さず脳味噌に刻み込んでやろうじゃねぇか!!
こんな貴重な話は、二度と聞けねぇかも知れないからな!!バッチリ覚えておかないと、損だぜ損!!!」
OK、その意気です番長。
んで、どったのヴィヴィ?何か考え込んでるみたいだけど?
「ヴィヴィオさん?」
「ドナイしたん、ヴィヴィちゃん?」
「……今のお話しと、『エレミア』の名を聞いて、改めて思い出したんです。
確か、『エレミア』って言う名前が冠された、武術家の手記を無限書庫で見かけた気がして――多分、此の件と関係あると思うんですよ。」
そう言えば、大分前にそんなのを見た記憶があるわね、言われてみれば。
確か、オリヴィエの資料も有るから、何時か探索したいねって、そんな事を相談してたよね?
「そうそう!」
「だよね!」
やっぱりそうだ……無限書庫の、あの区画なら聖王と覇王、エレミアに関する資料が有っても不思議じゃないもの――正に、データの宝庫だよね♪
「無限書庫……管理局のデータベースですが、あそこは一般人の立ち入りは禁じられてる筈ですわよね?――貴女達は、入った事が?」
「社会科見学とか?」
「あ、其れならあり得るっすね!」
「でしたら不動司令、無限書庫での調査許可を頂く事は可能でしょうか?」
「ん?まぁ、私から申請してもええんやけど、もっと手っ取り早い方法があるで?な、レーシャ、ヴィヴィオ♪」
Yes!実は私とヴィヴィは、無限書庫の司書資格を持ってたりするんですよね~~~~!
「「「「「「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ~~~!?」」」」」」
あら、予想以上の驚きの様で。
因みに、リオとコロナも立ち入りパスは持ってるから、チームナカジマの小学生組は、面倒な許可申請をしなくとも、無限書庫に入れる訳ですよ♪
「魔法戦技や、格闘の腕前もそうなんだが、そんなモンまで持ってるとは、お前等本気でどんな小学生だよ!?」
ヴィヴィのお母さん2人は、管理局のエース高町なのはさんと、凄腕執務官のフェイト・テスタロッサさん。
私のお母さんは管理局の特務佐官で海上司令、お父さんは管理局技術開発部のチーフでミッドのデュエルチャンピオン、そして私自身は、嘗て大魔導
師と謳われた、次元世界最局クラスの魔導師プレシア・テスタロッサのクローン体でしてよ番長?
とっくの昔に普通なんてモンは銀河の彼方に亜空間物質転送装置で次元転送してますから!!
「おう、何つ~か物凄く納得しちまったぜオレ。」
「納得したでしょう?……ま、悪ノリはこの辺にしとくとして、そう言う訳だから早速明日、私達で調べて来るよ。」
「持ち出し可能な資料なら、持ち出し申請も♪」
「あ、其れならば私も…」
「ウチも……」
ん?アインとチャンピオンも一緒に来るの?……そうなると、やっぱり許可申請しないとダメかな?
ヴィヴィ達は、待っててって言ってるけど、別に来るなら来るで構わないんじゃないの?――って言うか、番長とお嬢様だって来る心算だよね?
「おうよ、その心算だ。
此処までの事を聞いちまった以上、その結末をちびっ子だけに任せるってのは、なんだか落ち着かねーんだよ。お嬢もそうだろ?」
「えぇ、その通りですわね。」
「特にウチは、自分の御先祖様の事やから、余計に行かんとアカン気がする。」
「其れに、試合前だからって、練習以外は何もしねぇって訳でもねぇからな♪」
「敗戦組は、まぁ気兼ねなく行けるから付き合うとして。」
「私もチャンピオンのお供をしませんと!」
「じゃ、じゃあ僕も行きます!!!」
んで、蓋を開ければ、ミカヤさんと委員長、更にはミウラまで参加か~~~……この人数でも、申請大丈夫かな、お母さん?
「まぁ、大丈夫やろ?皆で行くのは良い事やと思うし。
やけど、今パパッと調べたんやが、無限書庫には確かに『エレミアの手記』は存在しとる――やけど、其れが保管されとるんは『未整理区画』なんや。
最大限分かり易くぶっちゃけると、何がどんな状態であるか分からへん危険地帯や。」
マジですか!?
噂に聞いた話だと、今の総合司書長が開拓した時には、本棚の奥に迷宮が出て来たり、書物防衛の霊体とかゴーレムとか出て来たとか言う……
「うはははは、メッチャ面白そうじゃねぇか!」
「興味は惹かれますわね?」
「だ、そうだけど如何する?」
「も、勿論行きますよ!!」
「競技選手に二言は有りませんから!」
の割には、ミウラも委員長もガクブル状態だけどね。
「なら、私も引率で行くよ~~♪」
「俺も行こう。――稼津斗も来てくれるか?」
「言われなくてもその心算だ……此処まで来たら乗り掛かった舟だ、最後まで付き合うさ。」
「ならアタシも行く。双子にも声かけるから、少し待っててくれ。」
結局は全員参加で、引率にはお父さんとお母さん、更には稼津斗師匠とノーヴェ、オットーとディードも来るみたいだから、此れなら安心だね♪
「ホンなら、エレミアの秘密に迫る旅――無限書庫探索ツアー、皆で行くよ~~~~~!」
「「「「「「「「「「おーーーーーーーーーーーーーー!!!」」」」」」」」」」
戦乱のベルカを生きたエレミアの足跡を辿る、無限書庫探索――いいね、燃えて来たよ!!
――――――
Side:はやて
まぁ、大体予想はしとったけど、ホンマ大所帯での探索になりそうやね。
こうなる事も予想して、本局の宿舎を抑えとったのは正解やったな~~――ほな、今日は一泊して、明日朝一で行こか?
「「「「「「「「「「は~い!」」」」」」」」」」
「よし、チビ達こっち来い、親御さんに連絡すっから。」
「「「「は~い!」」」」
うんうん、ノーヴェもちゃんと年上のお姉さんしとるみたいで関心やね♪
「……随分親切になさって下さるんですね、不動司令?」
「お嬢様……まぁ、私自身がベルカっ子やからね。同胞同士、仲良くしたいんよ~~~♪」
「出来るなら、あの子の……ジークの過去には触れて欲しくないというのが本音なんです。
確かにあの子は『エレミア』ですが、中身はお菓子やジャンクフードが大好きな、本当に普通の女の子ですので。」
「其れも承知の上さ。
だが、其れでもあの子は自分の過去と、アインハルトの過去と向き合おうとしてるんだ――俺達もその手伝いをしてやりたいって言うのはダメか?」
うん、お嬢様の言う事も分かるけど、遊星の言ったように、私等はそのお手伝いをしいんや……其れ位はダメやろか?
「其れは――」
「おう、お嬢!何ごちゃごちゃやってんだ?さっさと荷物纏めろよ?」
「――マッタク、今行きますわ。
不動司令、不動博士、その御厚意、ジークに代わって感謝いたしますわ。」
気にせんといてや?
其れよりも、此れから仲良くしてくれたら嬉しいよ♪
さてと、こっちはこんな感じで落ち着きそうやけど、そっちはドナイな感じや遊星?
「あぁ、ルーテシアに協力して貰ってるんだが、矢張りこの場は何者かから窃視と盗聴を受けてるのは間違いないな――誰がしてるのかは未だ分から
ないが、位置は大分絞れてきた。
狙いは恐らく、アインハルトとジークの会話だろう……古代ベルカの王族と、その関係者の末裔の会話と言うのは貴重だろうからな。」
のぞき見とは良い趣味とは言えへんけど、此れだけ古代ベルカの血統が集っとる事に興味を覚える輩が居たとて不思議はないわな。
でも、其れを考えると、この無限書庫探索ツアーは平穏無事では終わりそうにないわ――此れは、最大限の警戒をしとく必要があるかも知れへんね。
――――――
Side:???
此れは……気付かれた?
だけど問題ない、位置はもう分かったから――行ってみようかな、無限書庫……
To Be Continued… 
*登場カード補足
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