Side:レーシャ


アインも可成り食い下がったけど、結果はチャンピオンの勝利……ちょっと悔しいけど、大体の下馬評通りの結果になったってところね。
そのアインは、現在医務室で治療中なんだけど、ノーヴェが付き添いで居てくれるから、多分大丈夫な筈――ノーヴェってば、マジで強いからね~~。


「えっと、チャンピオンは今お風呂の真っ最中ですので、インタビューは其れが終わってからと言う事で~~~!!」


でもって、現在エルスさんが報道陣に囲まれててんやわんや状態。
まぁ、其れもまた自らチャンピオンのセコンドを志願した者の宿命だと思って、諦めて受け入れるべきだと思うよ?

デュエルの世界では諦めるなんて言うのはご法度だけど、リアルの生活に於いては、時に諦めの境地に至る事も大事だって、本気で思うからね?
って言うか、悟りを開くって言う事と、諦めの境地に至る事って言うのは、ある意味で同じ事だと思うんだけど、お父さんは如何思いますか!?


「似ているが非なるモノだ。
 悟りを開くのがクリアマインドなら、諦めの境地はサレンダーだ……言葉だけ聞くと似ているかもしれないが、実際には全くの別物さ。」

「お父さんが言うと、説得力がハンパ無い感じだね。
 ……時に、お母さんは何処行ったの?確か、一緒に来てた筈だと思ったんだけど?」

「『少しやる事がある』って言って、今は別行動なんだが――捕まえておいた方が良かったか?」


ううん、大丈夫だよおお父さん。
お母さんはいたずらっぽい事はやっても、人の道に外れた事だけは絶対にしないから、その『少しやる事』って言うのも、絶対に悪い事じゃないと思う。

其れに何かあれば、絶対に連絡が入る筈だから、今は少し待つのが上策――そうでしょ、お父さん?」

「あぁ、その通りだ。デュエリストには忍耐も必要だからな。」


ですよね♪――取り敢えず、全てはチャンピオンが戻って来てからだね!










遊戯王5D's×リリカルなのはViVid  絆紡ぎし夜天の風 Rainbow49
『ベルカの末裔達の邂逅』











Side:ジークリンデ


結果的に大事に至らなかったとは言え、またやってもうたんやねウチは……ミカヤさんの腕を砕いただけに飽き足らず、今年は有望な新人をも……!

ヴィクターや番長、其れにミカヤさんに支えて貰って此処まで来て……それでも、ウチは全く持って変わる事が出来ないで、あの時の儘なんやろか?


――ちゃぷ……


自分から言っといてなんやけど、この後でアインハルトちゃんと顔を合わせるんは、少しばかり気が重いで――やからて、逃げてもどうにもならへん。

ホンマ、頭が痛いで。



「随分悩んでるみてぇだな?
 其れに、マスコミ待たして長風呂とは、中々良い身分じゃねぇの?……此れもチャンピオンの余裕ってやつか?」

「番長!?」

何でここに……あ、試合後のシャワーか?……やったら納得なんやけど――番長の目的は別にある……当たらずとも遠からずやろ?ちゃうかなぁ?


「正解だ……なら単刀直入に聞くが、お前『イレイザー』を解禁した事を後悔してんじゃねぇか?
 いくら自分の意思では制御出来ない、トンでも能力とは言え、其れの影響で対戦相手に大怪我追わせちまった事を、後悔してるんじゃねえのか?」

「!!!!」

それはまぁ、その通りや。
公式試合では使わないようにと封印してた『ガイスト(ブレイカー)』を使って、そして追い詰めた……それが、如何しても納得できへんのや!!


「アホかオメェは?
 俺等競技選手は、お前の鉄腕その他含めてを目標として、そんでもって超える事を目指して日々頑張ってんだぜ?
 其れなのに、その目標たるお前が、テメェの力に負の感情抱いてんじゃねぇよ?――其れこそ、ソイツはお前が倒した相手への侮辱なんだぜ?」





「其れに関しては、私も同感かな?」



!?……この声は、ミカさん!?


「もっと言うならば、自分を負かした相手には強く有って欲しいという思いもあるけれどね……」


――スッ……


!!アレは、まさか晴嵐!?ミカさん、如何してお風呂場に真剣を……!!


「油断したなジーク?もう、完全にミカさんの間合いだぜ。」


確かに、お風呂場で油断しとったのは間違いないけど、幾らなんでも此れは……!
袋に入ったままやから分からないけど、もしもアレが晴嵐やったら、ウチは防護服も付けてない……このままやったら斬られ―――


――ガキィィィィィィィィィィィィィン!!!………カランカラン……


!!……此れは、練習刀?其れなのに、ミカさんの殺気で真剣に見えて、エレミアの真髄が発動した――否『発動させられた』!


「君の身体が『命の危険』を感じると、反射行動として発動する『エレミアの真髄』状態――御先祖様が、君にくれた大切なギフトなんだろう?
 由来は如何あれ、君が手にしている力の全てを、私達は追いかけて目標にしている。選手なら、負傷は皆覚悟の上だしね。
 全力を出した、君の力と技を超えた上で次は勝つと、君に負けた人はみんなそう思って居る筈だよ?そして、其れは勿論私もだ。
 大体にして、アレだけの好試合を制した勝者が、暗く沈んで迷って居たら、其れこそ全力を出し切ったあの子に失礼だよ?」

「……はい。」

確かにミカさんの言う通りやな……この力を発動してしまったとは言え、アインハルトちゃんは其れと互角レベルで戦ってたんやし、ウチが正気に戻る
直前の攻撃には、左腕を犠牲にする事で耐え、更には其処から最大級の一撃を放って来た程の子やったからね。

ウチが、ふさぎ込んで暗い顔しとったら、アインハルトちゃんかて試合後の気分が悪なってまうからな。


「うん、普段の君に戻ったようだね?」

「はい、おかげさまで。」

「なら良かった。……と、そうだ、忘れていたよ。
 『其れ』は、私の回復完了のお披露目だと思ってくれるかな?」

「は?」


――ピッ!……パラァァァァァァァァアァァァァァァァァ!!!


「おぉ!!」

「いやーーーーーーーーーーーー!?」


ちょ、何でバスタオルを切るん!?って言うか、番長は喜ばんといて~~~~~!!!


「はっはっは!
 アインハルトちゃんは、もう目を覚ましているようだよ?早く上がってくるようにね。」

「はい~~~……」

クールな女剣士の筈やのに、やってる事は完全にオヤジやでミカさん……セクハラで訴えたら、ウチ勝訴できるんとちゃう?しないけど。
って言うか、このバスタオル私物やなくて、会場の備品なんやけど、其れをこないにしてもうて如何すんねん?……取り敢えず弁償は確実やな。


けど、おかげでウジウジ悩んでた気分がどっかいってもうた。此れなら、アインハルトちゃんと、普通にお話しする事が出来そうやね。








――――――








Side:アインハルト


「さてと、取り敢えず完治とまでは行かなくとも、エミュレート超えての左腕の骨折は『骨がくっついた』レベルまでは治ったはずだ。
 まだ完治はしてないから、多少の痛みはあるだろうが、日常生活や軽めのトレーニングをするくらいなら問題ない程度には回復してると思うぜ。」

「はい、ありがとうございます稼津斗師匠。」

師匠が、回復系の技も使えるとは思っても居ませんでしたが。


「俺が使えるのは簡単なモノだけだが、遊星が居てくれたおかげで此処までの回復が出来た訳だからな。
 気による回復の効果を、ライフ回復系のカードと併用する事で、回復効果を倍増できないかと思ったが、如何やら当たりだったみたいだな。」

「だが、デュエルモンスターズのカードをこんな風に使うなんて、恐らくはあの遊戯さんでも思いつかない事だったんじゃないか稼津斗?」

「其処は、デュエリストじゃない人間だからこそ思いついた発想って言う事で納得してくれよ遊星。
 大体にして、俺が何をするのか予想して、俺をシンクロ強化して能力底上げしたお前の勘の鋭さの方に、俺は脱帽だよ。」

「今更だけど、本気で何でもありだよな旦那と遊星さんて……」


まぁ、そのお蔭で診断では『全治3カ月』と言われた怪我が『全治10日』にまで軽減された訳ですから、其れに関しては素直に感謝しておきます。
しかし、不思議なモノですね……


「んあ?何がだよ?」

「嘗てノーヴェコーチに負けた時とは違い、今日の試合は負けたにも拘らず、何故か『悔しい』という思いが湧かないんです……寧ろ、負けた筈だと言
 うのに、妙に清々しい気分を感じて、ある種の『達成感』にも似た感覚を覚えているのですが……」

「其れは当然だろ。」

「あぁ、当然だな。」


稼津斗師匠、レーシャさんのお父様、当然とは?


「負けて悔しさを感じるってのはな、自分の全力を出す事が出来なかったからそう感じるんだ。
 だが、今日のお前はエレミアと互角に渡り合い、天地覇王拳と覇王翔哮拳をぶっぱなし、左腕が死んでも断空までブチかますっている、己の全力をも
 超える力を、文字通り限界突破の120%の力を出した上で負けたんだ、其処に悔しさなど感じる余地はない。」

「勿論、マッタク悔しくないという事は無いかもしれないが、其れを上回るほどの『全力を出し切った達成感』の方が大きいって言う事さ。
 其れに、全力を出し切った末の敗北は、勝利以上の価値がある場合が多いからな?――寧ろ、敗北を知っている人間の方が大きく伸びるモノだ。」


そう言うモノですか……確かに、私の全力は出し切りましたからね。
其れでも及ばぬと言うのならば、私は更なる精進を重ね、次に戦うその時には私が勝たせていただくだけです――!


「其れを聞いて安心した。
 正直な事言うと、今日の試合でお前が格闘に『恐怖』を覚えて、格闘技止めちまうんじゃねぇかって危惧してたんだが、心配ねぇみたいだな?」

「其れは大丈夫ですノーヴェコーチ。寧ろ今日の試合で、格闘の奥深さを知りましたので、まだまだこれから鍛錬あるのみです。」

今日の敗北は、確かに勝利以上の価値が有ったのかもしれませんね――負けたという事は、私にはまだ強くなる余地が残されているのですからね。








――――――








Side:はやて


えっと……あ、居た居た♪ヴィクトーリアちゃん。一緒にエルス選手も居るみたいやね。
ど~も、こんにちは~~~♪


「…えっと、お知合いですか?」

「お会いするのは初めてですわ。」


初めまして、時空管理局特務佐官海上司令の不動はやてです。


「ヴィクトーリア・ダールグリュンです。司令のお噂はかねがね――お会いできて光栄ですわ。」

「こちらこそ~~~。」

ヴィクトーリアちゃん……めんどいからヴィクターちゃんは、良家のお嬢様らしく礼儀その他は身に付いてるみたいやね。
自分で言うのも何やけど、管理局の佐官にして司令の私を前にしても物怖じしないのは大したモンやで――大概の場合は、委縮してまうんやけどね。

んで、エルス選手の方は――


『不動司令って、あの不動司令!?
 以前は八神司令と呼ばれ、ミッドチルダの危機を救った機動部隊の部隊長で、後にミッドチルダのデュエルチャンピオン不動遊星と結婚した騎士!
 そんな有名人が、如何して此処に!?』


ってなことを思ってるんやろな……表情から丸分かりやで。
取り敢えず、エルス選手もお疲れ様や~~♪


「こここ、光栄です!!」


あはは、緊張しすぎやでエルス選手♪


「あぁ、皆さんお揃いですね?」

「「「「こんにちは!」」」」


これは、えぇ所に来てくれたなミカやん。

主役の2人とコーチ&師匠が居れへんけど……このメンバーでちょう話したい事があるんよ。
人数が人数やから、落ち着いて話せる会場を抑えてあるから、チャンピオンの取材が終わったら移動しよか?



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・

・・・・・・

・・・



「うわ、何此れ!?此処って、ミッドチルダの最高級ホテルの最上階展望ルームだよね!?どうやって、借り切ったのお母さん!?」

「時空管理局特務佐官海上司令の名を使えば、此れ位は朝飯前やで?」

「其れって職権乱用じゃないかと思うんだけど、如何でしょうかお母さん?」

「レーシャ……金と権力は使える時に使うもんやで?

「権力ってやつか……気に入らないが、こんな使い方なら、余り悪い気分はしないな。」


まぁ、大事な話になるやろうから、場所が必要やったからね。
特務佐官海上司令の名を使ってでも、この部屋は確保したかったんや――眺めも良くて、適当にリラックスも出来るからな。


取り敢えず、良い眺めやろ?
簡単やけど、食事も用意したから自由に食べてな~~~~。


「はやて、酒はないのか?」

「集まっとるのは未成年やで?アルコールの類がある筈ないやろ。」

「そいつは残念。」


ホンマに酒豪やな稼津斗さんは。
遊星が一滴も飲まんから、余計に凄さを感じてまうわ……けど、レーシャ達は夫々立食式の食事を楽しんでるみたいやね。

適当に会話も弾んでるみたいやし、この形態をとったのは正解やったね。



さて皆、食べながらで良いから聞いてくれるか?

皆も知っての通り、今日の一戦を戦ったアインハルトとジークには少し複雑な因縁があるんや。
『黒のエレミア』の継承者ジークリンデと、『覇王イングヴァルト』の末裔であるアインハルト――そして、その二人を繋ぐんは『聖王女オリヴィエ』。

嘗ての戦乱のベルカを一緒に生きたベルカの末裔が、今此処に、また集まってる。

其れにこの場には、かの雷帝の血統を継ぐヴィクトーリアが居るし、此処にはおらんけど、もう一人――旧ベルカ王家直系の子が居る。

此れが偶然なのか、何かの縁の導きの結果なのかは分からへん。
そやけど此れは、あくまで老婆心と言うか、大人側としての心配なんやけど、此れだけ濃密な旧ベルカの血統継承者達が一堂に会するゆーんはちょっ
ぴり気に掛かるとこなんや。

インターミドル中の大事な時期やから、皆が事件に巻き込まれんように、私達も守って行きたい。
その為にも、此れからの話し合いに参加させて貰いたいんよ。


――コクリ


アインハルトちゃんが頷いたって事はOKってことやな。

まぁ、同じ真正古代ベルカの継承者同士や――行きたい場所や、探したい資料が有るなら私も全力で協力すんで――?


「「「はい―――」」」



果てさて、此れだけの古代ベルカの王族血統が揃てるところに、大魔導師プレシア・テスタロッサの複製で有るレーシャが居るとは、如何考えても一筋
縄で行かん事は確実やけど――だからと言って見過ごす事は出来へん。

此れだけの人物が一堂に会した事には、きっと意味がある筈やからね…………













 To Be Continued… 








*登場カード補足