Side:レーシャ
アインの一撃を受けて、チャンピオンの雰囲気が変わった――其れも、最大級に悪い方向に!!
私の中のプレシアさんが教えてくれてる――アレは、真面に戦ってはいけない相手だって、正面から挑んでも勝つ事は出来ない最強の相手だって!
だけど、仮にそうだとしても―――
「……忘我の境地……受けて立ちます!!」
其れを真正面から受けるのがアインなんだよね!!マジで、格好良すぎるから!!
確かに今のチャンピオンは忘我の状態だから、彼是考えずに本能のままに戦った方が、実は効果的だったりするからね――アインなら若しかして……
「その力、受けきった上で私は先に進みます!!!」
やれるのかも知れないね。
アインは一歩も退かない心算みたいだから、先に精根尽きた方の負け……本気のサバイバルマッチだけど、アインはきっとそれを超えてくる筈。
勝てないまでも、強烈な印象を残す試合ならジャッジの目にも留まるしね――焦らず、どっしりと足元を固める事だよ?
取り敢えず、今は立ち塞がるチャンピオンを如何するかがアインの課題だね。
遊戯王5D's×リリカルなのはViVid 絆紡ぎし夜天の風 Rainbow48
『OverDrive NoLimit Battle』
アインハルト:LP12300
ジークリンデ:LP8500
Side:アインハルト
この異様なまでの威圧感は……如何やらチャンピオンは忘我の境地に至ったのかもしれません……だとしても此の攻撃の激しさは実に読みやすい!
そして、私はこの戦いに備えて、ありとあらゆる事案を頭の中に叩き込んでいるのです!!――そこです!!
――シュゥゥゥゥゥゥン……
と思って、突撃したのですが、此れは幻影――と言う事は後ろから……そう簡単にはやられませんよ!!
「……………」
――ガガガガガガガガガガガガガガガ……ドドドドドドドドド!!
チャンピオンが忘我の状態になっても、削り合いは変わらずですが、私は私のスタイルを貫くだけの事です!故に退く選択肢だけは有り得ません!
如何なる時でもクラウスは退く事をせずに、真正面から脅威と向き合い、そして其れを超えて来た――ならば、其れを継ぐ者として戦うだけです。
其れに、この忘我の状態は、チャンピオンにだって負担が大きい筈ですから、出来るだけ早急に元の状態に戻さなけば!
ですが――
「…………」
如何にも違和感を感じますね?
如何に忘我の状態であるとは言え、今のチャンピオンは私の『姿』を捉えてはいるものの、私自身を見てはいない様な感じが……言うなれば『本能的
に、眼前の脅威を排除する為』に攻撃をしている感覚を受けます。
ですが、そうだとしても何故そんな状態に?
――っ、まさか!!先程、私が放った天地覇王拳が引き金となった!?……其れだけの脅威だったと言う事なのでしょうが、だとしたら尚の事、チャン
ピオンを元の状態に戻さなくてはなりません。
幸いにして、牙山を維持して居れば、チャンピオンの攻撃にも耐えられますから、次の大振りに『断空』を合わせる事が出来れば、倒せなくとも場外ダウ
ン判定位は取れる筈。
そうすれば、そのワンクッションでチャンピオンだって元に戻って――
「……………」
――ゾクリッ!!
!!!な、突然この悪寒は一体!?
チャンピオンが豹変した時とは違う、其れよりもずっと危険な、本能が警鐘を鳴らしている此の悪寒を感じるのは……チャンピオンの両腕、鉄腕!!
アレは、魔力が集中している……其れも、ヴィヴィオさんのお母様の集束砲に劣らない位のレベルで!!
「………………!!!」
「!!!」
――ドゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォン!!!
『うおわーーーー!!此れはまた何という一撃だ!!たった一発で、リングの一部が消し飛んでしまったーーーーー!!
アインハルト・ストラトス、ギリギリで避けたが、バリアジャケットの一部が破損し、掠っただけにも拘らずライフを大きく持って行かれたーーーー!!』
アインハルト:LP12300→9150
掠っただけで3000ポイント以上も削られるとは……直撃したら、如何にティオがダメージを軽減してくれたとしてもKO敗は免れないでしょう。
其れにこの攻撃、射程こそ短いながらも、破壊力だけならばブレイカーをも上回る、言うなれば消滅の一撃『イレイザー』……敵対者を消す一撃です。
しかも、格闘戦で使う事を想定しているのか、発射までのタイムラグが殆どない――アレが相手では、恐らく牙山は役に立たないでしょうし、断空でのカ
ウンターを狙うのも上策とは言い難い……となると――
「空破断!!」
「………!!」
あの攻撃のギリギリの射程を維持して、次の一撃に覇王翔哮拳を合わせる!
稼津斗師匠直伝の、天地覇王拳と並ぶ覇王の名を冠した一撃ならば、恐らくあれとも渡り合える筈ですから。
其れまでは、空破断で牽制しつつ、通常の攻撃は牙山でやり過ごすしかなさそうです……マッタク持って、此れがギリギリの戦いと言うモノですか。
『おぉっとーーー!この一撃を目の当たりにしても尚、アインハルトは怯まずにチャンピオンに向かっていく!
流石に警戒してか、今までのインファイトよりもミドルレンジをメインにしては居るが、此れは物凄い覚悟と闘争心!正にバーニングソウルだーー!
其れに対し、チャンピオンは冷静に、しかし激しく攻めたてる!!どちらも退かぬ、見事な攻防に、俺も観客も大・興・奮ーーーーーーー!!
此れはもう、チャンピオンvsルーキーじゃなく、一流の使い手同士の、手加減不要のガチンコ勝負だーーーーーーーーーー!!!』
元より手加減などは有りません!
チャンピオンには、私の限界を超えた120%の力で挑んで漸くと言う所でしょう……少なくとも今は、其れだけの力の差があるのは間違いありません。
ですが、何時か超える為にも、先ずはこの状態を終わらせなければ……それが出来なくて、超える事など出来るはずがない!
「……………」
――ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!
来た……ならば私も!!覇ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……!!
――ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド……!!
「此れが私の、切り札其之弐……覇王翔哮拳!!!!」
――ドゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォン!!!
……?手応えがない……直撃コースですし、チャンピオンの攻撃とかち合ったのならば、もっと抵抗を感じる筈なのに、そう言った物をまるで感じない…
と、言う事は外した!?……否、チャンピオンがギリギリで避けて――!!
「……………!!!」
「く……!!」
間合いを外された。
完全回避は最早不可能……ならば此処は―――!!
――ガドォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォン!!!!
『なんとぉ!!アインハルトの必殺の砲撃を、チャンピオンがギリギリで回避し、カウンター気味の一撃が炸裂ーーー!!
しかも此れは、リングを抉ったさっきの一撃!アインハルトは無事なのかーーーーーー!!!』
ぶ、無事ですよ………ギリギリですが……
アインハルト:LP9150→300
クラッシュエミュレート:左肩脱臼、左上腕・下腕骨折、左手首亜脱臼、左手指五指全て骨折、左腕強度打撲&裂傷多数、左大腿部強度打撲
左腕が完全に死んでしまいましたか……一部の怪我は、エミュレートを超えているかもしれませんね。
ですが、左を犠牲にしなかったら、もっと酷いダメージを全身に受けて、私は完全にKOされていたでしょう……此れで済んで良かったと言う所です。
「え……あ……ウチは――」
加えて、チャンピオンも今の一撃を放ったことで正気を取り戻したようですから、まぁ結果的にはOKと言う所でしょう……私はこの上なく窮地ですが。
「アインハルトちゃん、その怪我!!……そっか、ウチはまたやってしもたんやな……前の、ミカヤさんの時に分かった筈なのに、私はまた……
その、ゴメンなアインハルトちゃん……君の背負ってる物を聞きたいなんて偉そうな事言っておきながら、君の一撃に『脅威』を感じて、私は戦闘マシ
ーンになってもうたみたいや……そんで、その結果がその怪我……チャンピオンが、聞いて呆れるでホンマ……ウチは――」
「その先を言ったら、軽蔑しますよチャンピオン。
確かに貴女は忘我の状態に陥ってしまったかもしれませんが、其れは一種の防衛本能……寧ろ、そうなるまでに私の一撃は強かったという証。
ならば私は、貴女がそうならざるを得ない相手だったという事を誇る事も出来るでしょう。
何よりも、己を卑下しては、其れは貴女が倒して来た者達への最大級の侮辱になってしまうのではありませんか、チャンピオン?」
「其れは分かっとるんやけど……アレは、自分でもあんまし気持ちの良いモンやないから、如何してもなぁ……」
その気持ちは分からなくも有りませんが、ならば尚の事、最後までチャンピオンとして私と戦って頂けませんか?
残りライフは僅かに300で、左腕は使い物に成らず、左足も踏ん張りがあまり利きませんが、其れでも、此の右の拳はまだ健在ですので……私の3枚
目の切り札、切らせて頂きます!!
「せやな……試合はまだ終わってないからな。
――なら、次の一撃で終わりにしよアインハルトちゃん。君の全力を出しきって、ウチにブチかまして!!!」
「言われずともその心算です……行きますよチャンピオン!!
覇王流の原点にして究極。楔を断ち切る力。一部隊を一撃で壊滅させたという伝説の奥義……覇王!断!空!!拳!!!」
――ゴォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!
「此れが君の全力……素晴らしい一撃やけど、ゴメンな、此れでお終いや!!」
――ギュル!!
!!!断空をギリギリで躱して……まさか此れは、狙いはカウンターの投げ技!!
「ラストライドォォォォォォォォォ!!!!」
――ドゴォォォォォォォォォォォォォン!!!
ガハッ…!!私の身体を持ちあげて、其のまま背中から叩き付ける荒技……此れは効きました………そして、身体以上に魂に響きました……
アインハルト:LP300→0
流石は、チャンピオン……貴女と戦えた事を、光栄に思いますよ………
――――――
Side:ジークリンデ
『決着ーーーー!!最後は、アインハルトの必殺の一撃を躱して、チャンピオンの豪快な一撃が炸裂しての凄まじい幕切れ!!
終わってみればチャンピオンの勝利ではあったが、1回戦からコロナ・ティミル戦まで続いた秒殺劇と、チャンピオンとの互角以上の戦いを演じて見
せたアインハルトの実力は全国レベルなのは間違いない!!
何れにしても、実に見応えのある試合だったーーーー!!会場からも、割れんばかりの万感の拍手が巻き起こっているぞーーーーー!!』
勝った……確かに勝ったけど、もしも『エレミアの真髄』が発動しないで、アインハルトちゃんがイレイザーで大怪我してへんかったら結果は違ってたかも
知れへん……エレミアの真髄が発動したから、イレイザーを発動したからウチは勝った…勝つ事が出来た。
アインハルトちゃんに言われた事は分かっとるけど、やっぱりいい気分やないなこう言うのは……取り敢えず、アインハルトちゃんや。
「アインハルトちゃんのコーチさん……ごめん、やり過ぎてしもた。
多分左腕の怪我の幾つかは、エミュレートを超えての現実ダメージに成っとるかも知れへんから、直ぐに医務室に連れてったって……!!」
「勿論その心算だが、勝ったお前がそんな顔すんなよ……観客に示しが付かねぇぞ?
大体にして、格闘技の世界に生きてりゃ怪我なんぞ日常茶飯事だろ?稼津斗の旦那も『格闘家は怪我してなんぼ』って言ってたしな。
だからあんまし気にすんな。其れでも悪いと思うなら、コイツが負けた事を後悔しない様に、今年も全国制覇しちまってくれよなチャンピオン♪」
アインハルトちゃんがアレやと、コーチもまた優しい人やな……罵倒の一つくらいは覚悟しとったんやけどね……
でも、ウチは如何したらえぇんやろか?
対戦相手に、エミュレート超えたダメージ与えて、危機を感じたら暴走して……アカン、頭沸騰しそうや。
ふぅ……試合で汗かいたし、お風呂入って頭スッキリさせてから考えよかな?
試合後にアインハルトちゃんとお話しする約束も有るから、先ずは頭をクリアーな状態に戻さなあかんね……マッタク、我ながら難義な性格しとるで……
To Be Continued… 
*登場カード補足
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