Side:ヴィヴィオ


あの装備……私の中のオリヴィエが、アレの正体を教えてくれてる――アレは、エレミアの装備だって。
恐らくは、アインハルトさんも感付いた、或は思い出したかもしれない。オリヴィエとクラウスにとって、エレミアは掛け替えのない『友』だったのだから。

問題は、アインハルトさんが『何処まで思い出したか』って言うところかな?
全てを思い出したなら兎も角、『ゆりかごが起動した際にエレミアが居なかった』と言う事だけを思い出したとしたら、其れはとっても良くない事だから!

其処だけを思い出しちゃったら、アインハルトさんは……


「ちょっと、大丈夫ヴィヴィ?
 チャンピオンが『鉄腕』を解放してから様子がおかしいけど、大丈夫?チャンピオンとアインの試合を見届けたい気持ちは分かるけど、無理は禁物!
 調子悪かったら、即刻医務室に行くか、シャマル先生の下に行くように!!」

「あはは……だ、大丈夫だよレーシャ。チャンピオンの装備を見て、少しだけ思い出しただけだから。」

「思い出したって……オリヴィエの記憶?」


うん。
オリヴィエと、クラウスと、エレミアは、子供の頃からの親友だったけど、あの大戦が其れを引き裂いたって言うところまでは思い出したよ。

序に、チャンピオンの強さにも納得って言う所だよレーシャ。
チャンピオン自身も、自分を虐めまくって基礎能力を底上げしてるんだろうけど、其処に受け継がれてきたエレミアが融合すれば、正に最強だからね!


どうか、アインハルトさんがクラウスの記憶の大部分を思い出しますように!!――そうすれば、チャンピオン相手でも、何とかなる筈だから!!










遊戯王5D's×リリカルなのはViVid  絆紡ぎし夜天の風 Rainbow47
『覇王とエレミアと過去の記憶と』











Side:アインハルト


あの装備はエレミアの装備……つまり、チャンピオンは、クラウスとオリヴィエを見捨てた、エレミアの末裔……私の宿命の相手と言う訳ですか。
ならば、尚の事負ける事は出来ません!!友と言いつつも、大事な時に姿を現さなかった者など――!!

「!!!」


――バキィ!!!


アインハルト:LP19150→18800
クラッシュエミュレート:顔面強打、軽度鼻血



「ほえ、アインハルトちゃん!?」

「申し訳ありませんチャンピオン。少しばかり、精神が暴走してしまった様なので、自分を殴る事で目を覚ましました。
 少々強過ぎたので、軽度のクラッシュエミュレートが発生しましたが、この程度のダメージならば覇王流には大した事は有りませんので。」

「そ、其れならえぇんやけどね……」


マッタク持って大丈夫です。寧ろ今ので思考がクリアーになったくらいですからね。



――しかし、エレミアとは、私はトコトン古代ベルカの宿命を受け継いでいるようですね。
よもや、この大会でエレミアの名を継ぐチャンピオンと、予選でとは言え戦う事が出来るとは思って居ませんでしたので…私の全力を賭して行きます!


「其れはウチもや同じやで、アインハルトちゃん。
 せやけど、そんな全力の戦いをしているときほど、ウチ等武道家って言うのは良い顔してると思わへん?
 其れってつまり、ウチ等武道家は、戦ってる時が最高に楽しくて充実してるって、そう感じてるんと違うかなぁ?……そうは思わへん?」


言われてみれば確かにそうですね。
私達は、戦っているときほど、良い表情をしているのかもしれません……現に私も、チャンピオンである貴女に挑むのは、心が躍りますからね――!


「ウチも、君と戦えて良かったと思ってるで、アインハルトちゃん――ホンマに、楽しい戦いやで。
 1ラウンドの残り時間は少ないからアレやけど、第2ラウンドでは今まで以上にぶつかる事にしよかな?」

「異論は有りません……全力でいきましょう!!」

「そやな!!」


――バガァァァァァァァァァァァァァァン!!


私とチャンピオンの拳がかち合ったところで、第1ラウンドは終了ですか……思った以上に、ハードな闘いですね此れは…




「如何だアインハルト、インターミドル最強と戦ってみた感想は?」


ノーヴェ師匠……私の想像以上に彼女は強い――恐らく彼女には、断空ですら通じないかもしれない……其れだけの相手です、チャンピオンは。
加えて、公式戦の経験値が違いすぎますね。彼女は、多くの観客の前で戦う事に慣れている感じがします――この差は、存外に大きいと思います。


「確かに、経験の差は否めねぇが、だからと言ってお前が勝てない道理はねぇ。
 其れに、お前なら、若しかして若しかするかも知れないって思ってんだ――気張らずに、思いっきりぶつかって来いアインハルト!!」

「はい!!」

話している間に回復が出来ましたし、クラッシュエミュレートも回復したようなので、万全な状態で第2ラウンドに行く事が出来ますね。


アインハルト:LP18800→19500(クラッシュエミュレート全回復)


尤も、チャンピオンだって回復してきているはずなので、油断は禁物ですが……私は私の、武を貫く、其れだけの事です!!


「インターバル終了、セコンドアウト!!」


此処でインターバルが終了ですか……運命の第2ラウンドの始まりという訳ですね!!


「ほな、第2ラウンドは、もっと楽しもうか?」
ジークリンデ:LP19000→20000


えぇ、参ります!!



『さぁ、チャンピオンとルーキーの白熱した戦いは、第2ラウンドへ!
 大概の予想は、チャンピオンの1ラウンドKOと言う下馬評をひっくり返したアインハルト、此れは期待しちゃうぜーーーーー!
 チャンピオン?ルーキー?そんなの関係ない!ジークリンデもアインハルトも、一流の格闘家!ならそのぶつかり合いを楽しもうぜーーーーー!!
 大興奮の一戦、第2ラウンド、スタートォォォォォォォォォォォォォォーーーーーーーーーーーーーー!!!!』




「さてと、アインハルトちゃん、この装備を展開したウチは第1ラウンドとは違うで?
 ……『鉄腕』を解放したエレミアを相手にして、無傷で居られるとは思わん事や――そないな事言わんでも、君は分かってるやろうけどね。」


はい、承知して居ます……いえ、そうであるという事を思い出しました。
確かに、鉄腕を解放したエレミアの技は、その全てがあらゆるものを破壊する『兵器』と化す……ですが、其れが全てを破壊する兵器だと言うならば!


――剛体の型『牙山』!!


私は、その兵器では破砕できぬ要塞となるまでの事です。


「真正面から受けて立つなんて、私の鉄腕を前にして、馬鹿正直に正面から受けるなんてのは、番長だけかと思っとったけどそうやないみたいやね。
 其れは其れで、凄いんやけど……ん~~~~~……君は、何て言うか何かを背負ってる気がするなぁ?
 さっきも私が鉄腕を解放した時に、精神が昂ったってなこと言ってたし……若しかして、ウチの御先祖様関係やったりする?」

「……少なくとも無関係ではないと言っておきます。」

「そうなん?ま、其れも後で聞かせて貰おか。君が背負ってる物も、聞けるなら聞きたいしなぁ。」


聞いてもあまり楽しい物ではないと思いますが、聞きたいと言うならば話しましょう。
ですが今は――


「戦いに集中や…な!!!」


!!一足飛びからの鋭い突きとは……此れがチャンピオンの本気と言う訳ですか!!が、剛体の型の前では其れは思った程の効果を生みません!
寧ろ、私にとっては好機です!!覇ぁぁぁぁ……覇道拳!!


「っと、そう来るか!!……此れは最強の大砲と、最強の要塞の戦いになりそうやな!!」


まさか、カウンターで放った覇道拳をスウェーバックで躱すとは……流石はチャンピオンの名は伊達ではないと再認識させられました。
此れは、私の3つの切り札を、どのタイミングで放つかが、鍵になりそうですね。








――――――








Side:レーシャ


チャンピオンとアインの試合は、第2ラウンドに入ったんだけど、此れって本気でチャンピオンとルーキーの試合かってくらいに白熱して、大盛り上がり!
アインもチャンピオンも、何方も小細工抜きのクロスレンジでの格闘戦!

果たしてどっちが攻めているかが分からなくなる程に、互いにラッシュ、ラッシュ、猛ラッシュ!!


って言う風に見えるだろうけど、実際には攻めるチャンピオンと、カウンターで返すアインなんだよね?
だけど、その攻防があまりにも凄すぎて、傍目には互いにラッシュでの削り合いをしているようにしか見えない……まぁ、実際にちょくちょく削られたダメ
ージが、塵も積もって山となる状態なんだけどね。


アインハルト:LP19500→(ちょくちょく削られて)12300
ジークリンデ:LP20000→(同じくちょくちょく削られて)13100




だけど、何となくなんだけど、この試合は此のラウンドで決着しそうな気がするんだよね。
今は拮抗してるけど、ほんの一瞬でこの試合は大きく動く事に成ると思うんだ――お父さんとお母さん、其れに稼津斗師匠は如何思う?


「確かに今のアインハルトとジークリンデの状態は、一種の膠着状態だと言えるだろう。デュエルで言うならば、互いに引きに賭けてる状態だ。
 だが、だからこそ、先に切り札を切る事が出来た方に流れは傾くかもしれないな。」

「其れはそうかも知れへんけど、切り札を切った所でカウンターって可能性も否定できへんやろ?
 どっちかって言うと、如何に効果的に切り札を切るかが重要な気がするで?」

「確かに一瞬で試合は動くだろうが、その結末は正直予想できんよ。
 ジークリンデも、アインハルトも一流の使い手故に、先の展開を完全に予想する事など出来ん……あらゆる武に精通した俺であってもな。」


稼津斗師匠ですら予想不可能って、相当だよね?――それだけの凄い戦いだって言う事なんだろうけどさ。



「隙あり!!覇ぁぁぁぁぁぁぁぁっぁぁぁぁぁぁ……天地覇王拳!!!!


――バキィィィィィィィィィ!!


ジークリンデ:LP13100→8500




なんて事を言ってる間に、試合が動いた!!
チャンピオンの一撃を躱したアインが、逆にカウンター気味に稼津斗師匠直伝の『天地覇王拳』を一閃!!
完璧なカウンターだっただけに、チャンピオンも躱す事は出来ずに、此処で大ダメージ!!流れは、アインに傾いたって思っても、良い感じだよね!!


「いや、如何やらそうは行かないみたいだぞ?」

「へ?お父さん?」

「リング上を見ろ……アインハルトの最大の一撃を喰らっても、ジークリンデはダウンしていない。」


!!確かに!!
ダメージは大きくても、チャンピオンはダウンしてない……ど、ドンだけ頑丈なんですかチャンピオン!!



「………」



え?


――ゾクリ……


だけど、顔を上げたチャンピオンに、私は思わず戦慄した。

ハイライトの消えた瞳と、表情の消えた顔……其処に居たのは、まるで戦闘サイボーグかと思ってしまうかの様なチャンピオンの姿だったのだから。








――――――








Side:アインハルト


な、何とか隙をついて、カウンターの天地覇王拳を叩き込む事が出来ました。
クロスカウンター気味に打ったので、ダメージは相当な筈です……KOは出来なくとも少しくらいは削れたのではないでしょうか?


ジークリンデ:LP13100→8500


そして、予想取りに大ダメージですね。
何を言うならば、此れでKOしたかったのですが、其処はチャンピオンの耐久力に阻まれたと言う所ですね……ならば此処から更に――


――ゾクリ……


!!……こ、此の悪寒は……まさか、チャンピオンから感じてる!?


「…………!!」


そのチャンピオンは、瞳のハイライトと表情が消え去った状態……つまり、私の一撃で忘我の状態に陥ったというのですか!?


だとしたら、何とも厄介極まりないですね。


如何やらこの試合は、互いの全力をぶつけあって終わりという訳には行かないようです……或は、此処からが真の始まりなのかもしれませんね。


ですが、私は退きません!

相手が誰であろうとも、どんな状態であろうとも、私は私の覇王流を貫きます!――其れが、クラウスの願いでもある筈ですからね………













 To Be Continued… 








*登場カード補足