Side:レーシャ
あ~~~……思った以上に、今の試合はしんどかったわ~~。アレだけキレの鋭い投げを喰らったのは、若しかしなくても、人生初だよマッタク。
試合が終わって、クラッシュエミュレートが解除された今でも、びっみょ~~~~にダメージが残ってるからね?……ジュウドウファイター恐るべし!
まぁ、今回はアタシが勝ったけど、彼女もまた強力なライバルになるのは、先ず間違いないわ。
尤も強敵が増える事は望むところだけどね――お父さんも『強力なライバルが居れば居るだけ自分も強くなる事が出来る』って言ってたしね!
……其れは其れとして、次の試合は、ある意味で大注目の一戦だよね此れ。
『さぁ、さぁ、第4回戦の第2位試合で、早くも大注目の一戦がやって来たーーー!!
4回戦になって、漸く皆がお待ちかねのチャンピオン『ジークリンデ・エレミア』が堂々の登場だーーーーー!!
チャンピオンとなれば常勝不敗が常識だが、果たして今回の相手に対してはどうなるかはマッタク持って想像が付かないのが正直な所だーー!
なぜなら、チャンピオンの前に立ち塞がるのは、チームナカジマ所属の期待の新人『アインハルト・ストラトス』!!
3回戦以外は、1ラウンド1分以内の秒殺を敢行して来た、誰もが認める豪打の強者!!この最強クラスのルーキーにチャンピオンは如何戦う!』
そう、次はアインとチャンピオンの試合。
大体の下馬評だと、9:1でチャンピオンが絶対有利な予想だけど、アインなら若しかすると若しかするかも知れないわ――チームメイトの欲目もある
かも知れないけど、アインにはそれだけの力が有るからね。
頑張れアイン!!――貴女なら、若しかしたらチャンピオンの牙城を崩せるかもしれないよ!!
遊戯王5D's×リリカルなのはViVid 絆紡ぎし夜天の風 Rainbow46
『Champion appearance!』
Side:アインハルト
大体覚悟はしていましたが、会場の9割9分はチャンピオンの応援ですか……こうなると、私は差し詰めチャンピオンに牙を剥いた『悪者』でしょうか?
「言い得て妙だが、チャンピオンの人気を考えたら仕方ねぇだろ?
あんまし気負わずに、何時も通りいけよ?――総合力では兎も角、一撃必殺の破壊力に限定すれば、お前はチャンピオン以上なんだからさ。」
「其れもそうですね。」
気負わずに、何時もの力を出す事こそが何よりも大事ですからね――精神が乱れていては其れもまた難しいのですが……よし、落ち着きました。
「良い顔になったなアインハルト?
インターバルまでは言う事は無いもねぇ!!思いっきりぶつかってこいや!!」
「はい!!」
アインハルト・ストラトス、力の限りに参ります!!
と言う訳で、リングインした訳ですが――矢張り、身近で生で見るとチャンピオンの迫力は凄まじいものがありますね?
背格好だけならば、武装形態の私と大差ありませんが、その身から発せられるのは、まごう事なき『絶対強者』のみが纏う事の出来る、純粋な闘気!
その闘気が、私を襲ってきますが……怯む事は有りません!
寧ろ、格闘家としては此れ位の闘気は心地いい物です!――或は、其れを知った上で、チャンピオンが闘気を放った可能性も否定は出来ませんが。
何れにしても、此の一戦が私のインターミドル最大の戦いになるのは間違いないのですから、せめて全力で行くだけです!!
「え~~っと……ほな、宜しくな?」
「此方こそ、宜しくお願いします、チャンピオン。」
両の手を合わせて相手に礼。
レーシャさんから教わった、武における礼節との事ですが、果たしてチャンピオンに伝わったかどうか……地球独特の文化らしいのですが――
「えっと……此れでえぇんかな?」
――スッ
!!……分からないながらも返してくるとは、流石はチャンピオン……懐も中々に深いようですね。
『さぁ、注目の4回戦第2試合!!チャンピオン『ジークリンデ・エレミア』に挑むのは、稀代のルーキー『アインハルト・ストラトス』!!
チャンピオンの力は凄まじいが、アインハルトの格闘技術も無視できない強力なモノであるから、安易にどちらが勝つとは言えない!!
寧ろチャンピオンとルーキーの激突乍ら、何方が勝ってもおかしくないバトルを期待しちゃうのは、俺だけなのか!?――そんな事は無いだろう!
誰もが此の一戦には注目して居る筈だーーー!独断と偏見で、異論は認めていないから、その心算で居てくれーーー!!』
「あは~~~……あいッ変わらずテンション高いなMCさん。
あの人の実況を聞いとると、私等競技選手も頑張らなあかんと思えて来るから不思議なモンや……君もそう思わへん?」
其れは確かにそうかも知れませんが、それがMCさんの力と言う物ではないのでしょうか?
観客も、出場選手もテンションを引き上げて、最高のパフォーマンスを引き出す――其れが、彼の仕事ではないかと思います。
「言い得て妙やね?……せやったら私等も――」
「えぇ、己の全力を尽くして戦いましょう!!――チャンピオン、一槍お願いします。」
『互いの闘気は会場を吹き飛ばさんばかりに高まっているーー!此れは、凄いバトルが期待できそうだーーー!!
其れじゃあ始めようか!!第4回戦第2試合、ジークリンデ・エレミアvsアインハルト・ストラトス……バトル、スタートォォォォォォ!!!』
――カーン!!
アインハルト:LP20000
ジークリンデ:LP20000
小手先の技がチャンピオンに通じるとは思えませんが、だからと言って彼是考えて攻めても決定打を与える事は出来ないでしょう――ならば、私は!
「覇ぁ!!!」
「思った以上に速っ!!」
――ガキィィィン!!
初手から全力でぶつかるだけです!
「うん、思った通り、君は強いなぁ?今年の1発目が、君みたいな子で嬉しいわ、アインハルトちゃん?」
「チャンピオンにそう言って頂けるとは光栄です。」
まさか、ヴィヴィオさんのお母様以外から『ちゃん付け』で呼ばれるとは思っても居ませんでしたが。
とは言え今は試合中、挨拶代わりの雑談は兎も角、此処からは一挙一動が勝負に直結する世界……まして、相手は無敵のチャンピオンなのですか
ら、気を引き締めつつ、己の全力で挑まなければ!!
「ほな、今度はウチの一発でご挨拶や!!」
「!!」
速い!!しかも重い…!!
速度そのものはレーシャさんの打撃の方が上ですが、レーシャさんの打撃と違って、此れは速さと重さを兼ね備えた必殺の拳――!覇王流の受け流
し技と、稼津斗師匠直伝の『柔術流捌き』がなかったら、今の一撃でライフが半減していたかもしれませんね……!
「今のを捌くとは、中々見事なモンやで?
しかも、捌きながら追撃を回避する為にバックステップで距離を取るって事までしとるからね?……此れは、相当練習して来たんかな?」
「ルーキーがチャンピオンに挑むのですから、相応の訓練位はしてきます。
其れに、如何にチャンピオンが相手とは言え、ルーキーが一方的にやられては、私を応援してくれる仲間にも、観戦している観客の方々にも、そして
何よりも、私とこうして戦っている貴女に対して申し訳が立ちません。
恐らく、私と貴女では相当に力の差があるでしょう……ですが、私は今の私の全力を持ってして貴女を倒しにかかります――行きますよ?」
「真面目やなぁ君は?けど、そう言うのは嫌いやないよウチも。――ほな、挨拶は互いに済んだから、本番といこか?」
「えぇ、勿論。」
――スッ……
「え……?」
『おぉっと、此れは突然どうした事だ~~~!?アインハルト・ストラトス、行き成り構えを解いたぞ~~~!?
まさか、開始早々の僅かな攻防で実力差を理解しての降参?――いやいやいや、そんな事がある筈がない!其れとも此れは、誘ってるのか!?』
「どっちもちゃうわMCさん……此れは立派な『構え』や。
敢えて自然体で相手と対峙する事で、如何なる状況にも対応できる攻防一体の無形の構え『位』――話には聞いてたけど、初めて見たわ~~。」
御名答、流石はチャンピオンです。
一見すると無謀に見えるこの姿ですが、自然体であるが故にどんな状況にも即時対応が出来る上に、攻める際には技のモーションを悟られない、攻
防一体の無形の構えです――此れを会得する為に、禅と言う精神修業も随分と行いました。
行きますよチャンピオン!!飛燕三連脚!!
――ミシィィィィ!!
「のわ!?」
「ガードしましたか……ですが、此れでは止まりません!!覇道拳!!」
――バキィィィン!!
む……飛燕三連脚をガードさせてからの覇道拳は決まると思ったのですが、此れもガードしますか?……予想以上に堅いと言う事ですか。
ですが、それでも此れは躱せませんよ?破ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……翔龍拳!!!
――ガスゥゥゥゥゥ!!!
ジークリンデ:LP20000→19300
「んがっ!?……これは、結構効いたで……ほな、此れはお返しや!!どぉりゃぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
――グイ!!ドゴォォォォォォォォォン!!!
アインハルト:LP20000→19150
ぐ……攻撃を受けながらも、カウンターで投げを返してくるとは……ですが、追撃はさせません!!
――ビュオ!!
「のわ!?」
「カウンターの投げから、サブミッションに繋げるコンビネーションだったと思いますが、そうはさせませんよ?」
「……いや、冗談抜きで今の蹴りはヤバかったで!?
咄嗟に避けたから良かったモノの、こっちも動けなくなるサブミッションを極めた後やったら、間違いなく喰らって大ダメージやったで……?
打、投、極の総合がエレミアの真髄なんやけど、君に対してサブミッションはアカンみたいや……極めに行ってこっちが大ダメージとか笑えへん。」
『ファーストアタックはアインハルト!しかしチャンピオンも、カウンターの投げで反撃し、追撃のサブミッション――と行こうとしたところで、アインハルト
が、強烈な蹴りを放って追撃を未然に阻止!!
こう言っちゃ失礼だが、アインハルト、君は本当にルーキーなのか~~~!?此れは若しかしたら、下馬評をひっくり返すかもしれないぞ~~!』
其れは如何か分かりませんが、今の攻防で、少なくとも互角レベルでやり合えるのだと言う事は分かりました。
ならば、何処まで私が頑張れるかです!――マダマダ此れからですよ、チャンピオン?
「せやな、マダマダ此処からや。――けど、今ので確信したで?
君の試合を見てからずっと思ってたんよ?――ウチと君は、きっと少し似てるって?」
「似ている?」
私とチャンピオンが?
「ま、其れに付いては後でな?
今は試合中やから、お話は、試合が終わってからじっくりするとしよ?――今度は、エレミアの魔法戦、味わって貰おかな?」
――ボボボボボ……
此れは……魔力弾幕ですね?
此れだけの数となると一機に放たれても、一発に凝縮されて放たれても脅威ですが――
「ゲヴェイア・クーゲル……ファイア!」
「覇王流に飛び道具は一切無力です!
破ぁぁぁぁぁぁ……覇王旋衝破!!!」
――ギョォォォォォ……グバァァァァァァァァァン!!
私を撃ち抜くならば、ヴィヴィオさんのお母様並の集束砲か、稼津斗師匠の覇王翔哮拳並の破壊力のある砲撃でなければ不可能ですよ?
「流石はベルカの古流格闘家やね?こんだけ的確に打ち返されるとは、正直言って思ってなかったで?
……せやけど、古流格闘家ちゃんは、近代格闘の技に対してはどう対処する?」
!!――間髪入れずに低空のタックル!!
カウンターで膝を出すのが古流格闘技では定石ですが、其れをやったら恐らくはカウンターの投げが待っている……ならば!!
――ガシィ!!……グン!!
「ほえ?」
「敢えてタックルを受け、しかしていくダウンは奪わせずに、反撃の一手を打つだけです!!
此れを喰らっても、無事で居られますか?……一撃必殺、垂直落下DDT!!!」
――ドゴォォォォォォォォォォォン!!
『ぬわんとぉぉぉぉぉぉぉ!!チャンピオンの射撃を投げ返したアインハルトに対して、即座に放たれた低空タックルをまさかの垂直落下DDTで、強烈
なカウンターーーーーーーー!!『破壊王』の異名をとる格闘家が編み出した、破壊力抜群の一撃はチャンピオンをも沈めるのか~~!』
いえ、今のでは終わってない……インパクトの瞬間に受け身を取り、ダメージを最小限に留めたようですからね。
「今の、流石にちょ~~~~っと、ヤバかったで……」
ジークリンデ:LP19300→19000
「脳天から突き刺す垂直落下のダメージを逃がすとは、流石ですねチャンピオン?」
「いやいや、受け身取れたんはホンマに偶然やで?
って言うか、攻撃モーションが大きかったから辛うじて取れたって言うのが正しいからなぁ……ホンマに君は強いな?楽しくなって来たで♪」
――ニコ♪
其れは私もですよ、チャンピオン。
――ニッ♪
『此処で両者笑顔ーーーー!!!!其れはつまり、互いにこの戦いを楽しんでいる証に他ならないーーーーー!!良いぞもっとやれーーーーー!!
ルーキーだろうとチャンピオンだろうと、いざ戦いに成ればそんなモノは一切関係ない!!己の力を出し切って戦うだけだーーーー!!』
マッタク持ってそのとおりですね。
「楽しいなぁ?ホンマに強い子との戦いは、心底楽しいって思えるで。
やっぱり、ウチ等『競技格闘者』は、スパーンと殴り合うのが、一番分かりあえるのかも知れへんね?ヴィクターやハリーとも、其れで仲良くなったし。
――せやから、もっと楽しもか?……『鉄腕』解放。」
――ゴォォォォォォォォォ
え?……此れは、チャンピオンの装備が変わった?
肘から下を覆う防護武装……其れ自体は、珍しい物ではありませんし、この装備の映像だって何度も見ていますが――直接見て気付いた!!
――否『思い出した』!!
この装備、そしてこの構えを――私は良く知っている!!
――――――
Side:ヴィヴィオ
あの武装と構えは……そうだ、思い出した!!私の中のオリヴィエが教えてくれた!!
あれは、あの装備は、格闘戦技って言う概念がなかった古代ベルカの時代に、己の五体で人体を破砕する技術を追い求め、戦乱の中で、その技術を
高めて行った、遺伝子に刻み込まれた戦闘の一族……
「「エレミア……!!」」
音声こそ聞こえなかったけど、アインハルトさんも同じ事を思ったと思う。
――覇王とエレミア……如何やらこの試合、只のチャンピオンvsルーキーでは終わりそうにないね……!
To Be Continued… 
*登場カード補足
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