Side:アインハルト


終始攻められ、主導権を握られていたレーシャさんが、土壇場で一矢報いた?……いえ、今のはそれ以上の一撃であったはずです。
現実に、カウンター気味に決まった一戦は、ジャクリーンさんのライフを大きく削り、そしてクラッシュエミュレートまで発生させたのですから、生半可な
一撃でなかった事は間違いありません。

ですが、今のカウンターは文字通りの『反撃の狼煙』となる一撃でしょう。――少なくとも相手の勢いを、此処で断ち切る事が出来た訳ですからね。


とは言え、第1ラウンドは残り僅かですので、決着は次ラウンドに持ち越しとなるでしょうけれど……実に心躍る戦いです。


「レーシャ、やっぱり強いよ……アンだけ投げられまくったのに、まだライフが残ってるし、おまけにカウンターまでブチかますって、ドンだけなの!?」

「其れだけレーシャが凄いって言う事なんだろうけど、マダマダ相手の方が有利だから、結果は分からないと思う。
 だからこそ、私達が思い切り応援しないとだよね?――私達の声援で、レーシャに力を分け与えてあげましょうリオ、アインハルトさん!!」


その提案は是とします。
恐らくはヴィヴィオさんも医務室で精一杯の応援をしている筈ですからね……私も、出来る限りの声援をレーシャさんに送るとしましょう。


頑張って下さいレーシャさん……貴女は此処で負けるような人ではないでしょう?
寧ろ、逆境からの逆転勝利と言うのが、デュエルの醍醐味と聞いています……デュエリストでもある貴女ならば、其れは分かって居る筈です。

逆境からの逆転勝利――其れを信じていますよレーシャさん。










遊戯王5D's×リリカルなのはViVid  絆紡ぎし夜天の風 Rainbow45
『柔道王を超えろ!そして倒せ!』










レーシャ:LP4000
クラッシュエミュレート:頸椎軽度捻挫、軽度脳震盪


ルスカ:LP15100
クラッシュエミュレート:口内軽度裂傷、鼻血、口内軽度出血



Side:レーシャ



無意識のうちに放った喧嘩殺法が意外な程に効果があったみたいだわ……って言うか、本気でジャクリーン相手には小手先の技を忘れた喧嘩で
挑まないと、勝機が見えないわよ。

だけど、彼女位のジュウドウファイターなら、喧嘩に対しても柔道技で反撃して来かねない……不利なのは大して変わらないけど、前に出ないと勝
利を掴む事なんて出来ないんだから、此処は兎に角前に出るが上策!!

幸いにして、今のカウンターでジャクリーンもペースが乱れたみたいだからね!!

「うおりゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

「!!」


――ガスゥゥゥゥゥ!!


「燃えろぉぉ!!!」


――バガァァァァァァァァァァン!!


「うわぁぁぁぁぁぁ!!」
ルスカ:LP15100→13000
クラッシュエミュレート:胸部&腹部軽度火傷



うん、予想通り!
さっきのカウンターの影響で、ジャクリーンは咄嗟の攻撃に対処が出来なくなってる……なら、其れを利用してこのまま一気に行けば――――



――ビー!!!



『おぉっと、此処で第1ラウンドが終了!!
 終始ペースを握っていたジャクリーンだが、駄1ラウンド終了間際にレーシャが見事な反撃を見せ、互いに一歩も譲らず第1ラウンド終了ーー!
 続く第2ラウンドは、どんな戦いが展開されるのだろうか~~~~~~!!!』



寸での所で第1ラウンド終了か……まぁ、此処でのインターバルは正直有り難かったけどね……クラッシュエミュレートも回復できるだろうし。


「激しい1ラウンド目だったねぇレーシャ………一筋縄で行く相手じゃあないみたいだね、彼女は?」

「うん、実際強いよ。稼津斗師匠には及ばないけど、一度型にはまれば彼女の型から抜け出すのは可成り厳しいんじゃないかって思うよ。
 其れに、喧嘩殺法で行くとは言っても、あの地震攻撃を如何にか出来ないと、最終的には彼女の型に持ち込まれる事になっちゃうしね……」

せめて、あの地震攻撃さえ何とかなれば私のペースに持ち込めるんだけど、果たして如何したもんだろうね此れ?


「ベクトルの絶対値を同じとする逆位相の魔力を床に打ち付ける事で相殺は出来ないもんかなぁ?
 其れが出来れば、レーシャも思い切って攻撃出来るだろうけど、如何せん其れをやるのは難易度が些か高い……かな?」


絶対値を同じにする逆位相の一撃?……確かに其れが出来ればあの地震攻撃を如何にか出来るかも知れないけど、欲を言うならあの攻撃その物
を使わせないようにしたいんだよねぇ?流石に、其れは無理があるかなぁ?


「或は、地震の振動を拡散してしまうような状態にしてしまえば、地震そのものを極めて小さなものに出来るかも知れないけど……」


地震のエネルギーを分散して?……それだ!!お手柄よ麒麟!!!


「え?今のが何かヒントになったの?」

「充分過ぎるほどね!次のラウンドで、彼女の地震を封殺して見せるわ!
 そして、其れが出来たら、其処からはずっとアタシのターンだ!!」

「そうか……其れじゃあ『クリティウスの牙』を流す準備を……」


いや、しなくて良いからね!?ずっとアタシのターンてのは、あくまでもその心算で猛ラッシュをかけるって事だからね!?
まかり間違っても『狂戦士の魂』を発動する訳じゃないからね!?


「そうなのか?其れは残念。」

「いや、大体試合中に行き成り音楽流れたら吃驚するし。」

まぁ、良いや。
取り敢えず、インターバルで体力は回復したし、クラッシュエミュレートも回復したから行ってくるよ!って言うか、此のラウンドで決めて来る!!


レーシャ:LP4000→7500
クラッシュエミュレート:全回復



「あぁ、頑張って!!」



さてと行きますか!!

でもって、当然だけどジャクリーンもクラッシュエミュレートは全回復して来たか……まぁ、受けたライフダメージも私よりも小さいからね。



ルスカ:LP13000→18000
クラッシュエミュレート:全回復



『さぁ、両者ともインターバルでの回復を行い、大興奮冷めやらぬ中で第2ラウンド!
 又しても、ジャクリーン・ルスカの恐るべき連続投げが炸裂するのか?其れともレーシャ・Y・不動の喧嘩殺法が其れを封じるのか!?
 注目の第2ラウンド………今ゴングが鳴ったぁ!!!!』



――カーン!



「てやぁぁぁ!!!……地雷震!!


開始早々やっぱり来たね?
だけど、其の攻撃は此れで打ち止めだよ!!唸れ、終焉の笛の音を乗せた拳!!ラグナロク・フィスト!!!


――ドゴォン!!……バキバキバキバキバキィ!!!!


「リングを砕く!?何と言う無茶を……ですが、そんなモノで地雷震は止まりませんよ!!せいや!!」


――シーン………


「な、何故振動が発生しないのですか!?如何して……」

「実験成功!!此れがアタシの地雷震封じだよジャクリーン!
 アタシの一撃で、リングは形こそ保ってるけど、謂わば石垣を積み上げた足場みたいな状態になってる――そう、大小様々な石の集合体にね。
 この石の集合体は、夫々が不規則な形をしてるから、上からの衝撃や重さが色んな方向に分散されるって訳……勿論、貴女の地震の振動も。」

「地震の振動そのものを分散する事で……!!まさか、そんな方法で……!!!!」


驚いた?でも、此れの効果は其れだけじゃないわ――この不安定な足場では、思ったように投げを打つ事は出来ないわよ?
柔道の投げが最大に生かせるのは、足場が確りしている場所でこそ……足腰の踏ん張りが充分に利く畳やリングじゃない場所じゃ、威力は半分以
下になるって言うのは、私よりも貴女の方が分かってるんじゃない?


「!!……其処まで考えて!ですが、祖父より教わった私の柔道は、足場が悪い程度では鈍りません!!
 寧ろ、足場が悪いと不利なのは貴女では?
 貴女の方こそ、足場が確りして居なければ、あの驚異的なスピードでの移動は不可能な筈です!!」


そう思う?……甘ーい!!
どんな場所でも最高のスピードが出せるように、インターミドル開催までの間、アタシは砂浜での走り込みもしてたのよ?
柔らかい砂に足を取られるのに比べたら、砕けた床なんて大した障害にもならないわよ―――こんな風にね!!


――バシュン!!


「!!!!」

「一気に行くわジャクリーン……アタシの、超高速喧嘩殺法に付いて来れるなら、付いて来てみなさい?」

彼女には型のある攻撃はしちゃいけない、カウンター投げの良い餌食だからね……だから、型のない攻撃――ぶっちゃけ『乱打』が有効!!!
何処から何が飛んでくるか分からない、拳脚一体の乱打攻撃はカウンターの投げで対処できる物じゃないからね!そいやぁ!!!


ルスカ:LP18000→(乱打で細々と削られて)9500
「ぐぬ……何と言う速さ……ですが、肉を切らせて骨を……」

「断たせないわよ!!」


――バキィ!!


「が!!バックブローと見せかけて、後ろ回し蹴りとは……!!」
ルスカ:LP9500→7000
クラッシュエミュレート:右腕強度打撲


「ですが、その足は頂きます!!」


クラッシュまで発生したのに、アタシの蹴り足を掴んだのは見事だね?……流石は最強のジュードー・ファイターだよ。
だけど、足を取られた場合には、こう言う反撃方法だってあるんだよ?一撃必殺、延髄斬り!!


――メキィィィィィ!!!


「!!!!そ、そんな、攻撃が……!!」
ルスカ:LP7000→4000
クラッシュエミュレート:頸椎捻挫&軽度脳震盪



「1ラウンド目とはまるで別人……まさか、戦いの中で強くなったとでも言うのですか!?
 だとしたら、貴女は本物の天才としか言いようがない……ですが、此処で負ける訳にはいかないんです!!柔道最強を証明する為にも!!」


貴女にも譲れない物があるんだねジャクリーン……だけど、己の使う格闘技が最強だと証明するなんて志じゃ、アタシを倒す事は出来ないよ?
同じ理由でも、アインみたいに受け継いできた過去の記憶からって言うなら別だけど、貴女の其れには其処までの重みは無い!!


「うおぉぉぉぉぉ!!」

「無駄だよ!!」


――スカ……


「!?」


掴もうとした刹那に、私がダッキングした事で掴み損ねたみたいだね?……まぁ、其れを狙ったんだけどさ。
だけど、投げミスの隙は存外大きいんだよジャクリーン?……だから、この一撃で、終わりだぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!

受けろ……此のブロウ!!!!


――バキ!!ドゴガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!


「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあっぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
ルスカ:LP4000→0


雷撃を纏った肘打ちと打ち抜きアッパーのコンビネーションは流石に効いたでしょ?……此れで、デュエルエンドだよ!!


『ぬわんとぉぉぉぉ!!第2ラウンド早々リングを砕いたレーシャが、其のまま乱打戦に持ち込み、ジャクリーンの反撃をも許さずに超絶ラッシュ!
 そしてトドメは雷撃を纏った肘打ちからのアッパーカットの連続ブロウでの完全KO!1ラウンド目の劣勢を跳ね返した、見事な逆転勝利だ~~!
 だが、負けはしたモノの、ジャクリーン・ルスカも見事な戦いぶりで、俺達に柔道の強さを見せつけてくれた!実に素晴らしい戦いだった~~!』




アタシの……勝ちだ!!


「負けてしましましたか……矢張り、負けると言うのは悔しい物ですね……」

「その悔しさをバネに出来るかどうかが成長に影響するって言ってたよ、アタシの師匠がね。
 だからさ、来年のインターミドルでまた闘おうよ?勿論、それ以外での模擬戦だって大歓迎だからさ。
 でも、その時は『柔道最強の証明』とかは無しでね?……そんな事しなくても、貴女の戦いで柔道の強さは知れ渡ってるんだから……ね?」

「……そうですね……如何やら私は、意気込み過ぎていたようです。
 次に貴女と戦うその時は、自然体で挑む事が出来るように、今日からまた修業のし直しです――でも、次は負けませんからね?」


そう来なくっちゃ!
いんや、次もアタシが勝たせて貰うわよジャクリーン?


「いえ、私が勝ちます!!」

「勝つのはアタシだよ!!」

「私!」

「アタシ!!」


――ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……


「「ぷっ!……あはははははははははははは!!!」」


お互いに、頑固だねジャクリーン?其処は年長者が譲るところじゃない?


「まさか、年下が退くべきでは?」

「どっちとも言えないよねぇ……てか、此のままだとまた不毛な言い合いになりそうだわ。
 兎に角、貴女の試合は良い試合だったわよジャクリーン。私のラッシュスタイルの弱点も教えて貰ったしね。」

「其れは私も同じですよ…地雷震の改良もしなくてはですからね。
 ですが、此れだけの試合が出来た事に感謝を、そして次の試合も頑張って下さいねレーシャさん?…私に勝ったんですから、本戦には絶対に。」


言われなくてもその心算!
てか、本戦に進まないとミウラと番長とも戦えないからね――絶対に本戦に駒を進めてやるわ!!


だけど今は、アタシと貴女の激戦を賞して……礼で終わろうよ。――貴女と戦えた事を誇りに思うわ、ジャクリーン。


「其れは私もです……貴女と戦えた事を誇りに思って……」


――バッ!!


「「押忍!!!」」


『激戦が終わったら、互いに互いを称え、礼を持ってして試合終了!!
 礼に始まり礼に終わる、矢張り格闘技はこうあって欲しい物だ~~~~!!!
 大注目のダークホース対決を見せてくれたレーシャとジャクリーンに、今一度大きな拍手を!実に見事なバトルだったぞーーーーーー!!!!』

「「「「「「「「「「わぁぁぁぁぁぁぁぁっぁぁぁぁぁっぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」」」」」」」」」」


――パチパチパチ!!


なはは……まさか会場が割れんばかりの拍手を受けるとはね。
だけど、其れだけアタシとジャクリーンの試合が、MCさん及び観客の皆さんの心に響いたって事だろうから、此れは素直に受け取っておくべきよね。


はぁ~~~……だけど正直、此の一戦はきつかったわ~~~……正直言って地雷震の攻略法が見えなかったら、間違いなく負けてたわね。
今回はアタシが勝ったけど、ジャクリーンだって全国レベルの実力者なのは間違いない。


だけど、本戦に進めばそんなのがゴロゴロ居るんだよね?……想像するだけで、ワクワクして来た!!
残り2戦も勝って、必ず本戦に駒を進めて見せるわ――ジャクリーンの夢も背負っちゃったからね。








――――――








Side:遊星


1ラウンド目は攻め込まれていたが、2ラウンド目はレーシャの独壇場だったか……凄まじかったが……如何した稼津斗?


「いや……アイツの持つ才能の深さに改めて驚かされてな。
 こんな事を言ったらアレだが、レーシャは間違いなくインターミドル本戦の常連組になると思うぞ?……あの才能が更に伸びれば確実にな。」

「そうなん!?」

「其れは流石に驚きだな……才能があるとは思っていたが……」

デュエルだけでなく、格闘の才能も天才的と言う訳か……其れは将来が楽しみだな。


ともあれ、レーシャは4回戦突破だ。
本戦出場まであと2勝だからな……気負いすぎる事なく頑張れ――俺もはやても、そして遊陽とシュタームもお前の事を応援しているからな。













 To Be Continued… 








*登場カード補足