Side:レーシャ
よくよく考えると、これ以上ない奇妙な組み合わせかもしれないよね此れ。
オリヴィエの複製であるヴィヴィと、プレシアさんの複製である私に、初代覇王の記憶を受け継いでるアイン――特殊な過去を持つ者達だからね。
とは言っても、ヴィヴィはオリヴィエの記憶を受け継いでる訳じゃないけどね。
でもさアイン、記憶を受け継いでるってなんか変な感じじゃない?
「記憶と言っても全てを受け継いでいる訳では無く、途切れ途切れの断片的な記憶を受け継いでいるに過ぎません。
ですが、その記憶の欠片を繋ぎ合わせれば、彼の生涯の大凡を自分の記憶として思い出せます――」
ん〜〜……つまりは私の記憶みたいなものかな?
ヴィヴィと違って、私には子供の頃のプレシアさんの物と思われる記憶が断片的にだけど残ってるんだよねぇ……?ハッキリはしてないんだけど。
「ほぼ同じモノと考えて貰って良いと思います。
私は彼ではありませんが、彼にとっての思い出は、そのまま私の思い出でもあるんです――乱世のベルカの悲しい記憶も含めて。」
あ……そうか、断片的とは言え覇王の記憶を継いでるって事はその辺の事も覚えてるんだ。
私には想像も出来ないよ其れは――きっとJ.S事件なんて物は比較にもならない程の激しい戦いがあった時代だったんだよね?
だけど、その記憶を受け継いだアインは如何思ってるんだろう?――きっと、覇王の無念と果たされなかった悲願を思ってるよね、絶対に。
でもアイン、貴女は覇王イングヴァルドじゃなくて、アインハルトって言う1人の女の子なんだって言う事だけは忘れないで。
貴女が受け継いだ覇王の記憶は、貴女を縛るためのモノじゃなくて、寧ろ貴女が前に進むために引き継いだものだと思うから――ね。
遊戯王5D's×リリカルなのはViVid 絆紡ぎし夜天の風 Rainbow15
『覇王と呼ばれた男――その記録』
「あ、でも悲しい記憶だけではないですよ?
勿論、楽しい記憶や幸せな記憶もちゃんと受け継いでいます――例えば、オリヴィエ聖王女殿下との日々とか――」
「オリヴィエはクラウス陛下と仲良かったんですか?」
「仲が良い――と言うのは少し違うかもしれません。
ですが、共に笑い、共に武の道を歩み、そして最後の最後まで志を共にしていた同士であった事は確かです。其れは間違いがないです。」
ハッキリ言いきるって事は、きっとそうなんだろうね。
だけどアイン……貴女はきっと、その先で起きた悲劇の記憶も継いでるんだよね……そうじゃなかったらそんな顔はしないモン。
古代ベルカ云々の話だと私の出番はナッシング!!――此処はヴィヴィに一任するのが最善だね?……じゃあ、宜しくねヴィヴィ♪
――――――
Side:ルーテシア
オリヴィエ・ゼーゲブレヒト――聖王家の王女にして後の『最後のゆりかごの聖王』。
オリヴィエとクラウスの歴史研究でも諸説あるみたいなんだけど……
「そもそも生きた時代が違うって言うのが主だよね?」
「まぁ、確かに其れが今は主たる説だけど、この回顧録も含めて、歴史書の多くは覇王と聖王は姉弟みたいに育ったって言う記述が多いわね。
にも拘らず、育った時代が違うとされてるのは、聖王の最期とゆりかご停止の時期に大きな差がある事が要因なのかもしれないけど。」
だけど、何れにしてもオリヴィエとクラウスが激動の古代ベルカ戦乱期を駆け抜けたのは間違いない事実だと思う。
――数多ある歴史書でも、その戦乱期の終息は覇王と聖王の悲劇的な最期の記述だけは、多少の差異はあっても同じだけれどね……
もしも、もしも本当にアインハルトがクラウスの記憶を継いでいるのなら、その胸の内の無念は私達には計り知れないでしょうね絶対に……
「アリ?オリヴィエって確かヴィヴィオの……オリジナルだよね?」
「そうだけど、肖像画とかを見る限り、ハニーブロンドとオッドアイの特長以外は別に似てないしよ?
普通に『ヴィヴィオの御先祖様』で良いんじゃない?」
「だよね。」
そう言う事。
んで、なんでオリヴィエとクラウスが仲が良かったのかと言うと、シュトゥラと聖王家は元々交流があって、オリヴィエが留学って体裁だったみたい。
尤も、オリヴィエはゆりかご生まれの正統王女ではあったけれど継承権は低かったから、要は人質交換だったんじゃないかな?
「そ、その頃の人質交換て言うとアレだよね?歴史小説にもよく出て来る……」
「裏切ったら人質ぶっ殺すぞこの野郎って言う……」
「そうそう、そんな感じ。」
だけど、オリヴィエとクラウスにはそんな事は全く関係なかったみたい。
其れを示すかのように、この本も途中までは、オリヴィエとクラウスの事ばかり。
歴史にもしもはないけど、もし2人が生きた時代にゆりかごを起動させずに戦乱を終結させる事が出来ていたら歴史は大きく変わっていたかもね。
クラウスは覇王として名を残しただろうけど、オリヴィエは聖王ではなく『シュトゥラの姫騎士』としてその名を残していたのかも………
――――――
Side:アインハルト
恐らく私は、長いイングヴァルドの血統の中でも特に色濃くクラウスの記憶を継承してるのではないかと思います。
それこそ、彼がベルカの戦乱期をどう生き、何を思って駆け抜け、オリヴィエにどんな思いを抱いていたのかすら詳細に思い出す事が出来ます。
だからこそ、私は彼の望みを成就したいんです。
皮肉にもオリヴィエを失ってしまったが為に『覇王』と呼ばれるまでの強さを身に付けた彼が、生涯成就する事の出来なかった願いを。
「覇王の願い……ですか?」
「それって……」
「上辺だけではない本当の強さです。
護るべき者を護れない悲しみを、二度と繰り返さない真の強さを身に付ける事です。
そして、覇王流は其れを身に付けていると証明する事が、覇王の強さを証明する事が彼の望みの延長に在る、私自身の悲願なんです。」
スミマセン、自分の話ばかりで……昔話なので、あまり気にしないでください。
「あ、いえ……貴重な話を聞けて良かったです。」
つい、話してしまいましたが配慮が足りませんでしたね……ヴィヴィオさんが悲しい顔をされてしまった。
此れまでの事から、思いやりの深い方だと分かっていた筈なのに……
なにか、ヴィヴィオさんの気を紛らわせるような話は――
「そう言えば、アインはクラウス殿下の記憶を継いでるって言ってたけど、ヴィヴィはオリヴィエ王女の記憶とかは継いでないの?」
「へ?私はオリヴィエの記憶は継いでないよ?
あくまでも私はオリヴィエの能力と特長のみを受け継いだ複製だから、記憶までは――流石のマッドも其処までは出来なかったのかもだけど。」
レーシャさん?
「そうなんだ?……でもさ、実を言うと私は時々プレシアさんの物と思われる記憶を夢で見る事があるんだよね……主に子供の頃の記憶を。」
「そうなの?」
「そうなんですか!?」
レーシャさんが、かの大魔導師『プレシア・テスタロッサ』のクローン体と言う事は本人から聞いていましたが、記憶を夢として見る事があるとは。
かの大魔導師の子供の頃と言うのも実に興味がありますが、どのようなモノだったのでしょう?
「ん〜〜〜……大抵は真面目に、そしてストイックに魔法を勉強してるところだったり、特訓してた魔法が出来て喜んでるところだよ。
だけどね、たま〜〜に明らかに黒歴史としか思えないような記憶が夢で再生される事があるんだわ……」
「「黒歴史?」」
「恐らく本人に聞かせたら精神的ダメージMAXで一撃KOも可能なくらいの黒歴史!!その名も『雷光少女プレシアちゃん』!!」
「「はい!?」」
「フェイトさんのソニックに、フリフリな要素を加えてマントを追加した服装で、ウィンクしながら『キラリ☆』って感じのポーズを決めてね。
もう、ノリノリで管理局の嘱託魔導師として凶悪魔導犯罪者を撃滅してるのがね……大魔導師にも過去ありだわぁ………」
其れはまた何とも……如何ともしがたい凄まじいモノを感じますね。
大魔導師と言えど、子供の頃は割とやんちゃをしていたと言う事でしょうか――貴重なお話ですね。
「序に言うと、その頃のプレシアさんの相方が実はリンディさんで、『銀河提督少女リンディちゃん』とかなんとか………
もうノリノリにノリノリで、当時の管理局内ではリンディさんとプレシアさんを美少女アイドルユニットとして広告塔にするって企画もあったとか…
取り敢えず今度、プレシアちゃんの衣装を着てT&Hを訪れて、プレシアさんを精神的にKOする心算。」
「やめて!そっとしておいてあげて!黒歴史を抉らないで!!」
「己の黒歴史は封印すべし、されど他人の黒歴史は笑える物である場合に限り大々的に暴露すべし!これお母さんからの教え!!」
「その考え絶対に間違ってる!?」
「因みに、その理念の下に、お母さんはお父さんの黒歴史である『チームサティスファクション』を世に知らしめました!!」
「アレははやて司令の陰謀だったのーーーーーー!?」
え〜と、話について行けませんが、取り敢えずヴィヴィオさんが笑顔に成ったようで何よりです。
――或はレーシャさんは、この場の空気を察して、この様な話題を振ってくれたのかも…………だとしたら感謝しきれませんね。
「おーい、レーシャ、ヴィヴィオ、アインハルト!
ブラブラしてんなら、向こうの訓練施設見に行かねーか?そろそろスターズが模擬戦始めるんだってさ。」
ノーヴェさん?
えぇ、勿論ご一緒させていただきます!
管理局の高ランク魔導師の模擬戦など、早々拝見出来るモノではありませんから――寧ろご一緒させてください!
「なら決まりだな?
お嬢達も誘ったから、超一流の魔導師の戦いってモノを見学させてもらおうぜ。」
願ってもない事です!――超一流の魔導師ともなればどれ程のモノか……模擬戦とはいえ、実に楽しみですから。
――――――
Side:ヴィヴィオ
「……14年前の時にも思ったけど、やっぱりハンパ無く強いねアインスさん!!」
「お前も相当なモノだぞなのは?
あの時は射撃と砲撃しか能のない子だと思ったが、よもや其れを最大の武器にし、長所を伸ばす事で己を高めて来るとはな。
おまけに、お前は砲撃が得意と言うだけで、やろうと思えばクロスレンジでも充分すぎるほどに動けると言うのだから、能力チートだよマッタク。」
「バスターの直撃喰らっても無傷だった人が其れを言っても説得力は皆無ですけど………ね!!」
あははは……予想通り、アインハルトさんは唖然としてるなぁ。
まぁ、ママとアインスさんの模擬戦は超ハイレベルな戦いだからね……寧ろ凄すぎて、誰も何も言えなくなる位だから。
誘導弾と砲撃か飛び交い、其れでも互いに決定打を撃つ事が出来ないって言う事は、つまり実力伯仲の証な訳で、自然と攻防も激しくなる。
まぁ、流石にブレイカーを発動しない辺り加減はしてるみたいでけど……それでも、此れは見るだけでも参考にはなるでしょう、アインハルトさん。
「はい……まさか、ヴィヴィオさんのお母様があれほどの魔導師だとは思いませんでしたけれど。
其れに加えてアルザスの飛竜を使役する竜召喚士に、其れを駆る竜騎士と、更にはオーバーSの空戦魔導師――錚々たるメンバーですよ。
この合宿に参加したのは有意義であったと思います。」
でしょう?
一見すると厳しい訓練にも見えるかもしれませんけど、此れ位やらないとダメなんだってなのはママもフェイトママも言ってました。
頻度の差はあれど、誰もが命の現場で働いてる事に変わりはありませんから。
だからこうして鍛えてるんです――力が足りなかったらだれも救えないし、自分自身を護る事だって出来ませんからね。
この辺の思いは、クラウス殿下が望んだものと符合する部分があると思うんです……覇王の思いはきっと、誰しもが持ち得る願いなのかも――
「ヴィヴィオさん?」
「今はまだ全然未熟だけど、何時かはきっと他の誰かを、自分自身を護れるだけの強さを身に付ける!!其れが私の目標なんです。」
「貴女ならば、或は達成できかもしれません目標ですね。」
志は高くって言うのがなのはママの教えですから♪
――――――
Side:セイン
「あらあらマッタク、元気ねみんな〜〜〜。」
「ホントにね〜〜〜」
稼津斗兄ちゃんは兎も角として、他の人達は永久機関積んでんじゃないかって疑っちゃうほどの元気さだっての。
「セインは良いの?皆と遊んでいかなくて。」
まぁ、アタシはあくまでも教会からの新鮮野菜とタマゴの差し入れに来ただけだからね。
用が済んだら、あんまし遅くならないように帰るよ――シスター・シャッハがガチでキレるとまっじで怖いから……
「と、言いつつも実は遊びたい欲求は最大値よね?」
「さっすがにメガーヌさんは騙せないか。」
ま、折角だから温泉サプライズの一つでも仕掛けて、皆を楽しませてやっかなー位はおもってけどね〜〜。
To Be Continued… 
*登場カード補足
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