Side:アインハルト


誘われるがままに、川の中に入ったのは良いのですが――何と言うか、予想以上に皆さんの動きが良い?
いえ、元気なのは素晴らしい事なのですが、その、些か元気すぎると言うか――抵抗の大きい水中でこれ程までに動く事が出来るとは驚きです!

「はぁ、はぁ……」

実に情けない事ですが、ものの15分ほどで息が上がってしまいました。
ヴィヴィオさん達は、まだまだ元気に泳いでいると言うのに……


「よう、思った以上にあのチビ達の水遊びはハードだったろ?」

「はい……体力には自信があったのですが、其れが自惚れであると思い知らされました……」

「そう落ち込むなって、コイツは仕方ねぇ事なんだ。
 アタシも防災訓練で知ったんだが、水中では陸上とはまた違った力の使い方が必要になるんだよ――其れを知らないと即時ばてるのは当然だ。」


え?……其れではヴィヴィオさん達はその術を身に付けていると言うのですか?


「身に付けてるなんて上等なモンじゃないが、大体週2位でプールに行って泳ぎまくってるみたいだからなぁ?
 水中での力の使い方をマスターしてるかどうかは兎も角として、アイツ等が剛性と柔軟性と持久力を併せ持った筋肉を鍛えてるのは間違いない。」

「そんな事が……」

目から鱗とはこう言う事を言うのかもしれません。
己を鍛えるには我武者羅にトレーニングを積み、そして多種多様な格闘家と戦う事が一番だと思っていましたが、こんな事でも鍛錬になるとは……

如何やらこの合宿は、私にとっても最高に有意義で意味のある物になるかもしれませんね。










遊戯王5D's×リリカルなのはViVid  絆紡ぎし夜天の風 Rainbow14
『少しだけでも、共に歩めたら』











Side:ノーヴェ


思った通り喰いついてきやがったかアインハルトは。
少なくともこいつは、水中で動く訓練はした事なんて無かった筈だからな――チビ達の水遊びに混ざって貰ったのは大正解だったみたいだぜ。

何よりもアインハルトは良いモノを持ってんだ、其れを伸ばさないのは勿体ない事この上ねぇ。


幸い、この水遊びのおかげで合宿に意味を見出してくれたみたいだから、ここらでもう一発行っとくか!

「オイお前等、アインハルトに『水切り』を見せてやってくれ。」

「水切り?」


なに、ちょっとしたお遊びさ――序に打撃のフォームチェックも出来るんだが、良く見ときな?



「ハッ!!」


――バン!!


「おりゃ〜〜〜〜!!!」


――ドバン!!


「ふぅぅぅぅ……ハァ!!!」


――ザパン!!!


「覇ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……せぁぁあぁぁぁぁぁぁ!!!」


――ザッパァァァァアッァァアァッァアァァァァン!!!



おぉっと、この4人の中ではやっぱりヴィヴィオとレーシャが抜きんでてるか?リオとコロナも中々もんだけどな。
如何だアインハルト、中々凄かっただろ?


「はい……まさかこんな事が出来るとは……」





「何ならアインハルトさんもやってみますか?」

「お、いいねそれ!アインの拳がどれだけ水切りできるかってのは興味あるかも!!」


でもって予想通りだな此れも。
自分達が水切りを見せたとなれば、当然アインハルトがドレだけできるかってのには興味が湧くに決まってるからな?……我ながら考えたもんだ。

で、如何するアインハルト?


「勿論やらせていただきます!
 大体どうやればいいのかは見当が付いていますので。」


良い答えだな。ならやってみな。


「はい……破ぁぁぁぁぁぁぁ……せい!!!」


――ドッパァァァァアン!!!


「え?」


「すご!5メートル位水柱がたったよ!?」

「天然のシャワーですね〜〜〜♪」


確かに見事な水柱だったが、水切りとしては不合格だな今のは。
抵抗の少ない円運動で力を伝えるってのに着目したのは悪くないが、お前の場合は少しばかり力が入り過ぎてるんだアインハルト。

基本は出来てるみたいだから、あと必要なのはタイミングだな。

「良いか?水切りの基本は脱力だ。
 全身の力をほぼ抜いた状態から、前方に向かって素早く打撃を繰り出し、そしてインパクトの瞬間に力を込めてやると――!!!」


――ズワバァァァァァァァァァッァン!!


こうなる。
つってもアタシ程度の水切りは、トップファイターなら大概は出来るモンだ……稼津斗の旦那の水切りはこの比じゃねぇしな。

「丁度良いや、本物の達人の水切りがどんなモンか参考までに見とけよ。旦那!」

「なんだ?」

「………駄洒落じゃねぇよな?」

「さぁ?けどまぁ、駄洒落ならよくあるやつだな。」


まぁな。
でさ、もし良ければチビ達とアインハルトに旦那の水切りを見せてやってくれよ?本物の達人の力ってのを見るのもいい勉強になるからさ。


「其れは構わないんだが……只やるってのも味気ないよな?
 ふむ、どうせだから俺のオリジナルの知り合いが使った、バカバカしくも破壊力はすさまじい一撃で水切りをやっても良いか?」

「え?いやまぁ良いけど………」

「なら行くぜ?覇ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ………覇王!!」


――ビシィ!


「「「「「「!?」」」」」」

炎熱ぅぅ………轟龍咆哮!爆裂閃光!!魔人斬空、羅漢拳!!!!


――ドバガァァァァァァアァァァァァァァァン!!!


「……しまった、対岸の地面割っちまったな……」


いぃ!?手加減しろよ旦那!!
確かにバカっぽい技だが、本気で破壊力はハンパねぇな!?水切りの衝撃波で対岸の地面割るってドンだけだよ!?


「手加減したぞ?
 寧ろ手加減なしでやったら、遥か向こうの山が2つに増えてるぜ?」

「「「「「「うっそだぁぁぁあぁぁぁぁぁぁ!?」」」」」」


旦那の強さがハンパねぇってのは知ってけど、まさか此処までとは……此れは無理言ってでも遊星さんかアニキに来て貰った方が良かったか?
なんつーか、マジになった旦那を止められんのは世界広しと言えどその2人しか居ないような気がするぜ……


「因みにだが、今の技の考案者は後に全身からビームを出す技を作り出してだな……」

「稼津斗師匠、その知り合いの方は人間ですよねぇ!?」

「生物学上は多分人間だが、『このオッサン剣が刺さんねーんだけどマジで』と言う謎の異名がある不死身のバグキャラだからなぁ……」


……類は友を呼ぶってんだろうなこう言うのをさ。
ま、まぁ取り敢えず、本物の達人の力がドンだけかってのは分かったと思う。
流石に旦那は究極レベルのチートバグだからアレだが、其れは其れとしても、お前等だって最低でもアタシレベルになれるのは間違いない。

「序に言っとくと、このチートバグの旦那だって最初っから強かったわけじゃないらしい。
 兎に角鍛錬に鍛錬を重ねて、数えきれないほどの負けを経験して此処まで来たって事だそうだ。
 だからお前達も鍛錬を怠るな!負ける事を恥と思うな!本当に恥じる事は、負けて其処で諦めちまうことだって事を忘れるんじゃねぇぞ?」

「「「「押忍!!」」」」

「敗北は恥ではない……成程、そう言う考えもありますか。」

「常勝不敗だけで上り詰めた奴の強さなどたかが知れている――真に強くなれるのは敗北の苦味と悔しさを知る者だけだ。」


流石旦那、良い事言うぜ!

っと、そういや少し気になったんだが、旦那と遊星さんが戦ったらどっちが勝つんだろ?


「決着付かずの泥仕合だろうな。
 遊星のモンスターの攻撃は効かないが、俺の攻撃もまた遊星のディフェンドタクティクスを破る事は出来そうにないからな。」


成程、つまり遊星さんも相当に人間離れしてるって事か。
でもってその遊星さんと、はやて司令の子供であるレーシャと、シュタームと遊陽って、若しかしなくても将来的にトンでもない奴になるのか!?


だがそうだとしたら、其れは其れで面白れぇ。
レーシャとヴィヴィオとアインハルトは当然ながら、リオとコロナも鍛えれば何処までも伸びる無限の可能性を秘めてやがるからな。

成程、見込みのある奴を見つけた時のなのはさんの気持ちが少しだけ分かったぜ。
確かに見込みのある奴はとことん鍛えてやりたくなるモンだ――コイツ等をインターミドルで通用するトップファイターにするのは何とも面白そうだ!








――――――








Side:レーシャ


ふ〜〜〜〜、遊んだ遊んだ〜〜〜!
水遊びは、全身運動でトレーニングにもなるから最高だよね〜〜〜!………尤もヴィヴィとアインはその限りじゃないみたいだけどね。


「えっと、2人とも大丈夫?」

「は、はい……」

「だ、大丈夫だよママ……」


幾ら温かい気候だって言っても、ぶっ続けで水切りの練習してれば身体も冷え切っちゃうって……ヴィヴィとアインは意外と似た者同士なのかな?
まぁ、丁度お昼だし、沢山食べて体を温めようか?って言うか、お肉の焼ける良い匂いに食欲中枢が直に刺激されて、もう堪らないので!!


「ふふ♪それじゃあ、今日の良き日に感謝を込めて……」

「「「「「「「「「「「「「「「「いただきまーす!!」」」」」」」」」」」」」」」」


!!お〜〜〜〜いしぃ!!
身体を動かした後のご飯は最高だけど、其れ抜きにしても美味しいよ此れ!特にこのお肉のソースが……もう絶品!!


「えへへ、自慢のソースだから♪」

「此れは若しかしたら、お母さんとタメ張れるくらいに美味しいかも……」

お世辞抜きにそう思う程美味しいモン!此れは幾らでも入るかな〜〜〜♪








――――――








Side:ヴィヴィオ


「「「「「「「「「「「「「「「「「御馳走様でした!!」」」」」」」」」」」」」」」」」


はぁ〜〜、美味しかった〜〜。
沢山食べて、すっかり体も温まったかな〜〜〜。

取り敢えず食べた後はちゃんとお片付け。
準備はママ達がやってくれたから、片付けは私達子供の仕事って……レーシャ早い!?なにその超高速食器洗い!?


「不動家に於いて此れ位のスピードは普通だよヴィヴィ?」

「何で!?」

「私のお父さんは生身で光速超えるから!!此れ即ちスピードこそが全てを支配する事の証!!」

「そんな事できるの不動博士だけだからね!?」


なのはママとフェイトママも魔導師としては最強レベルだけど、不動博士とはやて司令はそれ以上に規格外だからね……



え〜〜と、其れで何でしたっけアインハルトさん?


「いえ、ヴィヴィオさん達は何時もあんな風にノーヴェさんや稼津斗さんからご教授を?」

「あぁ、そんなに何時もではないんですけど――実は私とレーシャは最初にスバルさんから格闘の基礎だけを教わったんです。」

「で、其れからは互いに独学で頑張ってたらノーヴェと稼津斗師匠が声を掛けてくれてね。」


なんだかんだでリオとコロナの面倒も見てくれる事になって――優しいんです、ノーヴェと稼津斗師匠って。


――分かります……そして同時に少し羨ましいです。……私はずっと一人の独学でしたから。」


アインハルトさん……だけどもう、此れからは一人じゃないですよね?


あ、いえ、勿論流派その他は別にしてですよ!?


「わ、分かっています!!大丈夫です!!」


私達のストライクアーツと、アインハルトさんの覇王流が同じ道を辿れない事は分かります。
だけど、同じ道を辿れなくとも、共に研鑽を積む事は出来ると思うんです!そして其れはきっと素晴らしい事だと思うから。


「そうですね……こんな風に、時々一緒に歩く事が出来たのならば、其れは素晴らしい事なのかもしれません。」


うん、そうだよ!!――改めて宜しくお願いします、アインハルトさん!








――――――








Side:ルールー


んしょ……あったあった、此れだ〜〜〜。見つかってよかった〜〜〜。
ママは此処に在るって言ってたけど、正直見つからなくて焦ってたんだよね……


「ルーちゃん、その本……」

「うん、アインハルトに見せてあげようと思ってね。」

歴史に名を刻んだ『覇王イングヴァルト』――クラウス・イングヴァルト自身の回顧録をね―――――















 To Be Continued… 








*登場カード補足