Side:レーシャ


うわ……此れは、今のは流石にちょっと引くわ。
ヴィヴィのカウンターに対して、言うなればミウラの『カウンターのカウンター』が炸裂した状態なんだけど、攻撃に移ってた以上はヴィヴィの防御力は0に
なって筈よね?

その防御0状態の頭部に、ミウラの重爆踵落としが炸裂ってヤバいどころの騒ぎじゃないよ!!
多分、おそらくは、クリスが咄嗟に頭に攻防力を振り分けたのかも知れないけど、其れでもミウラの豪打がクリーンヒットしたら、そのダメージは半端なモノ
じゃないわ。
と言うか、ミウラの豪打は、プレシアさんの力を受け継いだ私であっても完全に防ぐ事は難しいレベルだから、元々防御が強くないヴィヴィが其れを受け
たらKOは免れない――って思うのが普通なんだけど、ヴィヴィはきっと此れじゃ終わらない。

って言うか、なのはさんがお母さんであるヴィヴィが此処で終わる筈がない!!そうだよね、お母さん?



「せやなぁ?確かに状況はヴィヴィオにとっては絶体絶命や。其れは間違いないやろ。
 やけど、ヴィヴィオはなのはちゃんの『不屈の心』を継承してるさかい、此処で終わるなんて言う事は先ず無いやろね?――寧ろ、追い込まれてからが
 『不屈の心』の真骨頂が発揮されるって言うモンやからな?」

「そうだな、追い込まれたとは言え、ライフが0になって居なければ逆転の可能性は0じゃない。デュエルと同じさ。
 遊戯さんだって、3体の青眼の白龍がロード・オブ・ドラゴンの効果で対象効果耐性を得たと言う絶対的に不利な状況を覆して逆転勝利を収めた事があ
 る訳だからな?
 10カウント以内に立ち上がることが出来れば、この状況からヴィヴィオが逆転する可能性は決して0じゃない。」



お父さんも……でも、そうだよね。
デュエルも格闘も、追い込まれてからが本番!逆境を引っ繰り返しての、逆転勝利って言うのが最高の醍醐味だから――此処からこそが、本当の戦い
になるわよヴィヴィ!!












遊戯王5D's×リリカルなのはViVid  絆紡ぎし夜天の風 Rainbow104
『The Fight~限界の果ての決着~』











No Side


ミウラの強烈な踵落としを喰らったヴィヴィオは、ピクリとも動ない。
その間にダウンカウントは進み、遂にカウントは9まで進んだが――


「や、やれます………!!!」


ギリギリでヴィヴィオはダウンから復帰し、ファイティングポーズをとって『試合続行』の意思を示す……防御0の所にミウラの豪打の直撃を受けた事を考
えれば、起き上がって来たのは見事なモノだと言えるだろう。

だがしかし、其れは辛うじて起きたに過ぎない。
実際に置き上がったヴィヴィオの膝は震えていて、立っているのがやっとな状態だ――其れこそもう一度ミウラの豪打が直撃したら、その時点でKOと
なってもオカシクない位のダメージがあるのだ。

それでも、試合続行可能の意を示した以上は、試合は続行される。

だが、その試合内容は、一方的なモノだった。
強烈なダメージを受けたヴィヴィオは、ミウラの豪打を何とか捌いているモノの、頭部へのダメージが影響して正確な判断を下せず、捌いてもカウンターを
叩き込む事が出来ない状態になっているのだ。

同時にそれはミウラにとっては好都合。
例え捌かれても、カウンターの一撃が来ないのであれば、徹底して攻めに回ることが出来る――己の豪打を武器に、一気にヴィヴィオを攻め立てる事が
出来るのだから。



「でやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

「!!!」



その違いは、意外とすぐに現れるモノだ。
ミウラの猛攻を何とか防いでいたヴィヴィオだが、ミウラがフェイントで出した前蹴りに、本能で超反応してガードを固めた所に、ミウラの本命である右ミド
ルキックがヴィヴィオの脇腹に炸裂!!
前蹴りを受けるためのガードに魔力を全振りしていたヴィヴィオの脇腹の防御力は0――DSAAルールである以上、現実のダメージにはならないが、それ
でも肋骨骨折のクラッシュエミュレートは免れないだろう。

現実に、2度目のダウンを喰らったヴィヴィオは起き上がる気配がない。


「ヴィヴィ、立て!!立つんだヴィヴィー!!!」

「ヴィヴィオさん、立ってください!!」


それこそ、客席からのレーシャとアインハルトの声にも反応は皆無……流石に此処までかと、誰もが思ったその時だった。



「頑張ってくださいヴィヴィオ!!」

「!!!」



突如聞こえてきたヴィヴィオへのエール。
其れはレーシャではない、アインハルトではない、コロナとリオでは勿論ない――では誰か?



「ヴィヴィオ……!」

「イクス……?」


そのエールを送ったのは、マリアージュ事件の際にヴィヴィオと邂逅し、その後長き眠りについていた『冥府の炎王』ことイクスヴァリアだった。
小さな分身を持ってして半覚醒状態にあった彼女は、ヴィヴィオの危機に呼応する形で完全覚醒に至り、覚醒の第一声を友のエールに使ったのだった。

だが此れは、ヴィヴィオにとっては何にも勝るブースト剤に他ならない。
母であるなのはの影響を受けまくっているために、ヴィヴィオの強さはメンタル面と直結しているから、如何に逆境に追い込まれようとも、メンタル面で持
ち直す事が出来れば、身体へのダメージなんて何のその。
精神が肉体を凌駕すれば、身体へのダメージなど如何という事はない――覚醒したイクスのエールを受けたヴィヴィオは、正にその状態になっていた。


「やれます!!」


先程立ち上がった時とはまるで違う、強い光が戻った瞳でそう宣言する。
もうそこに、脳天への強烈な踵落としでKO寸前のダメージを受けたヴィヴィオは存在していない。『友のエール』を受けて、メンタル面が強ブーストを受け
たヴィヴィオは、ともすればミウラの豪打の直撃を喰らう前よりも強いかもしれない。

そして、此の復帰をきっかけに、場内からは割れんばかりのヴィヴィオコール!
其れは宛ら、ヴィヴィオのホームスタジアムでの試合の様で、対戦相手であるミウラからしたら、完全にアウェーな雰囲気であると言えるだろう。

――が、その雰囲気の中でも、ミウラの顔に浮かぶのは笑み。
会場の雰囲気としては完全なアウェーだが、しかしミウラはそれを誇りに思っていたのだ。『自分が戦っている相手は、此れだけの声援を受ける選手なの
だ。』と。

だからこそ、何処までも手加減はしない。


『ファイト!』


試合再開と同時に、ミウラは姿勢を低くしてヴィヴィオに突進!
助走をつけての豪打で、一気にヴィヴィオを押し切る心算なのだろうが、声援を受けたヴィヴィオは冷静に其れを見て、そして体を屈めた状態から上半身
のバネを最大限に使ったアッパーカットで此れを迎撃!
助走をつけていたミウラにとって、この迎撃は只のカウンター以上に効いただろうが、ヴィヴィオは其処で手を止めずに、アッパーで振り上げた左手を裏
拳気味に振り下ろし、其処からフリッカーの連打、連打、猛連打!!
その拳は先程よりも更に速く、最早マシンガンをも凌駕したアサルトライフルの如き連射砲だ!――が、ミウラもミウラで、迎撃された直後であるにも拘ら
ずにガードを固め、ヴィヴィオにクリーンヒットを許さない。


そんな中で、ヴィヴィオの拳が此れまでよりもホンの少しだけ遅く繰り出された。
無論それはミウラのガードを下げるためのフェイントであるのだが、そのわずかな速度の差が、ミウラにとっては反撃の好機!
すぐさま拳の嵐を避けるように身を屈めてから、アッパーで反撃しようとするが、その拳をヴィヴィオの右拳が迎撃!そう、此れは二重のフェイントだった
のである。
態と少し遅く打つ事でミウラに反撃させて、其れを潰す事でガードを下げるどころかこじ開けて見せたのだ!!


「アクセルスマッシュ――」


今度はガードを固める暇を与えずに、脳天に左の打ち下ろし!繋いで右のショートアッパーで顎を撃ち抜き、流れるように左フックを叩き込み――


クアドラプル!!!!


――ドガァァァァァァァァァァァァァァァ!!!


トドメは破壊力抜群の右のジャンピングアッパーカット!
アクセルスマッシュWをも上回る、一瞬四撃に100%の魔力を込めると言うアクセルスマッシュの最終進化形態『アクセルスマッシュクアドラプル』で、今
度は逆にダウンを奪い返したのである。

そしてこのダウンは、ミウラにとっても可成り大きなダメージだ。
如何に頑丈さが売りであるとは言え、4発の内1発を脳天に、2発を顎に喰らったら、如何に頑丈であると言っても無事では済まない――特に顎へのダメ
ージは、蹴りが主体のミウラにとっては深刻だろう。顎から受けたダメージは足に来るのだから。


「やれます!!」


だが、ミウラもまた立ち上がる。
強くなった姿を……皆のおかげで強くなれたという事を、師匠や八神家道場の人達に見せたいと言う一心で。


とは言え、ヴィヴィオもミウラも互いに派手にダメージを受けた手前、次が最後の攻防になるであろう事は、当の本人達が誰よりも分かっているだろう。


「抜剣――!」

「セイクリッドディフェンダー……フルドライブ!!」



ミウラは最強の剣を抜き、ヴィヴィオは最強の盾を構える。
ミウラの剣がヴィヴィオの盾を斬り裂いて決定打を叩き込むのか、其れともヴィヴィオの盾がミウラの剣を跳ね返し、其処に強烈なカウンターを喰らわせ
るのか……何れにしても決着は其のどちらかだろう。


「ヴィヴィオさん……行きますよ?」

「受けて立ちます、ミウラさん。」


何時の間にか、先程までの声援は消え、会場にあるのは静寂のみ。
其れこそ、今戦っている2人の息遣いですら聞こえるのではないかと言う静寂の中で――ミウラが動いた!
ダッシュなどではない、ロケットブーストと言うべき凄まじい一足飛びでヴィヴィオとの距離を詰め、必殺の『抜剣・流星』を放つ!
狙いはヴィヴィオの左側頭部!決まれば正に必殺の一撃だ!!


――フッ……


「え?」


其れが当たる寸前に、ヴィヴィオはセイクリッドディフェンダーを解除し、円運動で抜剣を回避すると、その勢いを利用してミウラを投げ飛ばす!!
1ラウンド目でも見せた『真空投げ』だ!!
何とヴィヴィオは、此の土壇場でも『セイクリッドディフェンダーで受ける』と言う姿勢を見せる事で、ミウラの頭の中から『真空投げ』の存在を一時的に消
すと言うトリックプレイを見せてくれたのだ――足りない実力は頭で補ったという事なのだろう。

更に今回は、1ラウンド目の時の様に床に叩き付けるのではなく空中に、自分の略真上に投げ上げたのだ。
ミウラは飛行魔法が使えないから、空中に放り出されては何も出来ない。辛うじて姿勢を整える事は出来ても、方向を変える事や落下を止める術はない
のである。

そして、其れこそがヴィヴィオの狙いだった。
空中ではミウラは何も出来ない――其れはつまり、絶対の好機に他ならない訳で、ヴィヴィオは既に次の攻撃の準備を完了していた。


――轟ォォォォォォォォォォォォ……!!


その両手には、虹色の魔力が集中し、今にも爆発せん状態だ。


レイジング……ストォォォォォォォォォォォォォォォォォォム!!!!


その魔力が籠った両手を床に叩き付け、それと同時にヴィヴィオを中心に猛烈な『魔力の嵐』が巻き起こり、空中に放り出されたミウラに容赦ないダメー
ジを叩き込んでいく!!
空中に放り出されて、如何にか体勢を立て直そうとしていたミウラに防御の姿勢をとる事は叶わず、魔力の嵐を真面に喰らってしまったのだ。


「あが……」

「これで終わりですミウラさん!!」


レイジングストームを喰らって落下して来たミウラを掴むと、駄目押しとばかりに落下速度に更に勢いをつける形で、床に叩き付ける!!
カウンターの真空投げからのレイジングストーム、更に駄目押しの山嵐を叩き込めば、如何に頑丈なミウラとてKOは免れないだろう……と言うか、ヴィヴ
ィオも今の攻撃で全ての力を出し切ってしまい、最早戦う為の力は残っていない。
もしも此れだけの攻撃を受けてミウラが立ち上がって来たら、其れは問答無用でヴィヴィオの負けだろうが――


「こ、今回は僕の負けですね……見事でした、ヴィヴィオさん。」


ミウラは一度は立ち上がるも、其れだけを言うと膝から崩れ落ち、其のまま気を失った。
それは、ヴィヴィオの全身全霊の攻撃がミウラの耐久値を超えるダメージを、ミウラに叩き込んだことの証明以外の何物でもなく、そして其れはつまり!


『決まったーーーー!!!
 互いに強烈な攻撃を喰らってからの、最後の攻防を制したのは高町ヴィヴィオ!!カウンターの投げからの流れるような連続技で、圧倒的なバイタリ
 ティを誇るミウラ・リナルディを完全KOーー!!!
 だが、勝ったのは高町ヴィヴィオだが、ミウラ・リナルディも負けてはいなかった!正に、何方が勝ってもオカシクない互角の勝負!戦技披露会に相応
 しい見事な試合だった~~!何よりも、この俺が大興奮だったぞ~~~~~~~~~~~~~!!!』



ヴィヴィオの勝利だという事。
実況を務めるMCのアナウンスが流れるや否や、会場からは割れんばかりの大声援!!其れこそ、インターミドルの決勝戦にも負けない位の大声援!

更に、


「ヴィヴィーーー!!」

「「ヴィヴィオーーー!!」」

「ヴィヴィオさん!!」


客席からレーシャが、リオとコロナが、そしてアインハルトがリングに降りて来てヴィヴィオを取り囲んで、その勝利を祝福する。見事リベンジを果たしたと
いう事も大きいだろう。

反対にミウラの方には、セコンドであるシグナムとザフィーラが寄り添い、その健闘を称えていた。


ヴィヴィオとミウラの2度目の対決は、ヴィヴィオが勝利し、見事ミウラにインターミドルの予選でのリベンジを果たしたのであった。












 To Be Continued… 








*登場カード補足